年末年始の休みは、暦の赤い日をつなげば決まる、と思われがちです。工場では、そう簡単にはいきません。最後に出荷する日、設備を止める日、休み明けに動かし直す日、取引先や派遣会社に伝える日。休みの前後に、少なくとも4つの日付が要るからです。
この記事では、2026年から2027年にかけての暦で休み方を比べ、稼働日の決め方と、設備と連絡の段取りを順に並べます。11月の社内の打ち合わせに、そのまま持っていける形にしました。
休みの長さは、就業規則と年間の休日数の中で決める
休みの日付は、出荷と設備の日付から決めて、会社カレンダーに落とすイラスト: 編集部が画像生成AIで作成したイメージ(YOBITSUGI AI・OpenAI gpt-image-2.5-sunburst)
年末年始の休みは、会社が就業規則や会社カレンダーで決める休日です。休日は就業規則に必ず書く事項に入っていて、常時10人以上が働く会社は、作った就業規則を届け出ます。11年単位の変形労働時間制を使っている会社は、労使協定で決めたカレンダーが土台になります。カレンダーの組み方と協定の届け出は、会社カレンダーの作り方にまとめています。
2026年の年末は、12月31日が木曜日、元日が金曜日です。1月2日と3日が土日なので、暦の上では1月4日の月曜日が仕事始めになります。この暦で考えられる休み方を3つ並べてみます。
| 休み方 |
休む日 |
連休の長さ |
決めるときの点 |
| 暦どおり |
12月29日(火)〜1月3日(日) |
6日 |
12月26日(土)と27日(日)の週末とは離れる |
| 28日を計画年休にする |
12月26日(土)〜1月3日(日) |
9日 |
有給休暇の計画的付与の労使協定が要る |
| 28日を会社の休日にする |
12月26日(土)〜1月3日(日) |
9日 |
年間の休日数と所定労働時間の枠に収まるか |
真ん中の案で使うのは、有給休暇の計画的付与という仕組み。労使協定を結べば、一人ひとりの有給休暇のうち5日を超える部分について、会社が取る日を決められます。2休みの日数を増やさずに連休をつなげる方法として、工場の年末年始によく合う使い方です。
気をつけたいのは、決めたあとで休みを足すことです。受注が少ないからと、予定になかった日に稼働を止めて社員を休ませると、会社の都合による休業になります。その日には、平均賃金の6割以上の休業手当を払わなければなりません。3休みはあとから足すのではなく、カレンダーで先に決めておきましょう。
決めたカレンダーは、社員に知らせて初めて使えます。就業規則と、計画年休や1年単位の変形労働時間制の労使協定は、職場の見やすい場所に掲示するか、書面で渡すなどして周知する決まりです。4休憩室の掲示板と社内の共有フォルダの両方に置いておけば、交替勤務の人にも届きます。
稼働日は、最後の出荷と最初の出荷から逆に数える
休みの長さが決まったら、次は稼働日です。休みの初日から逆に数えていくと、決める順番がはっきりします。
- 取引先の休業日と、受注の締め日を聞く
- 最後に出荷する日を決める(運送会社の最終の集荷日に合わせる)
- 最後に生産する日を決める
- 設備の停止と大掃除、点検の日を取る
- 休み明けの点検と試運転の日を取る
- 最初に出荷する日を決める(運送会社の最初の集荷日に合わせる)
休みの前と後の両方に、生産しない日を1日ずつ置いてください。最後の生産の日に設備を止めて、そのまま休みに入ると、点検や片付けが休みの日にずれ込みます。休み明けも同じ。仕事始めの朝から出荷の予定を入れてしまうと、試運転で見つかった不具合を直す時間が残りません。
休みの日に設備の点検で出てもらう人がいるなら、その日の扱いを先に決めます。休日に働いてもらうには、時間外・休日労働の労使協定(36協定)が必要です。その日が法定の休日にあたるなら、割増賃金は3割5分以上になります。5誰が、どの日に、何の作業で出るのかを、休みのカレンダーと一緒に書き出しておくと、勤怠と給与の計算で迷いません。
2026年の年末年始の休み方の比べと、休みから逆に数える稼働日の例作成: 編集部 / 出典: e-Gov法令検索(労働基準法・労働安全衛生規則・労働者派遣法)
