育成就労制度は、2027年4月1日に運用が始まります。技能実習法を改正した法律(令和6年法律第60号)にもとづく制度です。技能実習生を受け入れている会社でも、施行日より前から動く手続きがあります。監理団体の許可や育成就労計画の認定は、施行日前申請としてすでに受け付けが始まっているためです。
ここに書いたのは、2026年10月26日時点で、出入国在留管理庁(入管庁)、厚生労働省、外国人技能実習機構(OTIT)の公表資料で確かめた内容です。細かい決まりは今も順に出ている途中なので、最新の状況は各庁のページで確認してください。
法令は出そろい、分野ごとの運用要領が順に出ています
入管庁の育成就労制度のページは、2026年10月20日にも更新されています。法律・政令・省令・告示と基本方針・分野別運用方針は公表済みで、残りは分野ごとの細則です。
| 資料 |
2026年10月26日時点の状況 |
| 改正法(令和6年法律第60号) |
令和6年6月21日公布。一部を除き令和9年4月1日に施行 |
| 政令・省令・告示 |
施行期日の政令、施行規則(法務省・厚生労働省令)、区域や分野を定める告示まで公表済み |
| 基本方針 |
令和7年3月11日に閣議決定 |
| 分野別運用方針 |
令和8年1月23日に閣議決定。育成就労産業分野は17分野 |
| 分野ごとの上乗せ基準の告示 |
17分野すべて公表済み(林業は令和8年8月31日に改正) |
| 育成就労制度運用要領(本体) |
公表済み。令和8年8月5日に更新 |
| 分野別の運用要領 |
12分野が公表済み。介護・建設・造船・舶用工業・農業・漁業は準備中 |
| 分野別の審査基準 |
10分野が公表済み。工業製品製造業を含む残りは準備中 |
| 転籍元への初期費用の額(告示) |
未公表 |
| 育成就労制度の養成講習 |
実施機関の公募が12月1日から28日。講習の中身は未公表 |
製造業の会社に関わるのは、工業製品製造業分野です。機械金属加工、電気電子機器組立て、金属表面処理、印刷・製本、縫製など17の業務区分があります。食品の製造は飲食料品製造業分野で、別の運用要領です。
技能実習と育成就労の違いは12の観点で見ます
技能実習は、技能移転による国際貢献が目的の制度でした。育成就労は、人手不足の分野で人材を育成し、確保することが目的です。入管庁は、制度の目的と実態がかい離していたことと、外国人の権利保護の課題を、見直しの理由に挙げています。
技能実習と育成就労の違い 12の観点の比較表作成: 編集部 / 出典: 出入国在留管理庁 育成就労制度の概要・Q&A・概略図
| 観点 |
技能実習 |
育成就労 |
| 目的 |
技能移転による国際貢献 |
人材の育成と確保。3年で特定技能1号の水準 |
| 期間と計画 |
1号から3号まで、段階ごとに認定 |
原則3年。当初から3年分を1回で認定 |
| 対象の分野 |
職種・作業 |
特定技能の分野のうち就労で技能を修得できるもの(17分野) |
| 日本語 |
目標に入っていない |
開始前A1相当、1年以内にA1の試験、3年目にA2.2相当の試験 |
| 転籍 |
本人の意向では不可 |
条件つきで本人の意向でも可 |
| 監理する機関 |
監理団体 |
監理支援機関(許可制) |
| 認定する機関 |
外国人技能実習機構 |
外国人育成就労機構 |
| 受入れ人数枠 |
1号・2号・3号ごと |
1年目から3年目の合計 |
| 必須業務 |
2分の1以上 |
3分の1以上。安全衛生は10分の1以上 |
| 前職要件 |
あり |
廃止 |
| 特定技能1号へ |
2号を良好に修了すれば試験免除 |
技能と日本語の試験に合格することが条件 |
| 受入れの上限 |
設定なし |
分野別の受入れ見込数。育成就労全体で42万6,200人(令和11年3月末まで) |
3年を終えても特定技能1号の試験に合格できなかった人は、最長1年の在留継続が認められる方針です。
施行日の前後で、いまの技能実習生はどうなりますか
施行日に来日している技能実習生は、技能実習を続けられます。育成就労へ切り替わるわけではありません。入管庁の「経過措置」の資料では、次のように分かれます。
施行日の前後の日付と、技能実習生の4つの扱い作成: 編集部 / 出典: 出入国在留管理庁 経過措置の資料・Q&A、外国人技能実習機構、厚生労働省
- 施行日に来日し、認定された計画で実習している人は、そのまま技能実習を続けられます。1号の人は2号へ進めます。3号へ進めるのは、施行日の時点で2号を1年以上行っている人です。
