引き継ぎ用のマニュアルが後回しになっているなら、最初の下書きを生成AIに頼むと動き出せます。白紙から書くより、AIの質問に答えて下書きをもらい、実際の仕事に合わせて直すほうが、ずっと進めやすいからです。
ただ、AIは自分の会社のやり方を知りません。画面の名前や判断の基準、例外は、人が直します。その前提で、話す、作らせる、直す、試すの順に進めましょう。
進め方は、話す、作らせる、直す、試すの4段階
生成AIで手順書を作る流れ作成: 編集部 / 出典: ベンチャー・スピリット!編集部
最初の1本には、月に1回の定型の仕事が向いています。請求書の発行や勤怠の締めのように、手順が毎回ほぼ同じで、別の人に試してもらいやすいからです。どの仕事から手順書にするかの選び方は、業務マニュアルの作り方の記事で確認できます。
入力する前に、仕事の情報を整えます。個人情報保護委員会は、個人データを含む内容を入力するなら利用目的の範囲内かを確認し、機械学習に使われないことも確認するよう呼びかけています1。社員や取引先の名前は「担当A」「取引先B」に、金額は「○円」に置き換えておきましょう。パスワードや顧客のデータは入れません。迷うときの線引きは、生成AIに入力してはいけない情報の記事にあります。
書く前に、AIに聞き取りをしてもらう
下書きを読みながら、実際の仕事と違う所に印を付けるイラスト: 編集部が画像生成AIで作成したイメージ(YOBITSUGI AI・OpenAI gpt-image-2.5-sunburst)
手順書が進まないのは、書く力より、頭の中の手順を順番に思い出す手間のせいかもしれません。そこで、AIを聞き役にします。1問ずつ聞いてもらえば、答えるだけでメモができます。声で答えられるサービスなら、移動の合間にも進められるでしょう。
「金額を確認する」と答えたら、「何と何を比べますか」と聞き返してもらう。これだけで、自分では当たり前すぎて飛ばしていた手順が出てきます。
答えるのは、できれば次にその仕事をする日がよいでしょう。画面を開いたまま答えれば、ボタンの名前や順番を思い出さずに済みます。月末の作業なら、月末の予定に「手順書の聞き取り」を一緒に入れておくと、後回しになりにくくなります。
下書きは、項目と書かないことを指定する
聞き取りが終わったら、下書きを頼みます。書かないことも、あわせて指定しましょう。指定がないと、AIは足りない所をもっともらしい一般論で埋めてしまいます。
返ってきた下書きでは、まず【要確認】の数を見ます。多ければ、もう一度聞き取りに戻るほうが早いでしょう。
条件で分かれる作業は、文章より表が向いています。「判断の分かれ目を、条件と行き先の表にしてください」と追加で頼むと、担当者によって答えが変わる所が見えてきます。画面の写しを入れたい場所には、下書きの段階で【画面:請求の一覧】のように目印だけ入れてもらい、あとで自分で貼ると、個人情報の入った写しをAIに渡さずに済みます。
下書きで人が直す場所
AIの下書きを自社の動作に直す例(編集部の架空の例)作成: 編集部 / 出典: ベンチャー・スピリット!編集部
下書きの文は読みやすいのですが、それだけでは作業できません。直す場所は決まっています。画面やボタンの名前は、実際の画面を開いて書き写します。「問題がないか確認する」のような文は、何と何を比べて、違ったらどうするかに置き換えます。期限と担当も、日付や役職まで書かなければ、新人は動けません。
税や社会保険、労働時間に関わる手順は、もう一段気をつけてください。AIが古い決まりのまま書くことがあるので、公式の案内と社内の規程の版を確認し、手順書にも根拠の名前を入れておくと、改正のときに直す場所がわかります。
見直しは、AIと別の人の2回
先にAIに読ませると、人に頼む前に穴を減らせます。
ただ、AIは実際の画面を操作できません。最後は別の人に、手順書だけを見て作業してもらいましょう。国のAI事業者ガイドラインも、AIに任せきりにせず、適切な場面で人の判断を入れる考え方を示しています2。止まった場所に印を付けてもらい、そこを書き足せば、ひとまず完成です。
仕事のやり方が変わったときの更新にも、AIは使えます。今の手順書と変わった点を渡して「変更が必要な箇所だけ挙げて」と頼むと、どこを直すかを見落としにくくなります。
手順書を置く前に確認すること
- 会社が認めたサービスで作った。
- 名前や金額を、仮のものに置き換えて入力した。
- 【要確認】をすべて消した。
- 画面やボタンの名前を、実際の画面と照らした。
- 判断の基準と例外を、自社の決まりに合わせた。
- 法令や規程に関わる手順は、根拠の名前を書いた。
- 別の人が手順書だけで作業できた。
- 改訂履歴に日付と担当を書いた。
異動や退職が決まっているなら、手順書とは別に引き継ぎ書も要ります。進行中の案件や相手先との約束まで渡す書類なので、引き継ぎ書の書き方の記事と合わせて準備すると、後任も迷いません。手順書が1本あると、休みも取りやすくなり、次の仕事に手を挙げる余裕も生まれます。まずは月に1回の仕事から、次の締めの日に試してみてください。頼み方は2026年11月4日時点の編集部の例で、使えるサービスや機能は会社ごとに違います。