取引先の会長が亡くなり、社長の代理で通夜に出ることになった。そう言われて、何を着て、受付で何と言い、芳名帳に誰の名前を書くのか戸惑う人は多いはずです。この記事では、会社を代表して通夜・告別式に出る社員が、社内で決めること、服装、受付と記帳、名刺の扱い、会場での振る舞い、帰社後の報告を順に確かめられるようにまとめます。
葬儀の作法は法律で決まったものではなく、習わしです。この記事は「一般的には」の形で書きます。地域・宗教・宗派や、遺族と葬儀社の案内が優先です。香典の金額や表書きは香典の相場 会社名義で出すときの金額の決め方と表書き・渡し方にまとめています。
通夜・告別式に会社を代表して出る流れ 訃報から帰社後の報告まで作成: 編集部 / もとの資料: 一般的な慣習・日本郵便・NTT東日本
訃報を受けたら社内で決める4つのこと
訃報は、取引先の担当者や自社の社員から、電話やメールで届きます。最初にすることは、出席の準備ではなく、社内で次の4つを決めて、決めた人の名前を残すことです。
| 決めること |
判断の目安 |
決める人の例 |
| 誰が行くか |
亡くなった方と会社の関係の深さ。代表者本人が行けるか。先方の担当者との付き合い |
総務の責任者、担当部門の長 |
| 通夜か告別式か |
先方の案内に合わせる。都合がつく方に一度だけ出る会社が多い |
上長 |
| 会社名義か個人名義か |
会社として出るなら、会社名と代表者名で香典と記帳をそろえる |
総務・経理 |
| 勤務の扱い |
就業時間内に出る場合の外出・出張の扱い、直行直帰、費用の精算 |
総務・人事 |
あわせて、先方に失礼にならない範囲で次のことを確かめます。
- 日時と会場、受付の時間
- 喪主(葬儀を主催する人)の名前と、亡くなった方との続柄
- 宗教と形式(仏式・神式・キリスト教式・無宗教など)
- 香典・供花・弔電を辞退していないか
- 家族葬かどうか、参列を控えてほしいという案内がないか
遺族が「家族葬で行います」「参列はご遠慮ください」と案内しているときは、参列を控えます。会社として弔意を伝えたいときは、弔電や後日の連絡でよいかを、先方の担当の方を通して確かめます。弔電は弔電の文例 会社名義で送るときの宛名・敬称・差出人と申し込み方、供花は供花の手配 会社名義で送るときの名札・費用・葬儀社への頼み方にまとめました。
服装 通夜は仕事帰りの平服、告別式は喪服
服装は、通夜と告別式で考え方が分かれるとされてきました。通夜は急な知らせで駆けつけるものなので、地味な色の服装で足りる。告別式は喪服(黒の礼服)を着る、という考え方です。近年は通夜でも喪服で行く人が増えているので、どちらでも失礼にならないのは喪服です。ただし、遺族が「平服でお越しください」と案内しているときは、案内に合わせます。
通夜に仕事帰りで行くとき
仕事帰りの平服は、「喪服ではないが、弔意を示す形に整えた服装」を目指します。
- スーツは黒・濃紺・濃いグレーの無地に近いもの。明るい色や派手な柄は避ける
- 男性はネクタイを黒の無地に替える。会社のロッカーに予備を置いておくと、急な訃報でも困らない
- 女性は黒・濃紺・グレーの地味な服にして、露出の多いものや光る素材は避ける
- 靴は黒の革靴かパンプスで、飾りのないもの。派手なバッグは、黒の布のバッグか、会場の前で黒い袋に入れ替える
- 時計やアクセサリー、ネイルの飾りは外す。結婚指輪は付けたままで構わないという考え方が一般的
告別式の喪服
| 項目 |
男性 |
女性 |
| 服 |
黒のスーツ(ブラックスーツ)。ダブルでもシングルでもよい |
黒のワンピースかアンサンブル、スーツ。袖や丈で肌を出しすぎない |
| シャツ・インナー |
白の無地のシャツ |
黒か白の無地のインナー |
| ネクタイ・小物 |
黒の無地のネクタイ、黒のベルト。タイピンは付けない |
結婚指輪以外は控えめに。真珠の一連のネックレスは付けてよいとされる |
| 靴・靴下・ストッキング |
黒の革靴(飾りなし)、黒の靴下 |
黒のパンプス(飾りなし)、黒のストッキング |
