「事務職は人気が高く、求人の競争が激しい」とよく言われます。実際の数字はどうなっているのでしょうか。この記事では、総務省統計局と厚生労働省の統計から、事務の仕事をする人の数・有効求人倍率・賃金を図と表で整理します。どの数字にも、もとの調査と表の名前、何年何月の値かを添えました。
事務職を数える3つの統計 それぞれ何を数えているか
統計の上では、事務職は「事務従事者」と呼ばれます。日本標準職業分類にもとづく区分です。一般事務、会計事務、生産関連事務、営業・販売事務、外勤事務、運輸・郵便事務、事務用機器操作の7つに分かれます。
この記事では、性格の違う3つの統計を使います。
| 統計(発表する機関) |
数えているもの |
この記事で使う時点 |
公表日 |
| 労働力調査(総務省統計局) |
事務の仕事をしている人の数(就業者) |
2025年平均 |
2026年1月30日 |
| 一般職業紹介状況(厚生労働省) |
ハローワークの求人と求職者の数・求人倍率 |
2026年8月分 |
2026年10月2日 |
| 賃金構造基本統計調査(厚生労働省) |
6月分の賃金と前年1年間の賞与 |
令和7年(2025年6月分) |
2026年3月24日 |
3つは対象も時点も違います。同じ「事務」でも、数えている人の範囲が違うことを頭に置いて読み進めてください。
事務の仕事をする人は1,448万人 職業別で最も多い
労働力調査の長期時系列表6-1(職業別就業者数)によると、2025年平均の事務従事者は1,448万人でした。就業者全体の6,828万人のうち、約2割(21.2%)にあたります。11の職業の中で最も多く、2番目は専門的・技術的職業従事者の1,352万人です。
職業別の就業者数(2025年平均)と事務従事者の推移・男女の内訳作成: 編集部 / もとの資料: 総務省統計局「労働力調査(基本集計)」長期時系列表6-1
| 職業(大分類) |
就業者数(2025年平均) |
| 事務従事者 |
1,448万人 |
| 専門的・技術的職業従事者 |
1,352万人 |
| サービス職業従事者 |
862万人 |
| 生産工程従事者 |
844万人 |
| 販売従事者 |
806万人 |
| 運搬・清掃・包装等従事者 |
505万人 |
| 建設・採掘従事者 |
273万人 |
| 輸送・機械運転従事者 |
214万人 |
| 農林漁業従事者 |
182万人 |
| 管理的職業従事者 |
125万人 |
| 保安職業従事者 |
120万人 |
| 就業者の総数 |
6,828万人 |
出典: 総務省統計局「労働力調査(基本集計)」長期時系列表6-1 職業別就業者数(2009年12月改定分類)・全国・2025年平均(2026年1月30日公表)。割合は編集部が計算しました。
10年で186万人増え、女性が約6割
事務従事者は2015年の1,262万人から、2020年に1,360万人、2025年に1,448万人と増えてきました。10年で186万人の増加です。2025年の内訳は女性881万人、男性567万人で、女性が約6割(60.8%)を占めます。
| 年(年平均) |
事務従事者 |
うち男性 |
うち女性 |
| 2009年 |
1,246万人 |
502万人 |
743万人 |
| 2015年 |
1,262万人 |
509万人 |
753万人 |
| 2020年 |
1,360万人 |
541万人 |
819万人 |
| 2025年 |
1,448万人 |
567万人 |
881万人 |
表の値は資料のとおりで、男女の和が総数と一致しない年があります。
事務の有効求人倍率は0.37倍 求職者が求人を上回る
有効求人倍率は、ハローワークで受け付けている求人の数(月間有効求人数)を、仕事を探している人の数(月間有効求職者数)で割った値です。1倍を下回ると、求人より求職者のほうが多いことを表します。
厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年8月分)」の参考統計表6によると、事務従事者の有効求人倍率は0.37倍でした。常用(パートタイムを含む)の値で、職業計の1.06倍を大きく下回ります。事務従事者の有効求人は180,331人、有効求職者は492,278人です。8月にハローワークの紹介で事務の仕事に就いた件数(就職件数)は13,827件で、前年同月は14,300件でした。
職業別の有効求人倍率と事務の内訳(2026年8月・常用・パート含む)作成: 編集部 / もとの資料: 厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年8月分)」
| 職業(大分類) |
