厚生労働省は2026年10月19日、「令和8年労働安全衛生調査(実態調査)にご協力ください」という案内を掲載しました。対象に選ばれた事業所には10月下旬に調査票が郵送で届き、調査期間は10月25日から11月20日までです。
国の統計調査の調査票は、ほかにも人数・賃金・売上などを尋ねて会社に届きます。この記事では、総務・人事・労務の担当者が調査票を受け取ってから回答し、控えを残すまでの段取りを、2026年10月時点の統計法と各府省の案内で確かめてまとめました。
国の統計調査は「基幹統計調査」と「一般統計調査」に分かれる
報告の義務があるのは基幹統計調査
統計法は、国の行政機関が行う統計調査を2つに分けています。国の特に重要な統計(基幹統計)を作るための「基幹統計調査」と、それ以外の「一般統計調査」です(第2条)。基幹統計は総務大臣が指定します。
基幹統計調査で報告を求められた会社は、報告を拒んだり、うその報告をしたりできません(第13条)。違反には50万円以下の罰金があります(第61条)。法人では、拒んだりうその報告をしたりした役職員が対象です。
一般統計調査は、総務大臣の承認を受けて行う国の調査です(第19条)。総務省は、報告義務を「一般統計調査にはない特別な規定」の1つとして説明しています。一般統計調査への回答は、法律上の義務ではなく協力のお願いです。
| 区分 |
主な例 |
報告の義務 |
罰則 |
| 基幹統計調査 |
賃金構造基本統計調査、毎月勤労統計調査、経済センサス‐活動調査、法人企業統計調査 |
あり(第13条) |
50万円以下の罰金(第61条) |
| 一般統計調査 |
労働安全衛生調査、就労条件総合調査 |
規定なし |
規定なし |
調査票の左上を見れば分かる
どちらの調査かは、調査票の左上の表示で分かります。令和8年の労働安全衛生調査と就労条件総合調査の調査票には、「統計法に基づく一般統計調査」と書かれています。
調査票には「政府統計」のロゴも入っています。総務省は、このロゴが国の統計調査であることと、秘密の保護に万全を期していることを示すと説明しています。ロゴは商標登録されていて、統計調査を行う者などのほかは使えません。
答えた内容は統計のほかに使われない
集めた情報(調査票情報)は、調査の目的のほかに使うことも、ほかへ渡すことも禁じられています(第40条)。調査票を扱う職員や、事務を任された委託先には守秘義務があります(第41条)。秘密を漏らすと、2年以下の拘禁刑か100万円以下の罰金です(第57条)。
会社に届くことが多い統計調査の早見表
会社に届く統計調査は、府省も時期もさまざまです。答える単位と、どの部門の資料が要るかを押さえておくと迷いません。
| 調査名 |
実施 |
種類 |
主な対象 |
時期・基準日 |
主に答える部門 |
| 労働安全衛生調査(実態調査) |
厚生労働省 |
一般 |
常用労働者10人以上の民営事業所から約1万4,000 |
10月31日現在。調査は10月25日〜11月20日 |
総務・人事・労務 |
| 就労条件総合調査 |
厚生労働省 |
一般 |
常用労働者30人以上の民営企業から抽出 |
1月1日現在(令和7年調査) |
人事・労務 |
| 賃金構造基本統計調査 |
厚生労働省 |
基幹 |
5人以上の民営事業所などから約8万 |
6月分の賃金などを7月に調査 |
人事・給与計算 |
| 毎月勤労統計調査 |
厚生労働省 |
基幹 |
常時5人以上の事業所から抽出 |
毎月末現在 |
給与計算 |
| 経済センサス‐活動調査 |
総務省・経済産業省 |
基幹 |
全ての企業・事業所 |
2026年6月1日(5年ごと) |
経理・総務 |
| 民間給与実態統計調査 |
国税庁 |
基幹 |
民間の源泉徴収義務者から抽出 |
12月31日現在の給与所得者 |
経理・給与計算 |
| 法人企業統計調査 |
財務省 |
基幹 |
営利法人等から抽出 |
年次別と四半期別 |
経理 |
種類は総務省の基幹統計一覧(令和7年1月21日現在)と各調査の資料によります。部門は編集部の目安です。
会社に届く主な国の統計調査の種類・対象・時期・答える単位の早見表作成: 編集部 / もとの資料: 総務省・厚生労働省・国税庁・財務省の資料
2026年は経済センサス‐活動調査の年のため、経済構造実態調査は行われません(総務省統計局)。回答が集計された数字の例は業種別の給与と残業時間 毎月勤労統計で比べる2025年の数字と読み方で紹介しています。
