年末が近づくと、総務には「今年のお歳暮はどこに、いくらで、いつ送るか」という相談が集まります。この記事では、取引先へのお歳暮の送り先リストを作る担当者に向けて、送る時期と間に合わないときの切り替え、関係の深さで決める社内の基準、品物とのし、送り状の文例、届いたときの記録までを順にまとめます。時期・金額・品物は慣習なので一般的な例として書き、公務員への贈答の制限と経理の扱いは2026年10月時点の法令と国税庁の資料で確かめています。
お歳暮を送る時期 12月上旬から20日ごろに届くように
お歳暮は、1年の感謝を伝える年末の贈り物です。届ける時期に法律や公的な決まりはなく、一般的には12月上旬から20日ごろに届くように手配します。正月事始めといわれる12月13日ごろからとする考え方もあり、11月下旬から届ける会社もあります。迷ったら、前年に自社が送った時期と、相手から届いた時期を目安にします。
会社あてに送るときは、取引先の年末の休業日も見ておきます。休業に入ってから届くと受け取る人がおらず、生ものは傷むおそれがあります。取引先から届いた年末年始の休業のお知らせを、送り先リストに書き写しておくと安心です。配送にかかる日数は、使う運送会社の公式のページで確かめます。日本郵便なら「お届け日数を調べる」のページで目安が分かります。
年内に届かないときは「御年賀」か「寒中御見舞」に
12月20日を過ぎても、年内に届くなら「御歳暮」のまま贈るのが一般的です。年内に届かないときや、相手の休業に重なるときは、年が明けてから表書きを変えて届けます。
| 届ける時期 |
表書き(一般的な例) |
気を付けること |
| 12月上旬〜20日ごろ |
御歳暮 |
取引先の休業日より前に届ける |
| 12月下旬(年内) |
御歳暮 |
休業日と受け取る人を確かめる |
| 1月1日〜松の内 |
御年賀 |
松の内は1月7日まで、地域によって15日まで |
| 松の内の後〜立春の前 |
寒中御見舞 |
目上の相手には「寒中御伺」とする考え方もある |
| 喪中の相手(年明け) |
寒中御見舞 |
御年賀は避けるのが一般的 |
国立天文台の暦要項では、2027年の小寒(寒の入り)は1月5日、立春は2月4日です。寒中御見舞は2月3日までに届くようにします。年賀状を出していない相手への寒中見舞いの考え方は、年賀状のビジネスマナー 取引先への賀詞の使い分けと文例・出す時期にまとめています。
お歳暮の段取りと表書きの切り替え。12月20日ごろまでに届け、年内に届かなければ御年賀・寒中御見舞に作成: 編集部 / もとの資料: 国立天文台「令和9年(2027)暦要項」・郵便法4条・日本郵便「信書を送付することができないサービス」
金額は関係の深さで社内の基準を決める
お歳暮の金額にも、法律や公的な基準で決まった相場はありません。インターネットで見かける金額の幅も、公的な根拠があるものではありません。会社として毎年送るなら、相場を探すより、関係の深さで段を分けて自社の基準を決めておく方が確実です。担当者が替わっても同じ額で手配でき、予算も立てやすくなります。
下の表は、送り先リストに付ける「段」の例です。金額は自社で決める欄にしました。
| 相手との関係 |
名義の例 |
品物の考え方 |
金額 |
| 取引の多い主要な取引先(代表者あて) |
会社名と代表者名 |
代表者あての品か、職場で分けやすい品 |
段A 〇円 |
| 継続して取引のある取引先(部署あて) |
会社名と代表者名 |
部署で分けやすい個包装の品 |
段B 〇円 |
| 担当者とのつながりが中心の相手 |
会社名と担当者名 |
部署で分けやすい品 |
段C 〇円 |
| 取引が始まったばかりの相手 |
送らないか、年賀状などの挨拶にする |
翌年に段を決める |
社内で決める |
| 受け取りを辞退している取引先 |
送らない |
辞退の連絡を記録する |
なし |
| 利害関係者に当たる国家公務員 |
送らない |
国家公務員倫理規程3条 |
なし |
お歳暮の社内の基準表。関係の深さで段を分け、送らない相手と経理の区分も一緒に決める作成: 編集部 / もとの資料: 国家公務員倫理規程・人事院・公職選挙法・国税庁(No.5265・No.6201・措置法通達・軽減税率Q&A)
金額を決めるときは、前年の実績(誰に・何を・いくらで)、送り先の数と予算、相手から届くお歳暮とのつり合いを並べます。お歳暮は毎年続けることが多い贈り物です。家計の固定費と同じで、最初に続けられる額にしておくと、あとで見直すときに困りません。
