厚生労働省は、2026年10月26日に開く第33回キャリアコンサルタント登録制度等に関する検討会の会議資料を公表しました。能力要件や講習カリキュラムの見直し案が示されており、決まったことではありません。
この記事は、その見直しの先にある会社の判断に絞ります。人事担当が「社員に資格を取らせるか」「社内に置くか、外部に頼むか」を決めるための、資格の決まりと費用と比べ方です。面談の進め方は中高年社員のキャリア面談 40代・50代の進め方と使える国の支援・助成金にまとめています。制度は2026年10月24日時点のものです。
キャリアコンサルタントとは何をする国家資格か
キャリアコンサルタントは、職業能力開発促進法に定められた国家資格です。「キャリアコンサルティング」とは、労働者の職業の選択、職業生活設計、職業能力の開発と向上に関する相談に応じ、助言と指導を行うことをいいます(法第2条第5項)。
厚生労働省の案内では、登録制で5年ごとに更新する名称独占資格と説明されています。名称独占とは、資格のない人がその名前を名乗れないという意味です。資格がなくても相談に乗ること自体は禁じられていません。医師や弁護士のように、その仕事を独占する資格とは違います。
| 項目 |
決まり |
根拠 |
| 仕事 |
キャリアコンサルタントの名称を用いて、キャリアコンサルティングを行うことを業とする |
法第30条の3 |
| 名称独占 |
資格のない人は、キャリアコンサルタントや紛らわしい名称を使えない。違反は30万円以下の罰金 |
法第30条の28・第102条 |
| 守秘義務 |
業務で知った秘密を漏らさず、盗用しない。資格を失った後も同じ。違反は1年以下の拘禁刑か100万円以下の罰金 |
法第30条の27第2項・第99条の2 |
| 信用失墜行為の禁止 |
信用を傷つけ、全体の不名誉となる行為をしない。違反すると登録の取消しか名称の使用停止がある |
法第30条の27第1項・第30条の22第2項 |
| 登録と更新 |
試験に合格し、名簿に登録して名乗れる。登録は5年ごとに更新する |
法第30条の19 |
登録者は、登録センターの案内で2026年9月末時点で87,151名です。第33回検討会の資料では、令和8年3月末に約8万6千人とされています。
キャリアコンサルタントの取得から更新までの流れと費用(2026年10月時点)作成: 編集部 / もとの資料: 厚生労働省「キャリアコンサルタントになりたい方へ」ほか
資格を取るまでにかかる時間と費用
試験を受けるには、次のいずれかを満たす必要があります。厚生労働大臣が認定した養成講習の修了、労働者の職業選択や職業生活設計や能力開発の相談に関する3年以上の実務経験、技能検定キャリアコンサルティング職種の学科か実技への合格、これらと同等以上の能力です。
実務経験は、支援する相手が労働者であること、相談が一対一か概ね6名以内のグループであること、情報提供だけや授業の運営ではないことが条件です。人事の面談がそのまま当てはまるかは、試験実施機関に確かめます。
試験の中身と合格率
試験は学科と実技(論述と面接)で、実施機関は2つです。2026年度は7月・11月・3月の年3回で、次の第33回の学科試験は11月1日、第34回は2027年3月7日です。手数料は学科8,900円、実技29,900円です。
第32回(2026年7月)の合格率は、学科が54.8%、実技が61.7%でした。学科と実技を同時に受けた人は45.8%です。受験者の平均年齢は45.8歳で、50代の受験者がもっとも多くなっています。
養成講習の時間と料金
養成講習は合計150時間以上です。令和8年4月の一覧に載る22講習の基本料金は、198,000円から437,800円までです。通学・オンライン・通信の組み合わせは機関ごとに違い、会員価格などは含まれていません。
2026年10月時点で認定されている養成講習は23講習(21機関)です。講習は厚生労働省の講習検索サイトで探せます。
取らせるときの費用の合計
| 項目 |
金額 |
備考 |
| 養成講習 |
198,000円〜437,800円 |
令和8年4月の一覧の基本料金 |
| 学科試験 |
8,900円 |
|
| 実技試験 |
29,900円 |
|
| 登録 |
17,000円 |
登録手数料8,000円と登録免許税9,000円 |
| 合計 |
253,800円〜493,600円 |
受験資格を養成講習で満たす場合 |
実務経験で受験する人は、養成講習の費用がかかりません。合計は試験と登録の55,800円からです。合格から5年を過ぎて登録する人は、更新と同じ講習が必要になります(施行規則第48条の17第5項)。