有効求人倍率(2026年8月) |
| 保安職業従事者 |
6.99倍 |
| 建設・採掘従事者 |
5.10倍 |
| サービス職業従事者 |
2.63倍 |
| 輸送・機械運転従事者 |
2.08倍 |
| 販売従事者 |
1.85倍 |
| 専門的・技術的職業従事者 |
1.73倍 |
| 生産工程従事者 |
1.60倍 |
| 職業計 |
1.06倍 |
| 農林漁業従事者 |
1.02倍 |
| 管理的職業従事者 |
0.81倍 |
| 運搬・清掃・包装等従事者 |
0.66倍 |
| 事務従事者 |
0.37倍 |
出典: 厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年8月分)」参考統計表6(全国計・常用(パート含む)・原数値・2026年10月2日公表)。
事務の中でも差がある 一般事務0.29倍、会計事務0.55倍
事務従事者を7つに分けると、倍率にはかなりの差があります。人数の多い一般事務従事者は0.29倍で、有効求人119,803人に対して有効求職者は409,453人でした。会計事務従事者は0.55倍、営業・販売事務従事者は0.88倍です。
| 区分 |
2026年8月 |
2025年8月 |
前年同月差(ポイント) |
| 事務従事者(計) |
0.37倍 |
0.40倍 |
-0.03 |
| 外勤事務従事者 |
3.51倍 |
3.15倍 |
+0.36 |
| 運輸・郵便事務従事者 |
2.68倍 |
3.09倍 |
-0.41 |
| 生産関連事務従事者 |
1.31倍 |
1.33倍 |
-0.02 |
| 営業・販売事務従事者 |
0.88倍 |
0.97倍 |
-0.09 |
| 会計事務従事者 |
0.55倍 |
0.61倍 |
-0.06 |
| 一般事務従事者 |
0.29倍 |
0.32倍 |
-0.03 |
| 事務用機器操作員 |
0.27倍 |
0.33倍 |
-0.06 |
出典: 厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年8月分)」参考統計表6・7-1、e-Stat「第21表 職業別労働市場関係指標(実数)(平成21年改定)」の有効求人倍率(パートタイムを含む常用)。
外勤事務従事者は有効求人752人・有効求職者214人と、人数そのものが少ない区分です。少しの増減で倍率が大きく動くため、高い倍率だけを見て判断しないようにします。
年平均で見ると、事務従事者の倍率は少しずつ下がっています。職業計も同じ向きに動いています。
| 年(年平均) |
事務従事者 |
一般事務従事者 |
会計事務従事者 |
職業計 |
| 2023年 |
0.45倍 |
0.37倍 |
0.68倍 |
1.19倍 |
| 2024年 |
0.44倍 |
0.36倍 |
0.68倍 |
1.14倍 |
| 2025年 |
0.42倍 |
0.34倍 |
0.62倍 |
1.12倍 |
出典: e-Stat「一般職業紹介状況 第21表 職業別労働市場関係指標(実数)(平成21年改定)」有効求人倍率(パートタイムを含む常用)・2026年10月2日公表。
事務従事者の所定内給与額は334.1千円 職種・男女・規模で差
賃金構造基本統計調査は、毎年6月分の賃金を調べる厚生労働省の調査です。令和7年の結果は、10人以上の常用労働者を雇用する民営事業所(52,242事業所)について集計されています。そのうち一般労働者(短時間労働者を除く常用労働者)の事務従事者は、所定内給与額の平均が334.1千円でした。
前年(令和6年)の321.4千円から上がり、一般労働者全体の340.6千円に近い水準です。所定内給与額は、6月分として決まった条件で支払われた給与から、残業代などの超過労働給与額を引いた額です。所得税や社会保険料を引く前の金額で、手取りではありません。
事務の職種別の所定内給与額(令和7年賃金構造基本統計調査)作成: 編集部 / もとの資料: 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」一般労働者 職種
| 職種(小分類) |
所定内給与額 |
平均年齢 |
平均勤続年数 |
| 企画事務員 |
430.5千円 |
43.0歳 |
14.4年 |
| 秘書 |
375.8千円 |
45.7歳 |
12.5年 |
| 運輸・郵便事務従事者 |
346.5千円 |
48.6歳 |
17.1年 |
| 外勤事務従事者 |
337.5千円 |
49.4歳 |
12.8年 |
| 総合事務員 |
331.9千円 |
44.6歳 |
13.1年 |
| その他の一般事務従事者 |
