2026年10月1日から、パート・アルバイトが社会保険(健康保険・厚生年金保険)に入る条件から「月額8.8万円以上」が外れました。いわゆる「年収106万円の壁」として意識されてきた条件です。この記事では、日本年金機構と厚生労働省の公式の案内で確かめた2026年10月18日時点の条件と、法律で決まっている今後の予定をまとめます。
2026年10月18日時点の加入の条件
1週間の所定労働時間か1か月の所定労働日数が、フルタイムの社員の4分の3以上の人は、通常の被保険者として加入します。パート・アルバイトという呼び名は関係ありません。4分の3に満たない人は「短時間労働者」と呼ばれ、次の条件をすべて満たすと加入の対象です。
| 条件 |
内容 |
確かめ方のポイント |
| 勤め先の規模 |
厚生年金保険の被保険者数が51人以上の企業等 |
1年のうち6か月以上、51人以上となる見込みか。法人は同じ法人番号の全事業所の合計。短時間労働者は数えない |
| 労働時間 |
週の所定労働時間が20時間以上 |
雇用契約書や就業規則で決めた、通常の週の時間。残業は原則含まない |
| 雇用の見込み |
2か月を超えて雇用される見込み |
2か月以内の期間を定めて雇う人や、臨時に使用される人などは除く |
| 学生 |
学生でないこと |
定時制・通信制・休学中の人などは対象になる |
| 賃金 |
2026年10月1日に撤廃 |
特定減額特例対象者は原則対象外(申し出で加入できる) |
51人以上の企業等は「特定適用事業所」と呼ばれます。51人に満たない会社でも、従業員の2分の1以上の同意を得て申し出れば「任意特定適用事業所」となり、短時間労働者を加入させることができます。国や地方公共団体の事業所は、人数にかかわらず対象です。
パート・アルバイトが社会保険に入るかの判断の順番(2026年10月18日時点)作成: 編集部 / もとの資料: 日本年金機構・厚生労働省 社会保険適用拡大特設サイト
2026年10月1日に何が変わったのか
もとになっているのは、2025年6月13日に成立し、6月20日に公布された年金制度改正法(令和7年法律第74号)です。この法律で、賃金要件は公布から3年以内に、全国の最低賃金が1,016円以上となることを見極めて撤廃すると決められていました。
時給1,016円で週20時間働くと、月額8.8万円に届きます。令和7年度の地域別最低賃金は、全ての都道府県で1,016円を超えました。これを受けて厚生労働省は、2026年1月の資料で、2026年10月に撤廃する予定だと説明していました。最低賃金の上昇で、週20時間以上働く人は自動的に賃金要件を満たすようになっていたためです。
例外が一つあります。最低賃金法7条にもとづく減額の特例許可を受けていて、所定内賃金が月額8.8万円未満の人です。この人は「特定減額特例対象者」として、原則として加入の対象外です。
本人が事業主を通して日本年金機構に申し出れば加入でき、この申し出に事業主の同意は要りません。加入する日は、日本年金機構が申出書を受理した日です。
これから決まっている予定
企業規模の要件は、10年をかけて段階的に下がり、最後はなくなります。日付は日本年金機構と厚生労働省の案内で確かめたものです。
| 時期 |
変わること |
| 2026年10月 |
賃金要件の撤廃。保険料調整制度と、特定減額特例対象者の申し出による加入が始まる |
| 2027年10月 |
厚生年金保険の被保険者数が36人以上の企業等が対象になる |
| 2028年10月1日 |
雇用保険の加入条件が週20時間以上から週10時間以上になる(別の法律・令和6年法律第26号) |
| 2029年10月 |
21人以上の企業等が対象になる。個人事業所は常時5人以上なら業種を問わず適用(施行時点で既にある事業所は当分の間対象外) |
| 2032年10月 |
11人以上の企業等が対象になる |
| 2035年10月 |
10人以下の企業等も対象になり、企業規模の要件がなくなる |
パート・アルバイトの社会保険 適用拡大の日程(2035年10月まで)作成: 編集部 / もとの資料: 厚生労働省「社会保険の加入対象の拡大について」ほか
人数の数え方には注意が要ります。
たとえば、正社員とフルタイムの契約社員で厚生年金保険の被保険者が40人、週20時間台のパートが30人いる会社を考えます。短時間労働者は数えないため被保険者数は40人で、2026年10月時点では対象外です。2027年10月からは36人以上に当たるため、30人のパートも、学生などを除いて加入の対象になります。
