自己評価には、上司が見ていなかった半年分の事実を書きます。「精一杯がんばりました」より「月末の締めを6回とも期日どおりに終えました」のほうが、上司が評価を決めるときの材料になるからです。
書き方の基本は、事実と工夫と次の一手の3文。年末に面談がある人なら、11月のうちに記録を開いておくと、提出前の晩に慌てずに済みます。
書く前に、評価シートで確認すること
評価面談で、自己評価に書いた事実を上司に話すイラスト: 編集部が画像生成AIで作成したイメージ(YOBITSUGI AI・OpenAI gpt-image-2.5-sunburst)
自己評価をどう書けばよいか、どの会社でも通じる正解はありません。国家公務員は定期的な人事評価が法律で義務づけられていますが、民間の会社にはそうした決まりも、法律で定めた様式もないからです。1つまり、評価の項目も時期も、段階の付け方も、会社ごとに違います。
厚生労働省が毎年行う能力開発基本調査によると、仕事に要る力を決まった基準で評価している事業所は54.5%でした。2そのうち86.2%は、結果を賞与や昇格、異動を決める人事考課の判断に使っています。裏を返せば、45.1%の事業所はこうした評価をしていません。
正社員を評価している事業所の割合を、企業規模別に並べました。
| 企業規模 |
正社員を評価している事業所 |
| 30〜49人 |
48.9% |
| 50〜99人 |
52.6% |
| 100〜299人 |
52.5% |
| 300〜999人 |
61.3% |
| 1,000人以上 |
58.6% |
いちばん高い300〜999人でも61.3%。会社が大きければ必ず評価の基準がある、というわけでもなさそうです。
面談があるかどうかも、会社の大きさでずいぶん違います。労働政策研究・研修機構が企業に行った調査によると、正社員について「定期的な面談とフィードバックの実施」に取り組む企業は、従業員301人以上の会社で86.5%、300人以下の会社で42.4%でした。3およそ2倍の開き。同じ「評価面談」という言葉でも、思い浮かべる場面は会社によって違うはずです。
自分の会社はどうなっているのか。手元の評価シートか、人事からの案内を開いて、次の4つを確認してみてください。
項目名が分かれば、自己評価もその順に並べられます。期間が1年の会社なら、この記事の「半年」を1年に置き換えて読んでください。自由に書く欄しかない会社でも、このあと紹介する3文の型はそのまま使えます。
評価の仕組みは会社で違う 能力評価の実施率と使い道、面談と目標管理の取り組み作成: 編集部 / 出典: 厚生労働省「令和7年度能力開発基本調査」・労働政策研究・研修機構
実績は、半年分の記録から拾う
4月に何をしていたか、すぐに言えますか。記憶だけで書くと、最近1〜2か月の出来事に偏りやすくなります。だから、書き始める前に記録を開きます。見る場所は、次の5つで十分です。
| 記録の場所 |
拾える事実 |
自己評価での使い方 |
| カレンダー |
締め切り、会議、研修、行事 |
期日を守った回数、初めて任された仕事 |
| 送信済みメール |
社外とのやりとり、送った資料 |
対応した件数、頼まれて作った資料 |
| チャットのお礼 |
誰に何を頼まれ、手伝ったか |
周りへの協力を、相手と回数で示す |
| ファイルの更新履歴 |
作った表、直した手順書 |
改善したもの、引き継げる形にしたもの |
| 前回の目標シート |
期初に決めた目標 |
目標ごとの達成度と、その理由 |
まず開きたいのが、いちばん下の目標シート。期初に決めた目標の達成度で評価する目標管理制度も、同じ企業調査では、正社員について301人以上の会社の64.1%、300人以下の会社の32.1%が取り組んでいました。3この仕組みの会社なら、拾った事実を目標の順に並べ直すだけで、上司が読みやすい形になります。
チャットに残るお礼の言葉も、見落としやすい記録です。日付と相手が残っているので、「手伝いました」ではなく「〇月に〇〇課の入力を手伝いました」と書けます。
拾った事実は大きさを気にせず、いったん全部メモに出しましょう。数えられるものは数え、日付は消さずに残しておく。選ぶのはそのあとで間に合います。1年分を振り返って来年の目標までつなげたいときは、キャリアの棚卸しの紙1枚の方法も使えます。
数字にしにくい強みは、行動の言葉で書く
自信のある強みをたずねると、数字にしにくいものが上位に並びます。同じ能力開発基本調査で、仕事で「自信のある能力・スキル」を3つまで選んでもらうと、正社員の52.6%が「チームワーク、協調性・周囲との協働力」を、39.5%が「定型的な事務・業務を効率的にこなすスキル」を挙げました。4
あなたが3つ選ぶとしたら、どれでしょう。どちらも職場に欠かせない力です。でも、「協調性があります」と書いても、上司には何があったのかが見えません。
