会社に届く郵便物や宅配便は、受付や総務が受け取ってから担当者の手に渡るまでに、紛失・配り忘れ・開封の行き違いが起きやすい仕事です。毎日のことなので、人によってやり方が違ったままになりがちです。この記事では、日本郵便の約款と案内、国土交通省の標準宅配便運送約款、総務省の信書のガイドラインをもとに、受け取りから社内配布までのルールの作り方をまとめました。内容は2026年10月18日時点で確かめたものです。
受付で受け取った時点で「会社に届いた」扱いになる
日本郵便の内国郵便約款(2026年10月1日改正)は、会社などの受付に書留を配達するときの扱いを定めています。配達証に受付の資格と氏名を書いてもらい、受領の証印か署名を受けます(109条)。国土交通省の標準宅配便運送約款も、配達先が住宅以外のときは、その管理者などへの引き渡しを、荷受人への引き渡しとみなすとしています(11条)。
裁判所の書類の送達でも、送達を受ける人に会えないときは、従業者などで書類の受領について相当のわきまえのある人に渡せると、民事訴訟法106条が定めています。つまり受付で受け取った書類は、担当者がまだ見ていなくても、会社として受け取ったことになる場面があります。
届くものの種類と受け取り方の違い
郵便物は、付けたオプションによって届き方と記録が変わります。受付で迷わないよう、種類ごとの扱いを表にしておきます。
| 種類 |
届き方 |
受け取りの記録 |
社内での扱いの目安 |
| 普通の郵便(手紙・はがき) |
郵便受箱 |
なし |
決まった時刻に回収して仕分ける |
| 特定記録 |
郵便受箱 |
引受けだけを記録。受領印・署名はしない |
日本郵便は請求書などの送付に勧めている。当日中に担当へ |
| 簡易書留 |
手渡し |
引受けと配達を記録。受領印か署名 |
受付簿に記録して手渡し |
| 一般書留・現金書留 |
手渡し |
引受けから配達までを記録。受領印か署名 |
受付簿に記録し、本人の受領サインをもらう |
| 内容証明(一般書留) |
手渡し |
いつ・どんな内容の文書を誰から誰へ出したかを日本郵便が証明 |
当日中に責任者へ |
| 配達証明(一般書留) |
手渡し |
配達した事実を証明 |
当日中に責任者へ |
| 本人限定受取郵便 |
郵便局から通知書が届き、名あて人本人か指定の代人1人に渡す |
本人確認書類を確かめる |
受付では受け取れない。通知書を本人へ |
| ゆうパック |
手渡しなど |
2024年10月以降、着払・代引・セキュリティなどを除き受領印・サインを省略 |
その日に中身を確かめる |
書留など郵便のサービスでは、引き続き受け取りのときの受領印かサインが必要です(日本郵便 2024年9月30日のお知らせ)。
会社に届く郵便物・宅配便の種類ごとの届き方と受け取り方、送るときの加算料金作成: 編集部 / もとの資料: 日本郵便(内国郵便約款・各サービスの案内)・国土交通省(標準宅配便運送約款)
受け取りから配布までの流れを決める
ルールは、次の6つの段階ごとに「誰が・何を・どこに記録するか」を決めると作りやすくなります。
- 受け取る: 書留などに受領印を押せる人と、使う印(社名の受領印か担当者の署名)を決める
- 記録する: 受付簿に、受け取った日時・種類・お問い合わせ番号・差出人・宛先(部署・個人)・受け取った人を書く
- 仕分ける: 部署あて・個人あて・親展・請求書や契約書・内容証明や裁判所からの書類・宅配便に分ける
- 渡す: 書留・内容証明・親展は手渡しで、受け取った人に受付簿へサインしてもらう
- 不在の人の分: 施錠できる場所で保管し、何日たったら上長に知らせるかを決める
- 見直す: 受付簿を月に一度見て、渡し漏れや長く残っているものがないか確かめる
受け取りから配布までの6つの段階と、種類ごとの渡し方・社内便の信書の決まり作成: 編集部 / もとの資料: 日本郵便・国土交通省・総務省・郵便法・刑法・個人情報保護委員会
親展・個人名あては開けずに本人へ
刑法133条は、正当な理由がないのに、封をしてある信書を開けた者を罰すると定めています。会社あての郵便を開けて中身で振り分けている会社でも、「親展」と書かれたものや個人名だけの宛先は開けずに本人へ渡す、と決めておくと行き違いを防げます。
給与明細や健康診断の結果、履歴書など、個人データが入った書類も同じように手渡しにします。個人情報保護委員会のガイドラインは、個人データが書かれた書類を持ち運ぶとき、事業所内の移動でも紛失や盗難に気を付けるよう求めています(通則編10-5)。封筒に入れたまま運び、施錠できる場所で保管します。
請求書・契約書は当日中に担当へ
請求書には支払いの期日があり、契約書や見積書には回答の期限があります。受付簿で「当日中に担当へ」と決めておくと、経理や営業の締め切りに間に合います。受け取ったあとの経理の流れは請求書の受け取りから支払いまでにまとめています。
内容証明・裁判所からの書類はすぐ責任者へ
内容証明は、いつ・どんな内容の文書を誰から誰へ出したかを日本郵便が証明するもので、郵便物の内容を記録として残したいときに使われます(日本郵便の案内)。届いたら開封のルールにかかわらず、その日のうちに総務の責任者か役員に知らせます。
