厚生労働省は2026年9月3日、2026年度(令和8年度)の地域別最低賃金の改定額をまとめて発表しました。47都道府県の地方最低賃金審議会が答申した額です。全国加重平均は1,177円で、前年度の1,121円から56円上がります。発効は10月1日から12月2日までの間に都道府県ごとに進み、2026年10月18日時点で15府県がこれからです。
2026年度の地域別最低賃金で決まったこと
地域別最低賃金は、都道府県ごとに1つずつ決まる時間額の最低賃金です。パートタイマー、アルバイト、臨時、嘱託といった雇用形態や呼び方に関係なく、その都道府県の事業場で働くすべての労働者に適用されます。
| 項目 |
2026年度の内容 |
| 全国加重平均 |
1,177円(前年度1,121円から56円増) |
| 引上げ額 |
54円から65円(47都道府県すべてで引上げ) |
| いちばん高い額 |
東京都 1,280円 |
| いちばん低い額 |
宮崎県 1,085円 |
| 最低額÷最高額 |
84.8%(前年度83.4%。12年連続の改善) |
| 発効日 |
2026年10月1日から12月2日までに順次 |
全国加重平均の56円の引上げは、1978年度(昭和53年度)に目安制度が始まってから2番目の大きさです。目安制度は、国の中央最低賃金審議会が引上げ額の目安を示し、各都道府県の審議会がそれを参考に決めるしくみです。2026年度の目安は7月28日に示され、都道府県のランクごとに54円か56円でした。答申では、47都道府県のうち33で目安を上回る引上げになりました。
発効日の一覧 10月19日以降に上がるのは15府県
地域別最低賃金は、都道府県労働局長の決定を公示してから効力が生じます。公示の日から数えて30日を過ぎた日か、決定で定めたそれより後の日です(最低賃金法第14条第2項)。このため発効日は都道府県ごとに違い、2026年度は10月1日から12月2日まで幅があります。
2026年度の地域別最低賃金の発効日と改定後の額(47都道府県)作成: 編集部 / もとの資料: 厚生労働省「令和8年度地域別最低賃金全国一覧」
10月19日以降に発効するのは、次の15府県です。発効日が給与の計算期間の途中に来る事業場も多いので、まず日付を確かめます。
| 発効日 |
都道府県 |
改定後 |
改定前 |
引上げ額 |
| 10月24日 |
宮崎県 |
1,085円 |
1,023円 |
62円 |
| 10月25日 |
鹿児島県 |
1,090円 |
1,026円 |
64円 |
| 10月29日 |
青森県 |
1,090円 |
1,029円 |
61円 |
| 10月29日 |
高知県 |
1,086円 |
1,023円 |
63円 |
| 10月30日 |
山形県 |
1,092円 |
1,032円 |
60円 |
| 11月1日 |
山梨県 |
1,113円 |
1,052円 |
61円 |
| 11月1日 |
徳島県 |
1,103円 |
1,046円 |
57円 |
| 11月1日 |
愛媛県 |
1,093円 |
1,033円 |
60円 |
| 11月1日 |
大分県 |
1,096円 |
1,035円 |
61円 |
| 11月2日 |
長崎県 |
1,087円 |
1,031円 |
56円 |
| 11月15日 |
佐賀県 |
1,095円 |
1,030円 |
65円 |
| 11月16日 |
京都府 |
1,180円 |
1,122円 |
58円 |
| 12月1日 |
岩手県 |
1,090円 |
1,031円 |
59円 |
| 12月1日 |
熊本県 |
1,092円 |
1,034円 |
58円 |
| 12月2日 |
沖縄県 |
1,086円 |
1,023円 |
63円 |
10月18日までに発効した32都道府県は、次のとおりです。
| 発効日 |
都道府県と改定後の額 |
| 10月1日 |
北海道 1,131円・宮城県 1,098円・栃木県 1,125円・埼玉県 1,196円・千葉県 1,195円・東京都 1,280円・神奈川県 1,279円・新潟県 1,108円・富山県 1,119円・岐阜県 1,121円・愛知県 1,195円・三重県 1,143円・大阪府 1,231円・兵庫県 1,172円・香川県 1,092円 |
| 10月2日 |
長野県 1,117円・岡山県 1,104円 |
| 10月3日 |
群馬県 1,120円・石川県 1,113円・滋賀県 1,136円・和歌山県 1,101円・鳥取県 1,090円 |
| 10月4日 |
福井県 1,112円・奈良県 1,107円・福岡県 1,114円 |
| 10月8日 |
山口県 1,101円 |
| 10月10日 |
島根県 1,092円 |
| 10月11日 |
広島県 1,141円 |
| 10月14日 |
秋田県 1,090円 |
| 10月15日 |
静岡県 1,154円 |
| 10月16日 |
福島県 1,094円 |
| 10月18日 |
茨城県 1,136円 |
影響する会社・しない会社
- 影響する: パート・アルバイトなど時給で働く人の時給が、新しい最低賃金に届かない会社。発効日から新しい額以上が必要です。
- 影響する: 月給制・日給制の社員がいる会社。対象の賃金を時間額に直して下回れば、正社員でも見直しが要ります。