品物の選び方 相手の職場で分けやすいものを
会社あてのお歳暮は、職場で分けられる個包装の菓子や、日持ちのする食品・飲み物を選ぶのが一般的です。代表者個人あてでなければ、受け取った部署で分けられるかを基準にすると迷いません。
| 品物 |
向いている場面(一般的な例) |
気を付けること |
消費税(2026年10月時点) |
| 個包装の菓子・日持ちする食品 |
部署あて |
人数に合う量か |
8%(軽減税率) |
| 生鮮品・冷蔵品 |
受け取る人が確かなとき |
休業日と冷蔵の配送 |
8%(軽減税率) |
| 酒類 |
相手が好むと分かっているとき |
職場で飲まない人もいる |
10% |
| カタログギフト |
相手に選んでもらいたいとき |
金額が伝わりやすい |
10% |
| 商品券・ギフトカード |
分けやすさを優先するとき |
社内の決まりで受け取れない会社もある |
非課税 |
酒類は、軽減税率の対象の「飲食料品」から除かれているため10%です。カタログギフトは、食品だけを載せたものでも、贈答を代行する「役務の提供」に当たるため10%になると、国税庁の軽減税率のQ&A(個別事例編・問35)は説明しています。別に料金を払う贈答用の包装や送料も10%です(送料込みの食品なら8%)。
のしは「御歳暮」と紅白の蝶結び
のし紙は、水引の上に「御歳暮」、下に会社名と代表者名を書くのが一般的です。水引は、何度あってもよい挨拶に使う紅白の蝶結びにします。配送するときは、のしが傷まないよう包装紙の内側に掛ける「内のし」にすることが多いです。
喪中の相手には、紅白の水引を避け、白無地の奉書紙か無地の短冊に「御歳暮」と書く形が一般的です。亡くなって間もないときは、時期をずらして寒中御見舞にする方法もあります。
表書きの一覧や水引の種類、名入れの書き方はのしの書き方 表書き一覧と水引の種類・名入れ・内のしと外のしの使い分けにまとめています。
送り先リストの作り方 台帳・前年の記録・異動・辞退を1つに
送り先リストは、お歳暮の仕事でいちばん時間がかかる所です。次の順に作ると、漏れと重なりが減ります。
- 取引先台帳と前年の送付記録を1つの表にまとめる
- 前年に相手から届いたお歳暮と、お礼状の記録を書き足す
- 営業や各部署の担当者に、1社ずつ「送る・送らない」と段、宛名を確かめてもらう(担当者の異動・退職・社名変更・移転)
- 受け取りを辞退するという連絡と、喪中の知らせを記録する
- 相手が官公庁や公的な団体か、自社が利害関係者に当たるかを確かめる
列は、会社名・部署・役職・氏名・住所・電話番号・自社の担当者・段・品物・名義・発送日・届いた日・辞退や喪中の記録・前年の送受があれば足ります。宛名は会社あてにし、担当者の自宅には送らないのが一般的です。百貨店などにまとめて頼むときは、渡す一覧を宛名と配送に要る列だけにします。
発送の段取り 10月下旬から1月までの流れ
| 時期 |
すること |
| 10月下旬〜11月上旬 |
送るか・やめるか、段と予算を決め、決裁を受ける |
| 11月上旬〜中旬 |
送り先リストを担当者に確かめてもらう |
| 11月中旬〜下旬 |
品物を決めて注文する(届ける日・のし・名入れ・添え状) |
| 11月下旬〜12月上旬 |
送り状を用意し、別に郵送するなら投函日を決める |
| 12月上旬〜20日ごろ |
品物が届く。配送の状況を確かめ、届いた日を記録する |
| 12月中旬〜下旬 |
相手から届いたお歳暮を受け付け、お礼状を出す |
| 12月下旬〜1月 |
間に合わなかった相手に御年賀・寒中御見舞を届ける |
| 1月 |
戻ってきた荷物や宛名の誤りを直し、翌年のリストに残す |
送り状(添え状)の書き方と文例
送り状は、お歳暮を贈ったことを知らせる挨拶の手紙です。品物より先か同じころに届くよう別に郵送する方法と、品物に添える方法があります。
品物に手紙を入れるときは、郵便法の決まりに気を付けます。郵便法4条は、運送会社が他人の信書(特定の相手に意思や事実を伝える文書)を送ることを禁じ、ただし書で「貨物に添付する無封の添え状又は送り状」を例外としています。宅配便に入れられるのは、封をしていない添え状です。日本郵便も、ゆうパックには内容物に関する簡単なあいさつ状などの無封の添え状を同封できると案内しています。別に郵送するなら、定形郵便物(50g以内)は110円、はがきは85円です(日本郵便・2026年10月19日確認)。
