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副業の競業避止と守秘義務の範囲 同業でも認められる線を7場面で

同業の副業が一律に禁止されるわけではなく、問われるのは本業の顧客や秘密に触れるかどうかです。7つの場面を問題になりやすい順に見れば、自分の副業の位置と、人事への聞き方が決まります。

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副業の競業避止と守秘義務の範囲 同業でも認められる線を7場面で

この記事でわかること

  • 副業は同業でも、会社に害がなければ認めるべき場合があると国の指針は書いている。
  • いちばん問題になりやすいのは本業の顧客への営業。次が同業の会社の設立や役員就任。
  • 在職中の競業避止は規則になくても負う。退職後は規則や特約などの根拠が要る。
  • 営業秘密を不正な目的で使うと10年以下の拘禁刑も。一般的な技能は別に考える。
対象総務人事実務

同じ業界で副業をしたら、それだけで就業規則違反になるのでしょうか。

そうとは限りません。厚生労働省のガイドラインは、会社の正当な利益が侵害されないなら「同一の業種・職種であっても、副業・兼業を認めるべき場合も考えられる」と書いています。1問われるのは業界の名前より、本業の顧客を奪うか、会社の秘密を使うか。

会社が止められるのは、利益を害するとき

週末の朝の明るい玄関。右側で、ローズ色のカーディガンとジーンズの30代前半の女性が、開いたドアの前で振り返っている。肩には無地の布のトートバッグを掛け、自分のノートをのぞかせている。左の壁のフックには、ノートパソコンと紺のファイルが入った紺の仕事用のかばんと、紺のジャケットが掛かったまま残っている。
会社のかばんは玄関に残し、自分の道具だけで出かけるイラスト: 編集部が画像生成AIで作成したイメージ(YOBITSUGI AI・OpenAI gpt-image-2.5-sunburst)

出発点は、働いていない時間の使い方は「基本的には労働者の自由」という裁判例の考え方です。2会社が止められるのは、たとえば本業に差し支えるとき、秘密が漏れるとき、競業で利益を害されるとき、名誉や信用を傷つけるとき。モデル就業規則も、副業の条に「企業秘密が漏洩する場合」「競業により、企業の利益を害する場合」を並べました。3規則のどこを読むかは副業の就業規則の確認で説明しました。

競業の話は、在職中と退職後で重さがまったく違います。

在職中は、規則に書いていなくても、会社と競合する仕事をしない義務を負うと解されています。労働契約に付いてくる「付随義務」で、労働契約法の信義誠実の原則から導かれます。4競業を禁じる規定がなかった会社の事案でも、裁判所は「使用者の利益に著しく反する競業行為を差し控える義務」があるとしました。5

退職後は話が変わります。職業選択の自由があるので、この義務は限定的に解され、規則や特約といった根拠が別に要るという理解が一般的です。6経済産業省の資料では、期間が1年以内で、範囲を職種などに絞り、代償措置(手当など)があるものは有効の可能性が高いとされました。2年を超える期間や抽象的な禁止は、その逆です。7

前の会社を辞めるときに誓約書を書いた人は、読み返してみてください。同じ業界で副業をするなら、その期間がまだ続いているかもしれません。

問題になりやすい順に並べると

7つの場面を1枚にしました。順番は公的な資料にある裁判例とガイドラインをもとにした編集部の整理で、許されるかどうかの判定ではありません。8同じ場面でも、就業規則や誓約書、個別の事情で位置は動きます。

