デジタル庁は2026年10月19日、マイナンバー制度の「情報連携可能な事務手続の一覧及び省略可能な書類」を更新しました。行政機関どうしが情報をやり取りすることで、住民票の写しや課税証明書を出さずに済む手続きの一覧です。
会社の総務・人事・労務にとっては、社会保険・雇用保険・税の届けで「マイナンバーを書けば省けるもの」を見直すよい機会です。この記事では、省ける届けと添付書類、その条件と注意をまとめました。2026年10月時点の日本年金機構・厚生労働省・国税庁・個人情報保護委員会の資料で確かめています。
マイナンバーで書類が省けるしくみ
行政機関どうしが情報をやり取りする「情報連携」
デジタル庁の説明では、情報連携とは、行政機関などが専用のネットワークで手続きに必要な情報をやり取りすることです。このネットワークを情報提供ネットワークシステムといいます。これにより、申請する人は書類の提出を省けるようになります。
やり取りにはマイナンバーそのものではなく、専用の符号を使います。年金の情報は年金事務所、地方税の情報は市区町村というように、情報は分かれて管理されたままです。行政機関どうしのやり取りの履歴は、本人がマイナポータルで確かめられます。
会社の届けで省けるものは3つの型
会社が出す届けで省けるものは、次の3つに分けると整理しやすくなります。
| 型 |
例 |
確かめる資料 |
| 届けそのものが要らない |
健康保険・厚生年金保険の住所変更届・氏名変更届 |
日本年金機構 |
| 添付書類が要らない |
被扶養者(異動)届の続柄の書類、介護休業給付金の続柄の書類 |
日本年金機構・厚生労働省 |
| マイナンバーの記載を省ける |
扶養控除等申告書(帳簿を備えた場合)、雇用保険の「マイナンバー届出済」 |
国税庁・厚生労働省 |
情報連携には「本格運用」と「試行運用」があります。日本年金機構の一覧の見方では、本格運用の情報は添付書類を省けます。試行運用は、取得する情報の正確さを確かめている段階で、その間は原則として添付書類がこれまでどおり必要です。
社会保険・雇用保険・税の届けで、マイナンバーを書くと省けるものと条件の早見表作成: 編集部 / もとの資料: デジタル庁・日本年金機構・厚生労働省・国税庁の案内
社会保険(日本年金機構)で省けるもの
住所変更届・氏名変更届は原則いらない
日本年金機構にマイナンバーが収録されている人は、住所変更届と氏名変更届を原則として省けます。収録とは、機構が持つ年金の記録にマイナンバーを登録することです。社員が引っ越しや結婚をしても、会社から届けを出さずに済みます。
ただし、次の人は届けが必要です。住所と氏名で、例外の範囲が少し違います。
| 届け |
届けが必要な人(例外) |
| 住所変更届 |
マイナンバーと基礎年金番号が結び付いていない人、マイナンバーを持たない海外居住者、短期在留外国人、健康保険組合の被保険者、70歳以上で健康保険だけに入っている人、住民票の住所以外の居所を登録する人(登録をやめる人も) |
| 氏名変更届 |
マイナンバーと基礎年金番号が結び付いていない人、協会けんぽの健康保険だけに入っている人(結び付いていても必要)、マイナンバーを持たない海外居住者、短期在留外国人 |
氏名が変わって新しい資格確認書などが届いたときは、前の資格確認書などを社員から回収して返納します。協会けんぽの被扶養者の氏名が変わったときは、氏名変更届ではなく被扶養者(異動)届を出します。
健康保険組合の被保険者は、住所変更届を省けません。組合そのものへの届け方は、組合の案内で確かめてください。また日本年金機構は、平成30年3月5日より前に行われた変更など、省略できない場合も一部あるとしています。
資格取得届は住所の記入を省ける
健康保険・厚生年金保険の資格取得届にマイナンバーを書くと、住所の記入を省けます。日本年金機構が、住基ネットから住民票の住所を取れるためです。住民票と違う場所(居所)を郵送先にするときは、資格取得届とは別に住所変更届(居所届)を出します。
入社の届け全体の流れは入社手続きのチェックリストにまとめています。
被扶養者(異動)届は続柄と同居の書類を省ける
家族を扶養に入れる届けでは、条件を満たすと添付書類を省けます。日本年金機構の手続きのページ(2026年9月30日更新)で確かめた内容です。
| 添付書類 |
省ける条件 |
| 続柄を確かめる書類(戸籍謄本・抄本か住民票の写し) |
