経済産業省は2026年10月19日、「経済産業省生産動態統計調査規則の一部を改正する省令案等に対する意見公募の結果について」を公表しました。提出意見は7件で、案の修正はなく、調査票を令和9年(2027年)1月分から109種類から55種類へ統合する予定です。
製造業の事業所には、この調査の調査票が毎月届きます。この記事では、総務・経理の担当者が毎月の報告をどう進めるかと、改正で変わる点・変わらない点を、2026年10月20日時点の公式の資料で確かめてまとめます。
生産動態統計調査とは何か 総務・経理に届く理由
毎月、事業所ごとに報告する基幹統計の調査
経済産業省生産動態統計調査は、鉱工業の生産の動きを毎月つかむための調査です。調査規則は、品目ごとの生産・出荷・在庫などを月次で把握して、鉱工業の動態を明らかにすることを目的に挙げています。結果は景気の判断や産業の分析、施策づくりの基礎資料に使われています(経済産業省の概要資料)。
総務省の「基幹統計一覧」には、経済産業省の統計として「経済産業省生産動態統計」が載っています(2025年1月21日現在)。国の特に重要な統計なので、基幹統計調査として報告の義務があります。統計法の報告義務と罰則の一般的な説明は、国の統計調査の調査票が届いたら 会社の回答の段取りと義務・かたり調査の見分け方に書いたので、ここでは繰り返しません。
会社ではなく「事業所」が対象になる
調査の対象は、調査規則の別表に載った生産品目を作っている事業所です(第4条)。会社全体ではなく、工場や事業所の単位で見ます。品目ごとに事業所の範囲が決まっていて、たとえば鉄粉・鉄系粉末は「従事者30名以上」の事業所のように、人数の条件が付く品目があります。
報告する人は、その事業所の管理責任者です(第8条)。工場長や事業所長が名前を出す立場で、総務と経理は、数字を集めて期限までに間に合わせる役を担うことが多いでしょう。ここでの役割分担は、規則にあるわけではありません。会社ごとに決めてかまいません。
毎月の報告の流れ 月末から翌月15日まで
規則で決まっている毎月の約束ごとは、次の4つです。
| 項目 |
規則の定め |
条 |
| 調査の期日 |
毎月末日現在 |
第3条 |
| 提出の期限 |
調査期日の属する月の翌月15日まで |
第10条 |
| 報告する人 |
事業所の管理責任者 |
第8条 |
| 提出の方法 |
調査票を出す、または電子情報処理組織(オンライン)で出す |
第10条・第11条 |
調査事項は、生産・受入・消費・出荷・在庫・原材料・従事者・生産能力及び設備のうち、経済産業大臣が必要と認めるものです(第6条)。実際に何を書くかは、毎月届く調査票に品目ごとに印刷されています。
生産動態統計調査の毎月の報告。月末現在から翌月15日までの流れ作成: 編集部 / もとの資料: 経済産業省生産動態統計調査規則(現行)・省令案
総務・経理が受け持つ段取りの例
月末で数字を締めてから15日までは、実質2週間ほどです。次の分け方は、編集部の例です。
| 段取り |
いつ |
担当の例 |
| 月末現在の生産・出荷・在庫の数字を締める |
月末〜翌月3営業日 |
生産管理・倉庫・営業 |
| 原材料の受入・消費の数字を出す |
翌月3営業日ごろまで |
購買・生産管理 |
| 従事者の数を人事から受け取る |
翌月3営業日ごろまで |
人事・労務 |
| 調査票に写して、数字をつき合わせる |
翌月10日ごろまで |
総務(経理が棚卸資産・売上と突き合わせ) |
| 管理責任者が確認し、記名して提出 |
翌月13日ごろまで |
管理責任者・総務 |
| 控えを保管する |
提出の日 |
総務 |
経理がかかわるのは、在庫と出荷の数字です。月次決算で使う棚卸資産や売上の数量と、調査票の在庫・出荷が大きくずれていないかを見ると、記入の誤りに気づけます。統計の調査票と決算の数字は目的が違うので、必ず一致するとは限りません。ずれの理由が説明できればよい、と考えておくと負担が軽くなります。
