割増賃金とは 時間外・深夜・休日の割増率と残業代の計算例で、割増の率は一通り確かめました。24時間動く工場では、その率が同じ夜に重なります。さらに夜勤の人には、定期健康診断とは別に、6か月以内ごとの健康診断が必要です。
割増賃金も、健康診断の対象も、元をたどれば1枚の勤務表で決まります。勤務表が労働基準法の枠に入っているかを先に確かめ、賃金の計算、深夜業の健康診断の順に、労務担当が見る点を整理しました。
勤務表の1枚から、労働時間・賃金・健康診断の3つが決まります
交替制の工場では、勤務表から次の3つを確かめます。
| 確かめること |
根拠 |
勤務表で見る所 |
| 1日8時間・週40時間の枠に入っているか |
労働基準法第32条・第32条の2・第32条の4 |
直ごとの実働時間、週と月の合計 |
| 夜の賃金が合っているか |
労働基準法第37条・施行規則第20条 |
22時から5時の時間、法定休日の日 |
| 健康診断の対象か |
労働安全衛生規則第45条 |
22時から5時を含む勤務の回数 |
勤務表に、22時から5時の時間を書く列を足しておくと、あとの確認が早くなります。
2交替・3交替の勤務表は、どこで1日8時間・週40時間を超えるのか
労働基準法第32条は、休憩時間を除いて、1週間に40時間、1日に8時間を超えて働かせてはならないと定めています(法定労働時間)。1週間は、就業規則に別の定めがなければ、日曜から土曜の暦週です。
3交替の1直を拘束8時間・休憩1時間にすれば、実働は7時間で、1日の枠に収まります。ところが、4班で回す8日周期では、週の枠を超える週が出ます。
4班3交替と2交替の勤務表の例と1か月の総枠作成: 編集部 / 出典: 労働基準法第32条の2・第35条・昭和63年基発第1号・秋田労働局の資料
| 班 |
1日目 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
| A班 |
1直 |
1直 |
2直 |
2直 |
3直 |
3直 |
休 |
休 |
| B班 |
2直 |
2直 |
3直 |
3直 |
休 |
休 |
1直 |
1直 |
| C班 |
3直 |
3直 |
休 |
休 |
1直 |
1直 |
2直 |
2直 |
| D班 |
休 |
休 |
1直 |
1直 |
2直 |
2直 |
3直 |
3直 |
1直は6時から14時、2直は14時から22時、3直は22時から翌6時で、実働はどの直も7時間です。8日に6勤務で、週の平均は36.75時間になります。
ただ、周期は8日で、暦週は7日です。両者がずれるため、6日続けて勤務が入る週が出ます。6日×7時間は42時間で、週40時間を超えます。2交替の日勤・夜勤を拘束12時間・実働10時間にすると、1日が8時間を超えます。
変形労働時間制は、1か月単位が交替制の基本です
変形労働時間制は、一定の期間を平均して週40時間以内に収めれば、特定の日や週に法定労働時間を超えて働かせてもよい制度です。交替制では、おもに次の2つを使います。
|
1か月単位(第32条の2) |
1年単位(第32条の4) |
| 決め方 |
労使協定、または就業規則その他これに準ずるもの |
労使協定を結び、就業規則も変更する |
| 期間 |
1か月以内 |
1か月を超え1年以内 |
| 届出 |
労使協定・就業規則とも労働基準監督署へ |
労使協定を労働基準監督署へ |
| 限度 |
期間の平均が週40時間以内(総枠) |
1日10時間・1週52時間・連続勤務6日まで。期間が3か月を超えると、労働日数は年280日まで |
1か月単位は、次の順に決めます。
- 変形期間(1か月以内)と、その起算日を決めます。起算日は、就業規則か労使協定で明らかにします(施行規則第12条の2)。
- 期間の総枠を、40時間×暦日数÷7で出します。
- 各日・各週の労働時間を特定します。就業規則には、日ごとの長さだけでなく、始業と終業の時刻も書きます。
| 変形期間の暦日数 |