| 髪・化粧 |
整える |
髪はまとめる。薄い化粧にする |
| バッグ |
黒の小さめのバッグ。会場にはカバンを持ち込みすぎない |
黒の布製のバッグ。光る金具や革の質感が目立つものは避ける習わし |
革や毛皮は殺生を連想させるため避ける、という習わしがあります。ただし、ふだんの革靴やバッグを全部避けることはなく、飾りや光沢が目立たないものを選ぶのが一般的です。
コート・数珠・カバン
- コートは黒や濃紺など暗い色にして、会場に入る前に脱ぐ。受付や会場内ではコートを手に持たない
- 数珠は、仏式で使う道具です。宗派で形が違うので、自分の宗派のものがあれば持参し、なければ持たなくても構わない。神式とキリスト教式では使わない
- カバンは黒い無地で、荷物はなるべく小さくまとめる。香典、袱紗(金封を包む布)、名刺入れ、ハンカチ、数珠が入れば足りる
服装と持ち物・受付と記帳の早見表作成: 編集部 / もとの資料: 一般的な慣習・NTT東日本
持ち物チェックリスト
出る前に、次のものがそろっているかを確かめます。香典の袋や袱紗の包み方は、香典の記事に任せます。
受付で名乗る言葉と、代理のときの言い方
受付は、遺族に代わって参列者を迎える人が担当します。到着したら、コートやマフラーを外し、スマホをマナーモードにしてから受付に向かいます。
受付の流れは、次の順番が一般的です。
- 一礼して、受付の人にお悔やみを述べる
- 会社名と自分の名前を名乗る(代理のときは、誰の代理かも伝える)
- 袱紗から香典を出し、表書きが相手から読める向きにして両手で渡す
- 芳名帳(または芳名カード)に記帳する
- 一礼して会場に進む
受付では、長く話さないことが大切です。お悔やみは「ご愁傷さまです」「お悔やみ申し上げます」のように短く言い、受付の人に仕事の話を向けません。代理のとき、代表者の名前を言うのは、受付の人があとで誰からのものか遺族に伝えやすくするためです。
芳名帳・芳名カードの書き方
芳名帳(参列者の名前を書く帳面)や芳名カードは、遺族が参列者を把握し、お返しの手配や礼状の宛名に使います。住所と名前を、読めるように丁寧に書きます。
| 場面 |
書き方の例(一般的な例) |
| 会社の代表として出る |
住所に会社の所在地、名前欄に「株式会社〇〇 代表取締役 山田太郎」 |
| 代理で出る |
名前欄に「株式会社〇〇 山田太郎」と代表者の名前を書き、その下に小さく「代」と添える。住所は会社の所在地 |
| 自分の名前も伝えたい |
代表者名と「代」の横に「佐藤花子」のように自分の名前を小さく添える |
| 複数人で出る |
代表者の名前の横に「ほか一名」と書く、または別に自分の名前を書くなど、会場の案内に従う |
| 芳名カードのとき |
1人1枚ずつ、会社名・住所・名前を書く。代理のときは同じ形で「代」と添える |
決まった形はありません。会場によっては、会社名だけを書く用紙や、「代理」という欄があります。迷ったら受付で「代理で来ました」と伝えて、書き方を聞くのが確実です。
香典の記事のよくある質問にある「代理の記帳」と同じ形です。会社として出る場合の香典袋の表書きと、芳名帳の名義がそろうようにしてください。
名刺の扱い 代表者の名刺と自分の名刺
受付で名刺を出すかは、会場や遺族の考え方で違います。名刺を求められる会場もあれば、出さなくてよい会場もあります。出すなら次の形が一般的です。
- 代理のときは、預かった代表者の名刺に、自分の名刺を添えて出す
- 代表者の名刺の左下に小さく「代」や「代理」と書き添え、自分の名前を書く習わしもあるが、決まった形はなく、書かなくても構わない
- 名刺の角を折る習わしもあるが、地域差があり、今は行わない人が多い
- 香典と一緒に渡すか、受付に置いてある名刺入れ(盆)に入れる。受付の人の案内に従う
会場での振る舞い
焼香・玉串奉奠・献花の流れ
宗教によって作法が違います。ここでは概略だけを書きます。順番に迷ったら、前の人の動きを見て、案内の人の指示に従えば十分です。
