取引先の確認、社会保険の手続き、銀行や役所への提出など、総務や法務の仕事では「登記簿謄本を取ってきて」と頼まれる場面があります。正式には登記事項証明書といい、種類や取り方によって中身と手数料が変わります。この記事では、法務省の案内と条文で確かめながら、種類の選び方・取り方・見方・使う場面を整理します。
登記簿謄本は今の「登記事項証明書」のことです
会社の登記簿は、今はすべてコンピュータで管理されています。コンピュータの登記簿に記録された事項を証明した書面が、登記事項証明書です(法務省「商業・法人登記 Q&A」)。紙の時代の呼び名がそのまま残り、今も「登記簿謄本」と呼ばれることがあります。
登記事項証明書は、誰でも手数料を納めれば請求できます(商業登記法第10条第1項)。会社の所在地を受け持つ登記所でなくても、ほかの登記所に請求できます(同第2項)。窓口で請求するときに、印鑑や身分証明書は要りません(盛岡地方法務局の案内)。
4種類の違いと、ふだん使うのは履歴事項全部証明書
会社の登記事項証明書には、次の4種類があります(商業登記規則第30条第1項)。履歴・現在・閉鎖の3つは、登記の全部を載せる「全部事項」と、必要な区だけを載せる「一部事項」から選べます(同第2項)。
登記事項証明書の4つの種類と、履歴事項証明書に載る期間の数え方作成: 編集部 / もとの資料: 法務省「商業・法人登記 Q&A」・商業登記規則
| 種類 |
載る内容 |
向いている使い方 |
| 履歴事項証明書 |
今の登記に加え、請求日の3年前の日が属する年の1月1日以降に消された事項 |
ふだんの提出・取引先の確認 |
| 現在事項証明書 |
今効力のある登記事項と、役員の就任日など |
今の状態だけ分かればよいとき |
| 閉鎖事項証明書 |
閉鎖した登記記録の事項 |
本店を管轄外へ移した前の記録・清算が終わった会社など |
| 代表者事項証明書 |
代表者の代表権に関する、今効力のある事項 |
代表者の資格の証明 |
法務省は、履歴事項証明書を「従前の登記の謄本に相当するもの」と説明しています。提出先が「登記簿謄本」と書いているときは、履歴事項全部証明書を考えるのが自然です。迷ったら提出先に種類を確かめると、二度手間を防げます。
履歴事項証明書に載る期間の数え方
履歴事項証明書に載る「消された事項」は、請求日の3年前の日が属する年の1月1日から、請求日までのものです。2026年10月18日に請求すると、3年前は2023年10月18日なので、2023年1月1日以降に消された事項が載ります。
それより前の変更を確かめたいときは、閉鎖事項証明書を請求します。登記記録は、本店を他の登記所の管轄へ移したときや清算が終わったときなどに閉鎖されます(商業登記規則第80条)。
取り方は窓口・郵送・オンラインの3通り
手数料は2025年(令和7年)4月1日に改定され、オンライン請求の額が変わりました。2026年10月時点の手数料は次のとおりです(法務省「登記手数料について」)。
登記事項証明書の取り方と手数料(2025年4月改定後)作成: 編集部 / もとの資料: 法務省「登記手数料について」ほか
| 取り方 |
手数料(1通) |
納め方 |
受け取り |
| 登記所の窓口で請求 |
600円 |
収入印紙 |
その場で |
| 郵送で請求 |
600円 |
収入印紙(返信用の切手と封筒も同封) |
郵送 |
| オンラインで請求・郵送で受け取り |
520円(郵送の費用を含む) |
ネットバンキング・電子納付対応のATM |
郵送 |
| オンラインで請求・窓口で受け取り |
490円 |
ネットバンキング・電子納付対応のATM |
登記所か法務局証明サービスセンター |
1通の枚数が50枚を超えるときは、50枚ごとに100円が加わります。書留や速達で送ってもらうときは、その実費も加わります(法務省のオンライン請求の案内)。
窓口で取るとき
登記所に置いてある交付申請書に、会社の商号と本店を書いて出します。収入印紙は登記所の印紙売り場や郵便局で買えます(盛岡地方法務局の案内)。登記所の窓口の対応時間は、2024年1月4日から9時から17時までの運用になっています(法務省)。
会社・法人には株式会社・合同会社・一般社団法人などの種類があるため、商号は「株式会社〇〇」と種類まで書くよう案内されています。本店の所在地も、少なくとも市まで確かめてから行きましょう(盛岡地方法務局の案内)。
オンラインで取るとき
登記・供託オンライン申請システムの「かんたん登記・供託申請」を使うと、ブラウザから請求できます。最初に申請者の登録が要り、1年間使わないと登録は消えます。登記事項証明書の請求には、電子署名は要りません(法務省)。