お礼状が届いたとき
相手からお礼状が届いたら、一般的には返事は出さず、送り先リストに記録すれば十分です。お礼状に返事を重ねると、やり取りが続いて相手の手間が増えるためです。電話やメールでお礼を言われたときは、短く返します。
届いたお歳暮の受け付けと記録・お礼状
取引先から届いたお歳暮は、受付で受け取った日に記録します。項目は、届いた日・送り主の会社と名義・品物・あて先・自社の担当者です。生ものや冷蔵品は、その日のうちにあて先の部署に渡します。受け取りの流れは郵便・宅配便の受け取りと社内配布 ルールの作り方と書留・親展の扱いと同じ形にしておくと、受付の人が迷いません。
お礼状は、一般的には届いてからなるべく早く、あて名の人か会社の名義で出します。品物へのお礼と1年のお礼を、はがきかメールで短く書けば十分です。お歳暮は日ごろのお礼なので、お返しの品は要らず、お礼状で気持ちを伝えるのが一般的です。
お歳暮をやめるときの案内
会社として贈答をやめるときは、前もって知らせます。一般的には、最後のお歳暮に添え状を付けるか、年末の挨拶状やメールで知らせます。知らせずにやめると、相手が送り先リストを直せず、届いたお歳暮にどう応えるかも迷わせてしまいます。
取引先から辞退の連絡を受けたら、送り先リストの「辞退」の列に日付と連絡をくれた人を書き、翌年から送りません。
送る前に確かめること 公務員・取引先の決まり・議員
国家公務員倫理規程3条1項1号は、国家公務員が利害関係者から金銭・物品などの贈与を受けることを禁じています。利害関係者とは、許認可や補助金の交付、立入検査、国との契約などで、その職員が職務として関わる事業者などです(2条)。自社が相手の職員にとって利害関係者に当たるなら、お歳暮は贈りません。利害関係者でなくても、社会通念上相当な程度を超える財産上の利益の供与を受けることは禁じられています(5条)。
地方自治体や公的な団体の職員に贈るか迷うときは、相手の団体の決まりを担当の方に確かめます。民間の取引先でも、社内の決まりで贈答品の受け取りを辞退していることがあります。
代表者や役員に議員・候補者がいる会社は、名義にも気を付けます。公職選挙法は、物品の供与も「寄附」に含め(179条)、議員・候補者が役職員を務める会社が、その人の氏名を表示して選挙区内の人に寄附をすることを禁じています(199条の3)。名義の付け方は、選挙管理委員会に確かめてから決めます。
経理の扱い 交際費等と消費税の区分
取引先へのお歳暮は、法人税では交際費等に当たります。国税庁のタックスアンサー(No.5265)は、交際費等を、得意先や仕入先など事業に関係のある者への接待・供応・慰安・贈答などのための費用としています(2026年10月時点)。
| 項目 |
扱い |
根拠 |
| 取引先へのお歳暮 |
交際費等 |
No.5265 |
| 1人1万円以下の飲食費を除く決まり |
食品の詰め合わせを贈るのは「飲食等」に含まれないので使えない |
措置法通達61の4(1)-15の2(注) |
| カレンダー・手帳などを贈る費用 |
交際費等から除かれる |
No.5265 |
| 損金にできる額 |
期末の資本金が1億円以下などの法人は、年800万円まで |
No.5265 |
| 消費税 |
食品8%、酒類・カタログギフト・別料金の包装と送料10%、商品券は非課税 |
軽減税率のQ&A、No.6201 |
措置法通達61の4(1)-15の2の注は、「中元・歳暮の贈答のように、単なる飲食物の詰め合わせ等を贈答する行為は、飲食等には含まれない」としています。食品を贈っても、飲食費の決まりは使えません。記録には送り先リストの写しを添えると、誰に何を贈ったかをあとから説明できます。額や区分に迷うときは、顧問の税理士か所轄の税務署に確かめてください。
今日からできること
- 前年のお歳暮の送付記録と、相手から届いた記録を1つの表にまとめる
- 関係の深さ別の段と金額を決め、11月上旬までに決裁を受ける
- 担当者に、異動・辞退・喪中の知らせを11月中旬までに集めてもらう
- 官公庁や公的な団体の送り先と、代表者・役員の名義を確かめる
- 送り状・添え状・やめる案内のひな形を用意する
- 交際費等の科目と、消費税の税率の分け方を経理とそろえる