ビジネスメールは、毎日書くわりに、きちんと教わる機会の少ない文書です。とはいえ、件名・宛名・書き出し・本文・結び・署名という基本の形さえ押さえれば、相手が迷わず読めるメールになります。この記事では、メールの形と文例、TO・CC・BCCの使い分けをまとめました。根拠は、文化庁の調査や「公用文作成の考え方」、個人情報保護委員会の資料で確かめています。
1通のメールの形 件名から署名まで
社外に送るメールは、一般的には次の順に組み立てます。上から順に読めば「誰に・誰から・何の件で・何をしてほしいか」が分かる並びです。
| 部分 |
書くこと |
例 |
| 件名 |
何の件で、何をしてほしいか |
10月分請求書の送付(株式会社〇〇) |
| 宛名 |
会社名・部署・役職・氏名 |
株式会社△△ 経理部 佐藤花子様 |
| 書き出し |
挨拶 |
いつもお世話になっております。 |
| 名乗り |
会社名・部署・自分の名前 |
株式会社〇〇 総務部の山本です。 |
| 本文 |
結論、続けて詳細 |
10月分の請求書をお送りいたします。 |
| 結び |
相手へのお願い |
ご確認のほど、よろしくお願いいたします。 |
| 署名 |
会社名・部署・氏名・連絡先 |
電話番号・メールアドレス・住所 |
「決まった型がある」と考える人は6割
文化庁の平成29年度「国語に関する世論調査」(2018年3月調査・有効回収2,022人)は、仕事などの改まったメールについても尋ねています。改まったメールに決まった型や形式が「あると思う」「どちらかと言えば、あると思う」と答えた人は、合わせて60.9%でした。「ないと思う」「どちらかと言えば、ないと思う」は合わせて15.0%、「メールを利用しないので答えられない」は18.9%です。改まったメールをやり取りすることが「ある」と答えた人は、全体の48.0%でした。
改まったメールに決まった型はあるか。文化庁の世論調査(2018年3月調査)の結果作成: 編集部 / もとの資料: 文化庁「平成29年度 国語に関する世論調査」報告書
「型がある」と答えた1,231人に、その中身を尋ねた結果(複数回答)は次のとおりです。
| 型や形式として挙げたもの |
割合 |
| 「お世話になっております」「お疲れ様です」など、挨拶の言葉を入れる |
74.6% |
| 宛名を入れる |
72.7% |
| 最後に所属や氏名など、署名を入れる |
65.9% |
| 1行が長くなり過ぎないよう、適宜改行をする |
50.3% |
| 冒頭で所属や氏名を名乗る |
47.0% |
| 「(笑)」「♪」、顔文字、絵文字などの表現は使用しない |
41.2% |
| 「拝啓」「敬具」など、頭語と結語を入れる |
33.8% |
| 内容のまとまりごとに1行以上の行間を空ける |
32.0% |
| 段落の最初は1マス分空ける |
21.9% |
| 季節に関する挨拶を入れる |
16.7% |
| 1行の長さをそろえる |
13.1% |
| 相手や状況によって違うので、一概には言えない |
12.0% |
挨拶・宛名・署名の3つは、多くの人が「型」と考えている部分です。一方、手紙の作法である頭語と結語(33.8%)や季節の挨拶(16.7%)を挙げた人は、ずっと少なくなりました。メールでは、これらを省くのが一般的です。
同じ調査では、改まったメールを書くときに参考にしているものも尋ねています。いちばん多かったのは「仕事の中で送られてくる他の人のメール」で、57.5%でした。答えたのは、改まったメールをやり取りすることがある971人です(複数回答)。
| 改まったメールを書くときに参考にしているもの |
割合 |
| 仕事の中で送られてくる他の人のメール |
57.5% |
| ウェブサイトから得た情報 |
34.9% |
| 本(電子書籍を含む)から得た情報 |
27.7% |
| 学校で教わった書き方 |
22.0% |
| テレビや新聞などの報道から得た情報 |
21.0% |
| セミナーや勉強会などで教わった書き方 |
12.3% |
| 参考にしているものはない |
11.5% |
| 友達から送られてくるメール |
11.4% |
2018年の調査ですが、身近なメールが手本になるという結果は、新人が書き方を覚えるときの参考になります。上司や先輩の、読みやすいメールを1通保存しておくと、型を覚える近道になります。
件名は「何の件で、何をしてほしいか」
件名は、相手が受信箱で最初に見る部分です。ほかのメールに埋もれないよう、開かなくても中身の見当がつく件名にします。
文化庁「公用文作成の考え方」(2022年1月7日 文化審議会建議)は、官公庁の文書の標題の付け方を示しています。主題となる案件を示す言葉を入れ、報告・提案・回答・確認などの言葉で文書の性格を示し、1行に収めるのが適当だという考え方です。例として「新国立体育館について」を「新国立体育館建設工事の進捗状況に関する報告」に直す形が挙がっています。社外へのメールの件名にも、そのまま使える考え方です。
返信のときは、一般的には「Re:」を付けたまま返します。ただ、やり取りの途中で話題が変わったら、件名も新しい話題に合わせて書き直すと、あとで探しやすくなります。
宛名と書き出しの書き方
宛名は会社名から氏名まで
宛名は本文の1行目に、会社名・部署・役職・氏名の順で書き、氏名の後に「様」を付けます。会社名は「(株)」と略さず、正式な名前で書くのが一般的です。
