厚生労働省の就労条件総合調査(令和3年調査)によると、会社が従業員1人に1か月で払う労働費用は平均408,140円で、そのうち福利厚生にあたる法定外福利費は4,882円でした。福利厚生の見直しを任されたとき、「自社の額は世間と比べて多いのか少ないのか」と「法律で決まっていて動かせない分はどれか」を分けて見ると、話が進めやすくなります。この記事では、法定福利費と法定外福利費の1人あたり月額と内訳を、企業規模別に整理します。
就労条件総合調査の労働費用とは どの年の数字か
就労条件総合調査は、厚生労働省が毎年行っている調査です。ただし労働費用は毎年は聞いておらず、調べた回だけに載ります。2026年10月24日時点で厚生労働省のページを確かめると、最新は令和3年調査(2021年1月1日現在の調査)で、費用は令和2年(または平成31・令和元会計年度)の1年間の数字です。前の回は平成28年調査で、平成27年(または平成26会計年度)の費用です。令和4年から令和7年の調査の調査事項には、労働費用が入っていません。
読み方の決まりを先に押さえます。
| 言葉 |
意味(厚生労働省の資料による) |
| 労働費用 |
使用者が労働者を雇うことで生じる一切の費用(企業負担分)。現金給与額、法定福利費、法定外福利費、現物給与の費用、退職給付等の費用、教育訓練費、募集費などをいう |
| 法定福利費 |
法律で義務づけられている社会保障制度の費用(企業負担分)。健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、労働保険料、子ども・子育て拠出金、障害者雇用納付金など |
| 法定外福利費 |
法律で義務づけられていない福利厚生関係の費用。住居、医療保健、食事、文化・体育・娯楽、私的保険制度への拠出金、慶弔見舞など |
| 対象の労働者 |
労働費用は、期間を定めて雇う労働者やパートタイム労働者を含む全常用労働者 |
表に載る企業規模は、1,000人以上、300〜999人、100〜299人、30〜99人の4つです。29人以下の会社の数字は、この統計にはありません。
労働費用の総額と内訳 現金給与以外は18.0%
労働費用の内訳 企業規模別 1人1か月平均(令和3年調査)作成: 編集部 / もとの資料: 厚生労働省「就労条件総合調査」第16表・第17表
令和3年調査では、常用労働者1人1か月平均の労働費用総額は408,140円でした。現金給与額が334,845円(82.0%)、現金給与以外の労働費用が73,296円(18.0%)です。
現金給与以外の73,296円の内訳は、次のとおりです。
| 項目 |
1人1か月(円) |
現金給与以外に占める割合 |
総額に占める割合(編集部計算) |
| 法定福利費 |
50,283 |
68.6% |
12.3% |
| 退職給付等の費用 |
15,955 |
21.8% |
3.9% |
| 法定外福利費 |
4,882 |
6.7% |
1.2% |
| 募集費 |
718 |
1.0% |
0.2% |
| 教育訓練費 |
670 |
0.9% |
0.2% |
| 現物給与の費用 |
481 |
0.7% |
0.1% |
| その他 |
306 |
0.4% |
0.1% |
| 計 |
73,296 |
100.0% |
18.0% |
出典: 厚生労働省「令和3年就労条件総合調査 結果の概況」第16表・第17表。割合は資料の値で、総額に占める割合は編集部が計算しました。項目の合計は四捨五入のため、資料の計と1円ずれます。
福利厚生にあたる法定外福利費は、労働費用の1.2%です。法定福利費は12.3%で、法定外福利費の約10倍(50,283円 ÷ 4,882円 = 約10.3倍。編集部計算)でした。「福利厚生費」と一言で呼ばれていても、会社の負担の大半は、法律で決まった社会保険の負担だとわかります。
企業規模別の労働費用
| 企業規模 |
労働費用総額 |
現金給与額 |
現金給与以外 |
法定福利費 |
退職給付等 |
法定外福利費 |
| 1,000人以上 |
450,720 |
365,787 |
84,933 |
54,348 |
22,985 |
5,639 |
| 300〜999人 |
415,532 |
340,495 |
75,037 |
50,804 |
17,295 |
4,567 |
| 100〜299人 |
391,151 |
323,761 |
67,390 |
48,024 |
12,071 |
4,546 |
| 30〜99人 |
352,005 |
292,370 |
59,635 |
45,819 |
7,732 |
4,414 |
| 全体 |
408,140 |
334,845 |
73,296 |
50,283 |
15,955 |
4,882 |
出典: 同第16表・第17表(単位は円)。
規模が大きいほど、総額も現金給与以外も高くなります。1,000人以上と30〜99人を比べると、総額は約1.28倍、法定福利費は約1.19倍、法定外福利費は約1.28倍です(編集部計算)。差がもっとも大きいのは退職給付等で、22,985円と7,732円、約3倍の開きがあります。法定外福利費の総額に占める割合は、どの規模も1.1〜1.3%に収まっています(編集部計算)。
法定福利費の内訳 厚生年金と健康保険・介護保険で約9割
法定福利費の内訳 1人1か月平均50,283円(令和3年調査)作成: 編集部 / もとの資料: 厚生労働省「就労条件総合調査」第18表
