仕事納めが近づいた夕方の机に、書き込みでふくらんだ今年の手帳と、まだ白い来年の手帳が並んでいます。その2冊のあいだに、A4の紙を1枚置いてみてください。
今年やったことと得意なこと、やりたいことを順に書き出していくと、4段目に来年の目標が1行で書けます。段の分け方は、厚生労働省が様式を定めるジョブ・カードから借りました。
紙は横に置いて4段に分ける
紙を横に置き、鉛筆で線を3本引きます。上から「やったこと」「得意なこと」「やりたいこと」「来年の目標」。右上には書いた日付を入れておきましょう。ジョブ・カードでも、記入した年月日を書くよう注意書きで求めています。来年の12月に2枚目を書いたとき、1年前の1枚とすぐ見分けられます。
ジョブ・カードの様式は3つ。キャリア・プランシート、職務経歴シート、職業能力証明シートです。厚生労働省はこれを「生涯を通じたキャリア・プランニング」と「職業能力証明」のためのツールと位置づけていて、紙の4段はその欄と次のように対応します。
| 紙の段 |
対応するジョブ・カードの欄 |
書くこと |
| 1. やったこと |
職務経歴シート「職務の内容」「職務の中で学んだこと、得られた知識・技能等」 |
今年した仕事と、そこで身についたこと |
| 2. 得意なこと |
キャリア・プランシート「強み等」 |
強みと、弱みを補うためにしていること |
| 3. やりたいこと |
同じシート「価値観、興味、関心事項等」「将来取り組みたい仕事や働き方等」 |
大事にしたいことと、やってみたい仕事や働き方 |
| 4. 来年の目標 |
同じシート「これから取り組むこと等」 |
身につけたい力と、その方法 |
上の段ほど事実に近く、下の段ほど気持ちと計画に寄っていきます。上から順に書けば、4段目の目標には1段目の実績と2段目の得意という裏付けが付くので、「なんとなくの抱負」で終わりにくいのです。
1年の棚卸しシート。紙1枚の4段に書くことと書き方の例、来年この1枚を開く4つの場面作成: 編集部 / 出典: 厚生労働省「ジョブ・カード」(マイジョブ・カード)
様式は厚生労働省のサイト「マイジョブ・カード」からPDFとExcelでダウンロードでき、アカウントを作ればサイト上で入力して保存もできます。もっとも、年末の振り返りなら紙1枚で足りるでしょう。欄を全部埋めようとすると、1年分を見直すには重すぎるからです。
やったことを書き出す手順
1段目は記憶ではなく、記録から書きます。12月に1年を思い出そうとしても、浮かぶのはせいぜい秋からの数か月分でしょう。
使い込んだ今年の手帳と新しい手帳のあいだで、4段に分けた紙に1年を書き出すイラスト: 編集部が画像生成AIで作成したイメージ(YOBITSUGI AI・OpenAI gpt-image-2.5-sunburst)
次の順に進めると、1月の仕事から漏れなく拾えます。
- 手帳かカレンダーのアプリを、1月のページから開く。
- 月ごとに、した仕事を2〜3行ずつ書く。
- 送信済みのメールやチャット、資料のフォルダーを見て、抜けた仕事を足す。
- 各行に、件数や人数、期間などの数字を1つ入れる。
- 行の終わりに、自分が果たした役割を書き添える。
- うまくいかなかった仕事も、1〜2行書いておく。
手本にしたいのは、職務経歴シートの注意書きです。「職務の内容」欄には、した仕事に加えて、できるだけ「果たした役割、貢献したこと等を記入してください」という注意が添えられています。「担当した」で終わる行と役割まで書いた行では、来年の面談で話せる量がまるで違います。
どの仕事にも件数があるわけではありませんが、電話の取り次ぎや来客の対応なら「毎日」「半年間」のように、続けた期間を書けば十分です。
