来客3人と社内2人の会議に、お茶を5つ。最初の1杯は、誰のものでしょうか。答えは、来客の中の上座に近い人です。社内の人は、来客全員に出したあとに、役職の高い順で出します。
お茶出しの順番や置き方は、法令や官公庁の指針で決まったものではありません。一般的な慣習で、会社や地域によって違うこともあります。そのため、細かい作法を覚えるより、会話の邪魔をしないこと、こぼさないことを優先します。来客対応の全体の流れは来客対応の流れ 受付・ご案内・お茶出し・お見送りの言い方と準備にまとめています。ここでは、お茶を出す場面だけを、準備から片付けまで掘り下げます。
出す順番は「来客が先、上座から」
順番の考え方は2つだけです。
- 来客を先に、社内の人はあとに
- 来客の中では上座の人から、社内の人は役職の高い順に
上座は、一般的にはドアから遠い席です。部屋ごとの考え方は席次の基本を図解 会議室・応接室・タクシー・エレベーターの上座で説明しています。来客の役職が分からないときは、座っている位置で判断します。上座に座っている人を先にします。
お茶を出す順番と、置く位置・茶碗と茶托の向き作成: 編集部 / 出典: 編集部(一般的なビジネスマナーの例)
図の例では、来客の2人にお茶を出してから、社内の2人に出します。社内のあいだは、上位の人が先です。同じ役職の人が並ぶときは、上座に近い席の人からで差し支えありません。
運ぶ前に、人数・道具・お茶を整える
お茶を出す前の準備で、ほとんどの失敗は防げます。
人数を確かめる
来客の人数と、同席する社内の人数を、会議の前に確かめます。直前に人数が増えることもあるので、予備に1つ多く用意しておくと、慌てずに済みます。出す順番を考えやすいように、席の配置も見ておきます。
道具をそろえる
湯のみで出す場合は、次を用意します。
- 湯のみ(人数分と予備)
- 茶托(湯のみと同じ数)
- お盆
- 布巾(こぼしたときと、お盆の水気をふくため)
一般的には、湯のみと茶托は、お盆の上では別々にして運びます。重ねたままだと、置くときに茶托を水気で汚しやすく、湯のみを茶托にのせる所作がきれいに見えるためです。置くときに、茶托に湯のみをのせて、両手で出します。
お茶の量と温度
量は、一般的には湯のみの7分目ほどです。入れすぎると運ぶときにこぼれやすく、飲むときに手が熱くなります。
温度は、お茶の種類で変わります。農林水産省の案内では、玉露は50度から60度のお湯で入れると、うま味を引き出せるとしています。煎茶やほうじ茶の湯温は、この案内には書かれていません。茶葉の袋に書かれた目安に従うのが確実です。会社で使う茶葉が決まっていれば、その入れ方を共有しておきます。
部屋に入ってから置くまで
部屋の前では、お盆を両手で体の前に持ち、ノックをします。返事があったら、「失礼いたします」と言って入ります。ドアは、お盆を片手で支えて開けるか、いったんお盆を置いてから開けます。
言葉は短く、小さな声で言います。お茶を出す動作を言うときは、「お持ちしました」「お出しします」のように、「お(ご)〜する」の形にします。文化庁の「敬語の指針」では、この形を、相手を立てて自分の動作を低く言う謙譲語としています。
入ったら、お盆はドアに近いサイドテーブルに置きます。会議室に置く場所がなければ、空いた机の端に置いてかまいません。お盆を手に持ったまま出すこともありますが、片手が空かず、こぼしやすくなります。
置く位置は、来客から見て右にお茶、左にお菓子
一般的には、お茶は相手の右側から、「どうぞ」と声をかけて両手で出します。置く位置は、来客から見て右です。お菓子も添えるときは、来客から見て左にお菓子、右にお茶です。
| 項目 |
一般的な置き方 |
| 位置 |
来客から見て右側にお茶、左側にお菓子 |
| 茶碗の絵柄 |
絵柄が来客の正面に向くように置く |
| 茶托の木目 |
木目のある茶托は、来客から見て横向きにそろえる |
| 声のかけ方 |
「どうぞ」と小さく添える |
| 出し方 |
茶托に湯のみをのせて、両手で出す |
茶碗に絵柄がなければ、向きを気にしなくてかまいません。木目のない茶托も多くあります。迷うときは、前任者に聞くか、見た目がそろうように置きます。
資料が出ているとき
机の上に資料が広がっているときは、資料の上には置きません。空いた所を探して、「こちらに失礼いたします」と一言添えます。書き込んでいる手元には、とくに置かないようにします。
右側から出せないときは、出しやすい側から、「こちらから失礼いたします」と言って出します。無理な体勢で右側から出すより、安全に置くほうが先です。相手の前を横切って出すのは避けます。
会議中に入るときは、話の切れ目と声の大きさ
会議がすでに始まっているときは、入る時機を選びます。話が続いている最中は、ドアの前で待ちます。議題が変わったとき、資料の説明が終わったときなど、切れ目をみて入ります。
会社によっては、「お茶は会議の始まる前に出す」と決めているところもあります。会議が始まる前に出せば、話の途中に入る必要がなくなります。会議が長引く場合や、来客の到着が遅れたときは、途中で入るしかないので、次の動きを知っておきます。
