消費者庁は2026年10月20日、株式会社giobaiに対し、自社サイトの表示が景品表示法に違反するとして措置命令を行いました。広告やWebサイト、SNSの表示を出す前に、広報・営業事務・法務が何を確かめるかを、2026年10月時点の公式の資料でまとめます。
消費者庁を名乗る有料調査のメールへの注意喚起はバックオフィスの国の情報まとめ 2026年10月20日 消費者庁を名乗るメールと最低賃金に書きました。この記事は、その広告表示の側の実務です。
今回の措置命令で、何の表示が問題にされたか
公表資料によると、対象は寝具用の商品とそのアロマカートリッジで、問題にされた表示は2つです。会社の良し悪しを論じるのではなく、事実だけを短く確かめます。
| 類型 |
表示の媒体 |
問題にされた点 |
| 優良誤認(第5条第1号) |
自社ウェブサイト |
ダニの死滅や忌避などの効果が得られるかのような表示。裏付けの資料の提出を求めたが、合理的な根拠を示すものとは認められなかった |
| ステルスマーケティング告示(第5条第3号) |
自社ウェブサイト |
商品の無償提供と対価の提供を条件にSNSへの投稿を依頼し、その投稿を抜粋して掲載したが、依頼した投稿だと明らかにしていなかった |
実務で目を引くのは、2点目です。社外の人が書いた投稿でも、会社が依頼し、自社サイトに載せれば、事業者の表示として扱われています。命令の内容は、一般消費者への周知徹底、再発防止策を従業員に周知すること、今後同様の表示をしないことです。
景品表示法が見る3つの類型を早見表で押さえる
景品表示法の正式名称は、不当景品類及び不当表示防止法です。消費者が商品やサービスを自分で合理的に選べる環境を守るため、実際より良く見せる表示と、過大な景品を規制します。表示の規制は第5条にあり、3つの類型に分かれます。
不当表示の3類型を、条文・公式の例・課徴金の対象かで並べた早見表作成: 編集部 / もとの資料: 消費者庁 表示規制の概要・景品表示法第5条・第8条
| 類型 |
条文 |
内容 |
課徴金 |
| 優良誤認表示 |
第5条第1号 |
品質・規格・内容を、実際より、または競争業者より著しく優良と示す |
対象 |
| 有利誤認表示 |
第5条第2号 |
価格・取引条件を、実際より、または競争業者より著しく有利と誤認させる |
対象 |
| 指定された表示 |
第5条第3号 |
無果汁の清涼飲料水、原産国、消費者信用の融資費用、おとり広告、有料老人ホーム、事業者の表示と判別しにくい表示など |
対象外(措置命令の対象) |
効果や性能の表示には根拠の資料が要る
商品の効果や性能の表示が優良誤認かどうかを判断する必要があるとき、消費者庁は、期間を定めて、表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求められます。これが不実証広告規制です。資料を出さないとき、または出した資料が合理的な根拠と認められないときは、措置命令との関係では不当表示とみなされます。課徴金との関係では、不当表示と推定されます。
だから根拠の資料は、指摘されてから探すのではなく、表示を出す前に手元に置きます。
出す前に確かめるチェックリスト
広報や営業事務が起案した表示を、法務が見るときの項目です。1つでも「いいえ」があれば、出す前に直すか、文言を変えます。
「No.1」「最安」を出すときの4点
消費者庁は2024年9月26日、No.1表示に関する実態調査報告書を公表しました。令和5年度の措置命令44事業者のうち13事業者がNo.1表示に関するもので、いずれも、イメージ調査を根拠に「顧客満足度No.1」などと表示していたと報告書は書いています。ヒアリングでは、広告主の多くが、根拠の調査の質問項目や比較した競合を把握していませんでした。
合理的な根拠と認められるには、次の4点を満たす必要があります。
| 確かめる点 |
中身 |
| 比較対象 |
主要な競合商品・サービスが比較に入っている |
| 調査対象者 |