調査票が届かないとき、本社でまとめたいとき
報告義務者が調査票の配布を受けられなかったときは、経済産業大臣に申し出て配布を受けます(第9条第2項)。「うちには来ないはず」と思い込まず、対象の品目を作っているのに届かないときは、鉱工業動態統計室に確かめます。
複数の事業所を持つ会社には、一括して報告する仕組みもあります(第8条)。経済産業大臣の指定を受けた「一括事業所」を代表する者が、関係事業所の調査票の事項を、全部または一部まとめて報告します。指定を受けるには、あらかじめ様式第1で届け出ます。変更は様式第2、やめるときは様式第3で届け出ます。本社の総務が各工場分を取りまとめている会社は、自社が指定を受けているかを確かめておくと、改正後の調査票の切り替えも一括で追えます。
令和9年1月分からの改正 公式で確かめた範囲
意見公募の結果と施行の日程
意見の募集は2026年7月24日から8月24日まで行われ、提出意見は7件でした。結果ページには「提出意見を踏まえた案の修正」は無しと載っています。命令等の公布日は2026年12月10日と掲載されています(施行は令和9年1月1日の予定です。公布前なので、予定の日付です)。
経済産業省の資料によると、この改正は、令和9年1月分調査からの調査票の改正です。2025年8月に統計委員会で承認された「統一基準」に従い、市場規模が縮小した品目は統合・削除し、市場規模が拡大した品目は新設します。調査事務の効率化と、報告する側の記入の負担を軽くすることも目的に挙げています。
何が変わり、何が変わらないか
生産動態統計調査の改正 変わること・変わらないことの早見表作成: 編集部 / もとの資料: 経済産業省 意見公募の結果・意見公募要領・概要・調査票新旧対照表
| 項目 |
現行 |
改正後(令和9年1月分から) |
| 調査票の数 |
109種類 |
55種類に統合 |
| 調査品目 |
年間出荷額の小さい品目も単独 |
統一基準で統合・削除、新規品目を追加 |
| 公布・施行 |
現行規則の最終改正は令和7年12月11日 |
公布は2026年12月10日と掲載、施行は令和9年1月1日 |
| 調査の期日 |
毎月末日現在 |
公募時の資料では変更なし |
| 提出の期限 |
翌月15日まで |
公募時の資料では変更なし |
| 報告する人 |
事業所の管理責任者 |
公募時の資料では変更なし |
省令案が直すのは別表(生産品目と調査の種類)で、期日・期限・報告する人の条文は改めません。あわせて、調査票の様式(告示)が改正されます。毎月の段取りの骨組みは変わらず、中身の調査票と品目の分け方が変わる、と見ておくとよいでしょう。
調査票が109種類から55種類になる
調査票新旧対照表をもとに、新しい55種類の内訳を数えると、変更なしが7種類、名称のみの変更が7種類、改正ありが27種類、統合・改正ありが14種類です。
統合の例を挙げます。
- 化学月報(6010)は、旧の化学肥料・石灰及びソーダ工業製品月報、コールタール製品・環式中間物及び合成染料月報、石油化学製品月報、無機薬品・火薬類月報、触媒月報、高圧ガス月報、プラスチック月報など10種類を1枚にします
- 機械器具月報(その2)(2020)も、旧の10種類を1枚にします
- 窯業・建材月報(その1)(5010)は、旧のガラス製品・ほうろう鉄器月報、陶磁器月報、セメント・セメント製品月報など7種類をまとめます
- 繊維・生活用品月報(その1)(3010)は、旧の化学繊維月報、紡績糸月報、織物生産月報の3種類をまとめます
手元の調査票の番号が、新旧対照表のどの行にあるかを見れば、令和9年1月分から使う調査票が分かります。たとえば旧6080の調査票を毎月出している事業所は、令和9年1月分から化学月報(6010)で報告することになります。
調査品目の見直し