5年ごとの更新で会社が知っておくこと
更新を受けるには、有効期間満了の5年前から満了日までの間に、知識講習を8時間以上、技能講習を30時間以上受けます。申請は満了の90日前から30日前までで、更新手数料は8,000円です。講習の受講料は、機関ごとに違います。
技能検定1級合格者による実務の指導などは、技能講習のうち10時間以内に限って講習とみなされます。技能検定の1級か2級に合格した人は、合格から5年以内の更新で、この講習が免除されます。
社員に取らせた場合、更新の費用と時間をだれが持つかを最初に決めます。更新の38時間は、業務時間として扱うか、本人の学びとして扱うかで、運用が変わります。
キャリアコンサルティング技能士とは何が違うか
技能検定は、職業能力開発促進法の技能検定制度で、合格した人は「技能士」と称します(第50条)。キャリアコンサルタントは「登録」する名簿制の資格で、技能士は「検定に合格した」称号です。技能士でない人は、この名称を使えません。
| 項目 |
キャリアコンサルタント |
キャリアコンサルティング技能士 |
| 仕組み |
試験に合格し、名簿に登録する |
技能検定に合格する |
| 区分 |
なし |
1級・2級 |
| 受ける条件 |
養成講習の修了、実務3年以上など |
2級は実務5年以上など。1級は実務10年以上など |
| 試験の手数料 |
学科8,900円・実技29,900円 |
学科11,200円。実技は2級29,900円・1級33,500円 |
| 更新 |
5年ごと |
技能士の称号は合格で付く |
2級は、キャリアコンサルタント試験に合格しているか、キャリアコンサルタントである人なら、実務経験が3年以上で受検できます。両方の資格を持つ人は、更新講習の免除が受けられます。
会社の判断では、まずキャリアコンサルタントの登録を考えます。技能士は、面談の質を高めたい人の次の目標です。
会社にとっての使い道
職業能力開発促進法は、事業主が、必要に応じて労働者の求めに応じてキャリアコンサルティングの機会を確保することを、措置の一つに挙げています(第10条の3)。機会を確保する場合は、キャリアコンサルタントを有効に活用するように配慮するものとされています(同条第2項)。いずれも、会社に罰則のない定めです。
セルフ・キャリアドック
セルフ・キャリアドックは、年齢や昇進などの節目に、面談と研修を組み合わせて社員の主体的なキャリア形成を支える仕組みです。厚生労働省の委託事業のキャリア形成・リスキリング支援センターが、導入支援を無料で行っています。センターの支援は、導入の計画づくりから試行まで含みます。
職業能力開発推進者
事業主は、職業能力開発推進者を選任するように努めます(法第12条)。仕事は、能力開発の計画の作成と実施、労働者への相談と指導、国などとの連絡です。
選任は事業所ごとに行い、キャリアコンサルタントその他の必要な能力を有すると認められる人から選びます(施行規則第2条)。つまり、資格がなくても選任できます。常時雇用する労働者が100人以下の事業所では、専任でなくてもかまいません。
助成金と教育訓練給付との関係
人材開発支援助成金の定期的な面談の要件
人材開発支援助成金の人材育成支援コース(人材育成訓練、認定実習併用職業訓練、中高年齢者実習型訓練)には、次の要件があります。令和8年8月3日版の案内によります。
- 事業内職業能力開発計画を作り、労働者に周知していること
- 職業能力開発推進者を選任していること
- 労働協約・就業規則・事業内職業能力開発計画のいずれかに、定期的なキャリアコンサルティングの機会の確保を、対象時期を明記して定めていること
案内には「入社から3年ごとに行う」という規定の例が載っています。実施する人は国家資格者に限らず、労務・人事の部課長などでもよく、経費は事業主が全額負担します。この要件を満たすだけなら、資格は要りません。
教育訓練休暇等付与コースでは、キャリアコンサルタントが実施するキャリアコンサルティングを受ける日も、休暇制度の対象に含められると案内されています。
社員が受ける教育訓練給付
教育訓練給付は、社員本人がハローワークに申請する雇用保険の給付です。専門実践は経費の50%(年間上限40万円)が、条件を満たすと最大80%(年間上限64万円)まで、特定一般は40%(上限20万円)から最大50%(上限25万円)まで、一般は20%(上限10万円)が支給されます。令和6年10月以降に開講する講座の場合です。
