「うちの会社は、有給休暇を取りやすいほうなのか」。人事や労務の担当者が社内で説明するとき、よく物差しにされるのが厚生労働省「就労条件総合調査」の取得率です。
厚生労働省は毎年10月を「年次有給休暇取得促進期間」としており、2026年9月30日の発表では、取得率は政府の目標に届いていないとしています(10月は年次有給休暇取得促進期間です)。この記事では、最新の令和7年調査から10年の推移と業種別・規模別の数字を整理し、自社の取得率の計算のしかたと、取得を進める方法をまとめます。
就労条件総合調査とは 調査の対象と取得率の決まり
就労条件総合調査は、民間企業の労働時間制度や賃金制度などを調べる厚生労働省の統計調査です。毎年1月1日時点の状況を1月に調べ、年次有給休暇のような「1年間」の項目は、前の年の状況を尋ねています。
この記事の数字は、断りのない限り最新の令和7年調査の次の範囲のものです。
| 項目 |
令和7年調査 |
| 対象の企業 |
常用労働者30人以上の民営企業(医療法人・社会福祉法人・協同組合など会社以外の法人を含む)から抽出した6,448社 |
| 回答 |
3,820社(有効回答率59.2%) |
| 対象の人 |
期間を定めずに雇われている労働者(パートタイム労働者を除く) |
| 有給休暇の期間 |
2024年の1年間(又は2023会計年度) |
| 調査の時点 |
2025年1月1日現在 |
| 公表 |
2025年12月19日 |
令和8年調査の結果は、2026年10月19日の時点でまだ公表されていません。
取得率の推移 10年で47.6%から66.9%に
年次有給休暇の取得率の推移(2014〜2024年・就労条件総合調査)作成: 編集部 / もとの資料: 厚生労働省「就労条件総合調査」
令和7年調査(2024年の1年間)の取得率は66.9%、1人平均の取得日数は12.1日でした。どちらも昭和59年(1984年)以降で最も高い値です。1人平均の付与日数は18.1日で、前年調査の16.9日から増えました。付与日数が増えた理由は、資料には書かれていません。
| 取得した年 |
調査 |
付与日数 |
取得日数 |
取得率 |
| 2024年 |
令和7年調査 |
18.1日 |
12.1日 |
66.9% |
| 2023年 |
令和6年調査 |
16.9日 |
11.0日 |
65.3% |
| 2022年 |
令和5年調査 |
17.6日 |
10.9日 |
62.1% |
| 2021年 |
令和4年調査 |
17.6日 |
10.3日 |
58.3% |
| 2020年 |
令和3年調査 |
17.9日 |
10.1日 |
56.6% |
| 2019年 |
令和2年調査 |
18.0日 |
10.1日 |
56.3% |
| 2018年 |
平成31年調査 |
18.0日 |
9.4日 |
52.4% |
| 2017年 |
平成30年調査 |
18.2日 |
9.3日 |
51.1% |
| 2016年 |
平成29年調査 |
18.2日 |
9.0日 |
49.4% |
| 2015年 |
平成28年調査 |
18.1日 |
8.8日 |
48.7% |
| 2014年 |
平成27年調査 |
18.4日 |
8.8日 |
47.6% |
出典: 厚生労働省「就労条件総合調査」各年の結果の概況。付与日数は繰越日数を除きます。取得した年は、調査の前の年(又は前の会計年度)です。
10年前の平成27年調査と比べると、取得率は19.3ポイント上がりました。付与日数は18.4日から18.1日とほぼ同じで、取得日数が8.8日から12.1日に増えたことが取得率を押し上げています。
前年からの上がり幅が大きいのは、2019年(3.9ポイント)と2022年(3.8ポイント)です。2019年4月には、年5日の年次有給休暇を確実に取らせる会社の義務が始まりました。政府の「過労死等の防止のための対策に関する大綱」は、平成12年以降5割を下回っていた取得率が、この義務付けもあって過去最高になったと説明しています。
業種別の取得率 最も高い業種と低い業種で24.5ポイントの差
業種別の年次有給休暇の取得率(令和7年調査と10年前の平成27年調査)作成: 編集部 / もとの資料: 厚生労働省「令和7年就労条件総合調査」
