目標は、大きな数字を書くほど評価が上がる、と思われがちです。けれど期末の評価で大事になるのは、その目標が来期の終わりに「できた・できなかった」を2人で同じように判断できるかどうかです。判断できない目標は、面談で何度も書き直すことになります。
期末の面談で、来期の目標を出すよう言われた人に向けて、数字にしにくい仕事でも合意しやすい書き方と、面談までの段取りを順に並べます。
目標は「何を・どれだけ・いつまでに」で書く
目標シートを前に、上司と数字と期限をすり合わせるイラスト: 編集部が画像生成AIで作成したイメージ(YOBITSUGI AI・OpenAI gpt-image-2.5-sunburst)
目標の1文には、3つの部品を入れます。何をするか、どれだけするか、いつまでにするか。この3つがそろうと、期末に上司と自分が同じ物差しで結果を見られます。
| よくある書き方 |
何を・どれだけ・いつまでに |
| 月次の締めを早くする |
月次の締めを、毎月5営業日目までに終える(今は7営業日目) |
| 備品の管理をきちんとする |
備品の在庫表を6月末までに作り、毎月1回、数を数えて更新する |
| 採用の仕事をがんばる |
面接の日程の調整を、応募から3営業日以内に返す形にする |
| 新人の教育に協力する |
新人向けの手順書を、9月末までに3本作る |
左の列の「早くする」「きちんと」「がんばる」は、気持ちとしては伝わりますが、期末に何を見ればよいかが決まっていません。右の列のように書き直すと、上司は数字と期日を見るだけで判断できます。
カッコの中に今の状態を添えるのも、合意しやすくするコツです。「5営業日目まで」がどれくらいの背伸びなのかが、上司にも一目で伝わります。
数字にしにくい仕事は、4つの物差しで数える
総務や人事、経理の仕事は、売上のような分かりやすい数字が無いことが多いものです。それでも、次の4つの物差しのどれかに置き換えると、ほとんどの仕事は数えられます。
| 物差し |
数えるもの |
例 |
| 件数 |
処理した数、減らした数 |
問い合わせへの回答の件数、差し戻しの件数を半分に |
| 期日 |
終える日、返すまでの日数 |
申請への回答を3営業日以内に |
| 回数 |
決まった作業を続けた回数 |
毎月1回の棚卸しを12回 |
| 作る物 |
手順書、表、仕組み |
引き継ぎの手順書を3本、在庫表を1つ |
迷ったら、いちばん困っていることを1つ選び、それが減った状態を数字で書いてみてください。「差し戻しが多い」なら「差し戻しを月10件から5件に」。困りごとから書いた目標は、上司にとっても意味が分かりやすいものになります。
少し背伸びの目安は「自分で判断して変える」仕事
全部の目標を、今の仕事をそのまま続けるだけのものにすると、来期の終わりに伸びた点を説明しにくくなります。厚生労働省の職業能力評価基準は、担当者の目安のレベル1を「上司の指示、助言を踏まえて定例的業務を確実に遂行する」水準、係長や主任の目安のレベル2を「創意工夫を凝らして自主的な判断、改善、提案を行いながら」業務を進める水準としています。1
3つの目標のうち1つを、このレベル2の言葉に寄せてみましょう。「手順を見直して、作業の時間を2割減らす」「新しい申請の仕組みを提案し、9月までに試す」。自分で判断し、やり方を変え、提案する仕事が1つ入っていれば、次の評価面談で話せる材料になります。
目標の数は、3つくらいが扱いやすいでしょう。多すぎると、期中に追いかけきれません。
目標を「何を・どれだけ・いつまでに」で書き直す例と、4つの物差し作成: 編集部 / 出典: 厚生労働省「職業能力評価基準」
上司と合意しやすくする段取り
目標管理制度は、正社員について301人以上の会社の64.1%、300人以下の会社の32.1%が取り組んでいます。2会社によって目標シートの形や評価の仕方が違うので、書く前に自分の会社の決まりを確認しておきます。
目標は、昇給にもつながります。厚生労働省の調査では、定期昇給の仕組みがある会社のうち72.4%が、業績評価などで昇給を決めていました(決まった額が自動で上がる会社は27.5%)。3目標の達成度が評価に入る会社なら、来期の目標は、来年の昇給の話の土台にもなります。
上司と合意しやすくする段取りと、目標と昇給のつながり作成: 編集部 / 出典: 労働政策研究・研修機構・厚生労働省
- 会社と部署の来期の目標を読む。上司から説明がなければ、聞いてみる
- 上司が自分に期待していることを、面談の前に短く聞いておく
- 目標を3つ書き、それぞれに今の状態を添える
- 面談では、目標ごとに「なぜこれをやるか」を1文で話す
- 期中に確かめる日(3か月後など)を、面談の最後に決める
2の「期待していること」は、面談の場で初めて聞くと、その場で目標を書き直すことになります。事前に一言「来期、私にどんなことを期待されていますか」と聞いておくと、目標の方向がずれにくくなります。
途中で仕事が変わったときは、確かめる日を待たずに上司に相談し、目標を書き直します。期初に決めた目標にこだわって、期末に「状況が変わったので」と説明するより、そのほうが評価の話もしやすくなります。
目標シートの文例
面談では、目標の1文のあとに「なぜこれをやるか」を続けます。「締めが早くなると、月初の会議に数字を間に合わせられるからです」のように、自分の仕事の先にいる人のためになる理由を添えると、上司も上の人に説明しやすくなります。
期中は、月末に1行ずつ記録する
目標を決めたら、毎月の終わりに、目標ごとの進み具合を1行ずつ書き残します。「5営業日目までに締めた月が3回」「手順書を1本作った」のように、目標の物差しと同じ言葉で書くのがコツです。
記録が6行、12行とたまっていけば、期中の確認や期末の自己評価では、それを並べるだけで話ができます。うまくいかなかった月も、何が足りなかったかを一言書いておくと、目標を書き直すときの根拠になります。
面談の前にやること
今期の振り返りがまだなら、評価面談の自己評価の書き方で実績を拾ってから目標を書くと、今の状態の数字がそのまま使えます。1年の振り返りを紙1枚にまとめる方法は、キャリアの棚卸しにあります。
書いた目標は、手帳か毎月見るカレンダーに書き写しておきます。確かめる日に開けば、どこまで進んだかを数字で話せるので、来期の面談は振り返りから始めずに済みます。
この記事の数字と言葉は、2026年10月28日に確認した厚生労働省の職業能力評価基準と、労働政策研究・研修機構の調査によるものです。目標シートの形や評価の仕方は会社ごとに違うので、自社の決まりに合わせて使ってください。