副業先でも雇われて働くなら、社会保険は2社とも入ることがあります。一方、雇用保険に入るのは原則1社だけ。2社とも入ると決まったら、会社ではなく本人が届を出します。期限は10日以内です。
パートを掛け持ちしている人も、正社員で週末だけ働く人も、最初に見るのは契約書にある週の所定労働時間。ここで扱うのは雇われて働く副業で、業務委託の仕事は含みません。
労働時間は足すのに、保険の要件は足さない
2社と結ぶ契約は1枚ずつ。保険の要件も1社ずつ見ますイラスト: 編集部が画像生成AIで作成したイメージ(YOBITSUGI AI・OpenAI gpt-image-2.5-sunburst)
副業の残業代を調べたことがある人は、2社の時間を足すものだと思っているかもしれませんよね。たしかに労働時間の通算なら、会社が違っても時間を足すルールです。
でも、社会保険は違います。要件は会社ごとに見るもので、日本年金機構のQ&Aも「所定内賃金や労働時間を合算することはしません」と書いています。1
だから週15時間のパートを2つ掛け持ちすると、合計は30時間なのに、どちらの会社でも社会保険に入りません。この場合は国民健康保険と国民年金に自分で入るか、条件が合えば家族の扶養に入ることになります。
1社ずつの見方は2段階です。まず、週の所定労働時間と月の所定労働日数の両方が、通常の労働者の4分の3以上なら加入します。週40時間・月20日の会社なら、週30時間以上かつ月15日以上。
4分の3に届かなくても、週20時間以上で、学生でなく、勤め先が厚生年金保険の被保険者51人以上の企業等なら、短時間労働者として加入します。2025年の年金制度改正法で、月額8.8万円以上という賃金の要件は2026年10月1日になくなりました。人数の線も2027年10月に36人以上へ下がり、2035年10月には要件そのものがなくなる予定です。数え方はパート・アルバイトの社会保険で詳しく説明しています。
自分の働き方は、どの組み合わせ?
1社ずつの結果を組み合わせると、答えは4通り。
2社に雇われたときの社会保険と雇用保険 判定と組み合わせ、働き方の例作成: 編集部 / 出典: 日本年金機構・厚生労働省
身近な働き方に当てはめてみましょう。どの会社も通常の労働者は週40時間で、正社員の例は本業のほうが賃金が多い場合です。
| 働き方 |
社会保険 |
雇用保険 |
| 正社員と、副業先で週10時間 |
本業だけ |
本業だけ |
| 正社員と、週20時間の副業先(被保険者30人) |
本業だけ。2029年10月から2社とも |
本業だけ |
| 正社員と、週20時間の副業先(被保険者100人) |
2社とも。本人が届を出す |
本業だけ |
| パート週25時間(被保険者100人)と、パート週15時間 |
週25時間の会社だけ |
週25時間の会社だけ |
| パート週15時間と、パート週15時間(どちらも被保険者100人) |
どちらも入らない |
どちらも入らない。2028年10月から1社で加入 |
本人の手続きが増えるのは3行目だけです。ただ、2行目の人も、副業先の人数の線が下がると、3行目に移ることがあります。
2社で入るなら、10日以内に本人が届を出す
この手続きは、会社まかせにできません。2社目でも加入することになった「事実発生から10日以内」に、本人が「被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を出します。
- 新しく入る会社から、資格取得届が出ていることを確認する。
- どちらの会社を主たる事業所にするか決める。
- 届を、選んだ会社の所在地を管轄する事務センターか年金事務所へ出す。
- 選んだ会社が健康保険組合に入っていれば、組合にも手続きをする。
出し方は電子申請、郵送、窓口持参のどれでもかまいません。マイナンバーを書くなら、本人確認の書類も要ります。
