プレスリリースは、新しい商品やサービス、取り組みを、新聞・雑誌・Webメディアなどの報道機関に知らせる文書です。初めて広報を任された方は、何をどの順番で書き、どこへどう送るのかで迷いやすいものです。
この記事では、リリースの構成、タイトルとリード文、画像、表現の注意、配信の手順、配信後の対応を、架空の会社の見本とあわせて説明します。公的な根拠があるのは、景品表示法と消費者庁の報告書、文化庁の著作権テキスト、日本取引所グループの適時開示、日本新聞協会の見解の部分です。タイトルの長さや送る時間帯などは、決まりではなく一般的な目安として書きます。
最初の読み手は記者 知りたいのは4つのこと
リリースの最初の読み手は記者や編集者です。毎日多くのリリースが届くため、書き手が伝えたいことより先に、記者が知りたいことを置きます。それは、誰が出したのか、いつ何を始めるのか、今までと何が違うのか、取材したいとき誰に連絡するのか、の4つです。この4つに答える順に組み立てると、構成が自然に決まります。
プレスリリースの構成は8つの部品
形式に法律上の決まりはなく、会社や配信サービスによって細部は違います。一般的には、次の部品を上から順に並べます。
| 順 |
部品 |
書くこと |
| 1 |
日付・発信者 |
配信日と会社名。解禁日時があればここか冒頭に書く |
| 2 |
タイトル |
一番伝えたいことを1行で |
| 3 |
サブタイトル |
タイトルに入らなかった補足を1行で |
| 4 |
リード文 |
誰が・いつ・何を・なぜ、を2〜3文で |
| 5 |
本文 |
背景、特徴、利用方法、価格、今後の予定 |
| 6 |
画像・図 |
商品の外観、画面、仕組みの図 |
| 7 |
会社概要 |
社名、所在地、設立、代表者、事業内容、URL |
| 8 |
問い合わせ先 |
担当者名、電話、メール、受付時間 |
この並びを1枚の図にしたものが次です。右側には、見本の各部分に何を書くかを添えました。
プレスリリースの構成8つの部品と、架空の見本・各部品に書くこと作成: 編集部 / もとの資料: 編集部が作成した見本(架空)・文化庁 令和8年度著作権テキスト
見本 架空の会社のリリースを読む
ここからは、架空の会社「株式会社そらまめ工房」(東京都内の小さなIT会社)が、新サービスを出すという設定で見本を示します。社名、サービス名、数字、連絡先はすべて架空です。
見本のポイントは3つです。タイトルにサービス名・開始日・内容が入っていること、リード文だけで記事の骨組みが作れること、試験の結果に測り方と対象を添えることです。数字だけを出すと、あとで根拠を問われたときに困ります。
タイトルの付け方 数字・固有名詞・新しさを前に置く
タイトルは、リリースで一番読まれる部分です。配信サービスの一覧、ニュースサイトの見出し、メールの件名にそのまま使われることがあるためです。
一般的には、次の3つを前の方に置きます。
- 数字: 日付、価格、件数、割合など(「11月16日」「月額3,300円」)
- 固有名詞: 会社名、サービス名、商品名、地名
- 新しさ: 提供開始、発売、開催決定、新機能など、いつ何が変わるのか
長さの目安は、一般的には30〜40字前後です。一覧の表示では末尾が切れることがあるので、大事な言葉は前半に入れ、後半に補足を置きます。
| 悪い例 |
直した例 |
直した理由 |
| 新サービスのお知らせ |
棚卸しアプリ「たなおろしノート」を11月16日に提供開始 |
何のサービスか、いつかが分かる |
| 業界を変える画期的なアプリが登場 |
小規模店舗向けの棚卸しアプリ、スマホで撮るだけで在庫を記録 |
「画期的」は評価の言葉。何ができるかを書く |
| 株式会社そらまめ工房、新たな取り組みを開始 |
そらまめ工房、棚卸しアプリの提供を開始 月額3,300円 |
中身と価格を前に出す |
評価の言葉(画期的、革新的)は、記者が自分で判断する部分です。書き手が言い切ると宣伝に見えます。
リード文の書き方 誰が・いつ・何を・なぜ
リード文は、タイトルのすぐ下に置く2〜3文の要約です。一般的には、次の順で書きます。
- 誰が・いつ・何を: 「株式会社そらまめ工房は、11月16日から、棚卸しアプリの提供を始めます」
- どういうものか: 「商品の棚をスマートフォンで撮影すると、数量を記録できます」
- なぜ: 「紙の台帳で棚卸しをしている店舗の作業を減らすためです」
1文を長くしすぎないことが大切です。主語と述語が離れると、記者は読み返すことになります。日付は曜日も添え(「11月16日(月)」)、「来月」「近日中」のように、いつか分からない言い方は避けます。
本文 事実を先に、解釈をあとに
本文は、リード文の詳しい説明です。一般的には、背景、特徴(3つ程度)、利用方法・価格・提供時期、試験の結果、今後の予定(確定したことだけ)の順にします。「当社の調べでは」と書くときは、調べた時期・対象・方法も書きます。ここが曖昧だと、次の景品表示法の問題にもつながります。