取得率が最も高いのは電気・ガス・熱供給・水道業の75.2%で、鉱業,採石業,砂利採取業の74.3%、製造業と金融業,保険業の72.8%が続きます。最も低いのは宿泊業,飲食サービス業の50.7%です。宿泊業,飲食サービス業は、付与日数(15.9日)も取得日数(8.0日)も16業種で最も少なくなっています。
| 業種 |
付与日数 |
取得日数 |
取得率 |
前年調査 |
10年前 |
| 電気・ガス・熱供給・水道業 |
19.5日 |
14.7日 |
75.2% |
70.7% |
69.8% |
| 鉱業,採石業,砂利採取業 |
18.2日 |
13.5日 |
74.3% |
71.5% |
57.0% |
| 製造業 |
18.8日 |
13.7日 |
72.8% |
70.4% |
52.8% |
| 金融業,保険業 |
19.6日 |
14.3日 |
72.8% |
65.4% |
49.0% |
| サービス業(他に分類されないもの) |
16.4日 |
11.4日 |
69.7% |
71.1% |
48.8% |
| 医療,福祉 |
17.7日 |
12.1日 |
68.4% |
66.8% |
50.8% |
| 情報通信業 |
18.9日 |
12.7日 |
66.9% |
67.1% |
55.0% |
| 学術研究,専門・技術サービス業 |
18.4日 |
12.3日 |
66.8% |
65.7% |
51.7% |
| 不動産業,物品賃貸業 |
17.8日 |
11.6日 |
65.5% |
62.4% |
42.6% |
| 運輸業,郵便業 |
17.4日 |
11.4日 |
65.3% |
62.2% |
51.1% |
| 建設業 |
18.3日 |
11.1日 |
60.7% |
60.7% |
38.1% |
| 教育,学習支援業 |
18.3日 |
11.1日 |
60.5% |
56.9% |
38.6% |
| 卸売業,小売業 |
17.5日 |
10.5日 |
59.9% |
60.6% |
34.5% |
| 生活関連サービス業,娯楽業 |
17.7日 |
10.6日 |
59.6% |
63.2% |
38.2% |
| 複合サービス事業 |
19.7日 |
11.2日 |
57.1% |
55.0% |
32.4% |
| 宿泊業,飲食サービス業 |
15.9日 |
8.0日 |
50.7% |
51.0% |
32.2% |
| 調査計 |
18.1日 |
12.1日 |
66.9% |
65.3% |
47.6% |
出典: 令和7年就労条件総合調査 第5表、令和6年調査・平成27年調査の第5表。取得率の高い順で、10年前は平成27年調査(2014年の1年間)です。
10年前と比べると、16業種すべてで取得率が上がりました。上がり幅が大きいのは卸売業,小売業(25.4ポイント)、複合サービス事業(24.7ポイント)、金融業,保険業(23.8ポイント)です。
業種の数字は、1年分だけで判断しないようにします。この調査は、抽出した企業の回答から全体を推計する標本調査です。金融業,保険業は1年で65.4%から72.8%に、複合サービス事業は平成27年調査の32.4%から平成28年調査の63.7%に動きました。社内の資料には2〜3年分を並べると、説明がぶれにくくなります。
大綱は宿泊業を、長時間労働の傾向がみられ、取得率が低い業種として挙げ、取得促進の取組を進める必要があるとしています。
企業規模別の取得率 1,000人以上と30〜99人の差は4.1ポイント
企業規模別の取得率と、自社の取得率を調査にそろえて計算する方法作成: 編集部 / もとの資料: 厚生労働省「令和7年就労条件総合調査」
規模別では、1,000人以上が69.0%で最も高く、30〜99人が64.9%で最も低くなっています。差は4.1ポイントです。10年前の平成27年調査では52.2%と43.2%で、差は9.0ポイントでした。規模が小さいほど上がり幅が大きく、30〜99人は21.7ポイント上がっています。
| 企業規模 |
付与日数 |
取得日数 |
取得率 |
前年調査 |
10年前 |
計画的付与制度がある企業 |
