同僚や上司、取引先の担当者の身内に不幸があったと聞くと、「なんと声をかければいいのか」「かえって失礼にならないか」と迷います。職場でかけるお悔やみの言葉は、立派な文章より、短くて静かな一言のほうが相手に届きます。この記事では、口頭・メール・チャットの例文と、避けたい表現、忌引明けの声かけまでを順に整理します。
葬儀での受付や会場の挨拶は葬儀に参列するマナー、会社名義の弔電は弔電の文例、会社としての手配は会社の慶弔対応で扱っています。ここでは、職場で本人にかける言葉に絞ります。
職場のお悔やみは「短く・静かに・一度だけ」
お悔やみの言葉に、法律や公的な決まりはありません。ここで紹介するのは、電報会社や郵便局の案内などで広く知られている、一般的な習わしです。会社や地域、本人の宗教によって違うことがあります。
それでも、どの場面にも通じる考え方があります。
- 短くする: 長い言葉は、受け取る側が返事に気を使います
- 静かに伝える: 周りに人がいる場所で大きな声を出さず、できれば1対1で
- 一度だけにする: 何度も繰り返すと、思い出させてしまいます
- 仕事の話と分ける: お悔やみの場で、業務の確認や相談を続けません
相手は、手続きや連絡で慌ただしい時期にいます。言葉の目的は、気持ちを伝えることと、「仕事のことは心配しないでほしい」と添えることの2つです。
先に確かめておきたいこと
言葉を考える前に、次の3つを確かめておくと迷いが減ります。
- 誰が亡くなったか(続柄)。敬称が変わります
- 本人がその事実を職場に知らせてよいと言っているか。社内の連絡で知った場合は、声をかける範囲を短い一言にとどめます
- 相手がいま出社しているか、休んでいるか
訃報を社内に知らせるときは、本人や遺族の了解を得た範囲にとどめるのが原則です。個人情報保護委員会のQ&A(1-21)は、亡くなった方の情報は個人情報保護法の対象ではないとしています。ただし、家族関係などの情報が、生きている遺族の個人情報に当たる場合があるとも説明しています。「聞いたから広めてよい」ことにはなりません。
相手と手段で変わる言葉の早見表
同じお悔やみでも、相手が同僚・部下か、上司か、取引先かで、言葉の丁寧さと添えるひとことが変わります。手段によっても、向き不向きがあります。
相手と伝え方別 お悔やみの言葉の早見表と、続柄ごとの敬称作成: 編集部 / もとの資料: NTT東日本・日本郵便のマナー案内
図の内容を表にまとめます。
| 相手 |
口頭 |
メール |
チャット |
| 同僚・部下 |
「お悔やみ申し上げます。仕事は引き受けます」 |
短く、返信不要を添える |
個別のメッセージで、一言だけ |
| 上司 |
「ご愁傷さまでございます」+業務は任せてほしいこと |
件名に用件を入れ、丁寧に |
ふだんチャットで連絡する間柄なら、一言だけ |
| 取引先の担当者 |
電話・訪問では短く、用件は後日 |
時候の挨拶や前置きを省き、返信不要を添える |
相手が普段チャットで連絡する場合だけ、短く |
迷ったら「口頭は短い一言、文字にするときは返信不要を添える」と覚えておきます。
口頭でかける言葉の例文
出社している相手には、顔を見て、短く一言伝えるのが一般的です。周りに人がいるときは、廊下や席の近くで、小さな声で。会議の前後や、大勢の前では避けます。
どの例にも、「仕事は任せてほしい」という一言を入れています。相手が一番気にしているのは、自分が抜けた間の仕事だからです。
伝えるときの表情と間
言葉づかいと同じくらい、表情や声の大きさが印象を左右します。明るく話しかけたり、笑顔で近づいたりせず、落ち着いた表情で、相手の目を見て伝えます。言い終わったら、返事を待たずに、軽く会釈をして離れても構いません。相手が話したそうなら、そこで聞き役になります。
