夏が近づくと、総務には「今年のお中元はいつ送るのか。関西の取引先にも同じ日でよいのか」という相談が来ます。この記事では、会社としてお中元を手配する担当者に向けて、関東と関西で違う時期、時期を過ぎたときの暑中見舞いと残暑見舞い、関係の深さで決める社内の金額の基準、辞退されているときの対応、取引先あてと担当者あての送り状の文例を順にまとめます。時期・金額・品物は法律ではなく慣習なので、一般的な例として書いています。来年の夏に向けて、10月の今から準備できる形にしました。
お歳暮と共通する部分(送り先リストの作り方、公務員への贈答の制限、経理の扱い)は、お歳暮の贈り方 取引先へ送る時期と金額の決め方・送り状の例文にまとめています。この記事は、お中元ならではの点に絞ります。
お中元を送る時期 関東は7月前半、関西は7月中旬から8月中旬
お中元は、夏の挨拶としてお世話になった人に贈る慣習です。届ける時期に決まりはなく、日本郵便のネットショップの案内では、一般的に7月初旬から8月中旬ごろとされています。同じ案内によると、お盆の時期に地域差があるため、お中元を届ける時期も地域で違います。
| 地域 |
届ける時期の目安 |
気を付けること |
| 東北・関東(北陸の一部を含む) |
7月1日〜7月15日 |
期間が2週間と短く、配送が集中する |
| 北海道・東海・関西・中国・四国(北陸の一部を含む) |
7月15日〜8月15日 |
近年は7月15日より前に贈ることも増えている |
| 九州 |
8月1日〜8月15日 |
お盆休みと重なり、配送が遅れやすい |
| 沖縄 |
旧暦の7月13日〜15日 |
新暦では毎年日付が変わる |
北陸は同じ県でも地域で違い、日本郵便の案内では、石川県の金沢市や新潟県は7月前半、石川県の能登町や富山県は7月15日〜8月15日の例が挙げられています。いずれも「目安」で、相手の会社の習わしで変わることがあります。
お中元を届ける時期の地域差と、暑中御見舞・残暑御見舞への切り替え作成: 編集部 / もとの資料: 日本郵便「お中元の時期はいつからいつまで?」・国立天文台「令和9年(2027)暦要項」
相手の所在地で決めるのが基本
日本郵便の案内は、近年は全国的に関東の時期に合わせて贈るケースも増えているとしつつ、相手の地域の時期と違うと違和感を持たれることもあるので、相手の地域に合わせてやや早めに届くよう手配すると安心だと説明しています。自社の所在地ではなく、届け先の所在地で決めます。
全国に取引先がある会社は、送り先リストに「届け先の地域」と「届ける時期の区分」の列を足しておきます。担当者に1社ずつ確かめてもらうとき、地域の区分を見て「この会社は関西の習わしで7月下旬」と書き込めるので、発送の日がまとまります。迷う取引先は、前年に相手から届いたお中元の時期を目安にします。
時期を過ぎたら暑中御見舞と残暑御見舞に切り替える
届ける日が時期から外れそうなときは、表書きを変えて贈るのが一般的です。日本郵便の案内では、東北・関東などで7月15日を過ぎたら「暑中御見舞」、立秋を過ぎたら「残暑御見舞」とされています。目上の相手には「暑中御伺い」「残暑御伺い」とします。
国立天文台の暦要項では、2027年の立秋は8月8日、小暑は7月7日、大暑は7月23日です。立秋の前日の8月7日までが暑中、立秋の後が残暑になります。
| 届ける日 |
表書き(一般的な例) |
目上の相手 |
| 各地域の時期の間 |
御中元 |
御中元 |
| 関東などで7月15日を過ぎて8月7日ごろまで |
暑中御見舞 |
暑中御伺 |
| 関西・九州などで8月15日を過ぎて9月7日ごろまで |
残暑御見舞 |
残暑御伺 |
日本郵便の案内では、残暑見舞いとして贈れるのは処暑の候にあたる9月7日ごろまでです。9月上旬を過ぎたら、お歳暮の時期まで待って贈るのが一般的とされています。立秋の日付は年で1日動くため、時候の挨拶 月ごとの言い回しのとおり、その年の暦要項で確かめます。
金額は関係の深さで社内の基準を決める