| 1,000人以上 |
18.5日 |
12.8日 |
69.0% |
67.0% |
52.2% |
40.5% |
| 300〜999人 |
18.4日 |
12.3日 |
66.8% |
66.6% |
47.1% |
38.2% |
| 100〜299人 |
17.8日 |
11.7日 |
65.5% |
62.8% |
44.9% |
37.8% |
| 30〜99人 |
17.4日 |
11.3日 |
64.9% |
63.7% |
43.2% |
42.1% |
| 調査計 |
18.1日 |
12.1日 |
66.9% |
65.3% |
47.6% |
40.8% |
出典: 令和7年就労条件総合調査 第5表・第6表、令和6年調査・平成27年調査の第5表。
計画的付与制度(労使協定で前もって休暇の日を割り振る制度)がある企業は40.8%でした。規模別では30〜99人の42.1%が最も高く、制度がある企業の71.6%は計画的付与の日数を「5〜6日」としています。なお、この調査は常用労働者30人以上の企業が対象で、30人未満の会社の数字はありません。
年次有給休暇の決まり 2026年10月時点の制度
数字と一緒に、法律の決まりも押さえておきます。条文は2026年10月19日にe-Gov法令検索で確かめました。
| 決まり |
根拠 |
中身 |
| 付与の日数 |
法第39条第1項・第2項 |
雇い入れから6か月続けて勤め、全労働日の8割以上出勤した人に10日。その後1年ごとに増え、6年6か月以上で20日 |
| 所定労働日数が少ない人 |
法第39条第3項、施行規則第24条の3 |
週30時間未満で週4日以下(年216日以下)の人は、日数に応じて少なく付与 |
| 時間単位年休 |
法第39条第4項 |
労使協定を結べば、年5日以内で時間単位で与えられる |
| 取る時季 |
法第39条第5項 |
社員が請求した時季に与える。事業の正常な運営を妨げるときだけ、ほかの時季に変えられる |
| 計画的付与 |
法第39条第6項 |
労使協定を結べば、5日を超える部分の日を前もって決められる |
| 年5日の時季指定 |
法第39条第7項・第8項、施行規則第24条の6 |
10日以上付与する人に、基準日から1年以内に5日を、本人の意見を聴いて会社が時季を決めて取らせる。本人が取った日と計画的付与の日は差し引く(2019年4月から) |
| 年次有給休暇管理簿 |
施行規則第24条の7・附則第71条 |
時季・日数・基準日を社員ごとに記録する。条文は5年保存で、当分の間は3年 |
時間単位で取った年休は、年5日の義務の日数から差し引けません。社員が自分で取った半日単位の年休は、1回0.5日として差し引けます(厚生労働省「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」)。
時季指定を就業規則に書く流れは就業規則とは 作る義務がある会社・届け出の手順と、社員が見ておきたい項目、管理簿の保存は会社の書類の保存期間 一覧表と整理のしかたにまとめています。
自社の取得率を計算して比べる手順
統計と並べるときは、計算の範囲を調査にそろえます。
- 対象の社員を決める。調査は期間を定めずに雇われている労働者が対象で、パートタイム労働者を除きます。有期契約の社員やパートの取得率は、別に出します。
- 期間を1年で区切る。暦年か、自社の会計年度にします。
- 分母を出す。その1年に新たに付与した日数を、全員分足します。前の年からの繰越日数は入れません。
- 分子を出す。その1年に実際に取得した日数を、全員分足します。半日単位や時間単位の数え方は調査の資料に書かれていないため、自社の扱い(半日は0.5日など)を資料に書き添えます。
- 合計どうしで割る。取得日数の合計を付与日数の合計で割り、100を掛けます。1人ずつの取得率は平均しません。
- 業種と規模の両方の数字と並べる。前年調査の値も添えます。
よくある計算のずれは次の3つです。
| よくあるずれ |
例 |
調査に合わせた値 |
| 繰越分を分母に入れる |
新規20日と繰越10日の計30日のうち15日を取得して50.0% |
新規の20日で割って75.0% |
