「事務職の年収は低い」と思い込んでいませんか。30〜34歳の女性で比べると、事務職の推計年収は444.9万円。女性全体の436.2万円より8.7万円高い位置にあります。
もちろん、上には上があります。同じ年代の1位はシステムコンサルタント・設計者の691.7万円で、事務職との差は246.8万円でした。ただ、4位に入ったのは企画事務員の581.5万円。事務の区分にも、上位に入る職種があるのです。
比べたのは女性の47職種
使ったのは厚生労働省の賃金構造基本統計調査で、2026年3月に公表された令和7年の結果が最新です。職種と年齢ごとに、女性の行だけを取り出しました。1調査に年収の欄はないので、次の式で出した推計年収で比べています。数字はすべて編集部の計算です。
きまって支給する現金給与額とは、2025年6月分の月給のこと。税金や社会保険料を引く前の額で、残業代や通勤手当も入ります。賞与は前の年の1年間の分です。常用労働者10人以上の企業の計で、短時間労働者は含みません。
順位に入る職種の条件は2つです。
- 25〜29歳、30〜34歳、35〜39歳のどの階級にも、女性が推計3,000人以上いること
- 管理的職業従事者ではないこと。部長や課長のように、役職で分かれる区分だからです
線を3,000人に引いたのは、そこを境に数字の動きが落ち着くからです。令和6年の表で同じ計算をすると、3,000人未満の区分は46.3%が1年で10%以上動き、3,000人以上では16.8%でした。2人数が少ないと、順位は調査の誤差で簡単に入れ替わってしまいます。
この線で残ったのは47職種で、30〜34歳で働く女性(一般労働者)の84.9%が入ります。医師は35〜39歳が推計2,740人で線に届かず、順位の外になりました。30〜34歳の844.4万円も、1年で97.0万円動いた数字です。
同じ階段でも、立つ段は人によって違うイラスト: 編集部が画像生成AIで作成したイメージ(YOBITSUGI AI・OpenAI gpt-image-2.5-sunburst)
1位は691.7万円、差は246.8万円
30〜34歳の女性の職種別の推計年収(上位18職種と事務職全体、女性全体)作成: 編集部 / 出典: 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」
上位5職種は、35〜39歳で並べ直しても顔ぶれが変わりません。システムコンサルタント・設計者は、顧客の業務を分析してシステム全体を企画する仕事で、情報処理のプロジェクトマネージャーもここに入ります。金融営業は、銀行の外務員や証券の勧誘員です。
目を引くのは4位の企画事務員でしょう。企画や業務計画の立案、市場調査をする人の区分で、マーケティング・リサーチャーや商品開発部員が含まれます。事務職より高い仕事を探したら、事務の区分の中にひとつ答えがあった形です。
一方、図に※を付けた6位のデザイナーと7位のその他の商品販売は、前年の同じ計算から20%以上動きました。その他の商品販売は前年なら26位です。この2つの順位は、数段ずれるものと見ておくと安全でしょう。
30代女性全体の推計年収は、30〜34歳が436.2万円、35〜39歳が448.5万円でした。国税庁の統計では30〜34歳の女性が375.6万円と低く出ますが、あちらはパートも含む平均です。3年代ごとの違いは国税庁の平均給与の記事で読めます。
金融営業は差の4割が賞与
同じ「高い」でも、毎月の給与が高いのか、賞与が多いのか、残業が多いのかで、意味は変わりますよね。事務職との差を3つに分けると、高さの理由は職種ごとにばらばらでした。
| 職種 |
事務職との差 |
所定内給与 |
残業代など |
賞与 |
| システムコンサルタント・設計者 |
246.8 |
172.8 |
34.0 |
40.1 |
| 金融営業 |
186.2 |
76.6 |
32.6 |
77.0 |
| 研究者 |
154.6 |
111.7 |
6.0 |
36.9 |
| 企画事務員 |
136.5 |
88.4 |
13.6 |
34.5 |
| 建築技術者 |
125.3 |
49.4 |
42.2 |
33.6 |
| ソフトウェア作成者 |
86.4 |
69.8 |
13.6 |
3.0 |
| 看護師 |
41.0 |
38.5 |
12.1 |
−9.7 |
単位は万円で、30〜34歳の1年分です。4
金融営業は、賞与の差77.0万円が所定内給与の差76.6万円を上回りました。差の41.4%が賞与です。
建築技術者は、差の3分の1が残業代など。6月の超過実労働時間は22時間で、事務職の8時間の2倍を超えます。年収が高くても、働いた時間で割った額まで同じだけ高いとは限りません。
ソフトウェア作成者は差の8割が所定内給与で、賞与の差は3.0万円だけでした。看護師はさらに違い、賞与は事務職より9.7万円少なくなっています。
事務の中にも249.6万円の幅
事務の区分どうしの差は、1位と事務職の差より大きくなりました。企画事務員と受付・案内事務員は、30〜34歳で249.6万円違います。自分の仕事がどの行に当たるか、探してみてください。