- 影響する: 複数の都道府県に事業場がある会社。本社の所在地ではなく、それぞれの事業場がある都道府県の額が適用されます。
- 影響する: 派遣労働者を受け入れる会社と派遣元。派遣労働者には、派遣先の事業場がある都道府県の額が適用されます(最低賃金法第13条)。
- 影響しない: 対象の賃金だけで計算しても、全員が新しい額を上回っている会社。ただし、最低賃金の概要を掲示などで働く人に知らせる義務(最低賃金法第8条)はあります。
- 影響しない: 同居の親族だけで営む事業。同居の親族だけを使う事業で働く人や家事使用人は「労働者」に当たらず、最低賃金は適用されません(最低賃金法第2条)。
最低賃金を下回っていないかの確かめ方
最低賃金と比べるのは、毎月払う基本的な賃金だけです。賞与や残業代、通勤手当・精皆勤手当・家族手当は除きます。手当を含めた総額で比べると実際より高く見えるので、計算の順番を決めておくと迷いません。
最低賃金を下回っていないかを確かめる4つの手順と計算例作成: 編集部 / もとの資料: 厚生労働省「最低賃金額以上かどうかを確認する方法」
| 賃金の形 |
時間額への直し方 |
| 時間給 |
時間給をそのまま最低賃金額と比べる |
| 日給 |
日給 ÷ 1日の所定労働時間 |
| 月給 |
月給 ÷ 1か月平均所定労働時間 |
| 出来高払など |
賃金の総額 ÷ その期間の総労働時間 |
図の計算例は、東京都の事業場で、年間所定労働日数250日・1日8時間の会社の月給制の社員を、編集部が置いた金額で試算したものです。
| 計算例(東京都・編集部の試算) |
金額 |
| 支給額 |
245,000円(基本給190,000円・職務手当15,000円・通勤手当10,000円・時間外手当20,000円) |
| 対象の賃金 |
205,000円(通勤手当と時間外手当を除く) |
| 時間額 |
205,000円 × 12か月 ÷ (250日 × 8時間) = 1,230円 |
| 前年度の額との比較 |
1,226円を上回っていた |
| 2026年度の額との比較 |
1,280円(10月1日から)に届かない |
前年度は上回っていた人が、2026年度の改定で下回ることがあります。月給制の人は時給が給与明細に出ないため、給与計算の担当者が年に一度まとめて計算しておくと安心です。
迷いやすい点は2つあります。1つは、発効日が給与の締め日の途中にある場合です。厚生労働省の最低賃金特設サイトは、よくあるご質問でこの点に答えています。賃金算定期間の途中に発効日があっても、発効日以後は改定後の額以上を払う必要があります。
もう1つは、特定(産業別)最低賃金です。特定の産業には地域別より高い最低賃金が決まっていることがあり、全国で223件あります(2026年4月1日現在)。両方がかかる人には、高いほうの額が適用されます(最低賃金法第6条)。
最低賃金を下回る賃金を払っていた場合は、差額を速やかに払う必要があります。地域別最低賃金を下回る賃金しか払わない使用者には、50万円以下の罰金の定めがあります(最低賃金法第40条)。
中小企業は業務改善助成金の期限を確かめる
厚生労働省の業務改善助成金は、中小企業・小規模事業者の設備投資などの費用の一部を助成する制度です。事業場内で最も低い時給(事業場内最低賃金)を50円以上引き上げることが条件です。助成の上限は最大600万円で、事業場内最低賃金が2026年度の地域別最低賃金を下回っていることなどが条件です。
2026年度の申請期間は9月1日から、事業場がある都道府県の最低賃金の発効日の前日か11月30日の、早いほうまでです。10月24日に発効する宮崎県の事業場は10月23日まで、12月2日に発効する沖縄県の事業場は11月30日までになります。賃金の引上げは、申請した後に、発効日の前日までに行います。2026年度から、先に賃金を上げてから申請することはできなくなりました。10月18日までに発効した32都道府県では、2026年度の申請期間はすでに終わっています。
会社が今日やること
- 事業場ごとに、適用される最低賃金と発効日を厚生労働省の全国一覧で確かめます。派遣労働者を受け入れている場合は派遣先の所在地の額を、特定(産業別)最低賃金がある産業はその額も見ます。
- 時給・日給・月給の人ごとに、対象から除く賃金を引いて時間額に直し、新しい額と比べます。全国一覧のページにある厚生労働省の「最低賃金に関するセルフチェックシート」(Excel)も使えます。
- 下回る人がいれば、発効日以後に働いた分から新しい額以上になるよう、給与計算の単価と労働条件通知書を直し、本人に伝えます。
- 最低賃金の概要(対象となる人・金額・含めない賃金・発効日)を、職場の掲示や社内のお知らせで周知します。文面は社内のお知らせ文の書き方 読まれる件名と構成・すぐ使える文例も参考になります。
- 発効日がまだ先の府県に事業場がある中小企業は、業務改善助成金を使うかを決めます。使う場合は、先に申請し、そのあと発効日の前日までに賃金を引き上げます。
時給の引上げで働く時間や年収が変わると、社会保険の加入の判断にも関わります。パート・アルバイトの加入条件はパート・アルバイトの社会保険 加入の条件と適用拡大の予定にまとめています。
この記事は、2026年10月18日時点の厚生労働省の発表と法令にもとづいています。個別の判断は、都道府県労働局・労働基準監督署や社会保険労務士に確かめてください。