設備は、止めるときと動かし直すときに事故が起きやすい
年末年始は、ふだんと違う作業が重なる時期です。中央労働災害防止協会は、厚生労働省の後援で毎年「年末年始無災害運動」を呼びかけています。2026年度の期間は12月1日から2027年1月15日まで。実施要領によると、年末年始は大掃除や機械設備の保守点検、再稼働などの作業が増え、そこから災害が起きるおそれが高まります。6
実施要領はもう1つ、多忙による焦りや疲れから、ミスが起こりやすくなる時期だとも指摘しています。年内に出荷を終わらせたい気持ちと、休みに入る前の慌ただしさが重なる最後の数日こそ、点検の時間を削らない段取りが要ります。
ふだんの手順で動いている設備も、止めるときと動かすときは「非定常作業」です。法令にも、この場面の決まりがあります。
- 機械の掃除や給油、検査、修理、調整をするときは、危険のおそれがあれば運転を止める。止めたら起動装置に錠を掛けるか表示板を付け、ほかの人が動かせないようにする7
- 機械を動かし始めるときに危険のおそれがあれば、合図を決め、合図をする人を指名して、関係する人に合図を送る8
運動の実施要領は、事業場がすることとして、機械設備の一斉検査と作業前点検、年始の作業再開時の安全確認、火気の点検、保護具の点検などを挙げています。6これを止める前、休み中、動かす前の3つの時期に振り分けると、次のようになります。
| 時期 |
すること |
決めておくこと |
| 止める前 |
設備ごとの停止の手順を確認し、一斉に点検する。大掃除で5Sをやり直す |
掃除や点検で運転を止めたときの錠と表示板の担当 |
| 休み中 |
火気と電源、薬品の保管場所を見回る |
見回る人と日、緊急のときの連絡の順番 |
| 動かす前 |
作業前点検と試運転。合図を決めて動かし始める |
合図をする人、再開の安全確認に立ち会う人 |
止めるときと動かすときの手順書が設備ごとにあれば、担当者が休みで入れ替わっても、同じ順番で進められます。
取引先・派遣会社・運送会社に伝えること
休みの日付が決まったら、次は外の相手への連絡です。相手によって、知りたい日付が違います。
| 相手 |
伝えること |
早めに聞いておくこと |
| 取引先(納品先) |
休業の期間、最後の出荷日、最初の出荷日、休み中の緊急連絡先 |
取引先の休業日と受け入れの最終日 |
| 仕入先・協力会社 |
最後の納入日、最初の納入日、休み中は受け入れができないこと |
相手の休業日と、年明けの納入の予定 |
| 運送会社 |
最後と最初の集荷を頼む日、休み中の集荷の有無 |
年末の最終の集荷日と、年始の最初の集荷日 |
| 派遣会社 |
工場の休業日と、派遣社員に就業してもらう日 |
派遣契約の就業日とずれていないか |
派遣社員は、派遣会社に雇われて工場で働いています。派遣する日は、派遣会社と工場が結ぶ派遣契約で決めておく決まりです。9年末年始の休業日が契約の就業日とずれていると、派遣社員の勤務の予定や賃金に関わります。休みのカレンダーが決まったら、真っ先に派遣会社に伝えて、契約の就業日とそろえておきましょう。
取引先へのお知らせのメールは、送る時期と文例を年末年始の挨拶メールの例文に載せています。工場の場合は、休業の期間に加えて、最後と最初の出荷日を書いておくと、問い合わせが減ります。
文例の日付は、上の表の「28日を計画年休にする」案に、試運転の日を1日置いた例です。自分の工場の日付に置き換えて使ってください。
設備を止める前・休み中・動かす前の段取りと、外の相手に伝えること作成: 編集部 / 出典: 中央労働災害防止協会・e-Gov法令検索
11月の打ち合わせで決める段取り
この表とカレンダーは、来年の11月にも同じ順番で使えます。日付だけを次の年の暦に置き換え、今年うまくいかなかった行に一言メモを足しておくと、翌年の打ち合わせはもっと短く済むはずです。
この記事の制度は、2026年10月27日時点の労働基準法、労働安全衛生規則、労働者派遣法と、中央労働災害防止協会の実施要領によるものです。自社の場合の休日や休業手当の扱いは労働基準監督署に、派遣の契約のことは派遣会社や都道府県の労働局に相談できます。