議事録は、会議に出なかった人と、あとで振り返る自分たちのための記録です。書き方の決まりは、取締役会や株主総会など一部の会議を除いて法律にはありません。この記事では、決定事項と宿題が伝わる型と例文、会議の前・中・後に分けた段取り、法律で書き方が決まっている議事録をまとめます。
議事録は「何が決まり、誰が何をするか」を残すもの
議事録を開く人が知りたいのは、発言の順番より「結局どうなったか」と「自分は何をするのか」です。議事録には、主に3つの役目があります。
- 欠席した人や関係部署に、決まったことを伝える
- 「言った・言わない」を防ぐ、決定の記録になる
- 次の会議の出発点になる(前回の宿題の確認)
この役目から考えると、議事録の中心は決定事項と宿題です。発言を順に追った記録は、読む人が自分で要点を探さなければならず、忙しい人ほど読まなくなります。
会社法施行規則は、取締役会の議事録に書く内容を「議事の経過の要領及びその結果」としています。法律で書き方が決まった議事録でも、求められているのは経過の要点と結果です。社内の会議なら一字一句を残す必要はありません。ただし、交渉や聞き取りのように細かい記録が要る会議は、目的に合わせて詳しく残します。
議事録の型 決定事項と宿題を上に置く
型は、会社か部署で1つにそろえます。決定事項と宿題を上に置き、議論の経緯は下にまとめると、読む人は最初の数行で用が足ります。
議事録の型。決定事項と宿題を上に置き、保留と議論の要点を下にまとめる作成: 編集部 / もとの資料: 会社法施行規則 第101条・文化庁「公用文作成の考え方」
| 欄 |
書くこと |
書き方のこつ |
| 基本の情報 |
会議名・回数・目的・日時(開始と終了)・場所や方法・出席者・欠席者・記録者・議題・配布資料 |
会議の前に埋めておける |
| 決定事項 |
決まったこと |
番号を振り、「〜とする」と言い切る |
| 宿題 |
何を・誰が・いつまでに |
期限は日付で。担当が決まらなければその場で確かめる |
| 保留 |
決めなかったことと理由 |
次にどこで決めるかも書く |
| 議論の要点 |
決めた理由・前提の数字・反対意見 |
発言者の名前は判断に関わるときだけ |
| 次回 |
日時と場所 |
前回の宿題を議題に入れる |
書かなくてよいのは、雑談やあいさつ、言い直し、結論の出ない同じ話の繰り返し、配布資料に書いてあることの写しです。会議の後で分かったことを書き足すときは、「追記」として会議中の内容と分けます。
社内の議事録で人を呼ぶときに「さん」を付けるか、役職名で書くかに決まりはありません。会社や部署で統一しておくと、書く人が迷いません。
オンライン会議の議事録で足すこと
オンラインや会議室との併用で開く会議では、対面だけの会議にはない記録が要ります。
- 参加の方法(会議室・オンライン)を出席者ごとに書く
- チャット欄で出た質問や決定も、議事録に移しておく
- 画面で共有した資料の名前と版(日付)を書く
- 通信が切れて抜けた人がいれば、その時間を書く
取締役会の議事録では、その場にいない取締役などが出席した場合の出席の方法も、書く事項に入っています(会社法施行規則101条3項1号)。社内の会議でも同じように残しておくと、あとで「誰がどこまで聞いていたか」を確かめられます。チャット欄は会議が終わると見返しにくくなるため、決定に関わるやり取りは会議中に議事録へ写しておくと安心です。
早く仕上げる段取り
議事録に時間がかかるのは、会議の後に録音やメモを聞き直し、一から文章にするからです。会議の前と最中に手を動かしておけば、会議の後の作業は整えて送るだけになります。
議事録を早く仕上げる段取り。会議の前・中・後にすることと、あいまいな書き方の言い換え作成: 編集部 / もとの資料: 文化庁「公用文作成の考え方」(文化審議会建議)
会議の前: 型を埋めておく
議題が届いたら型のファイルを開き、会議名・日時・出席者・議題・配布資料の名前を先に書きます。前回の宿題も一覧にしておくと、会議の冒頭で進み具合を確かめるときにそのまま使えます。議題の立て方は会議を短くする段取りも参考になります。
会議の中: 決まった瞬間に書く
発言を全部追おうとすると、肝心の決定を聞き逃します。決まったことは、決まったその場で決定事項の欄に書きます。宿題は、担当と期限まで書けないうちは「まだ決まっていない」と考え、その場で確かめます。