社員と家族の両方のマイナンバーを届書に書き、事業主が書類で続柄を確かめた旨を届書に書く。配偶者や20歳以下の子との関係で2人とも日本の戸籍があるときは、確かめた旨の記載がなくても不要にできる(子の出生を機にした届けを除く) |
| 同居を確かめる書類 |
日本年金機構が確かめるため原則不要(確かめられないときは住民票を求められることがある) |
| 60日以上さかのぼるときの扶養の事実の書類 |
出生・婚姻・養子縁組(子が20歳以下のとき)を機にした届けで、2人とも日本の戸籍があり、両方のマイナンバーを書けば不要 |
| 収入を確かめる書類 |
税の控除対象配偶者・扶養親族になっている家族は、事業主の証明で不要(マイナンバーとは別の省き方。社員の合計所得金額が1,000万円を超えるときの配偶者は書類が要る) |
日本年金機構の「情報連携を行う届書等一覧」(令和8年10月1日現在)も見ておきます。被扶養者(異動)届では、地方税関係情報(課税証明書など)と住民票関係情報が本格運用です。戸籍関係情報は、配偶者と20歳以下の子との関係を確かめるときに限って本格運用で、それ以外の続柄は試行運用です。雇用保険関係情報(雇用保険被保険者証など)も試行運用です。
一方で、手続きのページの添付書類の欄は、家族の収入の種類に応じて課税(非課税)証明書などを挙げています。どこまで省けるか迷うときは、出す前に事務センターか年金事務所に確かめてください。税と社会保険の扶養の違いは扶養とは 税の扶養と社会保険の扶養の違いで整理しています。
健康保険組合に入っている会社は、家族の健康保険の届けを組合へ出します。配偶者が国民年金の第3号被保険者になるときは、日本年金機構へ第3号被保険者関係届だけを出します。
雇用保険(ハローワーク)で書くこと・省けること
マイナンバーを書く届けと「マイナンバー届出済」
厚生労働省のQ&A(2026年7月9日版)では、事業主がマイナンバーを出す雇用保険の手続きは次のとおりです。
| 区分 |
届け・申請 |
| 様式にマイナンバーの欄がある |
資格取得届、資格喪失届、高年齢雇用継続給付(初回)、育児休業給付金(初回)・出生後休業支援給付金、出生時育児休業給付金、育児時短就業給付、介護休業給付金 |
| 番号が未届なら個人番号登録・変更届を添える |
転勤届、雇用継続交流採用終了届、2回目以降の高年齢雇用継続給付・育児休業給付金・育児時短就業給付の申請、出生後休業支援給付金 |
同じ会社がほかの機会にすでにマイナンバーを届けていれば、欄外に「マイナンバー届出済」と書くことで、番号の記載を省けます。ただし資格取得届は除きます。辞めてから次の会社に入るまでに番号が変わっても、ハローワークでは分からないためです。
いったん辞めた人を再び雇うときは例外です。以前に届けた番号に変わりがないことを会社が確かめれば、資格取得届でも「マイナンバー届出済」で受け付けます。電子申請では備考欄に書きます。
マイナンバーも「マイナンバー届出済」の記載もない届けを郵送すると、返戻されます。厚生労働省は、マイナンバーの届けはできるだけ電子申請で行い、郵送するときは書留など記録の残る方法にするよう求めています。
添付書類を省ける給付
介護休業給付金では、社員と介護する家族が同じ世帯なら、続柄の書類を省けます。申請のときに2人のマイナンバーを届け出れば、住民票記載事項証明書などがいりません。同じ世帯でないときは、これまでどおり住民票記載事項証明書などが必要です。
育児休業等給付では、2026年6月から、住民票の世帯の情報・戸籍・妊娠の届出・地方税の情報との情報連携を試行しています。世帯全員の住民票や母子健康手帳、課税証明書などを省けるか確かめるための試行です。Q&Aには省けるようになったとは書かれていないため、添付書類は今の案内どおり用意します。
公金受取口座を登録している人は、2022年10月11日から、通帳やキャッシュカードの添付・提示を不要にできるようになりました(厚生労働省)。給付の申請の前に、本人が登録しているかを聞いておくと手間が減ります。
なお、雇用保険の氏名変更届は2020年1月に廃止されています。氏名が変わったときは、資格喪失届や転勤届、給付の申請などの際にあわせて届け出ます(雇用保険事務手続きの手引き 令和8年8月版)。
税(国税庁)でマイナンバーを書くもの・省けるもの
源泉徴収票は本人用に番号を書かない
税務署へ出す給与所得の源泉徴収票には、マイナンバーを書きます。本人に渡す源泉徴収票には、マイナンバーを書きません(国税庁 No.7411、令和8年4月1日現在の法令等)。給与ソフトの設定で、本人用に番号が印字されないことを確かめておきます。