事務の区分別の推計年収(女性・万円)。順位は30〜34歳の47職種の中の位置
| 順位 | 区分 | 25〜29歳 | 30〜34歳 | 35〜39歳 |
| 4位 | 企画事務員企画、市場調査、商品開発 | 491.9 | 581.5 | 571.1 |
| 15位 | 庶務・人事事務員総務、人事、給与 | 422.1 | 453.7 | 472.4 |
| 16位 | 営業・販売事務営業事務、販売事務 | 407.3 | 448.7 | 446.3 |
| 17位 | 総合事務員内容を限定しない事務全般 | 421.8 | 447.4 | 455.9 |
| - | 事務職全体 | 414.7 | 444.9 | 456.3 |
| 18位 | 会計事務経理、出納、預貯金の窓口 | 400.2 | 431.7 | 464.3 |
| 19位 | 運輸・郵便事務駅務、配車、郵便の窓口 | 391.9 | 421.1 | 430.0 |
| 22位 | その他の一般事務広報、法務、医療事務 | 404.6 | 414.7 | 454.2 |
| 23位 | 生産関連事務生産管理、出荷、倉庫 | 404.1 | 407.7 | 433.2 |
| 29位 | 電話応接事務員コールセンター、電話受付 | 366.0 | 370.0 | 359.8 |
| 34位 | 事務用機器操作員データ入力 | 315.3 | 349.4 | 342.5 |
| 44位 | 受付・案内事務員受付、企業のフロント | 346.3 | 331.9 | 359.4 |
経理の人は会計事務、総務や人事、給与の担当は庶務・人事の行を見てください。いわゆる一般事務は迷いやすいところで、仕事の内容が決まっていなければ総合事務員に、広報や医療事務のように決まっていれば、その他の一般事務に入ります。
順位は年齢で動きます。会計事務は30〜34歳では総合事務員より15.7万円低いのに、35〜39歳では8.3万円上回りました。男女計で見た事務の賃金は、事務職の有効求人倍率と賃金の記事にあります。
20代後半との差で見えること
25〜29歳と35〜39歳の推計年収の差(女性・推計1万人以上の19職種)作成: 編集部 / 出典: 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」
25〜29歳と35〜39歳を比べると、順位とは別の姿が出てきます。看護師は25〜29歳の時点で501.5万円あり、事務職より86.9万円高いのですが、35〜39歳との差は1.8万円。事務職は41.7万円高くなるので、両者の差は47.0万円まで縮まります。
反対に、企画事務員とソフトウェア作成者は80万円前後の差がありました。もっとも、これは同じ人を10年追った数字ではありません。今の20代後半と今の30代後半の平均を並べたものなので、昇給の見込みとは読めないのです。
差を見るこの図だけは、人数の線を1万人に上げました。1位のシステムコンサルタント・設計者が入っていないのはそのためです。35〜39歳の推計年収が1年で721.1万円から1,049.3万円へ動いていて、差を比べるには振れ幅が大きすぎました。
この金額で言えないこと
順位の金額は、その仕事に移ると届く額ではありません。今その職種で働いている人の平均です。
30〜34歳なら平均年齢はどの職種も32.0〜32.9歳にそろいますが、平均勤続年数は金融営業の9.2年から保険営業の4.0年まで開きます。事務職は6.3年。勤続の差が金額の差に混ざっていると見ておくほうが正確です。
資格の壁もあります。薬剤師や看護師、臨床検査技師は、調査の職種解説でも免許を持つ人の区分です。
会社の大きさも効きます。同じ事務職の30〜34歳でも、企業規模1,000人以上に絞ると496.8万円で、全体より51.9万円高くなりました。職種を変えなくても、これだけの差が出るわけです。
もうひとつ、同じ職場の人より所定労働時間が短い人は短時間労働者に分かれ、ここには入りません。35〜39歳の数字は、通常の時間で働き続けている人の平均です。
転職で賃金がどう動くかは、別の統計で見る必要があります。30代前半の女性の数字は、転職で賃金が増えた人の割合で読めます。
自分の年収を同じ式で出す手順
同じ式で計算すれば、図の数字とそのまま並べられます。
- 直近の6月分の給与明細を開き、税金や社会保険料を引く前の総支給額を12倍する
- 前の年に受け取った賞与の合計を足す
- e-Statの「役職及び職種解説」で、自分の仕事が統計のどの職種に当たるかを確認する
- 同じ年齢階級の行と比べ、差が月給、残業代、賞与のどこから来ているかを見る
差が賞与にあるなら賞与の決まり方を、残業代にあるなら働く時間を、所定内給与にあるなら職種や等級を見ることになります。どこを動かしたいのかが決まると、5年後のキャリアの考え方も具体的になるはずです。
この記事の数字は、2026年11月1日に各資料の原表で確認しました。給与は2025年6月分、賞与は2024年分です。