会議の最後の数分で、決定事項と宿題を読み上げて確かめます。ここで食い違いが見つかれば、会議の後に直す手間がなくなります。
会議の後: その日のうちに送る
議論の要点を整えたら、司会か上長に確かめてもらい、出席者と欠席者に送ります。送る期限に法律の決まりはありません。記憶が新しいうちに確かめてもらえるよう、「当日中」「翌営業日の正午まで」など会社や部署で決めておきます。
録音や文字起こしの道具を使う場合は、録ることを最初に参加者に伝えます。録音データの置き場所や、社外のサービスに入れてよいかは、会社の情報管理の決まりに従います。
あいまいな書き方の言い換え
議事録は、会議に出なかった人が読んでも同じ意味に取れる書き方にします。文化庁の「公用文作成の考え方」は、主語と述語の関係が分かるように書くことを挙げています。「早めに」のような時期のあいまいな言葉を避け、日付や時間を示すことも求めています。議事録では、特に「誰が」と「いつまでに」が抜けやすくなります。
| あいまい |
言い換え |
| 検討する方向で進める |
11月4日の会議で決める。それまでに鈴木が費用を調べる |
| 早めに対応する |
佐藤が10月30日(金)までに対応する |
| 前向きに検討 |
保留(理由: 費用が確かめられていない) |
| 了承された |
山田部長が了承した |
| なるべく早く共有する |
当日17時までに出席者と欠席者へ送る |
| 関係部署と調整する |
田中が経理部と、支払いの時期を調整する |
「了承された」のような受け身の文は、誰が了承したのかが分かりません。「公用文作成の考え方」も、受身形をむやみに使わないよう求めています。
法律で書き方が決まっている議事録
取締役会・株主総会・安全委員会や衛生委員会の議事録は、書く事項や保存の期間が法令で決まっています。総務で作成や保管を受け持つ場合は、社内の会議の議事録とは分けて扱います。
法律で書き方が決まっている議事録。取締役会・株主総会・安全衛生の委員会作成: 編集部 / もとの資料: 会社法・会社法施行規則・労働安全衛生規則(e-Gov 法令検索)
| 会議 |
根拠 |
主な記載事項 |
署名・周知 |
保存 |
| 取締役会 |
会社法369条・371条、会社法施行規則101条 |
日時と場所、議事の経過の要領とその結果、特別の利害関係がある取締役の氏名、議長の氏名など |
書面なら出席した取締役・監査役が署名か記名押印。電磁的記録なら電子署名(施行規則225条) |
取締役会の日から10年間、本店に備え置く |
| 株主総会 |
会社法318条、会社法施行規則72条 |
日時と場所、議事の経過の要領とその結果、出席した取締役などの氏名、議長の氏名、議事録を作った取締役の氏名など |
会社法318条と施行規則72条に署名の定めはない |
総会の日から10年間本店に備え置き、支店には写しを5年間(電磁的記録で法務省令の措置をとる場合を除く) |
| 安全委員会・衛生委員会 |
労働安全衛生規則23条 |
委員会の意見と、それを踏まえて講じた措置の内容、そのほか重要な議事 |
開くたびに議事の概要を遅滞なく労働者に知らせる |
記録を3年間保存 |
衛生委員会は、常時50人以上の労働者を使う事業場で設けなければなりません(労働安全衛生法18条、同法施行令9条)。安全委員会は、施行令で決まった業種の事業場で、業種により常時50人以上か100人以上のときに設けます(同法施行令8条)。委員会は毎月1回以上開きます。開くたびに議事の概要を、掲示や備え付け・書面の交付・いつでも見られる電子ファイルのどれかで労働者に知らせます。
取締役会の議事録に異議をとどめなかった取締役は、その決議に賛成したものと推定されます(会社法369条5項)。株主総会の議事録は、株主と債権者が営業時間内いつでも閲覧や謄写を請求できます(318条4項)。社内の会議の議事録以上に、正確さと保管が問われる記録です。
条文は2026年10月18日にe-Gov法令検索で確かめた内容です。登記に使う議事録や個別の判断は、司法書士・弁護士・社会保険労務士などに確かめてください。書類ごとの保存期間は会社の書類の保存期間でも扱っています。
今日からできること
最初の一歩は、型を1枚作ることです。決定事項と宿題の欄が上にある型を使うだけで、会議中に何を書けばよいかがはっきりし、会議の後の作業も短くなります。