扶養控除等申告書は帳簿があれば記載不要
扶養控除等申告書には、原則として社員・配偶者・扶養親族のマイナンバーを書きます。ただし、会社が一定の帳簿を備えていれば、帳簿に載っている人の番号は書かなくてよくなります。2017年(平成29年)1月1日以後に支払う給与の申告書から使える扱いです。
| 確かめること |
国税庁のFAQの内容 |
| 帳簿に書くこと |
本人・控除対象となる配偶者・扶養親族などの氏名・住所・マイナンバー、帳簿のもとにした申告書の名称、その提出年月 |
| 帳簿の作り方 |
最初にマイナンバーを書いた扶養控除等申告書などの提出を受けて作る。電子データでもよい |
| 使えないとき |
帳簿の氏名やマイナンバーと、申告書に書くべき内容が違うとき |
| 変わったとき |
社員が変更前後の氏名・住所・番号を書いた届出書を出し、会社が帳簿を直す |
| 保存 |
番号を書かずに出された申告書のうち最後のものの保存期限(提出期限の年の翌年1月10日の翌日から7年)まで |
帳簿がなくても、会社と社員が合意すれば別の方法もあります。社員が申告書の余白に「給与支払者に提供済みのマイナンバーと相違ない」と書きます。会社は手元の番号を確かめ、確かめた旨を申告書に表示します。
この方法でも、番号以外の項目は前年と同じでも省略できません。会社は、手元の番号と申告書をすぐ結び付けられるように管理しておきます。
帳簿の扱いは、配偶者控除等申告書・退職所得の受給に関する申告書・所得金額調整控除申告書などにも使えます。年末調整の書類を配る前に、どちらの方法をとるか決めておくと、回収のあとの確認が楽になります。
会社がしなければならないこと
利用目的を示し、受け取るたびに本人確認をする
マイナンバーを受け取るときは、利用目的を本人に通知するか公表します。源泉徴収票の作成と健康保険・厚生年金保険の届けなど、使う事務をまとめて特定して通知できます。方法としては、社内LANでの通知、書面での提示、就業規則への明記などが挙げられています(個人情報保護委員会のガイドライン)。
本人確認は、番号が正しいかの「番号確認」と、番号の持ち主かの「身元確認」の2つです。マイナンバーカードがあれば1枚で両方を確かめられます。ない場合は、番号確認の書類(マイナンバーが書かれた住民票の写しなど)と身元確認の書類(運転免許証など)を組み合わせます。
扶養控除等申告書に書く扶養親族の本人確認は、社員が行います。一方、配偶者を国民年金の第3号被保険者にする届けでは、事業主か、その委託を受けた社員が配偶者の本人確認をします(日本年金機構)。同じ家族の番号でも、届けによって確かめる人が違う点に気を付けます。
マイナンバーを受け取ってから届け出・廃棄までの段取りと、本人確認をする人作成: 編集部 / もとの資料: 個人情報保護委員会・国税庁・日本年金機構・厚生労働省
安全管理措置と廃棄
個人情報保護委員会のガイドライン(事業者編)は、基本方針と取扱規程を定め、組織的・人的・物理的・技術的な安全管理措置をとるよう求めています。従業員100人以下の中小規模事業者には、一部の事業者を除いて特例的な対応方法が示されています。
保存期間が過ぎたマイナンバーは、できるだけ速やかに廃棄か削除をします。集め方・保管・廃棄の細かい手順は別の記事で扱います。書類ごとの保存期間は会社の書類の保存期間にまとめています。
今日からできること
省ける届けや書類は、条件が合わないと返戻のもとになります。次の6つを順に確かめておくと、届けのたびに迷わずに済みます。
- 住所変更届・氏名変更届が必要な社員(健康保険組合の加入者、海外居住者、短期在留外国人、居所を登録している人など)を一覧にする
- マイナンバーが年金の記録に結び付いているか、本人にねんきんネットか年金事務所で確かめてもらう
- 被扶養者(異動)届で、社員と家族の両方の番号を書き、「続柄確認済み」のチェック欄に印を入れる手順を決める
- 雇用保険で番号を届け済みの社員が分かるように台帳に印を付け、「マイナンバー届出済」を使える場面を整理する
- 扶養控除等申告書を帳簿の方法にするか決め、帳簿の項目と保存期限を決める。本人用の源泉徴収票に番号が出ないことも確かめる
- 利用目的の通知文と本人確認の手順を、取扱規程に書いておく
この記事の内容は、2026年10月19日に確かめたデジタル庁・日本年金機構・厚生労働省・国税庁・個人情報保護委員会の資料によります。個別の事情の判断は、社会保険労務士・税理士か、年金事務所・ハローワーク・税務署に確かめてください。