28日 |
29日 |
30日 |
31日 |
| 法定労働時間の総枠 |
160.0時間 |
165.7時間 |
171.4時間 |
177.1時間 |
2交替で実働10時間なら、30日の月は17日(170時間)までが総枠に入ります。18日(180時間)にすると、超えた分は時間外です。
工場で気をつけたいのは、変更の自由度です。昭和63年1月1日基発第1号は、期間を平均して週40時間以内でも、使用者が業務の都合で任意に労働時間を変更する制度は、1か月単位の変形労働時間制に当たらないとしています。欠員や増産で勤務を組み替える工場は、変更できる場合と手順を就業規則に書いておきます。
時間外は、1日、1週間、期間全体の総枠の順に数えます。夜勤を10時間と定めた日は、10時間までは時間外になりません。
1年単位は、対象期間の労働日と日ごとの労働時間を、協定で定める必要があります(第32条の4)。1年先まで班ごとの勤務を決めにくい工場では、1か月単位のほうが扱いやすくなります。変形制の枠を超えて働かせるときや、休日に働かせるときは、36協定の書き方と届け出が別に必要です。
日をまたぐ夜勤は、始業の日の労働として数えます
日曜の20時から月曜の8時までの夜勤は、暦日が2日にまたがります。昭和63年1月1日基発第1号は、継続勤務が2暦日にわたるときは、たとえ暦日が違っても一勤務として扱うとしています。その勤務は、始業時刻の属する日の労働として、その日の「1日」の労働とします。
休憩と休日で迷う3つの点
休憩の長さ
労働時間が6時間を超えるときは45分以上、8時間を超えるときは1時間以上の休憩を、労働時間の途中に与えます(第34条)。拘束12時間・実働10時間の2交替なら、1時間以上です(図の2時間は例です)。
一斉休憩の例外
休憩は、全員に一斉に与えるのが原則です。ラインを止めずに、班の中で順番に休憩をとらせるときは、労使協定が要ります(第34条第2項ただし書)。運輸交通業、商業、金融・広告業、映画・演劇業、通信業、保健衛生業、接客娯楽業、官公署は、協定がなくても一斉休憩の適用が除外されます。製造業は、この業種に入りません。
休日は暦日が原則、交替制には例外があります
休日は、毎週少なくとも1回、または4週間に4日以上与えます(第35条)。休日は、原則として午前0時から午後12時までの暦日です。前日の労働が0時を超えて延びた日は、休日になりません。
3交替で暦日をまたぐ勤務があるときは、例外があります。労働局の資料は、次の2つを両方満たすなら、継続24時間を休日として差し支えないとしています。
- 番方編成による交替制であることを就業規則で定め、制度として運営していること
- 各番方の交替が規則的に定められ、勤務割表でその都度決めるものでないこと
8日周期の例では、3直を終えた朝6時から次の勤務まで48時間あきます。この例外を使えるかは、就業規則の定め方で決まります。
8日に2日の休みなので、28日で7日の休みになり、4週4日の枠に入ります。毎週1回の形ではないため、4週4日で運用するなら、就業規則で4週の起算日を決めます(施行規則第12条の2第2項)。法定休日とそれ以外の休日は、明確に分けておくことが望ましいとされています。
深夜と時間外と休日が重なったときの割増賃金
割増賃金の率は、労働基準法第37条と政令、施行規則第20条で決まっています。深夜は25%以上、時間外は25%以上(月60時間超は50%以上、中小企業も2023年4月1日から)、法定休日は35%以上です。重なったときは、率を足します。
法定休日の労働は、8時間を超えても時間外に重なりません。月60時間の数え方にも入りません。1時間当たりの賃金の出し方と、計算に入れない手当は、割増賃金とは 時間外・深夜・休日の割増率と残業代の計算例にまとめています。
架空の1時間当たりの賃金を1,600円として、1時間の賃金の合計を並べます。
| 場面 |
率 |
1時間の賃金 |
| 通常 |
100% |
1,600円 |