1年分を書き終えたら、印象に残った出来事に1から3まで順位を付けます。キャリア・プランシートの下書きに使う「キャリア・プラン作成補助シート(在職者用)」も、影響を受けた経験や出来事を3つ以上、順位を付けて書く形でした。いつ、どこで、誰と、何を、どのようにしたか。そこまで書いた3行が、2段目の手がかりになります。
得意なことは、頼まれた仕事に出る
2段目は1段目を読み返しながら書きます。人に頼まれて引き受けた仕事や、思ったより早く終わった仕事、お礼を言われた仕事に印を付けてみてください。印の多い行に、得意なことが出ています。
自分の強みを言葉にするのは、少し照れくさいものです。でも、補助シートの一覧を使えば、選ぶだけで済みます。「必要な情報を集める」「自分の仕事の流れを把握する」「仕事にミスがないかチェックする」など30の項目が並び、自信が非常にあるものに◎、ある程度あるものに○、あまりないものに△、ないものに×を付けていく形式です。1
印を付けたら、生かしたい強みと改善したい弱みを、それぞれ5つまで選びます。上司や同僚、顧客や取引先、友人や家族からの期待を書く欄もあるので、自分では気づかなかった得意も拾えるかもしれません。
ほかの人がどんな力に自信を持っているかは、国の統計で分かります。厚生労働省の令和7年度能力開発基本調査は、企業と働く人の能力開発を毎年調べている統計です。仕事をするうえで自信のある能力やスキルがあると答えた人は86.8%、正社員では89.8%でした。正社員に中身を3つまで選んでもらうと、いちばん多いのは「チームワーク、協調性・周囲との協働力」の52.6%です。2
正社員が選んだ、自信のある能力・スキルと向上させたい能力・スキル(3つまでの複数回答)作成: 編集部 / 出典: 厚生労働省「令和7年度能力開発基本調査」
| 能力・スキル |
自信がある |
向上させたい |
| チームワーク、協調性・周囲との協働力 |
52.6% |
13.5% |
| 定型的な事務・業務を効率的にこなすスキル |
39.5% |
8.8% |
| コミュニケーション能力・説得力 |
28.7% |
27.1% |
| ITを使いこなす一般的な知識・能力 |
26.6% |
32.5% |
| 職種に特有の実践的スキル |
24.5% |
17.6% |
| 課題解決スキル |
19.1% |
33.5% |
| 読み書き・計算等の基礎的素養 |
14.7% |
3.5% |
| マネジメント能力・リーダーシップ |
14.0% |
40.2% |
| 営業力・接客スキル |
12.8% |
10.6% |
| 高度な専門的知識・スキル |
7.2% |
22.0% |
| 専門的なITの知識・能力 |
5.6% |
27.2% |
| 語学(外国語)力 |
1.9% |
23.1% |
伸ばしたい能力やスキルがある人は、さらに多い92.6%。正社員では95.7%にのぼります。意外なのは、自信と「伸ばしたい」の並びが、ほぼ逆になっていることでした。チームワークに自信がある正社員は52.6%いますが、伸ばしたい人は13.5%。マネジメントは反対に、自信が14.0%で伸ばしたいが40.2%です。
自分が自信を持てる力を3つ選ぶとしたら、表のどの行に入るでしょう。上の2行に入るなら、2段目には「チームワーク」とだけ書かず、1段目のどの仕事でそれが出たかまで書いておきます。正社員の半分が選ぶ言葉なので、仕事の中身と結び付けて初めて、自分の強みとして伝わるからです。
やりたいことは、大事にしたいことから
4つの段でいちばん埋まりにくいのは、3段目でしょう。同じ調査で、自己啓発に問題があると答えた正社員の女性に中身を聞くと、26.5%が「自分の目指すべきキャリアがわからない」を挙げていました。男性の16.2%より10ポイントほど高い数字です。3ここでの自己啓発は、仕事に関わる力を自分から伸ばすための学びを指します。
つまり、やりたいことがすぐ言葉にならないのは、少しも珍しくありません。
