小さな飲食店のHACCPは、難しい分析から始めなくて大丈夫です。業界団体の手引書のひな形で計画を作り、毎日の記録をつけて、毎月1回振り返る。この流れを手引書どおりに続ければ、法律の求める衛生管理を実施していると見なされます1。任された店長や本部の担当者は、まず日本食品衛生協会の手引書を開くところから始めましょう。
飲食店は「手引書どおり」でよい
飲食店営業は、厚生労働省のいう小規模な営業者等に入ります。原則のHACCPをそのまま実施するのではなく、「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」が求められ、業界団体が作って国が確認した手引書を使えば対応できます1。やることは6つです。手引書の解説を読む、ひな形で計画を作る、従業員に伝える、記録する、推奨された期間保存する、定期的に振り返って見直す1。
飲食店向けの手引書は、日本食品衛生協会が作っています。いまの版は令和6年1月の改訂版です2。従業員が数名ほどの店を想定した内容なので、店舗が多い会社の本部の方は、店ごとに実態が合うかを見ながら使いましょう。
計画は、2つの表で作る
計画は、どの食品にも共通する「一般的な衛生管理のポイント」と、メニューに合わせた「重要管理のポイント」の2つに分かれます2。
一般的な衛生管理は7項目です。原材料の受入の確認、冷蔵庫と冷凍庫の温度の確認、交差汚染と二次汚染の防止、器具の洗浄と消毒、トイレの洗浄と消毒、従業員の健康管理と作業着、手洗いです。それぞれに「いつ」「どのように」「問題があったときはどうするか」を書き込みます2。庫内の温度なら、手引書の記載例は、始業前に温度計で冷蔵10℃以下、冷凍マイナス15℃以下を確認し、異常なら原因を確認して設定を直す、という形です。
とはいえ、難しく考えなくて構いません。普段していることを書き出せば十分だと、手引書も促しています2。
小規模な飲食店の衛生管理計画は、共通の7項目とメニューの3グループで作る作成: 編集部 / 出典: 日本食品衛生協会
重要管理は、メニューを3つに分けます。第1グループは刺身や冷奴のように加熱しないもの、第2グループはステーキや唐揚げのように加熱して熱いまま出すもの、第3グループはカレーやポテトサラダのように加熱のあと冷やすものです。常温で保管できるものは分けなくて構いません2。
いちばん気をつけたいのは第3グループです。手引書は、速やかに冷やせなかった場合(例として2時間以内に20℃以下)は提供しない、といった対応の例を挙げています2。
記録は、毎日決まった時刻に
記録の様式は2種類で、「一般的な衛生管理の実施記録」と「重要管理の実施記録」です。手引書の様式を使えば、日付ごとに項目の良否を付け、問題があった日だけ内容を書く形になります2。
一般的な衛生管理の実施記録の例(手引書の様式を縮めた編集部の例)作成: 編集部 / 出典: 日本食品衛生協会
続けるコツは、書く時刻と人を決めることです(編集部の見立て)。閉店の片づけの最後に、その日の責任者がつける形なら、書き忘れにくくなります。できれば週に1度、日々つけている人とは別の人が目を通しましょう。手引書も、抜けがないか、問題があったときの処置が適切だったかを確認者が見ることをすすめています2。
毎月1回は、記録を見て振り返ります。同じ問題やクレームが繰り返されていないかを見て、必要なら計画を直します12。手間に見えますが、記録は万が一のときに衛生管理をしていた証拠にもなります2。
記録は、1年間程度保管しましょう2。手引書が推奨する期間で、次の棚卸しのときに古い分から片づける流れにしておくと紙も増えません。
冷蔵庫の温度は、決めた時間に見て記録に残す(イメージ)イラスト: 編集部が画像生成AIで作成したイメージ(YOBITSUGI AI・OpenAI gpt-image-2.5-sunburst)
保健所の確認で見られること
保健所の食品衛生監視員は、定期の立入検査や営業許可の更新などの機会に、計画の内容と実施の状況を確認します。指導の土台も同じ手引書です3。提示を求められたらすぐ出せるよう、計画と記録の置き場所を決めておきましょう2。
計画がなかったり不備があったりした場合は、まず改善の行政指導が一般的です。従わないと営業の禁止や停止になることがあり、食中毒が起きた場合は直ちに行政処分がとられることもあります3。
お客さまから健康被害の連絡があったときは、保健所へ速やかに連絡します2。冬に増えるノロウイルスの対応は、飲食店のノロウイルス食中毒、調理から外す判断と保健所への連絡も見ておくと安心して動けます。営業許可の取り方は、飲食店の営業許可の取り方 保健所への相談は、物件を契約する前にで確認できます。
店で確認すること
- 手引書の最新版(令和6年1月改訂)を手元に置いたか
- 7項目に「いつ」「どのように」「問題があったとき」を書いたか
- メニューを3つのグループに分けたか。新メニューの追加も反映したか
- 冷蔵庫と冷凍庫に、温度計はあるか
- 記録をつける時刻と担当を決めたか
- 週に1度、別の人が目を通す形にしたか
- 毎月の振り返りの日を決めたか
- 計画と記録を、すぐ出せる場所に置いたか
この記事の内容は、2026年11月5日時点の厚生労働省の資料と日本食品衛生協会の手引書にもとづいています。店の状況で迷うときは、管轄の保健所の食品衛生監視員に相談してください。