| 深夜だけ |
125% |
2,000円 |
| 時間外 |
125% |
2,000円 |
| 法定休日 |
135% |
2,160円 |
| 時間外と深夜 |
150% |
2,400円 |
| 月60時間超の時間外 |
150% |
2,400円 |
| 法定休日と深夜 |
160% |
2,560円 |
| 月60時間超の時間外と深夜 |
175% |
2,800円 |
割増率の重なりと、時給1,600円の計算例3つ作成: 編集部 / 出典: 労働基準法第37条・施行規則第20条・割増賃金の率の政令
3つの場面で計算します。
| 場面 |
計算 |
金額 |
| A 2交替の夜勤 20:00〜翌8:00(実働10時間・休憩2時間は深夜帯) |
1,600円×5時間+1,600円×1.25×5時間 |
18,000円 |
| B 3交替の2直 14:00〜22:00(実働7時間)に、22:00〜24:00の残業2時間 |
22〜23時 1,600円×1.25+23〜24時 1,600円×1.5 |
4,400円 |
| C 法定休日の14:00〜24:00(休憩1時間) |
1,600円×1.35×7時間+1,600円×1.6×2時間 |
20,240円 |
Aの10時間は、変形労働時間制で定めた所定の時間なので、時間外にはなりません。深夜の割増だけが付きます。
Bは、22時から23時までで実働が8時間に届くため、この1時間は法定内です。深夜の25%だけが付きます。23時からは、時間外25%と深夜25%が重なり、1.5倍です。法定内の1時間は通常の賃金で払う前提です。
夜勤の人の健康診断は、6か月以内ごとに1回です
労働安全衛生規則第45条は、第13条第1項第3号に掲げる業務に常時従事する労働者に、その業務への配置替えの際と6か月以内ごとに1回、定期に、医師による健康診断を実施するよう定めています。第3号には、「深夜業を含む業務」が入っています。これが特定業務従事者の健康診断です。
夜勤の人の健康診断 対象の見分け方と事後措置作成: 編集部 / 出典: 労働安全衛生規則第45条・第51条の2・昭和23年基発第1456号
対象は、深夜業の回数で見分けます
深夜業は、午後10時から午前5時までの業務です(労働安全衛生法第66条の2)。「深夜業を含む業務」は、昭和23年10月1日基発第1456号で、業務の常態として深夜業を1週1回以上、または1か月に4回以上行う業務とされています。8日周期の3直は月に7.5回、2交替の夜勤は月に10回で、対象です。2直(22時で終わる)と日勤だけの人は対象外です。
年2回の健康診断が、定期健康診断の代わりになります
第44条の定期健康診断は、第45条の対象の人を除いています。夜勤の人は、年1回の定期健康診断に加えてではなく、6か月ごとの特定業務従事者の健康診断が、その人の定期の健康診断になります。
項目は、定期健康診断と同じです。胸部エックス線検査は、1年以内ごとに1回で足ります。貧血、肝機能、血中脂質、血糖、心電図の検査は、前回受けた人で医師が必要でないと認めるときは、年2回のうち1回を省略できます。
受診の後に、会社がすること
結果は、本人に遅滞なく通知します(第51条の4)。結果をもとに、健康診断個人票(様式第5号)を作り、5年間保存します(第51条)。
異常の所見があった人については、健康診断を実施した日から3か月以内に、医師の意見を聴きます。意見は、個人票に書きます(第51条の2)。必要があるときは、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少などの措置をとります(労働安全衛生法第66条の5)。
常時50人以上の会社は、定期の健康診断を実施したとき、遅滞なく労働基準監督署に報告します(第52条)。
自分で受けた健康診断を会社に出せる制度もあります