会議中に入ってから出るまでの6つの動き作成: 編集部 / 出典: 編集部(一般的なビジネスマナーの例)
入ってから出るまで、声は小さく保ちます。会話の途中で「失礼いたします」と大きな声で言うと、話し手の流れを止めてしまいます。ノックも小さくします。置くときの「どうぞ」は、声に出さずに会釈だけでかまいません。
机が狭いときは、すべての湯のみを来客に出し終えてから、社内の人の分を置きます。置く場所がない席には、無理に置かず、サイドテーブルに置いて「こちらにご用意しました」と言います。
ペットボトルと紙コップのとき
湯のみではなく、ペットボトルや紙コップで出す会社も多くあります。この場合も、公的な決まりはなく、一般的な考え方で次のようにします。
| 出し方 |
一般的な扱い |
気をつける点 |
| ペットボトル(開けていない) |
来客から見て右側に、ラベルを来客に向けて置く |
キャップは開けない。結露で資料がぬれないよう、コースターや紙ナプキンを添える |
| ペットボトル+コップ |
ボトルとコップを並べて置く |
コップは来客から見て右、ボトルはその奥か横。注ぐかどうかは相手に任せる |
| 紙コップ |
相手の右側に置く。蓋つきなら蓋はしたまま |
持つと熱いので、飲み物の温度を考える。ホットは二重の紙コップかスリーブつきにする |
ペットボトルで出すと、来客が「失礼な扱いをされた」と感じるのではないかと心配する人もいます。ただ、公的な決まりはなく、どう受け取るかは会社や相手で違います。社内でペットボトルにすると決めたなら、人数分をそろえて、同じ種類を出します。同席する社内の人の分も同じ形にすると、来客だけ違う扱いに見えにくくなります。
お代わりの目安と、下げるタイミング
お代わりの時機に決まりはありません。一般的には、会議が1時間を超えたころを一つの目安にして、様子を見て出します。湯のみが空になっていれば、早めに声をかけます。
お代わりのときは、飲み終わった湯のみを下げて、新しく入れたお茶を出します。前のお茶が残っているときは、新しいお茶を重ねて置かず、下げてよいかをひと言たずねます。会議中なので、声は小さくします。
- 湯のみが空のとき: 新しいお茶に替える
- 半分以上残っているとき: 下げずに、そのままにする
- お菓子の皿が空のとき: 一緒に下げる
会議が長くなりそうなときは、会議の前に「お茶を何回出すか」を担当者と決めておくと、途中で迷いません。
退室と片付け
出し終えたら、お盆を体の前で持ち、一礼して下がります。ドアの前で「失礼いたしました」と小声で言い、音を立てずに閉めます。ドアノブは回したまま、ゆっくり戻します。
片付けは、来客が帰ったあとに行います。会議の途中で空の湯のみを下げに入るのは、お代わりを出すとき以外は避けます。
- 湯のみ・茶托・お菓子の皿を、お盆に分けてのせる
- 机の上にこぼれがないか、布巾でふく
- 来客の使った席に、忘れ物がないか確かめる
- 湯のみを洗い、茶托の水気をふいてしまう
来客が帰る前に下げてしまうと、帰りを急がせているように見えるので、一般的には避けます。
暑い時期と寒い時期の違い
暑い時期は、冷たいお茶を出す会社もあります。一般的には、冷たい飲み物は氷が溶けて水滴が出るので、コースターを添えます。寒い時期は、温かいお茶の温度に気を配ります。来客が外から着いたばかりのときは、温かい飲み物が喜ばれることが多いです。
冷たい飲み物と温かい飲み物のどちらを出すかは、決まりがなく、来客の希望を受付で聞いておくと、そのとおりに出せます。
迷いやすい場面と、そのときの答え
| 場面 |
一般的な対応 |
| 来客の人数が、会議の途中で増えた |
追加の1杯を、サイドテーブルから静かに出す。順番は来客を先に |
| 誰が上座か分からない |
座っている位置で判断する。ドアから遠い席の人から出す |
| 来客が飲みものを断った |
無理にすすめず、「ご用意しています」と一度だけ伝えて下がる |
| お茶をこぼした |
まず来客の資料や服に被害がないかを確かめ、布巾でふいて、改めて新しいお茶を出す |
| 来客が先に着いて、担当者がまだ来ない |
お茶は出してよい。担当者が来てから「どうぞ」と勧めてもらう |
訪ねる側として出されたお茶をいただくときの考え方は、会社訪問のマナー 受付での名乗り方・応接室での待ち方から帰り際の挨拶までで説明しています。
お茶出しを引き継ぐ日にやること
初めてお茶出しを任されたら、前日までに次の順で準備を進めると、当日に慌てません。
会社に決まりがなければ、受付・庶務で一度決めて共有します。決める項目は、次の4つです。
- 湯のみ・ペットボトル・紙コップのどれで出すか
- お茶の種類と、暑い時期・寒い時期の使い分け
- 会議の始まる前に出すか、途中で出すか
- お代わりを出す時間の目安
決めた内容を1枚のメモにして、給湯室に貼っておくと、人が替わっても同じように出せます。