331.8千円 |
44.0歳 |
12.6年 |
| 営業・販売事務従事者 |
327.8千円 |
43.3歳 |
13.2年 |
| 庶務・人事事務員 |
326.1千円 |
44.9歳 |
13.3年 |
| 生産関連事務従事者 |
325.7千円 |
45.7歳 |
16.3年 |
| 会計事務従事者 |
321.3千円 |
44.0歳 |
12.8年 |
| 事務用機器操作員 |
279.5千円 |
43.4歳 |
11.7年 |
| 電話応接事務員 |
278.1千円 |
43.6歳 |
8.8年 |
| 受付・案内事務員 |
240.9千円 |
42.8歳 |
9.2年 |
| 事務従事者(計) |
334.1千円 |
44.3歳 |
13.3年 |
出典: 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」一般労働者 職種 第1表・第2表(産業計・企業規模計(10人以上)・男女計・2026年3月24日公表)。
推計の人数がいちばん多い総合事務員(約127.7万人)は331.9千円でした。総務・人事の仕事にあたる庶務・人事事務員は326.1千円、経理事務員を含む会計事務従事者は321.3千円です。事務従事者の年間賞与その他特別給与額は、2024年の1年間で1,096.8千円でした。
平均は、給与の高い一部の人に引き上げられやすい数字です。職種 第18表で事務従事者の分布を見ると、真ん中の人の額(中位数)は295.0千円で、平均の334.1千円より39.1千円低くなります。下から1割の位置の額(第1・十分位数)は202.8千円、上から1割の位置の額(第9・十分位数)は515.8千円でした。
男女と会社の規模で差が開く
事務従事者を男女で分けると、男性395.5千円、女性287.9千円です。男性を100とすると女性は72.8で(編集部が計算)、一般労働者全体の男女間賃金格差76.6より差が大きくなっています。企業規模別では、1,000人以上が369.4千円、10〜99人が294.4千円でした。
| 区分(事務従事者) |
所定内給与額 |
平均年齢 |
平均勤続年数 |
| 男性 |
395.5千円 |
45.7歳 |
15.7年 |
| 女性 |
287.9千円 |
43.3歳 |
11.5年 |
| 企業規模1,000人以上 |
369.4千円 |
44.3歳 |
14.9年 |
| 企業規模100〜999人 |
318.1千円 |
43.5歳 |
12.8年 |
| 企業規模10〜99人 |
294.4千円 |
45.8歳 |
11.3年 |
出典: 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」一般労働者 職種 第2表、男女間賃金格差は同「結果の概況」第1表。
平均の差には、年齢・勤続年数・役職・働く業種の違いが含まれます。この表だけでは、差が生まれる理由までは分かりません。業種ごとの給与と残業時間は、業種別の給与と残業時間 毎月勤労統計で比べる2025年の数字と読み方で比べています。
3つの数字を並べるときに気をつけること
人数・倍率・賃金を並べると、事務の仕事の全体像がつかみやすくなります。一方で、数え方の違いを無視すると読み違えます。
- 人数の範囲が違います。 労働力調査の事務従事者は1,448万人です。賃金構造基本統計調査の事務従事者(一般労働者)は推計約600.9万人です。民営・10人以上の事業所で、短時間労働者を除いた人だけを数えています。
- 時点が違います。人数は2025年平均、倍率は2026年8月、賃金は2025年6月分です。
- 有効求人倍率はハローワークの数字です。働く人全体の転職のしやすさや、会社の採用の難しさをそのまま表すものではありません。
今日からできること
数字は、自分や自社の状況と並べたときに役に立ちます。読んだ後にできることを、立場ごとにまとめました。
事務の仕事をしている人・これから目指す人
- 自分の仕事が統計のどの職種に当たるかを、e-Stat の「役職及び職種解説」で確かめます。経理事務員は会計事務従事者、総務係事務員や給与係事務員は庶務・人事事務員に入ります。
- 自分の給与と比べるときは、職種と年齢をそろえます。e-Stat には職種(小分類)と年齢階級別の表(職種 第5表)があります。比べるのは残業代と賞与を除いた月の給与です。平均だけでなく、職種 第17表の中位数とも並べると、自分の位置がつかみやすくなります。
- 求人倍率の動きを追うときは、毎月の公表を前年の同じ月と並べて見ます。
採用を担当する総務・人事の人
この記事の数字は、2026年10月18日に各資料で確かめたものです。