2025年度の開業率は3.8%、廃業率は3.7%でした。厚生労働省の雇用保険事業年報の最新版(令和7年度)から、中小企業白書と同じ算式で計算した値です。2016年度に2ポイントあった差は2023年度にほぼ消え、できる事業所と閉じる事業所がほぼ同じ数で入れ替わる状態が3年続きました。12
取引先の台帳に当てはめるなら、100件あれば1年に3〜4件は動きがあってもおかしくない水準です。事業所の数字なので目安ですが、読み方が分かると、どの取引先から確認するかも決めやすくなります。
開業率3.8%、廃業率3.7%。差はこの3年でほぼ消えた
取引先の台帳は、動きの大きい業種から見直すイラスト: 編集部が画像生成AIで作成したイメージ(YOBITSUGI AI・OpenAI gpt-image-2.5-sunburst)
2025年度に雇用保険の保険関係が新しく成立した事業所は91,067所、消滅した事業所は89,092所でした。前年度末の適用事業所は2,379,389所なので、割ると開業率3.8%、廃業率3.7%になります。1
開業率と廃業率の推移(2016〜2025年度)作成: 編集部 / 出典: 厚生労働省
10年を並べると、大きく動いたのは開業率です。2016年度と2017年度の5.6%から上下を繰り返しながら下がり、2022年度には3.9%になりました。成立の数で見ても、2017年度の121,363所から2025年度の91,067所へ、約3万所少なくなっています。廃業率は3.1〜3.5%で落ち着いていましたが、2023年度に3.9%へ上がりました。
この年、消滅した事業所は前年度の76,646所から92,718所へ、約1万6,000所増えました。成立の92,601所を117所だけ上回っていて、消滅のほうが多いのは2008年度以来です。1年報に増えた理由の説明はないので、原因は決めつけないでおきましょう。
白書が載せている2024年度までの値は、この計算と一致します。2025年度の分はまだ白書にないため、編集部が同じ算式で計算しました。2
でも、減っている話ばかりではありません。成立が消滅を上回る年が続いたので、適用事業所の総数は2015年度末の2,139,380所から、2025年度末の2,385,039所へ、10年で約25万所増えました。2025年度は事業所が0.2%増、そこで働く被保険者も0.5%増えて、4,521万人です。1
数え方を知ると、読み違いが減る
開業率は、その年度に雇用関係が新しく成立した事業所の数を、前年度末の適用事業所の数で割ったものです。廃業率は、消滅した事業所の数を同じ分母で割ります。2適用事業所とは、雇用保険の保険関係が成立している事業所のことです。3
だから、この数字は会社の数ではありません。数えているのは事業所で、雇う人がいない個人事業主や社長1人の会社は入らない仕組みです。保険関係がなくなった事業所の数なので、倒産した会社の数とも別物です。
大きさも見ておきましょう。2025年度末の適用事業所のうち、4人以下が61.1%、30人未満まで広げると90.7%を占めます。前年度からの増減は、4人以下が0.5%増、5〜29人が0.3%減、500人以上が1.5%増でした。3入れ替わりの数字は、小さな事業所の動きを多く映していると考えてよいでしょう。
月ごとの数字にも注意が要ります。消滅は毎年9月に集中していて、2025年度は30,551所と年間の3分の1余りを占めました。1理由は年報に書かれていないものの、月の増減だけで景気を読まないほうがよいでしょう。
ほかの物差しも見ておくと、全体がつかみやすくなります。白書によると、2025年の倒産は10,300件で、2021年を底に増えています。従業員10人未満の企業が大半で、業種ではサービス業他、建設業、製造業の順に多くなっています。帝国データバンクが集計した休廃業・解散は67,949件でした。黒字で休廃業・解散に至る企業の割合は半数を下回り、経営者の平均年齢は上がっています。2定義が違うので比べられませんが、倒産のニュースだけでは、閉じていく会社の一部しか見えないことが分かります。
業種別では、宿泊・飲食の動きが大きく、製造は閉じる側が多い
業種別の開業率と廃業率(2025年度・編集部の計算)作成: 編集部 / 出典: 厚生労働省
業種別の値は、年報の新規と廃止の数を、前年度末の業種別の適用事業所数で割った編集部の計算です。4
動きがいちばん大きいのは宿泊・飲食で、開業率7.6%、廃業率5.9%でした。製造は開業率1.3%、廃業率3.3%で、新規3,275所、廃止8,493所と、差し引き5,218所の減少です。製造の中では印刷が新規95所に廃止635所、繊維が新規171所に廃止759所でした。4
卸売・小売は新規14,111所、廃止14,662所と、どちらも1万所を超える大きな動きです。建設は差し引き1,769所の減少でした。逆に増えたのは医療・福祉で、差し引き2,477所の増加です。ただ、同じ業種でも中身は違い、介護を含む社会保険・社会福祉・介護事業は新規6,028所に廃止3,120所、医療業は新規4,425所に廃止4,827所でした。4
情報通信と学術・専門サービスは、開業率も廃業率も全体より高い業種です。新しくできる数が多いぶん、閉じる数も多いと考えられます。
自社の業種の数字を出すなら、年報の第1表で新規と廃止の数を見て、前年度版の第3表の適用事業所数で割ります。第1表にある月末適用事業所数は1年の平均なので、分母に使うと白書の値とは少しずれます。製造業は第1表で食料品や金属製品などの細かい業種まで分かれているので、件数の比較にも使えるでしょう。
取引先の入れ替わりに備えて確認すること
年に3〜4%という数字は小さく見えますが、台帳の件数が多いほど、1年で動く件数も増えます。業種で差があるので、全部を同じように見直さなくてかまいません。次の順番は編集部の整理で、できるものから始めてかまいません。件数が多いなら、まず直近1年に取引のある相手に絞りましょう。
- 取引先の台帳を年に1回見直し、社名や所在地の変更、閉鎖の表示を法人番号で確認する。
- 主な取引先の業種の数字を年報で見て、動きの大きい業種から先に確認する。
- 閉じる数が多い業種の仕入れ先には、代わりの候補を1社持っておく。
- 連絡がつきにくい、入金や納品が遅れるといった変化を、経理と購買で共有する。
- 新しい取引先は、法人番号で実在を確認してから台帳に入れる。
社名や所在地が変わっても、連絡が来ないことはあります。請求書の送り先や契約の相手の名前も、法人番号の変更履歴と合わせて見ておくと、支払いの手戻りを減らせます。調べ方と閉鎖の表示の見方は、法人番号とはで確認できます。転職や副業で業界を選ぶときも、入れ替わりの大きさを知る手がかりになるでしょう。
ここで引いた数字は、2026年11月4日に厚生労働省と中小企業庁のサイトで確認したものです。年報は毎年更新されるので、新しい版が出たら同じ算式で計算し直せます。