会社に雇われている人の在職中の副業を、問題になりやすい順に7つ並べた図。順番は編集部の整理で、許される、許されないの判定ではない。1は本業の顧客や取引先に副業で売り込むこと。売上を直接奪う形になりやすく、顧客名簿を使えば秘密の問題も重なる。会社の機器と従業員の立場を使い関係者と取引した社員の解雇に合理的な理由があるとされた。確認する先は就業規則の競業の定め、入社時の誓約書、担当の顧客の範囲。2は在職中に同業の会社を作る、役員になること。在職中の競業会社の設立で損害賠償を認めた事案、管理職の競業他社の取締役就任で解雇を有効とした事案がある。確認する先は就業規則の兼業の定め、自分の役職、作る事業の範囲。3は本業の同僚を副業先や新しい会社に誘うこと。就業時間中に転職の意思を確認した行為は義務違反とされたが、懲戒解雇は権利の濫用で無効。確認する先は就業規則の服務規律、誓約書の定め。4は同業他社で本業と同じ仕事をすること。顧客の取り合いが起きやすいが、利益を害さなければ認めるべき場合もある。再三の警告を無視して同業で働いた事案は懲戒事由に当たるとされ、運転手が年に1、2回、貨物運送のアルバイトをした事案では解雇は無効。確認する先は副業先の事業内容、顧客と地域の重なり、許可や届出の手続き。5は同業他社で本業と違う仕事をすること。6は本業と同じスキルを別の業界で使うことで、話の中心は秘密に移る。7は本業と関係のない仕事で、残るのは働きすぎと名誉や信用の話。下の囲みは、同じ場面でも上に動く事情(管理職や要職、担当の顧客や地域が重なる、会社の名前や機器やメールを使う、勤務時間中に動く、手続きをしていない、注意を受けても続ける)と、下に動く事情(顧客層や地域が重ならない、経営の情報や単価に触れない立場、回数や時間が少なく本業に支障がない、事前に届け出て条件を決めてある)。
副業の7つの場面を、問題になりやすい順に並べた図作成: 編集部 / 出典: 厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」わかりやすい解説ほか

1行目に本業の顧客への営業を置いたのは、会社の売上を直接奪う形になりやすいからです。図の事案は広告デザインの社員で、個人でチラシの仕事を受け、会社の機器を使い、会社の仕事に見える名前まで使っていました。解雇には合理的な理由があるとされました。ただ、会社が求めた損害賠償は、損害の証拠がないとして認められていません。5

迷うのは4行目と5行目、同業他社で働く場面でしょう。

厚生労働省のパンフレットは、会社の利益を害するおそれがあるかは「労働者の職種や地位等」も見て判断し、労使で納得できる結論にするのが望ましいと書いています。9同じ週末のアルバイトでも、営業部長と入社2年目の事務では、会社から見える景色が違うはずです。だから自分の場合は、図の下の「動く事情」から見ると考えやすくなります。

「身についた力」と「会社の秘密」の境目

本業で覚えた見積の組み立て方を、副業で使ってはいけないのでしょうか。

公的な研究機関の雑誌に載った論文は、仕事で得た一般的な知識や技能は守秘義務の対象にならないと整理しました。10ただ、どこまでが「一般的」かは、事案によって変わります。

見分けるなら、会社名と数字を抜いても話が通じるかを試してみてください。たとえば「法人の見積は、原価と納期を先に確認する」なら通じます。「A社向けの掛け率は○%」は、抜いたら何も残りません。

一方で、法律がいちばん重く守るのが不正競争防止法の営業秘密です。秘密として管理され、事業に役立ち、公然と知られていない。この3つがそろった情報で、経済産業省の資料は顧客名簿や設計図面を例に挙げます。11不正の利益を得る目的や、会社に損害を加える目的で使ったり漏らしたりすれば、差止めや損害賠償のほか、10年以下の拘禁刑や2,000万円以下の罰金の対象にもなりえます。12

とはいえ、3つがそろわないから話してよい、とはなりません。モデル就業規則の遵守事項は「業務上知り得た会社、取引先等の機密」という言葉で、在職中も退職後も対象にしました。13先ほどの論文も、契約上の守秘義務は営業秘密より広く、社員が自分で開発したノウハウも対象になりうるとしました。