- 令和9年3月31日までに技能実習計画の認定を申請し、施行日から3か月以内の6月30日までに実習を始める人は、施行日の後でも技能実習で入国できます。認定が施行日以後に出ることもあります。
- 施行日の前に実習を終えて出国した人は、技能実習生としては再入国できません。技能実習の内容によっては、育成就労外国人として入国できる場合があります。
- 技能実習から育成就労へ在留資格を変えることはできません。施行日以後は、技能実習計画の認定申請もできません。
OTITは、1号技能実習計画の認定申請を令和9年2月までに出すよう依頼しています。法律上の期限は3月31日です。
本人の意向による転籍 出ていく場合と迎える場合
技能実習では、本人の意向で勤め先を変えることは認められませんでした。育成就労では、暴力やパワーハラスメントなどのやむを得ない事情による転籍に加えて、次の条件を満たす本人意向の転籍が認められます。
本人意向の転籍の7つの条件と、転籍元へ払う初期費用の按分率作成: 編集部 / 出典: 出入国在留管理庁 育成就労制度Q&A・概略図・運用要領
- 同じ業務区分の中であること。
- 転籍制限期間を過ぎていること。期間は、分野別運用方針が1年以上2年以下の範囲で定めます。
- 分野ごとに決まった水準の技能と日本語の試験に合格していること。技能の水準は、育成就労1年経過時と同じです。
- 民間の職業紹介事業者を使っていないこと。
- 転籍先が、合格率や法令の遵守状況から見て優良な育成就労実施者であること。
- 転籍先で、本人意向の転籍者が育成就労外国人の3分の1を超えないこと。大都市圏の会社が地方から受ける場合は、6分の1を超えないこと。
- 転籍先が、転籍元へ初期費用を支払うこと。
手続きは、本人が転籍を希望する申出をし、転籍先が新しい育成就労計画を作って外国人育成就労機構に認定を申請する流れです。監理支援機関は連絡調整を担います。運用要領には、育成就労実施者の変更希望の申出書や対応通知書の参考様式(第1-16号から第1-22号)があります。
初期費用は、主務大臣が告示で定める額に、転籍元での就労期間に応じた按分率をかけて決まります。按分率は、転籍元での就労が1年以上1年6か月未満なら6分の5、1年6か月以上2年未満なら3分の2、2年以上2年6か月未満なら2分の1、2年6か月以上なら4分の1です。告示の額は、2026年10月26日の時点で未公表です。
受け入れ会社(育成就労実施者)がそろえる体制と書類
技能実習で実習実施者だった会社は、育成就労では育成就労実施者になります。人数枠や指導体制の基準は技能実習のものを引き継ぎつつ、次の点が加わりました。
| 項目 |
内容 |
| 計画の認定 |
育成就労外国人ごとに計画を作り、外国人育成就労機構の認定を受ける。申請先は、会社の本店所在地を担当するOTITの地方事務所・支所 |
| 体制 |
育成就労責任者(常勤)・育成就労指導員(常勤で、その技能の経験が5年以上)・生活相談員(常勤)を置く。3人とも過去3年以内に養成講習を修了していること(当分の間は、技能実習の養成講習で代替する予定) |
| 報酬 |
日本人が同じ業務をする場合と同等以上。育成就労外国人であることを理由とした差別はしない |
| 雇用契約 |
契約のときに、労働条件の説明を直接かオンラインで行う |
| 住まいと講習 |
適切な宿泊施設を確保し、入国後講習に専念できる手当などを出す。監理支援費を本人に負担させない |
| 日本語 |
A1相当の試験に合格していない人にはA1相当講習(100時間以上)を、育成就労の間にA2目標講習(100時間以上)を受ける機会を設ける。費用は実施者か監理支援機関が負担する。講習の時間を労働時間にする義務はない |
| 推薦状 |
二国間取決めを結び、推薦状を出す国から受け入れるときは、対象者ごとに推薦状を出す。国の一覧は入管庁のページにある |
| 過去の実績 |
過去1年以内に、行方不明者を出していない。同じ業務をしていた労働者を、自発的な離職などを除いて離職させていない |
| 法令の遵守 |
労働・社会保険・租税の法令を守っている |
| 協議会への加入 |
分野別協議会に入る。工業製品製造業分野は、登録法人の構成員になる |
| 帳簿書類 |
外国人の管理簿、計画の履行状況の管理簿、業務と指導を記録した日誌、分野の告示で定める書類を事業所に備える |
| 届出と報告 |
初めて受け入れたら遅滞なく実施の届出。毎年4月1日から5月31日に実施状況報告 |