概要資料は、見直しの基準を次のように例示しています。
| 区分 |
基準の内容 |
品目の例 |
| 新規 |
年間出荷額500億円以上で調査が可能なもの。行政上必要な商品 |
紙管、鉄粉・鉄系粉末(うち粉末冶金用)、回路形成済みシリコンウエハ、半導体材料ガス、半導体製造用薬液 |
| 統合 |
年間出荷額100億円未満で、類似の商品と統合できるもの。秘匿処理が必要で、類似の商品と統合できるもの |
再生・半合成繊維糸、アクリル糸、ポリエステル糸などを化学繊維紡績糸に。銑鉄の2品目を高炉銑に |
| 削除 |
年間出荷額100億円未満で、統合が難しいもの。秘匿処理が必要で、統合が難しいもの |
避雷装置、補聴器、電気かみそり、薄型テレビ |
自社が作っている品目が新しくなる、または統合・削除される場合は、社内で作っている集計表や、生産管理システムの品目コードの対応も変わります。品目の新旧の対応は、調査品目新旧対照表に品目コード単位で出ています。
意見公募では、化学石こうと副生硫酸アンモニウムを調査から除外することへの反対や、過去のデータとの比較ができなくなる心配が寄せられました。経済産業省は、統一的な基準に基づく見直しとして除外を維持し、時系列のデータの継続性の重要さは認識しているので、今後の参考にすると答えています。
改正前に社内で準備すること
12月分と1月分で、様式が切り替わる
省令案の附則は、調査の期日が施行日より前の調査は、従前の例によるとしています。規則の定めと合わせて読むと、日程は次のとおりです。
| 調査 |
調査の期日 |
提出の期限 |
様式 |
| 令和8年12月分 |
2026年12月31日現在 |
2027年1月15日 |
従前の様式 |
| 令和9年1月分 |
2027年1月31日現在 |
2027年2月15日 |
改正後の様式 |
12月分は年末年始をはさんで、1月15日が期限です。12月28日ごろの仕事納めの前に、締めの手順を決めておくと間に合わせやすくなります。意見公募には、公布から施行まで約1か月で、年末年始の繁忙期と重なることへの懸念も出ていました。経済産業省は、システム改善などを検討する際の参考にするとしています。
担当の総務・経理が先にすること
準備の順番は、次のようにするとよいでしょう。
- 手元の調査票の番号を控える(最近届いた調査票の控えを見る)
- 調査票新旧対照表で、令和9年から使う調査票の番号と名前を探す
- 調査品目新旧対照表で、自社が報告している品目が、そのまま・統合・削除・新規のどれかを確かめる
- 統合される品目は、社内の集計表を新しい品目の区切りに合わせて作り直す
- 社内の締切と担当(生産管理・購買・倉庫・人事・経理)を、新しい調査票の項目に合わせて見直す
- 令和8年12月分と令和9年1月分のカレンダーを、社内に共有する
調査票の中身に関する問い合わせは、意見公募の結果ページに載っている、経済産業省の調査統計グループ鉱工業動態統計室が窓口です。判断に迷う品目の区分は、自己判断せず、ここに確かめます。
今日からできること
- 手元にある直近3か月分の調査票の控えを探し、調査票の番号と品目を一覧にする
- その一覧を、公募時の資料の調査票新旧対照表に引き当てて、令和9年1月分から使う調査票を調べる
- 管理責任者の名前と、数字を出す部門の担当者、社内の締切(月末から何営業日後か)を1枚にまとめて共有する
- 12月分と1月分の提出日(1月15日・2月15日)をカレンダーに入れる
- 品目が統合・削除・新規になる事業所は、生産管理の担当と、集計表の直しを今月中に相談する
公布は2026年12月10日と掲載されていますが、まだ先の日付です。制度の最終的な内容は、公布された省令と告示、経済産業省から届く調査票で確かめてください。個別の判断が必要なときは、経済産業省の鉱工業動態統計室に問い合わせます。この記事は2026年10月20日時点の公式の資料にもとづきます。