オフィスが寒いと言われたとき、会社は何度まで暖めればよいのでしょう。答えは、事務所衛生基準規則という省令にあります。空調のある事務所なら、室温は18度以上28度以下、湿度は40%以上70%以下にするよう努める、というのが今の決まりです。1
「17度」という数字を覚えている人もいるかもしれませんが、こちらは2021年11月までの基準です。今の基準で本当に寒いのかは、測り方と、会社でできる対策まで合わせて見ると判断しやすくなります。
法律が決めている線は2つ
寒いという声が出たら、まず部屋の真ん中で温度と湿度を測るイラスト: 編集部が画像生成AIで作成したイメージ(YOBITSUGI AI・OpenAI gpt-image-2.5-sunburst)
事務所衛生基準規則は、労働安全衛生法にもとづいて、事務所の空気や温度、明るさなどの最低限の基準を決めた省令です。冬の寒さに関わる線は、強さの違う2つがあります。
| 決まり |
対象 |
中身 |
強さ |
| 暖房などの措置 |
すべての事務所 |
室温が10度以下なら、暖房するなど適当な温度の調節をする |
義務 |
| 室温と湿度の目安 |
空気調和設備がある事務所 |
室温18度以上28度以下、相対湿度40%以上70%以下 |
努力 |
| 空気の流れ |
空気調和設備か機械換気設備がある事務所 |
吹き出す空気が特定の人に直接当たり続けないようにし、気流は秒速0.5メートル以下 |
義務 |
10度以下で暖房する、というのは誰が読んでも寒すぎる線で、ここは努力ではなく義務です。2ふだん目安にするのは2つ目の18度と40%で、空調のある事務所の多くはこちらが当てはまります。1
見落としやすいのが3つ目の空気の流れです。暖房の風が1人の席に当たり続ける配置は、規則が避けるよう求めている形です。3室温計の数字は18度を超えていても、吹き出し口の近くや窓際では、体で感じる寒さがかなり違います。
17度から18度に変わったのは2021年12月
室温の下の線は、2021年12月1日に17度から18度に上がりました。4事務所衛生基準規則の改正で、湿度40〜70%と上の線の28度はそのままです。古い社内のマニュアルやポスターに「17度以上」と書かれているなら、書き換えておきましょう。
検索で「室内温度17度」と出てくる記事の多くは、改正の前に書かれたものです。社員に説明するときは、今の基準が18度であること、2021年に変わったことの2つを添えると、話がかみ合います。
測るなら、部屋の中央で床から75〜120cm
寒いという声の真偽を確かめるには、まず測ることです。規則は、室温や湿度を測る位置を決めています。部屋の中央の、床から75cm以上120cm以下の高さ。座った人の顔から胸のあたりです。測るのは、部屋をふだん使っている時間です。5使う温度計は0.5度の目盛のものか、それと同じ以上の性能のものとされています。
| 測ること |
位置と時間 |
測定器 |
| 室温 |
部屋の中央、床から75〜120cm。ふだん使っている時間 |
0.5度目盛の温度計か、同等以上のもの |
| 湿度 |
同じ位置と時間 |
0.5度目盛の乾湿球の湿度計か、同等以上のもの |
| 気流 |
同じ位置と時間 |
秒速0.2メートル以上を測れる風速計 |
ビル全体を管理会社がまとめて空調している建物(中央管理方式)の事務所では、会社が2か月以内ごとに室温や湿度を測り、記録を3年残す決まりもあります。6入居しているビルなら、管理会社が測った記録があるかを聞いてみると、過去の冬の数字が手に入るかもしれません。
冬は湿度が40%を下回りやすい
暖房を入れると、室温は上がっても湿度は下がりがちです。規則の目安は40%以上。厚生労働省は、急性呼吸器感染症の予防として、乾燥しやすい室内では加湿器などで湿度を50〜60%に保つことも効果的だと案内しています。7
湿度は室温と一緒に同じ位置で測れます。冬の朝と午後で一度ずつ測ってみると、どの時間に下がるかが分かります。
暖房器具を足すときの注意
エアコンだけで暖まらない部屋に、石油ストーブやガスファンヒーターを足す会社もあるでしょう。燃料を燃やす器具を使う部屋には、換気扇などの換気の設備を設け、器具に異常がないかを毎日点検する決まりがあります。8
窓を閉め切ったまま燃やし続けると、一酸化炭素や二酸化炭素が増えます。規則は、事務所の空気中の一酸化炭素と二酸化炭素の割合にも上限を決めています。9電気の暖房器具を足すなら、コンセントにつなぐ数と電気の容量を、ビルの管理会社か設備の担当に確かめておくと安心です。
寒いと言われたときの段取り
事務所の室温と湿度の基準。決まりの強さと測る位置作成: 編集部 / 出典: e-Gov法令検索(事務所衛生基準規則)・厚生労働省
寒さの感じ方は人によって違います。一人の声だけで設定温度を上げると、今度は暑いという声が出ることもあります。数字で状況をつかんでから、手を打つ順番を決めましょう。
- 寒いと言われた席と時間を聞き、その近くと部屋の中央で室温と湿度を測る
- 部屋の中央が18度を下回るなら、空調の設定と運転の時間を見直す
- 中央は18度以上なのに特定の席だけ寒いなら、吹き出し口の向き、窓際のすき間風、足元の冷えを見る
- 湿度が40%を下回るなら、加湿器を置く場所と台数を決める
- 測った日時と数字、した対策をメモに残す
部屋全体は基準を満たしていても、席によって差が出ることはよくあります。吹き出し口の向きを変える、窓際にパーテーションを置く、席替えのときに寒い席を固定しないといった対策は、設定温度を上げるより電気代も抑えられます。
寒いと言われたときの段取りと、設定温度より先に試せること作成: 編集部 / 出典: e-Gov法令検索(事務所衛生基準規則)・厚生労働省
冬の前に確認すること
測った数字を冬の初めに一度記録しておくと、「寒い」という声が出たときに、去年と比べながら話ができます。来年の11月にも同じ表で確かめれば、設定温度や加湿器の台数を毎年ゼロから決め直さずに済みます。
この記事の基準は、2026年10月27日時点の事務所衛生基準規則と、厚生労働省の案内によるものです。自社の事務所に当てはまるかは、労働基準監督署や産業医、ビルの管理会社に相談できます。