載せる画像 解像度・枚数・著作権と肖像権
画像は、記者が記事に使うことを前提に用意します。次の数字は決まりではなく、一般的な例です。
| 項目 |
一般的な目安 |
| 枚数 |
3〜5枚(外観、画面、使っている様子、ロゴ) |
| 大きさ |
長辺1,200画素以上(記者が拡大して使えるように) |
| 形式 |
JPEG(写真)、PNG(ロゴや図) |
| 容量 |
メール添付なら全体で数MBまで。大きいものはダウンロードのURLで渡す |
| 説明 |
画像ごとに、何の画像かを一言で(キャプション) |
著作権の確認
文化庁の「令和8年度 著作権テキスト」は、スマートフォンで撮影した写真のように日常生活で作ったものも、定義を満たせば著作物になると説明しています。外部のカメラマンやデザイナーに頼んだ画像は、報道機関への提供を認める契約か確かめます。素材サイトの画像は、利用条件が広報用の配布を許しているか確かめます。
肖像権の確認
人物が写っている写真には、肖像権の問題があります。同じテキストによると、肖像権は「自己の氏名や肖像をみだりに他人に公開されない権利」で、プライバシー権の一種とされています。また、日本では法律で肖像権やパブリシティ権を定めたものはなく、判例によって確立された権利です。
実務では、写る人に報道機関へ提供することを伝え、同意を書面かメールで残します。同意の範囲(媒体、期間、Webへの掲載)も決めておきます。背景に偶然写った人や看板は、写らないように撮るか加工します。
表現の注意 最上級の言葉と景品表示法
「日本初」「業界No.1」「最安値」のような表現は、目を引きます。ただし、根拠がないまま書くと、景品表示法の問題になります。
景品表示法が禁じていること
景品表示法の第5条第1号は、事業者が、商品やサービスの内容について、一般消費者に対して実際のものよりも著しく優良であると示す表示を禁じています。事実に相違して、競争相手のものよりも著しく優良であると示す表示も同じです。
第2条第4項では、「表示」を、顧客を誘引するための手段として、事業者が自己の商品やサービスの内容について行う広告その他の表示としています。消費者向けの商品やサービスを知らせるリリースは、その内容によっては、この「表示」と同じ考え方で見ておく必要があります。
消費者庁の報告書が示す「合理的な根拠」
消費者庁の「No.1表示に関する実態調査報告書」(2024年9月26日公表)は、アンケートなどの主観的な評価によるNo.1表示について、調査結果が合理的な根拠と認められるには、少なくとも次の4つが必要だと整理しています。
| 条件 |
内容 |
| ① 比較する商品等 |
比べる相手が適切に選ばれていること |
| ② 調査対象者 |
調査の対象者が適切に選ばれていること |
| ③ 調査方法 |
公平な方法で行われていること |
| ④ 表示と結果の対応 |
書いた内容が調査結果と合っていること |
報告書には、市場の主要な商品の一部を比較から外していたり、インターネット検索の上位だけを比較対象にしたりしている調査は、問題になるおそれがあるとの例が示されています。また、調査の条件を注記するとしても、場所や文字の大きさによって消費者に分かりにくければ、表示と結果が対応しているとはいえないとしています。
リリースに「満足度No.1」「売上No.1」と書く前に、次を確認します。
- 調査の依頼先が出した結果をそのまま使っていないか。報告書は、調査を第三者が行っていても、不当な表示の責任は広告主にあると呼びかける方針を示しています
- 調査の期間・対象・方法を、No.1の表示の近くに分かりやすく書いているか
- 根拠の資料を、あとから確認できるよう保管しているか
上場会社は適時開示との順番に注意
上場会社は、株価に影響しうる情報を、証券取引所の規則に従って開示する必要があります。日本取引所グループの説明では、適時開示は、投資者に重要な会社情報を報道機関等を通じて、あるいは直接に、広く、かつタイムリーに伝えるための制度です。
開示が求められる情報には、新製品または新技術の企業化、業務上の提携、代表取締役の異動などが挙げられています(2026年7月10日現在)。同じ情報をプレスリリースとして出す場合は、次の点に気をつけます。
- 適時開示を行うときは、TDnet(適時開示情報伝達システム)を使うことが上場規程で義務づけられている。TDnetは、東証への資料の提出から報道機関への情報配信までの一連の流れを電子化したもの
- TDnetで開示すると、報道機関への公開時刻と同時に「適時開示情報閲覧サービス」にも掲載され、インサイダー取引規制上の公表措置が完了する
- そのため、適時開示が必要な情報を、TDnetの開示より先にプレスリリースや記者への連絡で出さない