裁判所からの書類は、民事訴訟法の方法で送達し、その事実を証明する「特別送達」という郵便で届くことがあります(郵便法49条)。一方で、裁判所の名前をかたった郵便物も出回っています。裁判所は、はがきで訴訟が起きたことを知らせることはないとしており、封筒に「特別送達」とあるのに普通郵便の速達で届いた不審な例も公表しています。書かれた電話番号に連絡せず、最寄りの裁判所に相談してください。
不在で受け取れなかったとき
郵便局に持ち帰られた郵便物は、最初の配達の日から7日保管され、受取人が延長を申し出たときは10日になります。期間を過ぎると差出人に返されます(内国郵便約款88条)。
| 場面 |
決まり・目安 |
| 不在で持ち帰られた郵便物 |
最初の配達の日から7日保管(延長の申し出で10日)。過ぎると差出人へ返還 |
| 書留の当日の再配達 |
当日17時ごろまでに電話で頼むと、21時ごろまでに再配達(無料・受付時間は郵便局で異なる) |
| 郵便局の窓口で受け取る |
本人確認書類、印鑑(署名でも可)、不在連絡票 |
| 長く不在になるとき |
不在届で最長30日、配達を留め置いて期間後に配達 |
| 宅配便の不在 |
標準約款では不在連絡票で知らせ、営業所などで保管 |
不在届は旅行や帰省などで長く家を空ける人向けに案内されています。会社の長期休業で使えるかは、配達を受け持つ郵便局に確かめてください。
宅配便は受け取った日に中身を確かめる
標準宅配便運送約款は、荷物の損傷についての宅配便会社の責任は、引き渡した日から14日以内に通知しない限り消えると定めています(24条)。箱がきれいでも中身が壊れていることがあるので、受け取った日のうちに開けて確かめ、写真を残すルールにします。実際の扱いは、各社の約款で確かめてください。
会社どうしの売買では、商法526条が、受け取ったら遅滞なく検査し、不具合を見つけたら直ちに相手に知らせるよう定めています。納品物の検査の期間は、契約書の確認と合わせて考えます(契約書を受け取ったら確認すること)。
社内便や拠点間で送るときは信書に注意する
郵便法4条は、信書を「特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、又は事実を通知する文書」と定め、日本郵便以外が他人の信書の送達を業とすることを禁じています。日本郵便のほかに信書を運べるのは、総務大臣の許可を受けた信書便事業者だけです(総務省)。総務省のガイドラインは、請求書・納品書・領収書・見積書・契約書・申込書を信書の例に挙げています。会議の招集通知や招待状、印鑑証明書などの証明書、免許証などの許可書も信書です。カタログ、新聞や雑誌、配送伝票、取扱説明書、名刺、振込用紙、出勤簿などは信書に当たりません。
総務省のQ&Aは、会社内のある部署から別の部署にあてた文書でも、意思の表示や事実の通知であれば信書に当たるとしています。ただし、本社が全従業員分の文書をまとめて作り、支店の従業員の分を支店へまとめて送る場合は、本社から支店への送付は信書の送達に当たらないとしています。
支店で受け付けた取引先からの請求書や申込書を、そのまま本社へ送る場合も、信書の送達には当たりません。支店が受け付けた時点で、会社への送達は済んでいるためです。ただし「代金を支払ってほしい」など、支店の意思を書き添えて送ると信書に当たります。契約書の写しを支店から本社の法務へ送る場合も、総務省のQ&Aは信書の送達に当たらない例に挙げています。
会社から送るときの選び方
送る側では、記録と補償の要る度合いでオプションを選びます。加算料金は2026年10月18日に日本郵便のページで確かめた手紙・はがきの額で、基本料金に加えて払います。
| 送り方 |
記録されること |
受け取り方 |
加算料金 |
万一のとき |
| 特定記録 |
引受け |
郵便受箱 |
210円 |
損害賠償なし |
| 簡易書留 |
引受けと配達 |
手渡し |
350円 |
原則5万円までの実損額 |
| 一般書留 |
引受けから配達まで |
手渡し |
480円 |
10万円まで(申し出で最大500万円) |
| 内容証明 |
文書の内容と差し出した事実 |
手渡し |
480円(2枚目以降は290円増) |
一般書留にする必要がある |
| 配達証明 |
配達した事実 |
手渡し |
350円 |
一般書留にする必要がある |
現金を送るときは現金書留(480円・損害要償額1万円まで、申し出で最大50万円)を使います。
事務所を移るときは転居届も出す
日本郵便の転居届は、会社や団体も出せます。届け出た日から1年間、旧住所あての郵便物を新住所へ無料で転送します。登録までに3〜7営業日かかるため、移転日より前に出しておきます。転送期間が終わると差出人に返されるので、取引先への住所変更のお知らせもあわせて送ります。
今日からできること
受け取りのルールは、受付に1枚の紙で貼れるくらいの量にまとめると守られやすくなります。
- 受付簿の項目(日時・種類・番号・差出人・宛先・受け取った人・渡した日時・受領サイン)を決める
- 種類ごとの扱いの表を受付に置く
- 書留に受領印を押せる人と、社名の受領印を使うかを決める
- 親展・個人名あて・本人限定受取郵便の扱いを決める
- 不在の人の分の保管場所と、上長に知らせるまでの日数を決める
- 社内便に信書を入れない決まりを、拠点の担当者に伝える
ルールを決めたあとは、社内のお知らせ文の書き方も参考に、全員に届く形で知らせます。