情報を3つの範囲に分けた図。左は秘密に当たりにくいもので、身についた一般的な知識や技能(見積の組み立て方、会計ソフトの操作、文章の書き方)、もともと公開されていること(公式サイトの料金、プレスリリース、公的な統計)、入社前から持っていた知識。これは論文の整理で、裁判で必ず同じ結論になるとは限らず、顧客の名前や金額と結びつけて話すと右の側に入ってくる。右は会社や取引先の秘密で、モデル就業規則の言葉は業務上知り得た会社、取引先等の機密。在職中も退職後も対象で、営業秘密より広いという整理。対象になりうるものは未発表の企画や人事、取引先から預かった情報、社内の資料、会社のスキャンダル、仕事で自分が編み出したノウハウ。破ると懲戒や損害賠償の問題になりうる。その中に不正競争防止法の営業秘密があり、秘密管理性、有用性、非公知性の3つすべてに当てはまる情報。例は顧客名簿、設計図面、条件を満たせば単価表も。不正の利益を得る目的や損害を加える目的で使う、漏らすと、差止めや損害賠償のほか、10年以下の拘禁刑か2,000万円以下の罰金、両方の場合もある。下に、迷ったときの3つの問い(社外秘の印や見られる人の制限がないか、会社名と数字を抜いても話が通じるか、公開された情報だけで説明できるか)と、秘密の向きは2つ(本業の秘密を副業に出さない、副業先の秘密を本業に持ち込まない)。
身についた知識や技能と、会社の秘密、営業秘密の範囲を分けた図作成: 編集部 / 出典: 不正競争防止法、厚生労働省「モデル就業規則」ほか

うっかり出やすいのは、実績を語るとき

持ち出すつもりがなくても、副業を始めると自分の経験を語る場面が増えますよね。同じ経験でも、書き方しだいで中身が変わります(例は架空です)。

ポートフォリオ

そのまま○○商事の営業事務として、△△社向けの見積(単価1,240円)を担当

書き換え商社の営業事務として、法人向けの見積作成を5年担当

ブログやSNS

そのまま来月うちの会社が出す新商品の資料を作っていて気づいたこと

書き換え新商品の資料を作るときに、いつも最初に決めていること

セミナー

そのまま実際の社内資料を1枚お見せします。A社の受注率は30%でした

書き換え自分で作り直した架空の例で説明します。考え方は同じです

ポートフォリオに本業の制作物を載せるなら、著作権も見ておきたいところです。会社の発意で仕事として作り、会社の名義で公表するものは、別の定めがなければ会社が著作者になります。14

会社のPCや資料の流用は、いちばん説明がつきにくい形です。チラシの事案でも、会社の機器で個人の営業の連絡をしていたことが判断の材料になりました。副業の連絡に会社のメールを使わない、本業のひな形をコピーしない。この2つを最初に決めておきます。社外の生成AIに本業の資料を貼るのも、会社の情報を外に渡すことになります。詳しくは生成AIに入力してはいけない情報へ。

逆の向きも忘れがちです。ガイドラインは、副業先の秘密が本業の会社で漏れる場合も、問題になりうる例に挙げました。15副業先で聞いた価格を、本業の会議で「そういえば」と話してしまう。そんな場面も線の上にあります。

4つの書類を開く手順

  1. 就業規則を開き、副業の条と「機密」「競業」の言葉を探す
  2. 入社のときと、前の会社を辞めたときの誓約書を探す
  3. 雇用契約書か労働条件通知書で、兼業の定めを見る
  4. 副業先との契約書で、競業と秘密の条項を読む

見落としやすいのは2つ目です。控えがなければ、人事に聞いてかまいません。これから誓約書を求められたときも、大阪府の解説によると、すぐに応じる義務はなく、丁寧な説明と納得による合意が必要とのことです。164つ目は業務委託契約書の確認で説明しました。

人事には、結論を求める前に事実を渡すと話が早く進みます。文例は編集部の例で、○の部分を書き換えて使えます。

同業に近い副業で話がかみ合わないときや、誓約書の文言で迷うときは、弁護士に相談するのが近道です。有効かどうかは、最終的には裁判所が事案ごとに判断するからです。6社内で聞きにくいなら、労働局などの総合労働相談コーナーでも聞けます。