お中元の金額にも、法律や公的な基準で決まった相場はありません。百貨店や通販サイトの記事に金額の目安が載っていますが、公的な根拠があるものではないので、ここでは数字を書きません。担当者が替わっても同じ額で手配できるように、関係の深さで段を分けて社内の基準を決めておきます。
| 相手との関係 |
名義の例 |
品物の考え方 |
金額 |
| 取引の多い主要な取引先(代表者あて) |
会社名と代表者名 |
職場で分けやすい個包装の品 |
段A 〇円 |
| 継続して取引のある取引先(部署あて) |
会社名と代表者名 |
部署で分けやすい品 |
段B 〇円 |
| 担当者とのつながりが中心の相手 |
会社名と担当者名 |
部署で分けやすい品 |
段C 〇円 |
| 取引が始まったばかりの相手 |
送らないか、暑中見舞いの挨拶にする |
翌年に段を決める |
社内で決める |
| 受け取りを辞退している取引先 |
送らない |
辞退の連絡を記録する |
なし |
| 利害関係者に当たる国家公務員 |
送らない |
国家公務員倫理規程3条 |
なし |
お歳暮の基準表と同じ段を使うと、1年を通して管理しやすくなります。段ごとの金額は、前年の実績(誰に・何を・いくらで)、送り先の数と予算、相手から届くお中元とのつり合いを並べて決めます。お中元は一度贈ると毎年続けるのが一般的です。続けられる額にしておくと、あとで見直すときに困りません。
お中元とお歳暮は両方出すか、片方だけか
日本郵便の案内では、お中元もお歳暮も、一度贈ったら同じ価格帯で毎年続けるのが一般的です。お中元かお歳暮のどちらか一方だけを贈るなら、お歳暮を優先するのが一般的とされています。お歳暮は1年間の感謝、お中元は上半期の感謝の意味があるためです。
会社の予算が限られているなら、次の考え方で決めると社内で説明しやすくなります。
| 方針 |
向いている相手 |
気を付けること |
| お中元とお歳暮の両方 |
取引が深く、毎年続く主要な取引先 |
年2回の予算と手間を見込む |
| お歳暮だけ |
取引が続く、そのほかの取引先 |
夏は暑中見舞いの挨拶状で済ませる方法もある |
| どちらも出さない |
取引が浅い相手、辞退している相手 |
挨拶状や年賀状で関係をつなぐ |
途中でやめるときは、予告なくやめると相手が迷います。日本郵便の案内には、まずお中元をやめて暑中見舞いのはがきを出し、お歳暮だけにする方法が紹介されています。贈答そのものをやめる案内の文例は、お歳暮の記事の「お歳暮をやめるときの案内」にあります。
夏に向く品物と避けたいもの
会社あてのお中元は、職場で分けられる個包装の品や、日持ちのする食品・飲み物が一般的です。夏は傷みやすい季節でもあるため、届く日に受け取る人がいるかを先に考えます。
| 品物 |
向いている場面(一般的な例) |
気を付けること |
| 個包装の菓子 |
部署あて |
人数に合う量か。日持ちを見る |
| ゼリー・飲み物 |
夏らしい品を贈りたいとき |
冷蔵が必要なものは届く日を確かめる |
| 乾麺・調味料・お茶やコーヒー |
好みが分からないとき |
日持ちするので消費期限を気にしにくい |
| アイス |
相手が好むと分かっているとき |
冷凍庫に空きが無いと困る。事前に連絡する |
| カタログギフト |
相手に選んでもらいたいとき |
金額が伝わりやすい |
| 商品券 |
社内の決まりで受け取れる相手 |
目上には避ける考え方もある。会社の方針を確かめる |
前年に相手から届いた品と同じ種類を贈り返すのは避けます。日本郵便の案内は、こちらの品が上質だと受け取られるおそれがあるためとしています。税率の区分(食品は軽減税率、酒類とカタログギフトは10%など)と交際費等の扱いは、お歳暮と同じです。くわしくはお歳暮の記事の経理の節を見てください。
のしは「御中元」と紅白の蝶結び
のし紙は、水引の上に「御中元」と書き、水引の下に会社名と代表者名を書くのが一般的です。水引は、何度あってもよい挨拶に使う紅白の蝶結びにします。今年だけの感謝なら、表書きを「御礼」にします。表書きの一覧と内のし・外のしの使い分けは、のしの書き方 表書き一覧と水引の種類にまとめています。
受け取りを辞退している取引先への対応
