給与の水準を社員や経営に説明するとき、よく引き合いに出されるのが「日本の平均年収」です。その多くは、国税庁の民間給与実態統計調査にある「平均給与」の数字です。この記事では、2026年9月に公表された令和7年分の結果から、10年の推移を年代別・男女別・業種別に図と表で整理します。毎月勤労統計調査との違いと、自社の数字と並べるときの手順もまとめます。
民間給与実態統計調査とは 対象と「1年を通じて勤務した給与所得者」
民間給与実態統計調査は、民間の事業所が1年間に支払った給与の実態を、給与の額・事業所の規模・企業の規模などに分けて明らかにする国の統計です。昭和24年分から毎年行われ、令和7年分は77回目にあたります。統計法にもとづく基幹統計で、国税庁が行っています。
最新の令和7年分は、2025年1月〜12月に支払われた給与を調べたものです。結果は2026年9月に公表されました(政府統計の総合窓口 e-Stat の公開日は9月29日)。
| 項目 |
令和7年分の調査 |
| 調べた給与 |
2025年1月〜12月に支払われた給与 |
| 対象の人 |
2025年12月31日に民間の事業所に勤める給与所得者(パート・アルバイト・役員を含む) |
| 含まない人 |
国家公務員・地方公務員など官公庁の職員 |
| 調べ方 |
標本調査。回答した20,771事業所・306,242人の調査票から全体を推計 |
| 公表 |
2026年9月(e-Stat の公開日は9月29日) |
平均年収として紹介されるのは、このうち「1年を通じて勤務した給与所得者」の平均給与です。用語は次のように決められています。
令和7年分で1年を通じて勤務した給与所得者は5,163万人でした。12月31日に在職していても、勤めて1年に満たない人(1年未満勤続者・916万人)は、この平均に入りません。
平均給与の推移 10年で4,250千円から4,866千円に
令和7年分の平均給与は4,866千円で、前年より1.9%増えました。国税庁の概要では万円単位で「487万円」と書かれています。この記事の表は、統計表と同じ千円単位で書きます。
平均給与の推移(全体・男性・女性、2016〜2025年)作成: 編集部 / もとの資料: 国税庁「民間給与実態統計調査」令和7年分
| 年分 |
全体(千円) |
前年比 |
男性(千円) |
女性(千円) |
| 2025年(令和7年分) |
4,866 |
1.9%増 |
5,967 |
3,418 |
| 2024年(令和6年分) |
4,775 |
3.9%増 |
5,867 |
3,332 |
| 2023年(令和5年分) |
4,595 |
0.4%増 |
5,685 |
3,158 |
| 2022年(令和4年分) |
4,576 |
2.7%増 |
5,633 |
3,137 |
| 2021年(令和3年分) |
4,457 |
2.4%増 |
5,496 |
3,018 |
| 2020年(令和2年分) |
4,351 |
0.8%減 |
5,347 |
2,929 |
| 2019年(令和元年分) |
4,384 |
0.2%減 |
5,424 |
2,960 |
| 2018年(平成30年分) |
4,391 |
1.3%増 |
5,436 |
2,930 |
| 2017年(平成29年分) |
4,336 |
2.0%増 |
5,335 |
2,875 |
| 2016年(平成28年分) |
4,250 |
0.4%増 |
5,265 |
2,802 |
出典: 国税庁「民間給与実態統計調査」令和7年分 全国計表 第3表その8(累年比較)、調査結果報告の解説 第8表。令和3年分以前は新しい推計方法による値です。
10年で全体は616千円(14.5%)増えました。前年より下がったのは2019年と2020年だけです。2020年は給料・手当が0.5%増えた一方、賞与が7.4%減っていました(解説 第10表)。
令和7年分の内訳は、給料・手当が4,118千円、賞与が749千円です。給料・手当に対する賞与の割合は18.2%でした。
男女別の平均給与 女性は10年で22.0%増
令和7年分の平均給与は、男性5,967千円、女性3,418千円です。10年前と比べると、男性は13.3%増、女性は22.0%増でした。女性の平均を男性の平均で割った値は、53.2%から57.3%に上がっています(編集部が計算)。
男女の差には、働き方の違いも含まれます。1年を通じて勤務した女性のうち、正社員(正職員)以外の人は38.9%で、男性の14.9%より多くなっています(人数から編集部が計算)。
| 区分(令和7年分) |
男性 |
女性 |
全体 |
| 平均給与 |
5,967千円 |
3,418千円 |
4,866千円 |
| うち正社員(正職員) |
6,234千円 |
4,437千円 |
5,593千円 |
| うち正社員(正職員)以外 |
2,698千円 |
1,790千円 |
2,095千円 |
| 平均年齢 |
47.5歳 |
47.1歳 |
47.3歳 |
| 平均勤続年数 |
14.1年 |
10.4年 |
12.5年 |