厚生労働省の「対象となる主な資格・試験」の一覧に、キャリアコンサルタントが載っています。ただし指定は講座ごとで、区分と指定の期間は変わります。受講する講座が対象かは、教育訓練給付制度の検索システムで、受講の前に確かめてください。会社が負担した費用が給付の対象になるかも、ハローワークで事前に確かめます。
専門実践と特定一般では、受講前に訓練前キャリアコンサルティングを受けます。これを行う訓練対応キャリアコンサルタントには、国の告示で定められた研修などの要件があります。
社内に置くか、外部に頼むか、取らせるか
外部に頼む・社内の担当者・資格を取らせるの比べ方作成: 編集部 / もとの資料: 厚生労働省 人材開発支援助成金(人材育成支援コース)のご案内ほか
| 選び方 |
費用 |
時間 |
守秘義務の扱い |
| 外部に頼む |
国のセンターの導入支援は無料。民間は事業者ごと |
社内の準備だけで始められる |
資格者の法律上の義務がある。人事への報告の範囲を決める |
| 社内の担当者が面談 |
追加の費用は小さい |
面談の練習と工数がかかる |
条文は資格者が対象。社内の規程と案内で補う |
| 社員に資格を取らせる |
25.4万〜49.4万円と更新の費用 |
講習150時間以上と試験。更新は38時間以上 |
本人が法律上の義務を負う |
外部のキャリアコンサルタントは、登録センターの「キャリコンサーチ」で探せます。2026年9月末時点で8,162名が情報を公開しています。キャリコンサーチは、キャリアコンサルティングの問い合わせと依頼のための検索で、ほかの目的の利用は断られています。依頼の前に、面談の経験と守秘の取り決めを確かめます。
判断の基準
一般的には、次の順で考えると決めやすくなります。
- 年間の面談の数を数えます。数十人までなら外部と社内の担当者の組み合わせで足ります。
- 面談を5年以上続けて担う人がいるかを確かめます。異動が多い会社は、資格を取らせても活用できないことがあります。
- 評価する人と面談する人を分けられるかを見ます。分けられなければ、外部が向きます。
- 助成金を使うなら、就業規則などに定めがあるかを確かめます。資格者の有無は条件に入りません。
資格を取らせるなら、取得後に面談を担う期間と役割を、本人と先に話し合います。費用の返還を決めるときは、労働基準法第16条の禁止に触れないように、社会保険労務士や労働局に確かめます。
第33回検討会で見直されようとしていること
検討会の資料は、キャリアコンサルタント講習の内容と、講習に関する制度の見直し案です。素案によると、見直しの方向は次の4点です。いずれも案で、決まったことではありません。
| 見直しの案 |
内容 |
| 能力要件への追加 |
職業・労働市場・能力開発の知識、組織や環境への働きかけの技能、ネットワークを活用した支援、AI等のデジタルツールを活用した支援、姿勢 |
| 更新講習の区分 |
現行の知識講習・技能講習から、必修(知識)・必修(技能)・選択講習に分ける案。技能の必修は、一定の要件を満たすスーパービジョンで免除する案 |
| 講習の更新制 |
講習の認定・指定に有効期間を設け、実施機関が延長を望むときは更新審査を受ける案 |
| 審査基準 |
講習に含まれるべき内容を審査基準で明確にする案 |
素案には、令和8年10月時点で認定・指定されている講習が、養成講習23、更新の知識講習37、更新の技能講習665とあります。資料の表では、養成講習の合計時間は現行も見直し案も150時間です。新しい制度の開始時期は、素案には書かれていません。
会社が今すぐすることはありません。これから社員に取らせる場合は、講習の内容や更新講習の区分が変わる可能性があるため、受講を決める時点で講習実施機関に最新の案内を確かめます。
今日からできること
- 自社のキャリア面談の現状を確かめます。誰が、年に何人、どの場面で行っているかを書き出します。
- 就業規則か事業内職業能力開発計画に、定期的なキャリアコンサルティングの定めがあるかを見ます。助成金を使う予定があれば、計画届の前に整えます。
- 職業能力開発推進者を選任しているかを確かめます。資格の有無は条件ではありません。
- 外部に頼むなら、まず国のキャリア形成・リスキリング支援センターに無料で相談します。
- 資格を取らせるなら、費用の合計(25.4万〜49.4万円)、更新の費用、面談を担う期間を、本人と先に決めます。
この記事の制度や金額は、2026年10月24日時点の公式資料によります。助成金や給付の可否は、管轄の労働局やハローワークで確かめてください。