だから、いきなり「やりたい仕事」は書きません。先に選ぶのは、大事にしたいこと。補助シートには、仕事を選ぶうえでのこだわりが16項目並んでいて、当てはまるものに○を付けます。たとえば、次のような項目です。
- 専門性を生かしたい
- 管理者、経営者になることを目指したい
- 自分のやり方や自分のペースで仕事をしたい
- 仕事だけではなくプライベートを大事にしたい
- 育児や介護休暇等が取りやすい組織で仕事をしたい
○を付けたら、その理由を1行ずつ足しておきます。来年の自分が読み返したとき、なぜその道を選んだのかを思い出せるからです。
仕事と両立させたい暮らしのことも、この段に書きます。補助シートにも、健康や生活、家族、育児、介護などを書く欄がありました。来年に引っ越しや試験、家族の予定があるなら、目標に使える時間はそのぶん変わるはずです。
やってみたい仕事や働き方は、最後に。補助シートの説明書きには、できれば「時期(5年後、10年後、20年後など)とともに記入してください」とあります。年末の1枚なら、そこまで先でなくてかまいません。3年後くらいの姿を1行書けば、4段目に書く目標の向きが決まります。
来年の目標は、4段目に1行で
4段目には、2段目の「得意」と3段目の「やりたい」をつなぐ行動を書きます。キャリア・プランシートではこの欄を「これから取り組むこと等」と呼び、今後身につけたい職業能力と、その方法を書く形です。補助シートの説明書きは、さらに「いつ何をすべきか具体的に」書くよう求めています。
量を決めるときは、3段目に書いた暮らしの予定と照らし合わせてください。勢いで5つ並べるより、1つを書き切るほうが、来年の12月に「できた」と言える1行になります。
学びにお金がかかる目標なら、会社の制度も見ておきたいところです。同じ調査では、自己啓発をした人のうち費用の補助を受けた人は42.9%で、補助したところの95.6%は勤務先の会社でした。4受講料の補助や資格の手当があるかを、就業規則や社内のポータルで確認してみてください。国の制度では、厚生労働大臣が指定した講座を修了すると受講費用の一部が支給される、教育訓練給付制度もあります。
来年、この1枚を開く4つの場面
書いた紙は、来年の手帳にはさんでおきます。開く場面は、少なくとも4つあります。
1つ目は上司との面談です。同じ調査でキャリアに関する主な相談先を聞くと、正社員の69.5%が「職場の上司・管理者」を挙げました。5期初の目標設定や1on1の前に4段目を読み返せば、来年やりたいことを自分の言葉で切り出せます。評価面談で自己評価を書くときは、1段目にある数字入りの行がそのまま使えるでしょう。
2つ目は、研修や資格の講座に申し込むとき。受講の理由を書く欄があれば、3段目と4段目の言葉を使うと、なぜ今それを学ぶのかが一続きで伝わります。
3つ目は職務経歴書を書き直すときです。職務経歴シートは応募書類としても使える様式で、マイジョブ・カードでは、作ったジョブ・カードから履歴書や職務経歴書に一部を転記できます。転職の予定がなくても、1段目を毎年残しておけば、いざというときに思い出す手間がいりません。
4つ目は、誰かに相談したくなったときです。
資格を持つキャリアコンサルタントの仕事は、キャリアコンサルタントとは 取るまでの費用と、会社での活かし方でも紹介しています。
来年の今ごろ、同じ机で2枚目を書くときは、この1枚を隣に置いてください。1段目の行がどれだけ増えたか、4段目に書いた1行がどこまで進んだか。ジョブ・カードの案内にも「一度作って終わりにするのではなく、継続的に振り返りを行っていくことが大切」とあります。2枚の差を見れば、次の面談で「この1年で何ができるようになったか」を、数字を添えて話せます。
様式と数字の確認日は2026年10月27日です。出典は厚生労働省のマイジョブ・カードと、「令和7年度能力開発基本調査」(2026年7月31日公表)です。