迷いやすいのは2番目でしょう。選んだ会社の保険者から医療給付を受け、健康保険の料率もそちらになります。どちらを選ぶかの基準は、資料には見当たりませんでした。協会けんぽは都道府県支部で、健康保険組合は組合ごとに料率が違います。まず2社の料率を聞いて比べると、進めやすいはずです。
とはいえ、一人で抱え込むことはありません。作った届書を会社の担当者や社会保険労務士が提出する場合の案内もあるので、人事に相談してみていいのです。
保険料は合算で決まり、2社の給与から引かれる
手取りはどう変わるのでしょうか。日本年金機構のリーフレットにある例で追ってみます。A社で月20万円、B社で月10万円の人は、合算した30万円で標準報酬月額が決まります。保険料を計算するために、月の報酬を区切りのよい額に当てはめたものです。
厚生年金保険料は、30万円に18.3%をかけて54,900円。本人の負担はその半分の27,450円で、これを報酬の割合で分け、A社の給与から18,300円、B社の給与から9,150円を引いて、それぞれの会社が納めます。
2社で社会保険に入るときの保険料の分かれ方と、届から天引きまでの流れ作成: 編集部 / 出典: 日本年金機構
A社だけで働くときの本人の負担も、同じ率で計算すると18,300円。つまりこの例では、A社の天引きはそのままで、増えるのはB社の給与から引かれる9,150円です。月10万円の副業で9,150円、さらに健康保険料も加わると思うと、小さくない額ですよね。
その代わり、老齢厚生年金の報酬比例部分は標準報酬月額などをもとに計算するので、2社目の報酬も年金額に反映されます。
雇用保険は主な1社、労災は2社分を合算
雇用保険の要件は、週20時間以上と、31日以上の雇用見込み。これも1社で満たす必要があり、2社とも満たすなら「生計を維持するに必要な主たる賃金を受ける雇用関係にある会社」でだけ加入します。2厚生労働省は、仕事を離れたときの生活を支える制度なので、主な収入を重く見ると説明しています。
2028年10月1日には、週20時間の線が週10時間に下がります。掛け持ちの人は2社とも要件を満たしやすくなります。そこで厚生労働省は2026年3月の雇用保険部会で、賃金日額が最も高い会社で加入する形をはっきりさせる案を示しました。週20時間未満の人は、「主たる賃金を受けている事業所」であることを本人が資格取得届で申告する案もあります。どちらも案で、決まった形はまだ確認できていません。
2社の時間を足して入れるマルチジョブホルダー制度もありますが、対象は65歳以上だけ。2社それぞれ週5時間以上20時間未満で、合計が週20時間以上、どちらも31日以上の雇用見込みがある人が、本人の申し出で入れる仕組みです。
労災保険は逆に、2社分を足して考えます。2社に雇われている人は複数事業労働者と呼ばれ、仕事や通勤によるけがや病気の給付は、2社の賃金を足した額で計算します。たとえばA社で月20万円、B社で月15万円なら、B社でのけがでも35万円がもとになります。請求書には「その他就業先の有無」を書く欄があるので、もう1社のことを忘れずに書いてください。2社の間を移動している途中の事故も、通勤災害の対象です。
本業と副業先の人事に確認すること
2社で社会保険に入ると、決まった標準報酬月額と保険料は、事務センターから2社それぞれに通知されます。本業に伏せたまま進めるわけにはいきません。先に就業規則で副業の扱いを確認しておくと、話がこじれにくくなります。
どちらの会社も、もう一方の契約の中身までは分かりません。伝えるのは本人です。
契約書を受け取ったら、週の所定労働時間に印をつけて、副業先の人数を聞く。そこまでできれば、自分が表のどの行に当たるかは見当がつきます。保険の話を自分から切り出せる人は、副業の相談そのものも進めやすくなるはずです。
この記事は、2026年10月30日時点の日本年金機構と厚生労働省の資料で確認した内容です。副業を始めてよいかは勤め先の就業規則で、税金は税務署で確認できます。自分の場合の判断に迷ったら、年金事務所やハローワーク、社会保険労務士に相談してください。