足元の冷えは、エアコンの温度を変えてもらわなくても、自分の席で手を打てます。足裏を冷たい床から離すこと。首と手首、足首を覆うこと。そして、30分に一度は立ち上がること。どれも、明日の朝から始められます。
11月に入って暖房がつくようになっても、足先だけがいつまでも冷たい。そんな日はありませんか。
足元の寒さは、室温計の数字に出にくい
足台に足をのせ、ストールとひざ掛けで温める。奥の同僚はコピーを取りに席を立つイラスト: 編集部が画像生成AIで作成したイメージ(YOBITSUGI AI・OpenAI gpt-image-2.5-sunburst)
足元が冷えるのには、暖かい空気の動き方も関わっています。環境省のウォームビズの案内には、お風呂で上のほうが熱くなるように、暖かい空気は上にたまる、とあります。1
一方、事務所の室温を測る位置は、部屋の中央で、床から75〜120cmの高さと決まっています。2座った人の胸から顔のあたりです。
つまり、壁の温度計が20度を指していても、それは胸の高さの数字。床に近い足元まで同じとは限りません。
環境省は暖房時の室温20度を目安に、服装などを工夫して冬を快適に過ごす「ウォームビズ」を呼びかけています。政府は自らの取り組みとして、暖房中の室温は19度を目途にする方針です。3会社が省エネに力を入れていると、設定を上げてほしいとは言い出しにくいですよね。だからこそ、席の中で打てる手を先に持っておくと、気持ちがずいぶん楽になります。
会社が守る室温の決まりや、寒いと言われたときの会社側の段取りは、事務所の室温の基準は18度以上 冬のオフィスの寒さ対策と測り方で詳しく取り上げました。ここからは、働く本人が自分の席でできることに絞ります。
まず、足裏を冷たい床から離す
床の近くが冷たいなら、足を床から少し離せばいい。考え方はそれだけです。
厚生労働省の「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」によると、パソコンで働く人の座り方は、椅子に深く腰かけて背もたれに背中を当て、靴の裏全体が床につく姿勢が基本です。ガイドラインはそのうえで、足が床に届かないときのために、十分な広さがあって、すべりにくい足台を備えるよう会社に求めています。4
ガイドラインの解説によると、足台の役目は、足の疲れと、背中や腰の疲れの両方を防ぐことです。5
しかも足台に足をのせれば、足裏と床のあいだに、台の厚みのぶんだけすき間ができます。
机の高さに合わせて椅子を上げると、足が床に届かなくなることがあります。解説は椅子の座面の高さを37〜43cmほどの範囲で調整できるのが望ましいとし、それで合わなければフットレストを使うよう勧めています。6
この座面の高さは、実際に座ってクッションが2〜3cm沈んだ状態で測ったもの。カタログに載っている座面の高さとは、測り方が違います。
席に着いたら、次の順で整えます。
- 椅子に深く座り、背もたれに背中をつける
- 靴の裏全体が床につくよう、座面の高さを合わせる
- 太ももの裏と座面のあいだに、手の指を差し込んでみる
- 机が高くて座面を下げられないなら、足台に足をのせる
- 机の下の段ボールや紙袋を出し、足を動かせる空間をつくる
3つ目にも、ガイドラインの目安があります。椅子と太ももの裏のあいだに、手の指が入るくらいのゆとりを持たせ、太ももに無理な力がかからないようにする形です。75つ目も同じで、脚のまわりに荷物があって窮屈なら取り除くよう、解説にあります。8
足台が手元にないなら、総務に頼んでみてもいいのです。ガイドラインが足台を備えるよう求めている相手は、会社ですから。
頼むときの文例は後半に載せました。
服で足すなら、首と手首と足首から
環境省のウォームビズの案内は、首と手首、足首の「三つの首」をあたためるよう勧めています。マフラーや手袋、レッグウォーマーを使う方法です。9
オフィスの席なら、首には薄手のネックウォーマーか、くるりと巻けるストール。手首は袖が手首までしっかり届くカーディガンで隠せます。足首は、くるぶしの上まである靴下か、レッグウォーマーで。席で着けたり外したりしやすいものを選んでおくと、暖房が効いてきたときの調節も楽です。