過去1年の離職の条件は、人事担当者が見落としやすい点です。育成就労外国人と同じ業務の日本人従業員を、会社の都合で離職させた直後は、基準に合わなくなる可能性があります。
雇用契約の中身は、労働条件通知書の書き方で確認できる項目に、育成就労の様式(雇用契約書及び雇用条件書)が加わる形です。名簿や賃金台帳は、これとは別に法定三帳簿の作り方のとおり、日本人と同じように備えます。
受け入れの上限は、常勤職員の人数に応じて定められています。技能実習生と育成就労外国人は、常勤職員数に入りません。監理型の枠は、次のとおりです。
| 常勤職員数 |
一般の会社 |
優良な会社 |
地方の優良な会社が、優良な監理支援機関の支援を受けるとき |
| 9人から30人 |
9人 |
18人 |
27人 |
| 31人から40人 |
12人 |
24人 |
36人 |
| 41人から50人 |
15人 |
30人 |
45人 |
| 51人から100人 |
18人 |
36人 |
54人 |
| 101人から200人 |
30人 |
60人 |
90人 |
| 201人から300人 |
45人 |
90人 |
135人 |
| 301人以上 |
常勤職員数の15% |
同30% |
同45% |
8人以下の枠は、入管庁の概略図に載っています。施行後も続ける1号・2号の技能実習生は、この枠の計算では育成就労外国人と同じ人数に数えます。
監理支援機関 いまの監理団体に聞くこと
技能実習の監理団体が育成就労に関わるには、新たに監理支援機関の許可を受ける必要があります。申請の受け付けは、令和8年4月15日に始まりました。許可の要件は、次のように厳しくなっています。
- 外部監査人を置くこと。債務超過がないこと。
- 監理支援をする会社が原則2社以上であること。
- 事業に従事する常勤の役職員が2人以上で、1人あたり実施者8社未満・育成就労外国人40人未満であること。
監理支援機関は、実施者を、3か月に1回以上、実地で監査します。育成就労が1年を超えるまでは、月1回以上の実地の確認も行います。施行日の後も技能実習生を受け入れ続ける団体は、監理支援機関の許可を受けていれば、技能実習の一般監理事業の許可を受けたものとみなされ、許可を別に更新する必要はありません。
取引のある監理団体には、許可を申請したか、許可の見込みはいつか、日本語講習(A1相当)をどう提供するかの3点を聞きます。外国人が送出機関に支払う費用は月給の2か月分までで、これを超える分は実施者か監理支援機関が負担します。この分担も、契約の前に確認しておくと安心です。
製造業の会社が、先に確かめること
工業製品製造業分野には、ほかの分野にない決まりがあります。運用要領(令和8年6月4日掲載)で確かめた範囲では、次の点です。
- 分野別協議会の代わりに、経済産業大臣の登録を受けた法人の構成員になります。入会は、育成就労計画の認定を申請する前に済ませます。入管庁のページでは、入会の手続はすでに始まっています。
- 転籍制限期間は2年で、実施者が1年を選ぶこともできます。2年にする場合は、分野別協議会が毎年公表する昇給率以上で、1年目から2年目に所定内給与を上げます。
- 本人意向の転籍に求められる日本語は、A2.1相当以上(JFT-BasicのA2.1か、JLPTのN4以上)です。
- 繊維工業、印刷・同関連業、ゴム製品製造業、金属熱処理業、RPF製造業、こん包業の事業所は、分野別協議会で協議が調った事項の措置を講じる必要があります。
- 審査基準は、2026年10月26日の時点で準備中です。
時期を追った準備の段取り
施行日の前に、人事・労務、現場、監理団体のそれぞれが動く場面を、1枚の分担表にまとめました。
育成就労への移行準備 時期と担当ごとの分担表作成: 編集部 / 出典: 出入国在留管理庁 育成就労制度運用要領・概略図、外国人技能実習機構、厚生労働省
最初の山場は、2027年3月31日の技能実習計画の申請期限と、育成就労責任者などの選任です。技能実習で迎える予定の人と、育成就労で迎える人を、先に分けておきます。外国人を雇うときの一般的な手続きは、外国人を雇うときの手続きで確認できます。
施行日の前に、社内で確かめること
制度の細かい決まりは、公表のたびに変わります。入管庁の育成就労制度のページ、OTITの育成就労制度のページ、厚生労働省の外国人育成就労制度のページの3つを、月に1度は見る日を決めておくと見落としません。個別の申請は、OTITの施行日前申請コールセンター(0570-011-300)に問い合わせられます。就業規則や賃金の見直しは、社会保険労務士が相談先になります。