自社の給与や残業時間は、同じ業種の中で多いのか、少ないのか。人事や労務の担当者が、賃金の見直しや求人の条件を考えるときによく出る問いです。この記事では、厚生労働省の毎月勤労統計調査の2025年の確報から、業種別の給与と所定外労働時間を図と表で並べます。数字を読むときの注意と、自社と比べる手順もまとめます。
この記事で使う統計と数字の範囲
中心に使うのは、厚生労働省「毎月勤労統計調査 2025(令和7)年分結果確報」です。2026年2月25日に公表されました。毎月勤労統計調査(以下、毎勤)は、雇用・給与・労働時間の動きを毎月明らかにするための国の基幹統計調査です。
この記事の数字は、断りのない限り次の範囲のものです。
| 項目 |
この記事の範囲 |
| 調査 |
毎月勤労統計調査 2025年分結果確報(第1表〜第3表) |
| 事業所 |
常用労働者を常時5人以上雇う事業所(事業所規模5人以上) |
| 時点 |
2025年1月〜12月の、1人あたり1か月の平均 |
| 人 |
常用労働者。パートタイム労働者を含む全体(就業形態計)と、一般労働者 |
| 金額 |
所得税・社会保険料などを差し引く前の額 |
パートタイム労働者は、1日の所定労働時間が一般の労働者より短い人か、1週の所定労働日数が少ない人です。一般労働者は、常用労働者のうちパートタイム労働者でない人を指します。
年齢や勤続年数の違いを見るために、厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」(2026年3月24日公表)も後半で補足に使います。
業種別の現金給与総額 2025年の月平均
現金給与総額は、基本給や手当、残業代などの「きまって支給する給与」と、賞与などの「特別に支払われた給与」を合わせた額です。退職金は含みません。
業種別の現金給与総額(2025年の月平均・事業所規模5人以上)作成: 編集部 / もとの資料: 厚生労働省「毎月勤労統計調査 2025(令和7)年分結果確報」
調査産業計は月355,941円で、前年より2.3%増えました。一般労働者は465,923円、パートタイム労働者は114,527円です。全体で多いのは電気・ガス業の636,949円、金融業,保険業の553,864円、情報通信業の549,289円でした。
全体で少ないのは、飲食サービス業等の143,068円と、生活関連サービス等の243,466円です。ただ、この2つはパートタイム労働者の比率が78.12%と49.09%で、調査産業計の31.31%より高い業種です。一般労働者だけで見ると、飲食サービス業等は361,140円、生活関連サービス等は376,983円になります。
| 業種 |
現金給与総額(全体) |
一般労働者 |
パート比率 |
| 調査産業計 |
355,941円 |
465,923円 |
31.31% |
| 電気・ガス業 |
636,949円 |
653,339円 |
3.66% |
| 金融業,保険業 |
553,864円 |
600,357円 |
10.57% |
| 情報通信業 |
549,289円 |
570,056円 |
4.90% |
| 学術研究等 |
523,326円 |
570,224円 |
11.41% |
| 鉱業,採石業等 |
469,003円 |
496,321円 |
6.91% |
| 建設業 |
462,801円 |
482,340円 |
5.53% |
| 不動産・物品賃貸業 |
434,661円 |
514,145円 |
20.42% |
| 製造業 |
430,282円 |
472,927円 |
13.00% |
| 教育,学習支援業 |
408,235円 |
559,761円 |
33.34% |
| 複合サービス事業 |
396,744円 |
444,097円 |
17.08% |
| 運輸業,郵便業 |
379,045円 |
435,079円 |
18.76% |
| 医療,福祉 |
318,371円 |
406,432円 |
32.86% |
| 卸売業,小売業 |
311,853円 |
475,733円 |
44.86% |
| その他のサービス業 |
291,320円 |
362,459円 |
29.94% |
| 生活関連サービス等 |
243,466円 |
376,983円 |
49.09% |
| 飲食サービス業等 |
143,068円 |
361,140円 |
78.12% |
出典: 毎月勤労統計調査 2025年分結果確報 第1表・第3表(事業所規模5人以上)。全体の多い順に並べています。
前年からの伸びは、調査産業計の2.3%増に対し、鉱業,採石業等が13.4%増、電気・ガス業が6.2%増、金融業,保険業が5.8%増でした。16業種のうち前年より減ったのは、運輸業,郵便業(2.0%減)だけです。
業種別の所定外労働時間 2025年の月平均