開示が必要かどうかや、出す時刻の調整は、自社の開示担当部署と証券取引所の窓口に先に確かめてください。この記事は、日本取引所グループの公式ページで確かめた範囲だけを書いています。
配信の手順 3つの届け方と選び方
ここまでで原稿ができたら、どう届けるかを決めます。大きく分けて、配信サービス、記者クラブへの投げ込み、記者・編集部への直接のメールの3つがあります。次の図は、目的に合わせた選び方と流れです。
配信の手順と、配信サービス・記者クラブ・直接メールの選び方作成: 編集部 / もとの資料: 日本新聞協会「記者クラブに関する見解」・日本取引所グループ「TDnetの概要」
配信サービスを使う
配信サービスは、リリースを登録すると、提携している報道機関やニュースサイトに届け、サービスのサイトにも公開してくれるものです。無料で使えるプランがあるサービスと、有料のサービスがあります。料金の仕組みや条件、配信先の範囲は、サービスごとに違います。
名前を挙げるなら、PR TIMES、ValuePress!、@Press(アットプレス)などがあります。例であり、優劣を示すものではありません。料金(無料の範囲、有料の金額)、配信先の範囲、配信予約や解禁日時の指定、画像の掲載条件と審査の有無を、各社の公式ページで比べて選びます。
記者クラブに投げ込む
記者クラブは、日本新聞協会の見解によれば、公的機関などを継続的に取材する記者による「取材・報道のための自主的な組織」です。自主的な組織なので、資料の受け付け方、投げ込み(資料を渡すこと)の時間帯、部数、会見の申し込み方法は、クラブごとに違います。
一般的には、自社の所在地や業種を担当するクラブを調べ、事務局か幹事社に受け付け方を聞いてから、指定の形で渡します。初めてのクラブには、「ルールが分からないので教えてください」と先に聞く方が、トラブルになりません。
記者・編集部へ直接メールを送る
名刺交換をした記者や、取り上げてほしい媒体の編集部に、リリースを直接送る方法です。内容がその記者の担当分野に合っているときに向いています。一般的には、次の形にします。
メールのポイントは次のとおりです。
- 件名: 【プレスリリース】のように種類を明示し、内容と会社名を入れる。書き方はビジネスメールの書き方 件名・宛名・結びとCC・BCCの使い分けにまとめています
- 本文: 数行で、なぜその記者に送るのかと概要を書く。全文は添付かURLで渡す
- 添付: PDF1点を基本にし、画像は別添かダウンロードのURLにする
- 宛先: 複数に送るときは個別にするかBCCにする。他の記者のアドレスが見えると迷惑がかかる
- 時間帯: 一般的には平日の日中。媒体で締め切りが違うため、取材してほしい記者には前もって都合を聞く
解禁日時の書き方
「解禁」は、その日時になるまで記事にしないでほしいというお願いで、法律ではありません。冒頭に「11月16日(月)午前9時 解禁」のように、曜日と時刻を書きます。「朝」「夕方」は避けます。配信サービスを使うときは、配信予約の日時と解禁日時を一致させ、解禁の理由(会見の日、販売開始日)を一言添えます。
配信後の対応 問い合わせ・取材・掲載の記録
配信して終わりではありません。出したあとの動きで、記事になるかが決まることもあります。
問い合わせと取材の受け方
- 窓口を問い合わせ先の担当者に一本化し、不在のときの代わりの人も決めておく
- 取材の申し込みでは、媒体名、記者名、締め切り、聞きたい内容、写真の要否を聞く
- その場で答えられない内容は、「確認してから連絡します」と言い、いつまでに返すかを伝える
- 答える範囲を事前に決める。未発表の数字や他社の情報は話さない
掲載の確認と記録
社名・サービス名・担当者名を検索サイトとニュースサイトで定期的に検索し、配信サービスのページの記録も確認します。見つけた記事は、次の表に記録します。
| 記録する項目 |
内容の例 |
| 媒体名 |
〇〇新聞(Web版) |
| 掲載日 |
2026年11月16日 |
| 記事のURL |
記事のアドレス |
| 内容 |
リリースのどの部分が使われたか |
| 誤りの有無 |
数字や名前の間違いがあれば、訂正の依頼の日付 |
掲載された記事をそのまま自社サイトに転載したり、社外に配ったりするときは、記事に著作権があるため、媒体に確認します。リンクで紹介するだけなら、確認の手間は減ります。誤りが見つかったときは、記者に責めるような言い方をせず、正しい内容と根拠を添えて、訂正をお願いします。
今日からできること
最初の一歩としておすすめなのは、過去に自社が出したお知らせを1本選び、この記事の8つの部品に当てはめてみることです。足りない部品が見つかったら、それがそのまま次のリリースで直すところになります。
社内向けのお知らせとの違いを知りたいときは、社内のお知らせ文の書き方 読まれる件名と構成・すぐ使える文例も参考にしてください。社内文書は読み手が社員、リリースは読み手が記者という違いがありますが、結論から書く順番は共通しています。