労働安全衛生法第66条の2は、深夜業に従事する労働者が、自分で受けた健康診断の結果を、会社に提出できるとしています。対象は、受診した日の前6か月間を平均して、1か月に4回以上の深夜業に従事した人です(施行規則第50条の2)。
会社は、書面が出された日から2か月以内に、医師の意見を聴き、個人票に書きます(第51条の2第2項)。必要なときは、第66条の5の事後措置もとります。会社が行う6か月ごとの健康診断の代わりではありません。
深夜に働かせられない人、請求できる人
| 対象 |
内容 |
根拠 |
| 18歳未満 |
深夜に使用できない。交替制で使用する満16歳以上の男性は例外。交替制の事業は、許可を受けて午後10時30分まで、午前5時30分からの勤務が認められる |
労働基準法第61条 |
| 妊産婦(妊娠中と、産後1年を経過しない女性) |
本人が請求したときは、深夜業をさせられない |
労働基準法第66条第3項 |
| 小学校就学前の子を養育する労働者 |
請求があれば、深夜に働かせられない。勤続1年未満の人、深夜に子を保育できる同居の家族がいる人などは請求できない。事業の正常な運営を妨げる場合は除く |
育児・介護休業法第19条 |
| 要介護状態の家族を介護する労働者 |
上と同じ形で請求できる(対象家族を介護する場合) |
育児・介護休業法第20条 |
育児・介護の請求は、1か月以上6か月以内の期間を決め、開始する日の1か月前までに行います。
勤務間インターバルと夜勤の回数は、疲れをためない勤務表の目安です
勤務間インターバルは、前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に、一定の休息を確保する仕組みです。2019年4月1日から、労働時間等設定改善法の努力義務です。
厚生労働省の労働時間等設定改善指針は、夜勤を含む深夜業を「通常の労働時間と異なる特別な労働」とし、回数を制限することを検討するよう求めています。時間数は、導入マニュアルで「11時間は望ましい水準、9時間は最低限確保してほしい水準」という分け方が示されています。
前の勤務表の例で、勤務の間隔を見ます(編集部が勤務時間から計算)。
| 勤務の並び |
終業から次の始業までの間隔 |
| 1直→2直→3直の順に進む(8日周期の例) |
24時間 |
| 同じ直が続く |
16時間 |
| 3直→2直、2直→1直と逆に進む |
8時間 |
| 2交替の日日夜夜休休 |
最短12時間(夜勤から夜勤へ) |
直の順を逆に回すと、間隔が9時間を切ります。班の回し方は、進む向きも点検します。
助成金に、働き方改革推進支援助成金の勤務間インターバル導入コースがあります。令和8年度の申請期限は2026年11月30日で、予算の都合で早く締め切る場合があります。新規導入で労働者の2分の1を超えて適用すると、休息時間が11時間以上なら上限150万円、9時間以上11時間未満なら上限100万円です(補助率は原則4分の3)。
2026年の労働政策審議会で議論されていること
連続勤務の規制や、勤務間インターバルの法的な位置付けは、2026年の労働政策審議会で議論されています。決まったことはありません。
- 2026年7月21日に閣議決定された骨太の方針2026は、連続勤務規制や勤務間インターバル制度の法的位置付けなどについて、検討を進めるとしています。変形労働時間制も、検討の対象です。
- 2026年9月16日の第211回労働条件分科会の資料は、勤務間インターバル制度、連続勤務規制、変形労働時間制、法定休日などを論点に挙げています。
- 2026年10月14日の第212回では、勤務間インターバルを、法的位置付けを含めてどのような措置を講ずべきか、が論点です。
- 2026年7月14日の第210回の議事録では、労働者側の委員が義務化を求めています。
今の勤務表は、現行の法令で組みます。法律が改正されるまで、扱いは変わりません。
点検表 勤務表・給与・健康診断を同じ日付で突き合わせる
1か月分の勤務表で確かめます。
当てはまらない項目があれば、就業規則や協定から直します。