表示から受け取れる対象者を選んでいる(「顧客満足度」なら実際の利用者) |
| 調査の方法 |
公平な方法で実施している |
| 表示と結果の対応 |
表示の内容と調査結果が合っている |
「医師の90%が推奨」のような高評価%の表示も、同じ4点(比較対象を除く)で確かめます。
二重価格と期間限定を確かめる
「通常価格1万円、今だけ6,000円」のように、元の価格を併記する表示を二重価格表示といいます。過去の販売価格を元にするときの目安は、消費者庁の価格表示ガイドラインにあります。
| 確かめる点 |
目安 |
| 見る期間 |
セール開始時点からさかのぼる8週間(販売期間が8週間未満ならその期間) |
| 元の価格で売った期間 |
その期間の過半を占めている |
| 例外 |
元の価格で売った期間が通算2週間未満、または最後に売った日から2週間以上たっていれば、「最近相当期間にわたって販売されていた価格」とはいえない |
「セール期間のあとは6,000円になります」のように将来の価格を元にするときは、消費者庁の執行方針で、実際に販売しない価格や、ごく短期間だけ販売する価格は問題になるおそれがあるとされています。セール後も値上げの予定がないのに、将来の価格を比べるのは避けます。
数量限定は、おとり広告の運用基準に、販売数量が著しく限られているのに限定の内容を明瞭に書いていない場合の考え方があります。「限定」と言いながら限定量を超えて売り続ければ、第5条第1号か第2号に違反するおそれがあります。
打消し表示は、近くに、読める形で
大きく目立つ強調表示に例外や条件があるとき、その旨を書くのが打消し表示です。消費者庁の資料は、強調表示と打消し表示が矛盾するとき、文字が小さいとき、強調表示から離れているとき、動画で表示時間が短いときに、消費者が気付けず、不当表示になるおそれがあるとしています。
打消し表示は、例外として使うものです。「全員に当てはまる」と読ませた上で、小さな字で外すのは避けます。
ステマ(インフルエンサーへの依頼)を確かめる
2023年10月1日から、広告であるのに広告と分からない表示、いわゆるステルスマーケティングは景品表示法の規制対象です。規制されるのは広告主で、依頼を受けたインフルエンサーは対象ではありません。
| 場面 |
確かめること |
| インフルエンサーに投稿を依頼 |
投稿に「広告」「PR」などが、読める位置・大きさ・長さで入っている |
| 無償で商品を渡す |
投稿の内容を会社が決める関係なら、事業者の表示になりうる |
| アフィリエイト |
アフィリエイトサイトに、事業者の表示であることが書かれている |
| レビューの依頼 |
購入者に依頼したレビューを、自社サイトに広告と分からず載せていない |
| 自社サイトへの転載 |
依頼した投稿を抜粋して載せた場合も、事業者の表示になる(今回の措置命令) |
景品・キャンペーンの上限額
景品類は、顧客を誘引する手段として、取引に付随して提供する物品や金銭などです。2026年10月21日に確かめた消費者庁の資料による上限額は次のとおりです。
| 種類 |
取引価額 |
景品類の最高額 |
総額 |
| 総付景品(もれなく・先着) |
1,000円未満 |
200円 |
定めなし |
| 総付景品 |
1,000円以上 |
取引価額の10分の2 |
定めなし |
| 一般懸賞(抽選・クイズなど) |
5,000円未満 |
取引価額の20倍 |
懸賞に係る売上予定総額の2% |
| 一般懸賞 |
5,000円以上 |
10万円 |
懸賞に係る売上予定総額の2% |
| 共同懸賞(商店街など) |
取引価額を問わず |
30万円 |
懸賞に係る売上予定総額の3% |
たとえば取引価額3,000円の商品に抽選で景品を付けるなら、最高額は6万円です。同じ商品にもれなく付ける景品なら、最高額は600円です。
購入や来店を条件にせず、誰でも応募できる抽選(オープン懸賞)には、景品規制は適用されません。2006年4月に上限額の規制がなくなっています。ただし、新聞・雑誌・不動産などは業種別の告示があります。