メールで送るときの書き方と例文
メールは、相手が自分のペースで読めるのが利点です。一方で、文字は残ります。書く前に宛名の敬称と、休み中の相手に届くことを考えます。
件名と書き出し、結びのコツ
- 件名: 「お悔やみ申し上げます(営業部 佐藤)」のように、用件と名前が分かる形にします。「Re:」を重ねて、別の用件のメールに返信する形は避けます
- 書き出し: 一般的には、頭語(拝啓など)や時候の挨拶を省き、すぐ本題に入ります
- 長さ: 5〜8行ほどにとどめます
- 結び: 「ご返信には及びません」「お返事は不要です」を添えます
- 仕事の話: 入れません。引き継ぎの話が要るときは、別のメールで
絵文字や、「!」の連続は使いません。「、」「。」を使わない書き方も昔からありますが、メールでは読みやすさを優先して、ふだんどおりに句読点を付けても差し支えないというのが、一般的な考え方です。
取引先には、1行目で名乗ります。誰からのお悔やみかを、先方が一目で分かるようにするためです。敬称は、受け取る人から見た続柄で選びます。父はご尊父様、母はご母堂様、祖父はご祖父様が一般的で、詳しい早見表は弔電の文例にあります。
チャットでかけるときは「一言だけ」
社内のチャットツールでは、普段のやり取りが続いているぶん、軽い文面になりがちです。使うなら次の点を守ります。
- 公開のチャンネルには書かず、本人宛ての個別のメッセージで
- スタンプ、絵文字、「お疲れさまです!」は使わない
- 複数行にせず、1〜2行で
- 返信不要と添える
- 訃報の共有は、本人や遺族が了解した範囲で
避けたい表現 忌み言葉・重ね言葉と励まし
弔事では、不幸が続くことや、死を直接思わせる言葉を避ける習わしがあります。これを「忌み言葉」と呼びます。NTT東日本と日本郵便の案内から、主なものをまとめます。どちらも弔電の案内ですが、考え方は話し言葉やメールにも通じます。
| 種類 |
例 |
言い換えの例 |
| 重ね言葉 |
重ね重ね・たびたび・度々・再び・再三・ますます・かえすがえす・続いて |
「深く」「心より」。重ねず一度で |
| 死を直接言う言葉 |
死ぬ・死亡・生きているころ |
ご逝去・ご永眠・お亡くなりになる・ご生前 |
| 不吉な音 |
四(死)・九(苦) |
日程などで数を言うときは、気にしすぎなくてよい場面も多い |
| 不幸を思わせる言葉 |
とんでもない・とんだこと |
使わない |
| 遺族側が使う言葉 |
大往生・天寿をまっとう |
相手には使わない |
NTT東日本は、重ね言葉に「また」「なお」も挙げています。文をつなぐときは、文を分けるか、「あわせて」に替えます。
避けたい表現と言い換え、忌引明けの声かけと言葉の使い分け作成: 編集部 / もとの資料: NTT東日本・日本郵便のマナー案内
励ましすぎ・詮索も控える
忌み言葉ではなくても、次のような言葉は、受け取る側に負担になることがあります。
- 励まし: 「頑張って」「元気を出して」「しっかりしてね」。かわりに「ご無理なさらないでください」
- 決めつけ: 「大往生でしたね」「いい最期でしたね」「楽になったのでは」。遺族が決めること
- 詮索: 「何があったの」「病気だったの」「葬儀の規模は」「香典はいくら」。聞かれるのを待つ
- 比較: 「うちの親のときは」。自分の体験は、聞かれたときだけ
「ご愁傷様」「お悔やみ申し上げます」「ご冥福をお祈りします」の使い分け
3つの言葉は似ていますが、使う場面が少しずつ違います。以下は一般的な使い分けで、公的な決まりではありません。
| 言葉 |
一般的な使い方 |
気をつける点 |
| ご愁傷さまです |
直接会って、遺族に短くかける言葉 |