部署あてに送るときは「御中」を使います。文化庁「敬語の指針」は、「御中」を、具体的な人ではなく組織の中の関係者にあてる言葉だと説明しています。そのうえで「〇〇中学校 山田一郎先生御中」という例を挙げています。氏名が明らかなのに「御中」を付けるのは矛盾するので不適切だ、という説明です。担当者の名前が分からないときは「総務部 ご担当者様」とし、名前が分かったら次から名前で書きます。
書き出しと名乗り
社外の人には「いつもお世話になっております。」、初めて連絡する相手には「初めてご連絡いたします。」と書き出すのが一般的です。続けて「株式会社〇〇 総務部の山本です。」と名乗ります。
社内のメールでは「お疲れ様です。」と書き出すのが一般的です。敬語の指針によると、「お疲れ様」は一緒に仕事をした人どうしで声を掛け合うときにも使う表現です。「お疲れ様でございました」のような丁寧な言い方なら、上司にも使えるとしています。一方、「ご苦労様」はねぎらいの言葉なので、目上の人には用いない方が良いとしています。
本文は結論を先に、期限は日付で書く
本文は、最初の段落で「何の件で、何をしてほしいか」を書きます。「公用文作成の考え方」も、結論はできれば最初の段落で示すよう勧めています。最後まで読まないと何を言おうとしているか分からない書き方は避ける、という考え方です。
期限やお願いの中身は、具体的に書きます。同じ資料は、「早めに」「しばらく」のような言葉は意味があいまいになりがちだとしています。例として、「早めに」を「1週間以内(5月14日正午まで)に」と書き直す形が挙がっています。メールでも「なるべく早く」ではなく「10月23日(金)17時までに」と書けば、相手は予定を立てやすくなります。
三つ以上の事柄を並べるときは、箇条書きにします。1通に用件をいくつも詰め込むと返事が漏れやすくなるので、用件が別なら、メールも分けて送る方が親切です。添付ファイルがあるときは、本文に「添付のPDF(1点)」のように、何をいくつ付けたかを書きます。
結びと署名で、次の動きを伝える
結びは「よろしくお願いいたします。」が基本です。相手に動いてほしいときは「ご確認のほど、よろしくお願いいたします。」「お忙しいところ恐れ入りますが、ご返信いただけますと幸いです。」のように、何をお願いしているかを添えます。
署名には、会社名・部署・氏名・電話番号・メールアドレスを入れます。社外の人は、署名を見て電話をかけ直したり、請求書の送り先を確かめたりします。会社で署名の形が決まっていれば、それに合わせて設定しておきましょう。
TO・CC・BCCの使い分け
宛先の欄は、相手に何を求めるかで使い分けます。
TO・CC・BCCの使い分けと宛名の書き方。BCCの送り間違いの注意も作成: 編集部 / もとの資料: 個人情報保護委員会「漏えい等の対応とお役立ち資料」・同ガイドライン(通則編)・文化庁「敬語の指針」
| 欄 |
入れる人 |
返事 |
| TO |
対応や返事をしてほしい人(本文の宛名に書く人) |
原則としてTOの人がする |
| CC |
経緯を知っておいてほしい上司や同じ案件の担当者 |
原則として求めない |
| BCC |
互いのアドレスを見せたくない、面識のない多数の人 |
求めない(「全員に返信」に注意) |
CCに入れた人は、本文の宛名の下に「(CC: 営業部 佐藤様)」と添えると、誰が読んでいるかが相手に伝わります。TOとCCの人には、互いのアドレスが表示されます。
迷いやすい言い方を敬語の指針で確かめる
| 迷いやすい言い方 |
指針の考え方 |
使える言い方 |
| 「了解しました」 |
失礼とする記述は指針にない |
社外や目上には「承知しました」「かしこまりました」が一般的 |
| 「送付させていただきます」 |
相手の許可や恩恵があるかで適切さが変わる |
「送付いたします」が簡潔 |
| 「ご苦労様です」 |
ねぎらいの言葉なので、目上の人には用いない方が良い |
「お疲れ様です」「ありがとうございました」 |
| 「〇〇社 総務部 御中 山田様」 |
「御中」は組織あて。氏名と重ねるのは不適切 |
「〇〇社 総務部 山田様」 |
「させていただく」は、使ってはいけない言葉ではありません。指針によると、相手の許可を受けて行い、そのことで恩恵を受ける場面では適切な言い方です。そうでない場面では「いたします」の方が簡潔に感じられるようだ、と説明しています。1通の中で何度も続くと読みにくくなるので、「いたします」と混ぜて使うのがおすすめです。
送る前の確認と、今日からできること
送ったメールは取り消せません。送信ボタンを押す前に、次の点を見直します。
今日からできることは、次の4つです。
- 自分の署名を、会社の決まりに合わせて設定する。
- 読みやすいと感じた上司や先輩のメールを、手本として1通保存しておく。
- よく送るメール(請求書の送付・日程調整・お礼)の文例を、下書きに用意しておく。
- 多人数に一斉に送る用事があるときは、BCCを使うか、会社の配信の仕組みがあるかを確かめる。
電話で受けた用件をメールでまとめ直すときは、電話応対の基本と例文 取り次ぎ・不在・折り返し・伝言メモの書き方もあわせて読んでみてください。初めて会った人へお礼のメールを送る前には、名刺交換のマナー 順番・渡し方・受け取り方と交換した後の扱いが役に立ちます。