システムの利用時間は、平日が8時30分から23時まで、休日が8時30分から18時までです。ただし登記所が受け付けるのは業務時間内で、17時15分を過ぎた請求は翌業務日の受け付けになります(法務局の案内)。急ぐときは、オンラインで請求して窓口で受け取る方法が便利です。
登記情報提供サービスとの違い
登記の中身をパソコンで見るだけなら、登記情報提供サービスもあります。会社の登記の全部の情報は1件330円です(2026年4月1日からの料金・法務省)。ただし、このサービスでは登記事項証明書は交付されません(法務局の案内)。提出用には証明書を取ります。
証明書のどこを見ればよいか
登記事項証明書は、商号・本店・目的・役員などの「区」ごとに整理して書かれています(商業登記規則第30条第5項)。株式会社で登記する事項は、会社法第911条第3項に定められています。
履歴事項全部証明書の見方。架空の会社の見本で確かめたいところを示す作成: 編集部 / もとの資料: 法務省「登記事項証明書記載例」・商業登記規則
| 見るところ |
分かること |
確かめたい点 |
| 商号・本店 |
正式な会社名と本店の所在地 |
契約書や請求書の表記と合っているか |
| 会社成立の年月日 |
会社ができた日 |
取引先の確認・社歴の記載 |
| 目的 |
会社が行う事業 |
取引の内容が目的の範囲か |
| 資本金の額・発行済株式の総数 |
会社の規模の目安 |
大会社(資本金5億円以上など)に当たるか |
| 株式の譲渡制限に関する規定 |
公開会社かどうか |
機関の形(取締役会の要否など) |
| 役員に関する事項 |
取締役・代表取締役・監査役の氏名、就任・重任の日 |
任期が切れていないか |
| 取締役会設置会社などに関する事項 |
置いている機関 |
社内の決裁の流れ |
| 登記記録に関する事項 |
設立や本店移転の経緯 |
履歴をたどるとき |
下線が引かれた事項は、消された(今は効力のない)事項です(商業登記規則第30条第4項)。証明書の最後には、証明する文と作成の年月日、登記官の職氏名が入ります(同第3項)。発行日は、提出先の「何日以内」を数えるときの基準になります。
載っていないこと
事業年度・株主の名前・従業員の数・売上は、登記事項ではないので載りません。また2024年10月1日からは、申出をした会社の代表取締役の住所は市区町村までしか表示されません(法務省「代表取締役等住所非表示措置について」)。
登記事項証明書を使う場面と「何日以内」
提出先によって、証明書の種類や発行からの期間の決まりが違います。いくつか例を挙げます。
- 社会保険の新規適用: 日本年金機構は、法人の新規適用の手続きに法人(商業)登記簿謄本を求めています。コピーは不可で、提出日からさかのぼって90日以内に発行されたものに限ります(2026年10月時点)。
- 国税の手続き: 法令で登記事項証明書の添付が決まっている国税の手続きでは、2021年7月1日から、会社法人等番号などを書けば添付を省けます(国税庁)。
- 取引先の確認: 新しい取引先の商号・本店・代表者・設立日を確かめるときに使えます。
- 融資・不動産取引: 法務省は、代表者の住所を登記事項証明書で証明できないと、金融機関の融資や不動産取引で不都合が生じることがあると案内しています。
会社法人等番号は、登記簿に記録される会社ごとの12桁の番号です(商業登記法第7条・国税庁)。証明書の上のほうに書かれているので、自社の番号を控えておくと、添付を省ける手続きで役立ちます。
総務・法務が知っておきたい登記の期限
登記事項証明書の中身は、会社が登記を申請して初めて変わります。役員の交代や本店の移転などで登記事項が変わったときは、2週間以内に本店の所在地で変更の登記をしなければなりません(会社法第915条第1項)。
登記を怠ると、取締役などが100万円以下の過料に処されることがあります(会社法第976条)。また、最後の登記から12年たった株式会社は休眠会社とされ、届出をしないと解散したものとみなされる手続きがあります(会社法第472条)。
役員の任期が来たら、同じ人が続けるときも重任の登記が要ります。役員の任期のしくみは株式会社とは 株主・株主総会・取締役・監査役の関係で紹介しています。
今日からできること 登記事項証明書の取り方の手順
- 提出先の案内で、証明書の種類(履歴事項・現在事項など)・通数・発行からの期間を確かめる
- 会社の正式な商号と本店の所在地を確かめる
- 急ぐなら窓口、何通も取るならオンライン請求を選ぶ
- 届いたら発行日・商号・本店・役員を見て、提出先の条件に合っているか確かめる
- 自社の会社法人等番号を控え、添付を省ける手続きでは番号で済ませる
書類の保存のしかたは会社の書類の保存期間もあわせてご覧ください。この記事は2026年10月18日時点の法令と、法務省・法務局・日本年金機構・国税庁の公表資料にもとづいています。個別の手続きは、提出先や法務局、司法書士に確かめてください。