神道・キリスト教式では使わないとされる(NTT東日本)。軽く聞こえないよう「ご愁傷さまでございます」の形に |
| お悔やみ申し上げます |
口頭でも文字でも使える。亡くなったことを悼む気持ちを表す |
宗教を選ばず使いやすい。分からないときはこれ |
| ご冥福をお祈りします |
仏式で、故人の死後の幸せを祈る言葉 |
神道・キリスト教式では使わないとされ、浄土真宗でも使わない(NTT東日本) |
日本郵便は、キリスト教式・神道式の葬儀では「冥福を祈る」「成仏」「往生」などを使わないと案内しています。NTT東日本は、仏式でも浄土真宗では「冥福」「霊前」を使わないとしています。
職場では、相手の宗教を確かめられないことが多いため、**「お悔やみ申し上げます」**を基本にすれば、どの形式でも通じます。「哀悼の意を表します」も、宗教を選ばず使える言葉です。
「ご冥福をお祈りします」は、メールやチャットでは使いたくなる言葉ですが、書いた文字は残ります。宗教が分からないうちは、避けておくほうが安心です。
忌引明けの声のかけ方
忌引から戻った日は、本人にとっても気持ちの整理がつかない中での出社です。声をかけるときも、静かに迎えます。
迎える言葉
- 「おかえりなさい」
- 「無理しないでくださいね」
- 「何かあれば、いつでも言ってください」
これで十分です。改めてお悔やみを繰り返さなくても、気持ちは伝わっています。本人から「ご迷惑をおかけしました」「お気づかいありがとうございました」と挨拶があれば、「お互いさまです」「いえいえ、気にしないでください」と返して、話題を切り上げます。
本人が話したいときと、そうでないとき
本人が故人のことを話したそうなら、遮らずに聞きます。話さなければ、こちらからは聞きません。死因や、葬儀の様子、遺族の様子を尋ねるのは控えます。
話したいかどうかは、本人が決めます。こちらは、聞く用意があることを示すだけで十分です。
仕事の引き継ぎに配慮する
忌引明けの最初の日にやってはいけないのは、休み中の仕事を一気に頼むことです。次のような配慮が助けになります。
- 休み中の対応を1枚にまとめて渡す(メールの山を読ませない)
- 急ぎの案件と、数日待てる案件を分ける
- 期限が迫っているものは、別の人が続けて対応するかを確認する
- 本人の復帰後の最初の1〜2日は、会議や出張の予定を入れない
- 取引先に伝えた内容を、先に共有する
日数は、会社の規程で決まっています。忌引休暇は、労働基準法上必ず定めなければならないものではなく、会社が就業規則で決める項目です(厚生労働省のモデル就業規則の解説)。規程や日数は会社の慶弔対応で整理しています。
よくある迷いどころ
香典や供花の話を持ちかけるときは
香典の金額や、有志でまとめて出す話は、お悔やみの言葉とは別に、総務や上司の指示で進めます。本人に「香典はどうしましょう」と聞くのは避け、辞退の有無は連絡した範囲で確かめます。金額の考え方は香典の相場と会社名義の金額の決め方を参照してください。
訃報を聞いたのが、数日後だったとき
葬儀が終わったあとに知ったときも、遅れたことを長く謝らず、短く一言かけます。
遅れたことを重ねて謝ると、本人が「いえいえ」と気づかう側になります。短くが原則です。
今日からできること
- 「お悔やみ申し上げます」と「仕事は任せてください」を、口に出して言う練習をしておく
- 相手別の敬称(ご尊父様・ご母堂様・ご祖父様など)を、手元のメモにまとめる
- 重ね言葉(重ね重ね・たびたび・ますます・また)を、弔事のメールで使わない
- メールの件名と、返信不要の書き添えを、テンプレートに登録しておく
- 忌引明けの人への声かけは「おかえりなさい」の一言と決めておく
- 引き継ぎの1枚メモを、部署でひな形にしておく