調査票が届いてから回答するまでの段取り
統計調査の調査票を受け取ってから回答し、控えを残すまでの6つの段取りと確かめる点作成: 編集部 / もとの資料: 統計法・総務省・総務省統計局・厚生労働省の案内
1. 受け取って記録する
調査票は郵送のほか、統計調査員が訪ねてくる調査もあります。統計調査員は調査員証を持っています。受付では、郵便の受付簿に調査名・差出人・届いた日・回した先を書き、担当へ回します。社内の郵便の扱い方は郵便・宅配便の受け取りと社内配布で整理しています。
2. 本物の調査か確かめる
調査名で、実施する府省のページを探します。労働安全衛生調査なら、厚生労働省の「統計調査実施のお知らせ」に期間や問い合わせ先が載っています。調査票の「統計法に基づく」の表示と、政府統計のロゴも見ておきます。
3. 担当と社内の締切を決める
調査票の「記入上の注意」を読み、基準日・提出期限・答える単位を確かめます。労働安全衛生調査の事業所調査票は、労働安全衛生関係の業務に通じている人が書くよう求めています。人数や賃金を尋ねる調査は給与計算の担当、売上や費用を尋ねる調査は経理が向いています。
社内の締切は、提出期限の1週間ほど前に置くと確認の時間がとれます(編集部の目安)。
4. 資料を集めて記入する
数字は、調査票が指定する基準日の時点で書きます。労働安全衛生調査は2026年10月31日現在の状況で、休業した人などの数は2025年11月1日から2026年10月31日までの1年間です。記入担当者の氏名と電話番号の欄があり、記入内容について問い合わせが来ることがあります。
5. オンラインか郵送で提出する
多くの調査は、政府統計オンライン調査総合窓口から答えられます。調査票に印刷されたログイン情報を使います。操作しないまま約1時間たつと接続が切れるので、途中で一時保存をします。
オンラインで受け付けられると、その旨が調査の関係機関に伝わり、提出のお願いや回収の訪問は来ません。就労条件総合調査のように委託先の専用サイトで答える調査もあるため、入口は手元の調査票の案内に従います。
毎月勤労統計調査には、本社や会計事務所が代わりにオンラインで答えるための一括提出用IDがあり、利用希望届を出して使います。
6. 控えを残し、翌年に引き継ぐ
送った内容の写しと、数字のもとにした資料をまとめて保管します。次に届いたときに同じ数え方ができるよう、数え方のメモも残します。
令和8年の労働安全衛生調査で聞かれることと集める資料
調査の概要
| 項目 |
内容 |
| 種類 |
統計法に基づく一般統計調査 |
| 対象 |
常用労働者10人以上の民営事業所から約1万4,000事業所。個人調査は約1万8,000人 |
| 基準日 |
2026年10月31日現在(1年間の数は2025年11月1日〜2026年10月31日) |
| 調査期間 |
2026年10月25日〜11月20日 |
| 問い合わせ |
調査事務局 0120-363-460(2026年10月23日〜2027年1月29日、土日・祝日と年末年始を除く9時〜17時) |
| 結果 |
2027年9月までに概況を公表する予定 |
常用労働者とは、期間を定めずに雇われている人か、1か月以上の期間を定めて雇われている人です。常用労働者が10人未満の事業所に届いたときは、調査事務局に連絡するよう調査票に書かれています。
事業所調査票の設問と社内の資料
令和8年の事業所調査票(見本)は、人数の欄と8つの問いでできています。資料の欄は編集部の目安です。
| 設問 |
主に聞かれること |
社内で集める資料 |
| 企業・事業所 |
10月31日時点の常用労働者数(企業全体、事業所の正社員・契約社員・パート)、派遣労働者数、法人番号 |
社員名簿、給与台帳、派遣の受入れの記録 |
| 問1 メンタルヘルス対策 |
1年間に不調で連続1か月以上休業した人と退職した人の数、ストレスチェックや相談体制などの取組 |
休職の記録、ストレスチェックの実施記録、集団分析の結果 |
| 問2 安全衛生管理体制 |
安全委員会・衛生委員会などの設置、働く人の意見を聴く機会 |
委員会の議事録 |
| 問3 産業保健 |
健康診断の結果に基づく保健指導、治療と仕事の両立支援 |
健康診断の事後措置の記録、休暇や勤務の制度 |