取引先の中には、社内の決まりやコンプライアンスの方針で、贈答品の受け取りを辞退している会社があります。お中元を贈るかどうかを決める前に、次の順で確かめます。
- 前年の記録に「辞退」の連絡が残っていないか確認する
- 営業担当者に、辞退の連絡や社内の方針を聞いてもらう
- 辞退の相手は、送り先リストの「辞退」の列に連絡の日付と連絡をくれた人を書き、送らない
- 翌年の送り先リストを作るとき、辞退の列に記録がある相手を外す
日本郵便の案内では、お中元を断ること自体は失礼とされていません。立場上受け取れない相手や、何度断っても届く場合は、断り状を添えて返送する方法もあるとされています。逆に、贈った相手から断られたときは、相手の事情を受け止めたうえで、お詫びと日ごろの感謝を短く伝えるのが一般的です。
官公庁の担当の方に贈るのも避けます。国家公務員倫理規程3条は、国家公務員が利害関係者(許認可・補助金・検査・契約などの相手)から物品の贈与を受けることを禁じています。利害関係者でなくても、社会通念上相当な程度を超える利益の供与は5条で禁じられています。代表者や役員に議員・候補者がいる会社は、氏名を出した寄附が公職選挙法で禁じられています(199条の3)。条文と考え方はお歳暮の記事に書いたとおりで、夏も同じです。
喪中のときのお中元
お中元は、お祝いではなく日ごろの感謝を伝える季節の挨拶です。日本郵便の案内では、自分や相手が喪中でも、贈ること自体は問題ないとされています。
ただし、相手の心情に配慮して、のし紙の形や時期を変えることがあります。日本郵便の案内では、次の例が紹介されています。
- 右上の飾りがない無地の掛け紙や、白無地の短冊を使う
- 相手や自分が忌中(四十九日以内など)なら、時期をずらして暑中見舞いや残暑見舞いとして届ける
取引先の訃報を聞いたら、四十九日の日にちを担当者に確かめて、お中元の時期より後なら残暑御見舞に切り替える方法があります。考え方は家や地域で違うため、迷うときは担当者を通して確かめると安心です。
送り状の書き方と文例 取引先あてと担当者あて
送り状は、お中元を贈ったことを知らせる挨拶の手紙です。日本郵便の案内では、品物より先に届く送り状と、品物に同封する添え状があり、状況に合わせてどちらか一方でよいとされています。ビジネスで取引先に贈るときは、メールではなく手紙のほうがよいとされています。間に合わないときは、電話で一言伝える方法もあります。
品物に添える手紙は、封をしないのが決まりです。郵便法4条は、運送会社が他人の信書を送ることを禁じ、ただし書で「貨物に添付する無封の添え状又は送り状」を例外としています。封をした手紙を宅配便の荷物に入れてはいけません。基本の書き方はお歳暮の記事の送り状の節と同じで、季節の言葉と書き出しを夏用にします。
担当者あてでも、送り先は会社の住所にします。担当者の自宅には送らないのが一般的です。時期が過ぎて暑中御見舞・残暑御見舞に切り替えるときは、書き出しを「暑中お見舞い申し上げます」「残暑お見舞い申し上げます」にします。季節の言葉は、送り状を出す日に合わせて選びます。
送る前のチェックリスト
お中元を送る前のチェックリスト。決める・確かめる・手配する・残す作成: 編集部 / もとの資料: 日本郵便・国家公務員倫理規程・公職選挙法・郵便法4条
受け取ったときは
取引先から届いたお中元は、届いた日・送り主・品物・あて先を記録し、生ものや冷蔵品はその日のうちに部署へ渡します。記録のしかたとお礼状の考え方は、お歳暮の記事の受け付けと記録の節と同じです。受け取りを辞退している会社は、その旨を記録して翌年の送り先から外します。
今日からできること
- 今年の夏にお中元を送った相手と、相手から届いた記録を1つの表にまとめる
- 送り先リストに「届け先の地域」と「届ける時期の区分」の列を足す
- 関係の深さ別の段と金額を決め、お歳暮の基準表と並べて決裁を受ける
- お中元とお歳暮を両方出す相手、お歳暮だけの相手、出さない相手を分ける
- 辞退・喪中の連絡を集める時期(来年の5月)を総務の年間予定表に書く
- 送り状・添え状・暑中見舞いのひな形を用意し、封をしない添え状にしておく