| 形式 |
一般的な流れの概略 |
| 仏式の焼香 |
遺族と僧侶に一礼する。焼香台の前で遺影に一礼し、香をつまんで香炉にくべる。回数や、香を額の高さにいただくかどうかは宗派で違う。合掌して一礼し、席に戻る |
| 神式の玉串奉奠 |
玉串(榊の枝)を受け取り、祭壇に捧げる。二礼二拍手(音を立てない)一礼とされる。拍手の音を立てないのは葬儀の習わし |
| キリスト教式の献花 |
花を受け取り、祭壇に捧げて黙祷する。花を捧げるときの向きを案内される会場もある |
遺族の前を通るとき、焼香の順番は、式場の案内に従います。会社の代表と代理が一緒のときは、代表者を先にして、あとから続くのが一般的です。
遺族への挨拶
遺族に会ったときは、短く、小さな声で挨拶します。
忌み言葉・重ね言葉と、避ける話題
弔事では、不幸が重なることを連想させる言葉を避ける習わしがあります。
| 避ける言葉 |
言い換えの例 |
| 重ね言葉(重ね重ね・たびたび・くれぐれも・ますます・また) |
「このたびは」「ほんとうに」など |
| 直接の表現(死ぬ・死亡・生きていたころ) |
ご逝去、お亡くなりになる、生前 |
| 不幸が続くことを連想する言葉(続く・再び・追って) |
使わず、短くまとめる |
| 励ましの言葉(頑張って・元気を出して) |
「どうぞご無理をなさらないでください」 |
宗教によって、使わない方がよい言葉もあります。たとえば「ご冥福をお祈りします」は仏式の言葉で、神式やキリスト教式では使わないとされます。分からないときは、「お悔やみ申し上げます」が、どの形式でも使える言葉です。
会場で避けること。
- 仕事の話、案件の話、営業の話をしない
- 遺族の前で、取引先との打ち合わせや連絡をしない
- 写真や動画を撮らない。受付の芳名帳もスマホで撮らない
- 大きな声で話さない、笑わない
- 受付以外の場所で、名刺を配らない
通夜ぶるまいと退出のタイミング
通夜のあとに、遺族が参列者に食事を振る舞う「通夜ぶるまい」があります。勧められたときは、遠慮しすぎず、一口でもいただくのが一般的です。故人をしのぶ席なので、長居はせず、お酒も控えめにします。食事の席でも、仕事の話はしません。
帰るときは、遺族が忙しそうなら無理に声をかけず、一礼して退出して構いません。告別式のあと、出棺を見送るかどうかは、会場の案内や、先方との関係で決めます。
帰社後の報告と、書類の渡し方
参列したら、できるだけ早く上長に報告し、受け取ったものを総務か経理に渡します。
渡すものと記録することは、次のとおりです。
| 項目 |
渡す先 |
内容 |
| 会葬礼状・返礼品 |
総務 |
会葬御礼のカードと品物。香典の経理の記録に添える |
| 出金の記録 |
経理 |
支払日・相手・続柄・名義・金額・決裁者(香典の記事のとおり) |
| 参列の記録 |
総務 |
日時・会場・喪主・誰が行ったか・香典の有無。次回の基準に使う |
| 上長への報告 |
上長 |
当日の様子、名乗った形、芳名帳の書き方 |
香典は、取引先など社外の人に出すものは交際費等、社員とその親族に一定の基準で出すものは福利厚生費、という扱いが国税庁の通達と案内で示されています(2026年10月時点)。経理の処理の詳細は、香典の記事に任せます。会社の慶弔の決まり全体は会社の慶弔対応 社員の結婚・出産・弔事の規程の作り方と手配の流れで扱っています。
後日、香典返しが会社宛てに届くことがあります。届いたら、誰が受け取ったかを総務が記録し、お礼の連絡が必要かを上長に確かめます。
今日からできること
- 弔事の連絡のひな形(確かめる項目・社内に回す文)を1枚にまとめる
- 会社に「弔事セット」(黒ネクタイ・黒の靴下・黒のハンカチ・数珠)を置く
- 代理で参列する社員への依頼文と、受付で言う言葉を手順書に貼る
- 芳名帳の書き方(会社名・代表者名・「代」)を、香典の表書きとそろえて手順書に書く
- 参列の記録(日時・会場・誰が行ったか)を残す様式を決める
- 家族葬と参列辞退のときは参列を控えることを、規程に書く