| 問4 腰痛予防 |
腰痛予防の指針を知っているか、腰に負担のかかる業務とその教育 |
作業の一覧、教育の記録 |
| 問5 労働災害防止 |
雇入れ時教育(雇用形態別)、転倒防止、60歳以上の人と外国人の労働災害防止 |
教育の記録、年齢別の人数、外国人雇用状況の届出の控え |
| 問6 業種別の対策 |
陸上貨物運送・建設・製造・林業の事業所だけが答える |
業種のガイドラインに沿った取組の記録 |
| 問7 熱中症予防 |
屋外作業や暑熱な屋内作業の有無、暑さ指数(WBGT)の把握と活用 |
暑さ指数の記録、夏の取組 |
| 問8 化学物質 |
製造・譲渡提供・使用の有無、リスクアセスメント、ばく露を減らす措置、ラベルとSDS |
化学物質の一覧、リスクアセスメントの記録、SDS |
問1の人数は、受け入れている派遣労働者を除いて数えます。同じ人が何回休業しても1人とし、休業したあとに退職した人は退職者の数だけに入れます。
調べる項目は年によって変わります。令和4年の個人調査には喫煙に関する事項がありましたが、令和8年の調査票(見本)に喫煙や受動喫煙の設問はありません。
個人調査票の配り方
事業所調査票の「個人調査票有」の欄に「1」と印字された事業所は、同封の個人調査票を配ります。対象は常用労働者と、受け入れている派遣労働者です。令和7年の調査の概要では、事業所が抽出要領に基づいて対象者を選び、人数は規模により3人(10〜29人)から32人(1,000人以上)でした。
個人調査票は、性別・年齢・職種、仕事の強いストレスと相談できる人、ストレスチェックの受検、時間外・休日労働が月80時間を超えた月などを尋ねます。本人が書いて返信用封筒で11月20日までに投函するか、オンラインで答えます。
統計調査を名乗る不審な連絡の見分け方
本物の統計調査からの電話は場面が限られる
総務省統計局は、国や自治体の職員・統計調査員が、電話やメールで統計調査を依頼したり、個人や世帯の情報を調べたりすることは絶対にないと案内しています。電話をするのは、提出された調査票の内容を確かめるときと、期限までに提出がないときの再度のお願いだけです。
事業所向けの調査では、委託先が電話で協力をお願いすることがあります。労働安全衛生調査の委託先は「厚生労働省労働安全衛生調査(実態調査)調査事務局」と名乗り、調査票や封筒にあるフリーコールと違う番号からは電話しないと厚生労働省は説明しています。
最近の注意喚起の例
| 出したところ |
不審な連絡の内容 |
本物との違い |
| 総務省統計局(2026年3月〜6月) |
「国勢調査 回答期限のご案内」などのメールで回答を求める |
統計局がメールのリンクから直接回答を求める調査は無い |
| 厚生労働省 |
別のフリーコールから、労働安全衛生調査の回答に不備があると電話 |
調査票や封筒と違う番号から電話しない |
| 厚生労働省 |
県庁等の職員を名乗り、雇用動向調査に協力しなければ罰金と電話 |
雇用動向調査は県庁等に委託していない |
| 消費者庁(2026年10月19日) |
調査会社が「消費者庁から協力依頼を受けた」として有料調査を勧めるメール |
消費者庁は既に行われた表示の相談・指摘をしない |
消費者庁の件は、バックオフィスの国の情報まとめ 2026年10月20日 消費者庁を名乗るメールと最低賃金でも取り上げました。
統計法は、基幹統計調査の求めだと誤解させる表示や説明で情報を取ることを禁じています(第17条)。違反は2年以下の拘禁刑か100万円以下の罰金で、未遂も罰せられます(第57条)。
回答の控えと翌年への引き継ぎ
今日からできること
- 受付と代表電話・代表メールの担当に、統計調査の調査票や電話・メールが来たら総務に回すよう伝える
- 10月31日現在の常用労働者数(正社員・契約社員・パート)と派遣労働者数を、すぐ出せるようにしておく
- メンタルヘルス不調による休業・退職の人数と、ストレスチェックや委員会の記録の置き場所を確かめる
- 会社に届く統計調査の一覧(調査名・府省・時期・担当)を作り、総務の年間の予定に入れる
- 回答の控えを置くフォルダと、引き継ぎメモの形を決めておく
この記事は、2026年10月20日に確かめた統計法と、総務省・厚生労働省・財務省・国税庁・消費者庁の資料によります。書き方や期限の扱いは、調査票に書かれた問い合わせ先に確かめてください。