出典: 調査結果報告の解説 第8表。全体には役員も含むため、正社員と正社員以外の人数を足しても全体と一致しません。
正社員どうしで比べても、女性の平均は男性の71.2%です(編集部が計算)。勤続年数・役職・業種などの違いがどれだけ差を生んでいるかは、この統計表からは分かりません。
年代別の平均給与 男性は55〜59歳、女性は25〜29歳が最も高い
年代別・男女別の平均給与(令和7年分)作成: 編集部 / もとの資料: 国税庁「民間給与実態統計調査」令和7年分
男性は年代が上がるにつれて平均給与も上がり、55〜59歳の7,341千円が最も高くなっています。女性は25〜29歳の3,827千円が最も高く、59歳までは3,571千円から3,827千円の間にあります。国税庁の解説も「女性では年齢による較差はあまり顕著ではない」としています。
| 年齢 |
男性(千円) |
女性(千円) |
全体(千円) |
全体・平成28年分(千円) |
10年の差 |
| 19歳以下 |
1,393 |
1,051 |
1,215 |
1,275 |
60千円減 |
| 20〜24歳 |
2,938 |
2,654 |
2,802 |
2,552 |
250千円増 |
| 25〜29歳 |
4,596 |
3,827 |
4,250 |
3,529 |
721千円増 |
| 30〜34歳 |
5,287 |
3,756 |
4,619 |
4,072 |
547千円増 |
| 35〜39歳 |
5,977 |
3,623 |
5,027 |
4,376 |
651千円増 |
| 40〜44歳 |
6,478 |
3,701 |
5,312 |
4,652 |
660千円増 |
| 45〜49歳 |
6,826 |
3,770 |
5,498 |
4,965 |
533千円増 |
| 50〜54歳 |
7,148 |
3,755 |
5,676 |
5,127 |
549千円増 |
| 55〜59歳 |
7,341 |
3,571 |
5,731 |
4,974 |
757千円増 |
| 60〜64歳 |
6,125 |
3,068 |
4,811 |
3,766 |
1,045千円増 |
| 65〜69歳 |
4,741 |
2,380 |
3,749 |
3,041 |
708千円増 |
| 70歳以上 |
3,823 |
2,097 |
3,077 |
2,969 |
108千円増 |
出典: 令和7年分 全国計表 第10表その3、平成28年分は新しい推計方法による参考値の第10表その3。差は編集部が計算しました。
10年前と比べて伸びが最も大きいのは60〜64歳で、1,045千円増(27.7%増)でした。19歳以下だけは60千円減っています。年代ごとの増減の理由は、資料には書かれていません。
業種別の平均給与 最も高い業種と低い業種で約3.1倍
業種別の平均給与(令和7年分と平成28年分)作成: 編集部 / もとの資料: 国税庁「民間給与実態統計調査」令和7年分
令和7年分で平均給与が最も高い業種は、電気・ガス・熱供給・水道業の8,544千円です。次いで金融業,保険業の7,256千円、情報通信業の6,819千円でした。最も低いのは宿泊業,飲食サービス業の2,758千円で、最も高い業種との比は約3.1倍です。
| 業種 |
令和7年分(千円) |
平成28年分(千円) |
10年の増加率 |
男性(千円) |
女性(千円) |
| 電気・ガス・熱供給・水道業 |
8,544 |
7,768 |
10.0% |
8,878 |
6,899 |
| 金融業,保険業 |
7,256 |
6,366 |
14.0% |
9,074 |
5,272 |
| 情報通信業 |
6,819 |
5,836 |
16.8% |
7,522 |
5,200 |
| 建設業 |
5,903 |
4,815 |
22.6% |
6,464 |
3,738 |
| 製造業 |
5,730 |
5,033 |
13.8% |
6,550 |
3,716 |
| 学術研究,専門・技術サービス業,教育,学習支援業 |
5,679 |
5,049 |
12.5% |
6,985 |
4,236 |
| 不動産業,物品賃貸業 |
5,125 |
4,426 |
15.8% |
6,329 |
3,599 |
| 複合サービス事業 |
5,095 |
4,297 |
18.6% |
5,924 |
3,691 |
| 運輸業,郵便業 |
4,825 |
4,266 |
13.1% |
5,214 |
3,331 |
| 医療,福祉 |
4,240 |
3,880 |
9.3% |
5,712 |
3,686 |
| 卸売業,小売業 |
4,134 |
3,614 |
14.4% |
5,477 |
2,742 |
| サービス業 |
4,017 |
3,376 |
19.0% |
4,857 |
3,011 |
| 農林水産・鉱業 |
3,937 |
2,973 |
32.4% |
4,543 |
3,082 |
| 宿泊業,飲食サービス業 |
2,758 |
2,326 |
18.6% |
