求人票を書くとき、「給料と休みを書けば十分」と考えてしまうことがあります。実際には、職業安定法とその施行規則が、募集の段階で示す項目を決めています。この記事では、2026年10月21日時点の条文と厚生労働省の資料にもとづいて、必ず書く項目、架空の会社の記入例、書いてはいけないこと、求人サイトの注意点までをまとめました。
求人票に必ず書く労働条件は何か
根拠は職業安定法5条の3です。労働者を募集する人は、応募しようとする人に、仕事の内容と賃金、労働時間その他の労働条件を示さなければなりません。ハローワークや職業紹介事業者に求人を申し込むときも同じです。
どの項目を示すかは、職業安定法施行規則4条の2第3項に並んでいます。表にすると次のとおりです。
| 項目 |
書くこと |
2024年4月の追加 |
| 業務の内容 |
雇入れ直後の仕事と、将来の変更の範囲 |
変更の範囲が追加 |
| 契約期間 |
期間の定めの有無と期間 |
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| 有期契約の更新の基準 |
更新の有無と判断の基準。通算期間・更新回数の上限があれば、その上限も |
追加 |
| 試用期間 |
期間。中と後で条件が違うときは両方 |
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| 就業の場所 |
雇入れ直後の場所と、将来の変更の範囲 |
変更の範囲が追加 |
| 始業・終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日 |
時刻・時間外の有無・休憩・休日 |
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| 賃金の額 |
臨時に支払われる賃金・賞与などを除いた賃金の額 |
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| 保険の適用 |
健康保険・厚生年金・労災保険・雇用保険 |
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| 募集者の氏名・名称 |
会社の正式名称 |
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| 受動喫煙を防ぐ措置 |
屋内禁煙・喫煙室ありなど |
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| 派遣労働者として雇う旨 |
派遣で雇う場合だけ |
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求人票に必ず書く労働条件の早見表と、明示の出し方の決まり作成: 編集部 / もとの資料: 職業安定法施行規則4条の2・厚生労働省リーフレット
2024年4月からの追加は、厚生労働省のリーフレットで次の3つとされています。従事すべき業務の変更の範囲、就業場所の変更の範囲、有期労働契約を更新する場合の基準(通算契約期間または更新回数の上限を含む)です。労働基準法に基づく契約を結ぶときの明示事項と同じ改正でした。
出し方の決まり
厚生労働省のリーフレットが示している決まりは次の4つです。
- 求人票や募集要項に、少なくとも上の項目を示す。
- 求人広告のスペースが足りないなど、やむを得ないときは「詳細は面談時にお伝えします」と添え、一部をあとで示してもよい。ただし原則として、面接などで応募者と最初に会う時点までに全部を示す。
- 面接の途中で最初に示した条件が変わるときは、その変更内容を速やかに示す。
- 示した内容の記録は、募集が終わる日まで保存する(施行規則4条の2第7項。契約を結ぶのが募集終了後になるときは、契約を結ぶ日まで)。
試用期間中と試用期間後で条件が違うときは、それぞれの条件を示します(同条第6項)。
項目ごとの書き方のコツ
仕事の内容と就業場所
変更の範囲は、「諸般の事情を総合的に考慮して判断する」のような抽象的な書き方より、具体的に書くほうが望ましいとリーフレットは示しています。記載例は次のとおりです。
| 項目 |
記載例(厚生労働省リーフレットより) |
| 業務内容 |
(雇入れ直後)経理 (変更の範囲)法務の業務 |
| 就業場所 |
(雇入れ直後)大阪支社 (変更の範囲)本社および全国の支社、営業所 |
| 就業場所 |
(雇入れ直後)渋谷営業所 (変更の範囲)都内23区内の営業所 |
ハローワークの手引きでは、就業場所は応募者が迷わないよう、ビル名・階数・部屋番号まで正確に書くことになっています。
契約期間と更新の基準
有期契約では、更新の有無と判断の基準を書きます。更新に上限があるときは、通算の期間か回数のどちらかを書きます。リーフレットの記載例は「契約の更新 有(契約期間満了時の業務量、勤務成績により判断) 通算契約期間は4年を上限とする」です。
労働時間と休日
ハローワークの手引きによると、就業時間は24時間表記で書きます。シフト制のときは、それぞれの時間帯を書きます。時間外労働がある場合は月平均の時間数を書きます。時間外労働をさせるには36協定の締結と労働基準監督署への届出が要ることも、手引きに書かれています。
