生成AIで作った文章や画像を、社内の資料や会社のSNSに使っていいのか、迷ったことはありませんか。文化審議会がまとめた考え方によると、AIで作ったものも、人が作ったものと同じ物差しで著作権の侵害かどうかを判断します。1
確認する点は、既存の作品と似ていないかと、作品をもとにしたと疑われる作り方をしていないかの2つ。文化庁のチェックリストに沿って確認すれば、資料や広報に出す前にすることがはっきりします。2
侵害かどうかは「似ている」と「もとにした」で決まる
社外に出す前に、似た作品がないかを確認するイラスト: 編集部が画像生成AIで作成したイメージ(YOBITSUGI AI・OpenAI gpt-image-2.5-sunburst)
AIで作った画像をSNSに載せるときも、印刷して配るときも、基準はふだんの著作権侵害と同じです。既存の作品と創作的な表現が共通していること(類似性)と、既存の作品をもとに作ったこと(依拠性)。この2つがそろい、私的使用などの例外にも当たらなければ侵害になります。1
つまり、似ていない、またはもとにしていないなら、著作権の面では許可なく使えます。作風やアイデアが似ているだけなら侵害にはなりませんが、特定の作家の作品に共通する表現がそのまま感じ取れるほどなら、侵害になり得ます。1
AIで作った文章や画像が著作権の侵害になるかは、3つの条件で決まる作成: 編集部 / 出典: 文化庁
例外のほうは、仕事では当てにしにくいものです。チェックリストは、AIで作ることと、作ったものを使うことを分けて考えるよう求めました。個人が私的に使う目的なら、作ること自体に許可は要りません。権利者の許諾を得て使う前提で、社内で検討する過程で作る場合も同じです。23
私的使用とは、個人的に、または家庭内などの限られた範囲で使うこと。3文化庁のセミナー資料も、業務の外で使う人向けの確認として紹介しました。4チェックリストによると、ネットで配信したり、印刷して配ったりする使い方は、例外の範囲から外れることが多くなります。2仕事の資料や社内報、社外向けのウェブに使うなら、例外を当てにせず、似ていないかを確認してから使いましょう。
知らずに似ても、使うのをやめるよう求められることがある
人が描くなら、見たことのない作品と似ても偶然の一致で済むのがふつうですが、生成AIでは事情が違います。使ったAIが学習のときにその作品を取り込んでいれば、利用者が作品を知らなくても、ふつうは「もとにした」と推認されるのです。1
考え方によれば、故意も過失もない場合、損害賠償や刑事罰の対象にはなりません。ただ、使うのをやめるよう求める差止めは、故意や過失がなくても請求できます。使用料に当たる額の返還を求められることもあり得ます。1会社のチラシやウェブに載せたあとなら、回収や差し替えに手間がかかるでしょう。
使う前に似ている作品を検索し、プロンプトを残す
チェックリストは、使う前にまず既存の作品と似ていないかを確認するよう求め、方法の例にインターネットの文章検索と画像検索を挙げました。2画像は画像検索にかけ、文章は特徴のある一文を検索窓に入れれば、似た作品が出てこないか見られます。よく似た作品が見つかったら、その案は使わず、プロンプトを変えて作り直すほうが早道です。
頼み方にも注意が要ります。プロンプトに作品の題名やキャラクターの名前を入れると、既存の作品を知っていた手がかりになり、「もとにした」と認められやすくなるからです。2他社のチラシや他人の画像を読み込ませて似たものを作らせる使い方も、権利者の許諾が必要になる場合があります。2
AIの文章や画像を仕事で使う前に、4つの場面で確認すること作成: 編集部 / 出典: 文化庁
「もとにしていない」と説明できるよう、プロンプトなど作った過程をあとから確認できる状態にしておくことも、チェックリストの勧めです。2社外に出すものだけでも、使ったサービスとプロンプト、作った日をメモに残しておけば、問い合わせが来ても落ち着いて答えられます。
使うAIサービスの利用規約も、先に読んでおきましょう。他人の作品の入力を禁じるなど、著作権侵害のおそれがある使い方を規約で制限している場合があるためです。2主なサービスの規約の違いは、姉妹メディアのハック!でAIの生成AIの著作権と商用利用に一覧があります。
指摘を受けたときの動きも、先に決めておく
チェックリストは業務で使う会社に、使い方の社内ルールを作るなどの予防とあわせて、侵害が起きた場合の対応もあらかじめ考えておくよう求めました。例には、情報の共有、AIサービスの停止と復旧、権利者への対応、原因の解明、再発の防止が並びます。2
総務や広報の担当なら、権利者から連絡が来たときにだれが受けるか、載せたものをだれの判断で下げるかの2つだけでも決めておくと、慌てずに済みます。
AIだけで作ったものは、自社の著作物にならないことがある
AIで作ったものが著作物に当たるかは、侵害とは別の問題です。考え方によると、人がほとんど指示を出さず、ボタンを押すだけでAIが作ったものは著作物に当たりません。1著作物でなければ、ほかの会社が同じ画像を使っても、著作権を理由には止められません。
一方、創作的な表現を具体的に示す細かい指示を重ねたり、生成物を見ながら指示を直して作り直したりすれば、著作物と認められる場合があります。人が加筆や修正をした部分は、ふつう著作物です。1だから、長く使う会社のキャラクターなどは、AIの案に人が手を入れておくと、自社の著作物として扱える部分が残ります。
気をつけたいのは、「AIで作ったものには著作権がないから、何に使っても大丈夫」という思い込みです。チェックリストも、侵害になるかの問題と著作物かどうかの問題を混同しないよう、社員の著作権の理解を確認しておくよう求めました。2AIで作ったものが著作物でなくても、既存の作品に似ていてもとにしたと認められれば、侵害になり得ます。1
AIで作ったものを著作物として取引先に渡すなら、AIを使ったことや著作物かどうかを相手に説明しておく必要もあります。2
AIの文章や画像を社外に出す前に確認すること
- 使うAIサービスの利用規約で、入力してはいけないものと出力の扱いを確認した。
- プロンプトに、作品の題名やキャラクター名などの固有名詞を入れていない。
- 他人の画像や文章を読み込ませて、似たものを作らせていない。
- 画像検索や文章検索で、似た作品が出てこないか確認した。
- 使ったサービスとプロンプト、作った日を残した。
- 自社のものとして長く使うなら、人が手を加えた。
文化審議会の考え方は、公表した時点の解釈を示したもので、それ自体に法的な拘束力はありません。1判断に迷うものは、社内の法務や弁護士に相談しましょう。会社として決まりを作る側に回ったら、生成AIの社内ルールの作り方で項目の分け方を確認できます。