言葉に困ったときに役立つのが、厚生労働省の職業能力評価基準です。仕事に要る知識や技能に加えて、成果につながる行動の例が、業種や職種ごとにまとめてあります。経理や人事、総務といった事務の仕事も、9つの職種に分けて載っています。
たとえば、職種を問わない項目「関係者との連携による業務の遂行」には、「余力がある場合には進んで周囲の仕事を手伝っている。」という行動の例があります。自分の事実に置き換えるなら、誰の、どの仕事を、どれくらいの期間手伝ったかを書けば足ります。このあと紹介する2つ目の文例が、その形です。
ミスがなかった、遅れがなかった、という仕事ほど、がんばった割に書くことが少なく感じますよね。起きなかったことは目に見えません。そこで、何をしたから起きなかったのかを書きます。「振込の前に請求書番号で照合する手順を足し、二重払いは0件でした」と仕組みのほうから書けば、ミスを防ぐ仕事も実績として伝わります。手順を整えた実績も、業務マニュアルの作り方の形で残しておくと説明しやすくなります。
仕事の水準も、この基準では4つの段階に分かれています。担当者の目安になるレベル1は、上司の指示や助言を踏まえて、決まった仕事を確実にこなす水準。主任や係長の目安になるレベル2は、「創意工夫を凝らして自主的な判断、改善、提案を行いながら」業務を進める水準です。
次の段階を目指すなら、拾った事実の中に「自分で判断した」「やり方を変えた」「提案した」が入っているかを見てください。1つも見当たらなくても、記録の中に埋もれているだけかもしれません。
記録から実績を拾い、事実と工夫と次の一手の3文で書く型と、次の段階の言葉作成: 編集部 / 出典: 厚生労働省「職業能力評価基準」
1項目を3文で書く型と文例
拾った事実は1項目につき3文にまとめます。
- 1文目に、何を、どれだけ、いつまでにしたかを書く。
- 2文目に、なぜうまくいったか、何を変えたかを書く。
- 3文目に、次の半期に何を伸ばすかを書く。
1文目に数字が入っていれば、残りの2文は短くても伝わります。反対に、工夫ばかりを長く書くと、結果が見えないまま読み終わってしまうでしょう。
数字と業務名を自分のものに入れ替えれば、次の文例はそのまま使えます。
届かなかった目標こそ、隠さずに数字と理由を先に書くと、話が早く進みます。原因を自分で調べておけば、次の半期の目標も上司と決めやすくなるでしょう。
書きがちな言葉を事実に直すと、次のようになります。
| 書きがちな言葉 |
事実に直した例 |
| 精一杯がんばりました |
6回の締めを、すべて期日内に終えました |
| 周りと協力しました |
決算期に、請求書の入力を3週間手伝いました |
| ミスなく対応しました |
振込前の照合を足し、二重払いは0件でした |
| 積極的に取り組みました |
申請画面の注意書きを直し、差し戻しが減りました |
段階を自分で付ける欄があれば、評価シートにある段階の言葉と、拾った事実を見比べて選びます。ただ、控えめに付けても高めに付けても、事実で説明できなければ面談で話が先に進みません。
面談では、最初に事実を2つ話す
面談の時間は限られています。自己評価を先に出していても、いちばん伝えたい事実を2つだけ最初に口で話すと、上司もどの項目から聞けばよいかがつかめます。頭から全部を読み上げなくてかまいません。
そのあとで、上司の見方を聞きます。自分の評価とずれていたとしても、その場で言い返す必要はないのです。聞いておきたいことは2つ。どの事実が足りなかったのかと、次の半期に何が見えれば上の段階になるのか、です。
評価シートを出して終わりになりそうなら、最後の文例が使えます。面談の決まりが無い会社でも、時間をもらうこと自体は自分から頼めるからです。会社にキャリアコンサルティングの仕組みがあれば、面談の前に考えを整理する場としても使えます。キャリアコンサルタントの役割は、キャリアコンサルタントとはで説明しています。
面談で決まったことは、その日のうちにメモに残しておきましょう。次の半期に目指すことと、上司が挙げた「見えればよい結果」は、言い換えずに上司が使った言葉のまま書いておくのがこつ。次の面談で、同じ言葉を使って振り返れます。
次の半期は、月末に1行ずつ残す
自己評価で時間をとられるのは、書くより拾う作業のほうです。面談が終わったら、次の半期ぶんを月末に1行ずつ残していきます。
1行の中身は日付、したこと、数字、誰の役に立ったかの4つ。月に1行なら、5分もかかりません。
6か月たてば6行です。数字で言える実績が並んでいれば、異動を希望するときや職務経歴書を書くときにも困りません。そして、次の面談の前にその6行を今回使った3文の型に当てはめ、上司が挙げた言葉と並べるだけで、自己評価の下書きができあがります。
2026年10月27日に、厚生労働省と労働政策研究・研修機構が公表した資料で、記事の数字と基準を確認しました。