賃金と固定残業代
賃金は、まず基本給の下限と上限を書きます。固定残業代(時間外労働の有無にかかわらず、一定時間分の時間外手当を定額で払う仕組み)を採用しているときは、厚生労働省のリーフレットが次の3点を書くよう示しています。
- 基本給 ●●円(下の手当を除く額)
- ■■手当(時間外労働の有無にかかわらず、●時間分の時間外手当として▲▲円を支給)
- ×時間を超える時間外労働分についての割増賃金は追加で支給
ハローワークの手引きでも、固定残業代は「定期的に支払われる手当」の欄ではなく専用の欄に書き、時間外労働の有無にかかわらず固定的に支払うものであること、超えた分を法定どおり追加で支払うことを必ず書くよう求めています。
賃金の額は最低賃金以上であることも前提です。毎年10月前後に改定されるため、最低賃金の2026年度の発効日を確かめてから金額を決めます。
社会保険と試用期間
保険は、実際に加入させる制度を書きます。ハローワークの手引きは、雇用形態やフルタイム・パートによって適用が違うときは、その人に適用される制度を書くよう求めています。試用期間は期間を書き、中の条件が本採用後と異なるときは、できる限り詳しく書きます。
求人票の記入例 架空の会社の事務職
株式会社みなと文具(架空)が、正社員の一般事務を募集する場合の例です。会社名・住所・金額はすべて作例で、実際の記入は各社の就業規則や契約の内容に合わせてください。
架空の会社の事務職の求人票の記入例(会社名・金額は作例)作成: 編集部 / もとの資料: ハローワーク「求人申込書の書き方」
| 欄 |
記入例 |
| 職種 |
一般事務(営業事務) |
| 仕事の内容 |
(雇入れ直後)受注の入力・請求書の作成・電話と来客の応対 (変更の範囲)営業事務と総務の庶務 |
| 雇用形態・期間 |
正社員・期間の定めなし |
| 試用期間 |
あり 3か月(試用期間中の条件は同じ) |
| 就業場所 |
(雇入れ直後)本社 ○○区△△1-2-3 □□ビル5階 (変更の範囲)本社と都内の営業所。転勤なし |
| 就業時間・休憩 |
9:00〜18:00・休憩60分(12:00〜13:00) |
| 時間外労働 |
あり 月平均15時間 |
| 休日 |
土日・祝日・年末年始 年間休日120日 |
| 賃金 |
基本給20万円〜25万円(固定残業手当を除く額)。固定残業手当3万円(時間外労働の有無にかかわらず、15時間分の時間外手当として支給)。15時間を超える時間外労働分の割増賃金は追加で支給 |
| 手当・支払日 |
通勤手当 実費支給(月3万5千円まで)・毎月20日締め25日払い |
| 昇給・賞与 |
昇給あり・賞与あり(年2回) |
| 加入保険 |
雇用保険・労災保険・健康保険・厚生年金 |
| 受動喫煙対策 |
屋内禁煙 |
| 年齢 |
不問 |
| 募集者 |
株式会社みなと文具 |
賞与や昇給は、施行規則の必須項目には入っていません。ただ、ハローワークの求人申込書には欄があり、「あり」と書くなら前年度の実績に沿って書きます。実績のない金額や回数を書くことはできません。
書いてはいけないこと
嘘や誤解を生む表示
職業安定法5条の4は、求人や募集の情報を広告などで出すとき、虚偽の表示や誤解を生じさせる表示をしてはならないとしています。また労働者の募集を行う人は、その情報を正確かつ最新の内容に保たなければなりません。
条文には罰則もあります。虚偽の広告や虚偽の条件を示して労働者の募集をした場合、ハローワークなどへ虚偽の条件で求人を申し込んだ場合は、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金です(同法65条)。
ハローワークの手引きにも、「記入した労働条件は、そのまま採用後の労働条件になることが期待されています」と書かれています。実際より良く見せる書き方は避けます。
性別による制限
男女雇用機会均等法5条は、募集と採用で性別にかかわりなく均等な機会を与えるよう求めています。厚生労働省のパンフレットは、違法の例として次のようなものを挙げています。
最後の2つは、合理的な理由がなければ間接差別として禁止されています(同法7条)。例外は、芸術・芸能の表現の真実性などから男女のいずれかでなければならない職務、守衛・警備員のうち防犯上必要な職務など、限られた場合です。パンフレットは「単に一方の性に適していると考えているだけでは該当しません」と書いています。
年齢による制限
労働施策総合推進法9条は、募集・採用で年齢にかかわりなく均等な機会を与えるよう求めています。厚生労働省のリーフレットによると、ハローワーク、民間の職業紹介、求人広告、自社のホームページ、パートやアルバイトも対象です。
「求人票を年齢不問にして、面接で年齢を理由に断る」のも法の規定に反します。応募者の年齢を理由に、本人の希望と関係なくパートタイムに変えるような条件の変更もできません。例外は次の6つに限られます(労働施策総合推進法施行規則1条の3第1項)。
| 例外 |
内容 |
| 1号 |
定年年齢を上限に、期間の定めのない契約で募集する |
| 2号 |