ひざ掛けで、こまめに体温を調節する。肌着やセーターは機能性素材を選んで、着ぶくれを防ぐ。同じ案内には、こうした工夫も並びます。毛足の長いスリッパについては、「職場の机の下でもぜひ活用しましょう」とまで書かれています。環境省がそこまで言ってくれていると、ちょっと心強いですよね。
ただ、オフィスで靴を履き替えてよいかは、職場によって違います。来客の多い席や、立ち歩くことの多い仕事なら、脱ぎ履きしやすい靴を机の下に置いておくくらいが、ちょうどいいかもしれません。
肩まわりは、羽織るものと背伸びで
寒い日、気づくと肩が耳に近づいていませんか。
肩まわりには、まず羽織るものを用意します。環境省の案内のおすすめは、小さくたためるストールを手元に置いておき、寒さを感じたらさっと羽織る方法。ストールはひざ掛けの代わりにもなります。
引き出しに1枚入れておくだけなので、手間はほとんどかかりません。
もう一つ見ておきたいのが、エアコンの風です。事務所衛生基準規則は、空調から吹き出す空気が特定の人に直接、続けて当たらないようにし、室内の気流を秒速0.5メートル以下にするよう会社に義務づけています。10
首すじや肩に風が当たり続ける席なら、我慢せず総務に伝えてかまいません。
羽織ったら、次は肩を動かす番です。ガイドラインの解説は、仕事中にも背伸びや姿勢を変えること、軽い運動をすることを、会社が働く人に勧めるよう求めています。11環境省の案内にも、家や職場で座ったままできる、足や首のストレッチが出てきます。両腕を上に伸ばして、ゆっくり下ろす。それだけでも、すくめていた肩の位置に気づけます。
30分に一度立ち、1時間に一度は画面から離れる
足元と服を整えたら、最後は時間の区切り方です。厚生労働省の2つの資料から、座る時間の目安を並べました。12
| 目安 |
すること |
資料 |
| 例えば30分ごと |
座りっぱなしを中断して、少しでも体を動かす |
アクティブガイド2023(成人版) |
| 続けて1時間まで |
次の作業までに、10〜15分の作業休止をとる |
情報機器作業のガイドライン |
| 1時間の中で1〜2回 |
1〜2分の小休止を、時刻を決めずに自由にとる |
同じガイドラインの解説 |
表の中で目を留めたいのは、10〜15分の作業休止です。ガイドラインの解説によると、これはいわゆる休憩時間ではありません。遠くの景色を眺めたり、目を閉じたり、体のストレッチをしたりするほか、パソコンを使わないほかの仕事をする時間でもよいとされています。13
これを知っていると、席を立つ理由がぐっと作りやすくなります。コピーを取る、郵便を仕分ける、書類をファイルに綴じる、ほかの部署へ届けものをする。立ってする仕事を1時間ごとに1つ置いておけば、「休みます」と言わなくても画面から離れられます。アクティブガイド2023が挙げる職場での例には、「コピーは自分で取りに行く」もあります。14
座っていた人が急に立ち上がると、さぼっているように見えないか。そう気になる人もいるでしょう。厚生労働省の身体活動・運動ガイド2023の参考資料も、職場で体を動かす意味が共有されていなければ、同僚から「仕事をさぼっている」と勘違いされてしまうかもしれない、と書いています。15
でも、立つ理由を仕事に結びつけておけば、周りの目を気にせずに続けられます。
パソコンのカレンダーに、30分ごとの短い予定を入れておくのも一つの手です。
ガイドラインは座る姿勢のほかに、ときどき立って作業を交えることも望ましいとしています。16電話を立って受ける、資料の読み合わせを立ったままする。そんな小さな切り替えも、座りっぱなしを区切るきっかけになります。
自分の席で整える冷え対策。床と椅子、服、時間の4つと目安の数字作成: 編集部 / 出典: 厚生労働省・環境省・e-Gov法令検索(事務所衛生基準規則)
机の下の暖房グッズは、低温やけどと電源に注意
机の下で、カイロや電気マットを使う人もいるでしょう。NITE(製品評価技術基盤機構)は、足元を温める電気あんかやカイロ、電気マットについて、ストーブより温度が低く優しく温めてくれる印象があっても、正しく扱わないと思いがけない事故になると注意を呼びかけています。17