届出を受ける側は、まず中身を聞く

同業と書かれた届出を見ると、つい断りたくなるかもしれません。でも、モデル就業規則の解説は、規定を拡大解釈して必要以上に制限しないよう求めました。相談や自己申告を理由に不利益に扱うこともできません。届出なしで始めていたと分かったときも、まず届出を求めて確認するのが望ましい、という考え方です。17

聞くのは副業先の事業内容と受け持つ業務です。18そこに、担当の顧客が重なるかと、本業で使う情報や機器を持ち込むかを足すと、図のどのあたりかが見えてきます。認めるなら「担当の顧客とは取引しない」のように、条件を具体的に伝えると本人も守りやすいでしょう。ガイドラインも、競業や秘密の範囲を本人に伝えて注意を促す対応を挙げています。19

説明できる副業は、長く続けられる

人事に話す前に、2行だけ書いてみてください。「本業の顧客は相手にしない」「本業の資料と機器は使わない」。言い切れないところが見つかったら、それが最初に聞く1行です。

秘密の線を自分の言葉で説明できると、転職の面接で実績を語るときも、後輩に仕事を教えるときも、言葉に迷いにくくなります。

2026年10月31日時点の法令と、厚生労働省や公的機関の資料で確認しました。個別の判断は弁護士に、副業の税金は税務署や市区町村に確認してください。

注

  1. 厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(令和4年7月改定)の3(1)ウ ↩

  2. 同ガイドラインの1(2) ↩

  3. 厚生労働省「モデル就業規則」(令和7年12月)第70条 ↩

  4. 労働契約法第3条第4項、厚生労働省「競業避止義務の明確化について」(令和6年4月) ↩

  5. 大阪地判平成15年6月13日。厚生労働省のガイドライン「わかりやすい解説」の裁判例10 ↩ ↩2

  6. 注4の資料の3ページ ↩ ↩2

  7. 経済産業省「競業避止義務契約の有効性について」(令和6年4月)の6ページ ↩

  8. 「わかりやすい解説」の裁判例3、7、9、10、12、14 ↩

  9. 「わかりやすい解説」の10ページ ↩

  10. 細谷越史「労働者の秘密保持義務と競業避止義務の要件・効果に関する一考察」(労働政策研究・研修機構 日本労働研究雑誌663号) ↩

  11. 不正競争防止法第2条第6項、注7の資料の2ページ ↩

  12. 同法第2条第1項第7号、第3条、第4条、第21条第2項 ↩

  13. モデル就業規則第11条第5号 ↩

  14. 著作権法第15条第1項 ↩

  15. ガイドラインの3(1)イ ↩

  16. 大阪府「労働相談ポイント解説50」 ↩

  17. モデル就業規則第70条の解説の1、4 ↩

  18. 同じ解説の3 ↩

  19. ガイドラインの3(1)イ、ウ ↩

出典・参考

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執筆

ベンチャー・スピリット!編集部AIにより執筆

書いた AI: AI記者(解説)

法令・官公庁の資料・公的な統計などの一次情報を調べて、バックオフィスの仕事・ビジネスマナー・会社のしくみの解説記事と図解を書きます。数字と日付は出典と照らして確かめ、記事の最後に出典を載せています。使っているAI: Anthropic Claude。

監修

佐々木 航株式会社Game

代表取締役。工学部出身で、21歳で起業してからシステム会社の経営一筋で8期目。アプリの受託開発から始め、いまはAIを使ったシステムソリューションを手がけています。150社以上の企業とのプロジェクトで培った開発と情報システムの現場の経験と声を形にし、激動の時代を乗り越えたいと考えています。

メモ: 掲載時に自動で(しばらくの間)

記事は AI が一次情報を調べて書き、機械の検査を通してから公開しています。人が見ているもの・見ていないものはAI の使い方に書いています。まちがいに気づいたら訂正・ご指摘からお知らせください。直したら、記事の最後に何を直したかを書きます。

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