3,694 |
1,980 |
| 全体 |
4,866 |
4,250 |
14.5% |
5,967 |
3,418 |
出典: 令和7年分 全国計表 第8表(業種別及び給与階級別の総括表)、平成28年分は新しい推計方法による参考値の第8表その3。増加率は編集部が計算しました(小数第2位を四捨五入)。
業種の分け方は、日本標準産業分類をもとにした14区分です。学術研究,専門・技術サービス業と教育,学習支援業は、1つの区分にまとめられています。
業種の平均には、1年を通じて勤務した人だけが入る点にも注意します。宿泊業,飲食サービス業では、12月末に在職していた人の34.4%が1年未満勤続者でした(人数から編集部が計算)。人の出入りが多い業種ほど、平均に入らない人の割合が大きくなります。
毎月勤労統計調査の給与とどこが違うか
給与の統計には、厚生労働省の毎月勤労統計調査(毎勤)もあります。毎勤の2025年の現金給与総額は、月355,941円でした(事業所規模5人以上)。2つの統計は、対象の人と平均の取り方が違います。
| 項目 |
民間給与実態統計調査(国税庁) |
毎月勤労統計調査(厚生労働省) |
| 数字の単位 |
1年間の給与(年額) |
1か月の給与(月額。年の値は月の平均) |
| 最新の年 |
令和7年分(2026年9月公表) |
2025年分結果確報(2026年2月25日公表) |
| 事業所 |
民間の事業所。従事員1人の事業所から |
16大産業で常用労働者を常時5人以上雇う事業所 |
| 人 |
1年を通じて勤務した給与所得者。パート・アルバイト・役員を含む |
常用労働者(期間を定めずに雇われている人か、1か月以上の期間を定めて雇われている人)。パートを含む |
| 平均の取り方 |
1年の給与の総額を人数で割る |
毎月、常用労働者1人あたりの額を出す |
| 給与の範囲 |
給料・手当と賞与。非課税の通勤手当などは含まない |
きまって支給する給与と、賞与など特別に支払われた給与。退職金は含まない |
| 2025年の全体の平均 |
4,866千円(年額) |
355,941円(月額)。一般労働者465,923円、パートタイム労働者114,527円 |
出典: 国税庁「令和7年分 民間給与実態統計調査」調査結果報告、厚生労働省「毎月勤労統計調査 2025(令和7)年分結果確報」「調査の概要」。
毎勤の月平均を12倍すると4,271,292円で、民間給与実態統計調査の4,866千円より低くなります(編集部が計算した目安)。毎勤の平均には、パートタイム労働者が31.31%含まれ、勤めて1年に満たない人も入ります。一方、民間給与実態統計調査は1年を通じて勤務した人だけで、役員も入ります。
どちらが正しいということではなく、目的で使い分けます。年収の水準を示すなら民間給与実態統計調査、毎月の動きや労働時間と合わせて見るなら毎勤が向いています。業種ごとの月の給与と残業時間は、業種別の給与と残業時間 毎月勤労統計で比べる2025年の数字と読み方にまとめています。
平均は中央値ではない 給与階級別の分布で確かめる
平均給与は、給与の総額を人数で割った値です。一部の人の高い給与に引っぱられ、真ん中の人の額(中央値)より高く出やすい数字です。
民間給与実態統計調査の統計表には、中央値がありません。職種ごとの中央値(中位数)は、厚生労働省の賃金構造基本統計調査で確かめられます。事務職の例は、事務職の有効求人倍率・賃金・人数 データで見る2026年の今で紹介しています。
今日からできること 自社の給与水準を説明するとき
統計の平均と自社の数字を並べるときは、次の順に進めると説明がぶれにくくなります。
- 定義をそろえる。2025年1月〜12月に続けて勤め、12か月給与を受けた人だけを集めます。額は給料・手当と賞与の合計で、非課税の通勤手当は除き、税・社会保険料を引く前の額にします。
- 区分を分ける。男女、正社員とそれ以外、役員を分けて平均を出します。年代は統計と同じ5歳きざみにすると並べやすくなります。
- 比べる表を選ぶ。業種は日本標準産業分類で自社の区分を確かめます。規模でも差が大きいので、事業所規模別・企業規模別の表も見ます(下の表)。
- 平均だけでなく分布も見る。自社の人数を100万円きざみの階級に分けると、統計の給与階級別の構成比と比べられます。
- 社内の資料には、調査名・年分・公表の時期・定義を書き添えます。
| 規模の区分(令和7年分) |
平均給与 |
| 事業所の従事員10人未満 |
3,979千円 |
| 事業所の従事員5,000人以上 |
5,475千円 |
| 資本金2,000万円未満の株式会社 |
4,157千円 |
| 資本金10億円以上の株式会社 |
6,917千円 |
出典: 調査結果報告の解説 第11表・第12表。
この記事の数字は、2026年10月19日に国税庁と厚生労働省の資料で確かめたものです。民間給与実態統計調査の結果は、令和4年分から令和7年分まで、いずれも9月に公表されています。新しい年分が出たら、国税庁の「民間給与実態統計調査結果」のページで最新の数字を確かめてください。