指摘されたときの流れと、会社に出る影響
景品表示法に違反する疑いがあるとき、消費者庁は資料の収集や事業者への事情聴取などの調査を行います。都道府県知事も措置命令を出せます。
| 手続 |
中身 |
| 措置命令 |
誤認の排除、再発防止策、今後同様の違反をしないことなどを命じる |
| 課徴金納付命令 |
課徴金対象期間の対象商品の売上額の3%。第5条第1号と第2号が対象で、第3号は対象外 |
| 確約手続 |
疑いのある行為を、事業者が自主的に是正する計画を出して認定を受ける(2024年10月1日施行) |
課徴金には、決まりがいくつかあります。
- 課徴金対象期間は、違反をした期間(やめたあと6か月以内の取引を含む)で、最長3年です。
- 課徴金額が150万円未満なら、納付を命じません。
- 違反を知らず、知らないことに相当の注意を怠っていなかったときは、命じません。
- 違反の事実を自主報告すれば、額が2分の1になります。消費者に返金措置をとれば、減額される場合もあります。
- 10年以内に課徴金納付命令を受けたあとに再び違反すると、3%が4.5%になります。
措置命令に違反すると、2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金です。法人には3億円以下の罰金があります(第46条・第49条)。
確約手続は、疑いを通知された日から60日以内に是正措置計画を出して認定を申請します。ただし、10年以内に法的措置を受けたことがある場合や、根拠がないと知りながらあえて表示した悪質で重大な場合は、対象になりません。
社内の確認の段取りを決める
景品表示法第22条は、すべての事業者に、景品類や表示を適正に管理する体制づくりを求めています。消費者庁の指針は、必要な措置を7つにまとめています。
| 指針の措置 |
会社でやること |
| 景品表示法の考え方の周知・啓発 |
広報・営業・商品企画に、この記事のチェックリストを配る |
| 法令遵守の方針等の明確化 |
表示の確認ルールを社内規程や手順書に書く |
| 表示等に関する情報の確認 |
根拠の資料を表示の文言と結び付ける |
| 表示等に関する情報の共有 |
根拠と注意点を、起案者・承認者・外注先で共有する |
| 表示等を管理する担当者を定める |
監視・監督の権限がある担当者か部門を決める |
| 根拠資料の保管 |
商品が消費者に供給され得る期間、残す |
| 不当表示が明らかになったときの対応 |
事実確認、誤認の排除、再発防止の順で動く |
表示を出す前の6つの確認の段取りと、止まる合図・役割分担作成: 編集部 / もとの資料: 消費者庁 事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置に関する指針ほか
起案から公開までの役割
- 起案(営業事務・広報)が、文言と根拠の対応表をつくる。
- 法務が、類型・上限額・打消し表示・比較の表示を確かめる。
- 表示等管理担当者が承認し、表示の画像と資料を保管する。
- 公開後、期間限定の終了日や価格の戻しを、カレンダーで確かめる。
- 外注先とは、誰が何を確認するかを契約書に書く。
今日からできること
- 今出している広告・LP・チラシのうち、効果・性能、No.1、最安、二重価格の言葉を一覧にする。
- 一覧の言葉ごとに、根拠の資料がどこにあるかを書き出す。見つからないものは、法務に相談する。
- 外部の調査会社の「No.1」は、質問項目、対象者、比較した競合を報告書で確かめる。
- SNSやアフィリエイトに依頼しているものは、広告の表示が読める形か、投稿を実際に開いて見る。
- 景品やキャンペーンの上限額を、取引価額から計算して表にしておく。
- 表示等管理担当者を決めて、確認の依頼の書式を作る。
不安な表示は、公開前なら消費者庁の表示対策課(03-3507-9233)に確かめることもできます。個別の判断は、弁護士など専門家にも相談してください。この記事は2026年10月21日時点の制度で書いています。