| 1人ずつの率を平均する |
20日中15日(75%)、10日中8日(80%)、20日中5日(25%)の平均で60.0% |
合計28日÷50日で56.0% |
| パートや有期の社員を混ぜる |
付与日数の少ない人が入り、平均が変わる |
期間を定めずに雇う社員だけで出す |
取得率が高くても、年5日に届かない人がいないかは別に確かめます。管理簿で、基準日ごとに一人ずつ見ます。
取得を進める方法 厚生労働省の資料にある取り組み
厚生労働省は2026年9月30日の発表で、計画的付与制度の導入と時間単位年休の活用を挙げています。働き方・休み方改善ポータルサイトの特設サイトと、厚生労働省の「年次有給休暇の取得促進」のページから方法を整理します。
計画的付与制度 休む日を前もって決める
- 付与日数のうち5日を除いた残りを、労使協定で前もって割り振れます。付与日数が20日の社員なら15日までです。
- 方法は、全員を同じ日に休ませる一斉付与、班やグループごとに交替で休む交替制付与、計画表で一人ずつ決める個人別付与の3つです。
- 使い方の例として、夏季や年末年始に足して大型連休にする、飛び石の休日をつなぐ(ブリッジホリデー)、閑散期に割り当てる、誕生日や結婚記念日を休みにする(アニバーサリー休暇)が紹介されています。
- 導入には、就業規則への規定と労使協定が要ります。この労使協定は、労働基準監督署に届け出る必要はありません。
- 一斉付与で、5日を超える年休がない新入社員などには、その日を有給の特別休暇にするか、休業手当として平均賃金の60%以上を支払います。
時間単位年休 通院や学校行事に合わせて使う
- 労使協定を結べば、年5日以内で時間単位の取得ができます。厚生労働省は、通院や子どもの学校行事、家族の介護などに合わせて休めるよう、導入を勧めています。
- 協定で決めるのは、対象の社員の範囲、日数(年5日以内)、1日分に当たる時間数、1時間以外を単位にするときの時間数です。1日分の時間数は1時間未満を切り上げ、1日7時間30分なら8時間にします。届け出は要りません。
- 対象から外せるのは、事業の正常な運営を妨げる場合に限られます。「育児を行う労働者」のように、取得の目的で範囲を決めることはできません。
職場の工夫 厚生労働省が紹介している例
- 仕事をチームで進め、進み具合を共有する。厚生労働省が聞いた取得の進んだ企業は、1週間ごとのミーティングで同僚も進み具合を把握し、休んでも仕事が回るようにしていました。
- 管理簿を通じて取得状況を社員と上司に知らせ、取得が進まない人は、上司が仕事の負担を軽くするなどの工夫をする。
- 土日や祝日に年休を足して連休にする「プラスワン休暇」。
- 中小企業の例: 給与明細書に取得状況や残日数を書く(建設業・33人)、全員の取得計画表を見える所に掲示する(製造業・52人)、取得率40%以下の社員に取りやすさ・取りにくさのアンケートをとる(卸売・小売業・182人)、総務課長を「年休ドクター」に任命して面談する(卸売・小売業・363人)。
- 都道府県労働局の「働き方・休み方改善コンサルタント」に無料で相談できます。ポータルサイトには、自社の状況を確かめる企業向け自己診断もあります。
今日からできること
- 直近1年の自社の取得率を、調査の決まり(期間を定めずに雇う社員・繰越分を除く付与日数・合計どうしで割る)で計算する。
- 自社の業種と規模の数字を、令和6年調査と令和7年調査の2年分で並べる。
- 年次有給休暇管理簿で、基準日から1年以内に5日に届きそうにない社員を一人ずつ確かめ、本人の意見を聴いて時季を決める。
- 就業規則に、時季指定の対象と方法、計画的付与、時間単位年休の定めがあるかを確かめる。無ければ労使で話し合う。
- 社内の資料には、調査名・調査の年・取得した年・対象の範囲を書き添える。
業種ごとの給与と残業時間は、業種別の給与と残業時間 毎月勤労統計で比べる2025年の数字と読み方にまとめています。
この記事の数字と条文は、2026年10月19日に厚生労働省の資料とe-Gov法令検索で確かめたものです。令和8年就労条件総合調査の結果が公表されたら、厚生労働省の「就労条件総合調査」のページで最新の数字を確かめてください。