雇用保険の週10時間への拡大は、社会保険とは別の法律で決まった予定です。雇用保険は2026年10月時点では、週20時間以上で31日以上の雇用見込みがある人が対象です。2028年10月1日からは週10時間以上に広がります。同じパートでも、社会保険と雇用保険で入る時期がずれることがあるため、二つを分けて管理します。
小売・飲食の現場で迷いやすいこと
シフトで週の時間が変わる人
週20時間は、雇用契約書や就業規則で決めた「通常の週」の所定労働時間で判断します。繁忙期だけ一時的に20時間を超えても、それだけでは加入しません。厚生労働省は、週20時間以上で働く状況が2か月を超えて続くようなら、加入の対象になることがあると案内しています。
契約上は週18時間でも、毎週のように20時間を超えている人は、実態に合わせて契約を見直す時期です。本人とシフトの希望を話し、契約の時間を決め直します。
学生アルバイト
学生は、週20時間以上働いていても、短時間労働者としての加入の対象外です。ただし、定時制や通信制の課程に通う人、休学中の人などは対象になります。春から社会人になる学生アルバイトは、卒業後も同じ時間で働くなら対象に変わるため、契約を更新するときに確かめます。
配偶者の扶養に入っている人
対象の企業等で週の所定労働時間が20時間以上になると、配偶者の扶養(第3号被保険者)から外れて、自分で社会保険に入ります。保険料はかかります。一方で厚生労働省は、基礎年金に加えて厚生年金を受け取れることや、病気・けが・出産で休んだときの給付があることを利点に挙げています。
週20時間未満で働く人でも、年収130万円以上になると配偶者の扶養から外れます。収入が一時的に上がった場合は、事業主の証明で扶養のままでいられる特例があります。
個人経営の飲食店
個人事業所は、常時5人以上を使う「法定17業種」だけが社会保険の適用事業所です。飲食サービス業・宿泊業・理美容などは17業種に入っていないため、2026年10月時点では5人以上いても強制の適用ではありません。
2029年10月からは、業種を問わず常時5人以上の個人事業所が対象になります。ただし、その時点で既にある事業所は当分の間対象外です。常時5人未満の個人事業所や17業種以外の個人事業所も、従業員の半数以上の同意を得て申請すれば、今の時点で任意に加入できます。
新たに対象になる会社の準備と手続き
2027年10月に36人以上へ広がると、これまで対象外だった中小の小売店や飲食チェーンにも関わってきます。準備は次の順で進めると、従業員への説明が遅れません。
- 被保険者数を数える。 法人は同じ法人番号の全事業所の合計で、短時間労働者は数えません。
- 対象になる人を洗い出す。 週の所定労働時間20時間以上、2か月を超える雇用見込み、学生でないかを一人ずつ確かめます。
- 本人に説明する。 保険料と手取りの変化、扶養から外れるかを伝えます。厚生労働省の特設サイトに手取りの試算があります。
- 届け出る。 特定適用事業所に当たったら、事実の発生から5日以内に該当届を出します。対象者の資格取得届も、資格を取った日から5日以内です。
- 支援を検討する。 保険料調整制度、社会保険労務士の無料派遣、キャリアアップ助成金(短時間労働者労働時間延長支援コース)があります。
日本年金機構は、直近11か月のうち5か月で被保険者数が50人を超えた事業所に「特定適用事業所に関する重要なお知らせ」を送っています。届いたら、届け出の準備を始める合図です。手続きの全体は入社手続きのチェックリストとあわせて確かめてください。
保険料調整制度のしくみ
保険料調整制度は、新たに加入する短時間労働者が就業調整をせずに働けるようにする制度です。事業主が保険料の一部を一時的に多く負担し、本人の負担を通算3年間軽くします。
対象は、2026年10月以降に任意特定適用事業所になった事業所や、2027年10月以降の拡大で特定適用事業所になった事業所などです。2026年10月1日の時点で既に特定適用事業所(任意を含む)だった事業所は使えません。そこで働く、標準報酬月額12.6万円以下の短時間労働者の保険料が軽くなります。
事業主が多く払った分は、3か月後の保険料から差し引かれるため、最終的に事業主が納める保険料は増えません。本人が将来受け取る年金額も減りません。軽減の割合は標準報酬月額で決まり、3年目は1〜2年目の半分になります。
今日からできること
この記事は、2026年10月18日時点の日本年金機構と厚生労働省の公式の案内をもとにしています。個別の人が加入の対象になるか、保険料調整制度を使うかの判断は、管轄の年金事務所か社会保険労務士に確かめてください。年金事務所では、適用拡大の説明会や相談に社会保険労務士を無料で派遣する事業も受け付けています。