低温やけどには、とくに用心が要ります。NITEによると、温かいと感じるくらいの温度でも、長い時間同じところの皮膚に触れていると、低温やけどになります。その目安とされる温度と時間を、表にしました。
| 触れている物の温度 |
低温やけどになるといわれる時間 |
| 44度 |
3〜4時間 |
| 46度 |
30分〜1時間 |
| 50度 |
2〜3分 |
44度で3〜4時間。朝から夕方まで机に向かう日なら、軽く超えてしまう長さです。
熱源に触れているところが押さえつけられていると、もっと短い時間でなります。血流や皮膚の感覚には個人差が大きく、44度より低くてもなるおそれがある、ともNITEの資料にあります。18
製品ごとの注意も、同じ資料に載っています。カイロは直接肌にあてない。同じところに当てたまま長く使わない。ベルトやサポーターで押さえつけない。こたつの中や暖房器具の近くで使わない。足元のヒーターの前に、カイロを貼った足を出す。これも、最後の注意に当たる使い方です。靴用のように、使う場所が決まったカイロはその場所で使います。
机の下などに置く電気マットは、折り曲げたり、しわの寄った状態で使ったりしない。いすや机のような硬い物や重い物を上に載せず、針やピンも刺さない。中のヒーター線が傷むと、発煙や焼損につながるおそれがあるからです。キャスター付きの椅子なら、脚がマットに乗らない位置に敷いておくと安心です。
小さな電気ストーブも、油断はできません。NITEが2025年10月に公表した資料では、2020年から2024年の5年間にNITEへ通知された主な暖房器具の事故は596件。11月ごろから増えはじめ、12月がいちばん多くなります。電気ストーブと電気ファンヒーターの事故208件のうち、176件は火災でした。19
同じ資料には、NITEのアンケートに寄せられたヒヤリハットも載っています。椅子の背もたれに上着をかけ、その後ろで電気ストーブをつけていたら、椅子を動かしたはずみでストーブに近づき、上着が少し溶けた、という例です。
オフィスの席でも、そのまま起こりそうな場面ですよね。
冬は重ね着で服に厚みが出て、服が熱くなっていることに気づきにくい、とNITEは注意しています。ストーブは壁や家具、衣類から、取扱説明書にある距離を離して置きます。
電源のつなぎ方も見ておきましょう。同じ資料によると、電気の暖房器具は消費電力が大きく、取扱説明書で延長コードの使用を禁止している製品もあります。延長コードを使うなら、つないだ機器の消費電力の合計が、延長コードの最大消費電力を超えないようにします。たこ足配線もしません。
そもそも、私物の電気製品を席で使ってよいかは、職場の決まりによります。使う前に、総務に一言聞いておくと安心です。
机の下で使うカイロや電気マット、電気ストーブの注意と、低温やけどの目安作成: 編集部 / 出典: NITE(製品評価技術基盤機構)
席の寒さは、場所と時刻を添えて総務に伝える
自分の席だけでは片づかないこともあります。足台がない、エアコンの風が当たり続ける、窓際の席が午後になると冷え込む。こうしたことは、会社に伝えてかまいません。足台も空調の風も、本来は会社が手当てする側のことです。
伝えるときは「寒いです」の一言に、どの席で、いつ、どう寒いのかを添えると、総務も手を打ちやすくなります。環境省の案内も、温度計と湿度計を近くに置いて、部屋の様子を「見える化」するよう勧めています。机の上に小さな温湿度計があれば、数字も一緒に伝えられます。
冷えに加えて、しびれや痛みが続く、指先や足の色がいつもと違う。そんなときは我慢せずに、医療機関に相談してください。会社に産業医や保健師がいれば、そこで話してもかまいません。
明日の朝、席に着いたらできること
足台を1台借りる。ストールを1枚、引き出しに入れておく。立つきっかけの仕事を1つ決める。どれも5分あれば済む準備です。
働く場所を自分で整え、足りないところは数字を添えて頼む。冬の足元の小さな工夫は、そのまま、仕事を気持ちよく回すための段取りの練習にもなります。
ここで紹介した数字と決まりは、厚生労働省と環境省、NITE(製品評価技術基盤機構)の公表資料と事務所衛生基準規則によるもので、時点は2026年10月29日です。