所定外労働時間は、早出・残業・臨時の呼出・休日出勤などで実際に働いた時間です。毎勤の実労働時間には、休憩時間と有給休暇を取った分は入りません。
業種別の所定外労働時間(2025年の月平均・事業所規模5人以上)作成: 編集部 / もとの資料: 厚生労働省「毎月勤労統計調査 2025(令和7)年分結果確報」
調査産業計の所定外労働時間は月9.8時間で、前年より2.5%減りました。一般労働者は13.2時間、パートタイム労働者は2.3時間です。全体でいちばん長いのは運輸業,郵便業の20.6時間で、一般労働者に限ると24.1時間でした。次いで電気・ガス業の16.3時間、情報通信業の15.8時間です。
短いのは医療,福祉の4.9時間と、飲食サービス業等の5.2時間でした。ただし飲食サービス業等は、一般労働者に限ると15.6時間です。調査産業計の一般労働者13.2時間より長く、パートの多さで全体の平均が短く見えている例です。
| 業種 |
所定外労働時間(全体) |
一般労働者 |
総実労働時間(全体) |
| 調査産業計 |
9.8時間 |
13.2時間 |
135.1時間 |
| 運輸業,郵便業 |
20.6時間 |
24.1時間 |
161.0時間 |
| 電気・ガス業 |
16.3時間 |
16.9時間 |
154.9時間 |
| 情報通信業 |
15.8時間 |
16.5時間 |
156.9時間 |
| 製造業 |
13.4時間 |
14.7時間 |
155.5時間 |
| 学術研究等 |
12.8時間 |
14.2時間 |
150.6時間 |
| 建設業 |
12.8時間 |
13.5時間 |
159.8時間 |
| 金融業,保険業 |
12.4時間 |
13.6時間 |
145.4時間 |
| 不動産・物品賃貸業 |
11.9時間 |
14.5時間 |
148.0時間 |
| 鉱業,採石業等 |
11.6時間 |
12.4時間 |
160.4時間 |
| 教育,学習支援業 |
10.2時間 |
14.8時間 |
122.3時間 |
| その他のサービス業 |
10.1時間 |
13.0時間 |
136.4時間 |
| 複合サービス事業 |
7.8時間 |
8.3時間 |
146.9時間 |
| 卸売業,小売業 |
7.0時間 |
11.3時間 |
126.8時間 |
| 生活関連サービス等 |
6.7時間 |
10.5時間 |
121.5時間 |
| 飲食サービス業等 |
5.2時間 |
15.6時間 |
88.0時間 |
| 医療,福祉 |
4.9時間 |
6.7時間 |
128.4時間 |
出典: 毎月勤労統計調査 2025年分結果確報 第2表(事業所規模5人以上)。全体の長い順に並べています。
残業代などの所定外給与は、調査産業計で月19,895円でした。運輸業,郵便業は42,061円、電気・ガス業は60,464円です。電気・ガス業は所定外労働時間が運輸業,郵便業より短い一方、所定外給与は多くなっています。時間だけでなく、金額の面でも業種の違いがあります。
数字を読むときの5つの注意
業種の平均は便利な目安ですが、そのまま自社と並べると判断を誤りやすい数字でもあります。迷いやすい点を5つに分けて書きます。
1. 平均にパートタイム労働者が入っている
全体(就業形態計)の平均には、パートタイム労働者も入っています。パートの比率が高い業種ほど、給与も所定外労働時間も平均が低く出ます。飲食サービス業等や卸売業,小売業を見るときは、一般労働者の数字と並べて読みます。
2. 賞与などを含む「年の月平均」である
年の数字は、特別に支払われた給与も含む1か月あたりの平均です。調査産業計の特別に支払われた給与は月68,514円で、電気・ガス業は149,513円、飲食サービス業等は10,890円でした。賞与の大きさの違いも、業種の差に入っています。
四半期ごとの賃金指数(現金給与総額・2020年平均=100)は、2025年1〜3月が93.2、4〜6月が117.0でした。7〜9月は106.2、10〜12月は130.4です。夏冬の賞与などは、支払われた月の数字に入るためです。家計簿で、ボーナスが入った月だけを見て1年の収入を語らないのと同じで、比べるときは1年分で見ます。
3. 事業所の規模で水準が変わる
同じ調査産業計でも、事業所規模30人以上では現金給与総額が月408,035円、所定外労働時間が11.5時間です。5人以上の355,941円、9.8時間より高く出ます。30人以上の一般労働者は502,431円、パートタイム労働者は128,660円です。自社の規模に近い数字を選ぶと、比べたときのずれが小さくなります。
4. 所定外労働時間は、法律上の「時間外労働」と同じではない
毎勤の所定外労働時間は、会社が決めた始業から終業までの外で働いた時間です。一方、労働基準法の法定労働時間は1日8時間・1週40時間です(第32条)。会社の所定労働時間が1日7時間30分なら、8時間までの30分は所定外ですが、法定の時間外労働ではありません。