労働基準法など法令で年齢の制限がある(例: 18歳以上でなければ就かせられない業務) |
| 3号イ |
長期勤続によるキャリア形成のため、若年者等を期間の定めのない契約で募集する |
| 3号ロ |
技能・ノウハウの継承のため、特定の職種で人数が少ない年齢層に限る |
| 3号ハ |
芸術・芸能の分野で表現の真実性が必要 |
| 3号ニ |
60歳以上の高年齢者などに限って募集する(国の施策を活用する場合) |
上限を65歳未満にするときは、その理由を求職者に書面などで示す義務もあります(高年齢者雇用安定法20条1項)。リーフレットには、定年が63歳なのに「60歳未満」とする、下限の年齢を付ける、「業務の習熟に2年かかる」ことを理由に上限を下げる、といった例が認められない例として載っています。
応募が集まる仕事内容の書き方
ここからは法令ではなく、慣習と編集部の目安です。ハローワークの手引きは、仕事の内容を「求職者が最も重要視する項目の一つ」とし、詳しく説明することが応募者の疑問を解消し、応募者が増えることにつながると書いています。
編集部の目安として、次の4つを勧めます。
- 専門用語や社内の呼び名を避ける(手引きも職種欄でそう求めています)。
- 1日の流れを、時間の順に3〜5個で書く。
- 使うソフトと作業の中身を具体的に書く(手引きの「必要なPCスキル」欄の考え方と同じ)。
- チームの人数と、だれが教えるかを書く。
この例は「何を、どのくらい、だれと」が分かる点がポイントです。
求人サイトに載せるときの注意
求人サイトに載せる場合も、自社が募集する人であることに変わりはなく、5条の3と5条の4の責任は自社にあります。注意点は次のとおりです。
- 広告に最低限入れる項目: 厚生労働省の通達(令和6年12月18日)は、求人情報に、求人者の氏名または名称、住所、連絡先、業務内容、就業場所、賃金を含める必要があるとしています。
- 入力欄に収まらない項目: 自社の採用ページや備考欄に書く。「詳細は面談時に」とした分は、最初の接触までに示す(前述)。
- 掲載の時点: リーフレットは、募集広告では掲載した時点を明示するなど、情報を正確かつ最新に保つ義務があるとしています。募集が終わったら下げ、条件が変わったら直します。
- 食い違い: ハローワークの求人情報は、一定のルールのもとで求人サイトなどに転載されることがあるとハローワークの手引きにあります。サイトごとに賃金や休日が違う、という状態にしないよう、元の内容を1つ決めて使いまわします(これは編集部の注意です)。
- ハローワークのオンライン自主応募: 受け付けると、ハローワークの職業紹介を要件とする助成金(特定求職者雇用開発助成金など)の対象にならない、と手引きに注意があります。
労働条件通知書との関係
求人票は応募を受ける前に示す書類で、労働条件通知書は契約を結ぶときに渡す書類です。2つは別の法律にもとづきます。
|
求人票・募集要項 |
労働条件通知書 |
| 場面 |
募集のとき |
労働契約を結ぶとき |
| 法律 |
職業安定法5条の3 |
労働基準法15条 |
| 示す項目 |
施行規則4条の2第3項の項目 |
労働基準法施行規則5条の項目 |
| 契約期間・場所・業務の変更の範囲 |
書く |
書く(2024年4月から) |
| 退職・解雇の事由、賃金の締切日・支払日 |
規則の項目には入っていない |
書面で示す |
労働基準法施行規則5条では、契約期間、更新の基準、就業場所・業務(変更の範囲を含む)、始業・終業の時刻や休日、賃金の決定・計算・支払の方法と締切り・支払の時期、退職に関すること(解雇の事由を含む)などが明示事項で、このうち退職に関することまでの主な項目(昇給を除く)は、書面の交付で示します。使用者は、明示した労働条件を事実と異なるものにしてはならないともされています。
ハローワークの求人票の見本には、「求人票は雇用契約書ではありません。採用時には必ず、書面により労働条件の明示を受けてください」と書かれています。入社時に何を渡すかは、入社手続きのチェックリストにまとめています。求人票の内容と通知書がずれていないか、渡す前に見比べておくと、入社後のトラブルを防げます。募集する職種の相場を知りたいときは、事務職の有効求人倍率・賃金のデータも参考になります。
今日からできること
- 今出している求人票を1枚開き、上の表の項目が全部あるか、1つずつ印を付けます。
- 「変更の範囲」と「更新の上限」が書かれているか確かめ、足りなければ書き足します。
- 固定残業代があるなら、3点(基本給の額・何時間分で何円か・超えた分は追加)を書き直します。
- 「男性歓迎」「若手活躍中」のような、性別や年齢をうかがわせる言葉がないか探して直します。
- ハローワークと求人サイトと自社ページで、賃金・休日・場所が同じか見比べます。
- 面接の途中で条件を変える場合に備え、変更内容を書面かメールで伝える手順を決めておきます。
この記事は、2026年10月21日時点の職業安定法・同施行規則・労働施策総合推進法・男女雇用機会均等法と、厚生労働省・ハローワークの資料をもとにしています。個別の求人票の適否は、社会保険労務士、または都道府県労働局・ハローワークの窓口に確かめてください。