業種の平均が上限より短くても、一人ひとりがそうとは限りません。統計は「業界の中での位置」を知るために使い、法律の確認は自社の勤怠で一人ずつ行います。
5. 平均年齢や勤続年数も業種で違う
給与は年齢や勤続年数で変わるため、働く人の構成が違えば業種の平均も変わります。この点は、次の賃金構造基本統計調査で確かめられます。
賃金構造基本統計調査で見る業種別の賃金と年齢・勤続年数
賃金構造基本統計調査は、労働者の年齢・勤続年数・学歴・役職などの内訳とあわせて賃金を調べる統計です。令和7年の概況では、10人以上の常用労働者を雇う民営事業所の一般労働者について、2025年6月分の所定内給与額を「賃金」としています。所定内給与額は、時間外勤務手当・深夜勤務手当・休日出勤手当などの超過労働給与を差し引いた額です。
一般労働者の賃金は、産業計で340.6千円でした。業種別では電気・ガス・熱供給・水道業の444.0千円が最も高く、宿泊業,飲食サービス業の277.2千円が最も低くなっています。
| 産業 |
賃金(千円) |
平均年齢(歳) |
平均勤続年数(年) |
| 鉱業,採石業,砂利採取業 |
388.3 |
48.5 |
13.9 |
| 建設業 |
366.3 |
45.5 |
13.7 |
| 製造業 |
330.0 |
44.1 |
15.3 |
| 電気・ガス・熱供給・水道業 |
444.0 |
43.1 |
17.6 |
| 情報通信業 |
406.0 |
40.2 |
12.3 |
| 運輸業,郵便業 |
312.7 |
48.7 |
12.9 |
| 卸売業,小売業 |
349.1 |
44.3 |
14.5 |
| 金融業,保険業 |
437.0 |
44.2 |
14.6 |
| 不動産業,物品賃貸業 |
360.1 |
43.9 |
10.7 |
| 学術研究,専門・技術サービス業 |
440.3 |
42.9 |
12.1 |
| 宿泊業,飲食サービス業 |
277.2 |
43.1 |
9.6 |
| 生活関連サービス業,娯楽業 |
295.2 |
42.3 |
10.6 |
| 教育,学習支援業 |
379.4 |
44.2 |
11.7 |
| 医療,福祉 |
315.7 |
44.0 |
9.9 |
| 複合サービス事業 |
319.0 |
44.9 |
16.8 |
| サービス業(他に分類されないもの) |
284.9 |
45.9 |
9.3 |
出典: 令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況 第5-1表(一般労働者・男女計・年齢計)。並びは資料の産業の順です。
たとえば情報通信業は平均年齢が40.2歳で、表の中でいちばん若い業種です。電気・ガス・熱供給・水道業は平均勤続年数が17.6年で、表の中でいちばん長くなっています。業種の賃金を比べるときは、こうした構成の違いも一緒に見ます。
毎月勤労統計調査と賃金構造基本統計調査の違いと、自社と比べる手順作成: 編集部 / もとの資料: 厚生労働省「毎月勤労統計調査」「賃金構造基本統計調査」
2つの統計は、時点も対象も違います。毎勤は2025年1〜12月の平均で、5人以上の事業所が対象です。賃金構造基本統計調査は2025年6月分で、概況は10人以上の民営事業所が対象です。同じ業種の数字が少し違っていても、どちらかが誤りというわけではありません。
今日からできること 自社の数字と並べる手順
業種の数字を社内の資料に使うときは、次の順に進めると、比べ方のずれを小さくできます。
- 自社の業種を、日本標準産業分類の大分類で確かめる。毎勤も賃金構造基本統計調査も、この分類で業種を分けています。
- 比べる数字の範囲を決める。事業所の規模(5人以上か30人以上か)と、全体か一般労働者かを選びます。毎勤のくわしい表は、厚生労働省のページから政府統計の総合窓口(e-Stat)でたどれます。
- 自社の平均を、一般の社員とパートタイムの社員に分けて出す。現金給与総額で比べるなら、賞与を含めた1〜12月分の総額を月平均にします。
- 労働時間は勤怠の記録から出す。所定外の時間と、法定の時間外労働・休日労働を分けて集計し、36協定で決めた時間と照らします。
- 社内の資料には、調査名・時点・事業所の規模・全体か一般労働者かを必ず添える。読む人が同じ物差しで判断できるようにします。
事務職の人数や求人倍率は、事務職の有効求人倍率・賃金・人数 データで見る2026年の今にまとめています。パートタイム労働者の社会保険の加入条件は、パート・アルバイトの社会保険 加入の条件と適用拡大の予定をご覧ください。
この記事の数字は、2026年10月18日に各資料で確かめたものです。この日の時点で、毎勤の年間の数字は2025年分の確報が最新で、2026年分はまだ公表されていません。