法定福利費は、1人1か月平均50,283円です。内訳は第18表のとおりです。
| 項目 |
1人1か月(円) |
構成割合 |
| 厚生年金保険料 |
27,905 |
55.5% |
| 健康保険料・介護保険料 |
17,496 |
34.8% |
| 労働保険料 |
3,695 |
7.3% |
| (うち)雇用保険にかかる額 |
2,120 |
4.2% |
| (うち)労災保険にかかる額 |
1,575 |
3.1% |
| 子ども・子育て拠出金 |
987 |
2.0% |
| 障害者雇用納付金 |
96 |
0.2% |
| 法定補償費 |
4 |
0.0% |
| その他の法定福利費 |
98 |
0.2% |
| 計 |
50,283 |
100.0% |
出典: 厚生労働省「令和3年就労条件総合調査 結果の概況」第18表。
厚生年金保険料と、健康保険料・介護保険料を足すと、法定福利費の90.3%です(編集部計算)。ここは、給与にそのまま連動して決まる費用です。給与が上がれば、会社の負担も自動的に増えます。
労働費用の調査では「企業負担分」を数えているため、従業員が給与から払う分は入っていません。給与明細の保険料と、会社の負担がどう分かれるかは、社会保険とは 健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険の違いと負担の分け方で整理しています。
前の回(平成28年調査)との違い
| 項目 |
平成28年調査(円) |
令和3年調査(円) |
増減(円) |
増減率(編集部計算) |
| 労働費用総額 |
416,824 |
408,140 |
8,684減 |
2.1%減 |
| 現金給与額 |
337,192 |
334,845 |
2,347減 |
0.7%減 |
| 法定福利費 |
47,693 |
50,283 |
2,590増 |
5.4%増 |
| 退職給付等の費用 |
18,834 |
15,955 |
2,879減 |
15.3%減 |
| 法定外福利費 |
6,528 |
4,882 |
1,646減 |
25.2%減 |
出典: 同第16表・第17表。平成28年調査の構成割合は、法定福利費59.9%、法定外福利費8.2%でした(令和3年調査は68.6%と6.7%)。
法定福利費だけが増え、法定外福利費は4分の1減りました。法定福利費の増え方について、資料には理由が書かれていません。厚生年金保険料率が平成29年9月まで段階的に上がったこと(日本年金機構)が、時期としては重なります。ただし、2回の間の変化を要因ごとに分けた数字は資料にないため、断定はしません。
「その他」の項目は、平成28年調査が4,295円、令和3年調査が306円と大きく違います。理由は資料に書かれていないので、前の回との比較は、主な項目に絞って見るのが安全です。
法定外福利費の内訳 住居が半分、医療保健と食事が続く
法定外福利費の内訳 1人1か月平均4,882円(令和3年調査)作成: 編集部 / もとの資料: 厚生労働省「就労条件総合調査」第19表
法定外福利費は、1人1か月平均4,882円です。内訳を第19表で見ます。
| 項目 |
1人1か月(円) |
構成割合 |
平成28年調査(円) |
| 住居に関する費用 |
2,509 |
51.4% |
3,090 |
| 医療保健に関する費用 |
729 |
14.9% |
877 |
| 食事に関する費用 |
493 |
10.1% |
616 |
| 私的保険制度への拠出金 |
373 |
7.6% |
552 |
| その他の法定外福利費 |
296 |
6.1% |
500 |
| 慶弔見舞等の費用 |
184 |
3.8% |
222 |
| 文化・体育・娯楽に関する費用 |
163 |
3.3% |
383 |
| 労災付加給付の費用 |
88 |
1.8% |
128 |
| 財形貯蓄奨励金、給付金及び基金への拠出金 |
48 |
1.0% |
161 |
| 計 |
4,882 |
100.0% |
6,528 |
出典: 厚生労働省「令和3年就労条件総合調査 結果の概況」第19表。
どの項目も、前の回より減っています。減り方が大きいのは、財形貯蓄奨励金等(70.2%減)、文化・体育・娯楽(57.4%減)、その他(40.8%減)です。住居は18.8%減でしたが、額としてはもっとも大きく、581円減っています(いずれも編集部計算)。
企業規模で、中身が大きく違う
| 企業規模 |
法定外福利費 計 |
住居 |
医療保健 |
食事 |
私的保険制度への拠出金 |
| 1,000人以上 |
5,639 |
3,974(70.5%) |
768 |
174 |
111 |
| 300〜999人 |
4,567 |
2,506(54.9%) |
710 |
427 |
157 |
| 100〜299人 |
4,546 |
1,832(40.3%) |
756 |
690 |
367 |
| 30〜99人 |
4,414 |
960(21.8%) |
660 |
849 |
1,027 |
| 全体 |
4,882 |
2,509(51.4%) |
729 |
493 |
373 |
出典: 同第19表(単位は円。かっこ内は法定外福利費に占める割合)。
合計は5,639円と4,414円で、差は1.3倍ほどです。しかし中身はまったく違います。1,000人以上は、住居が7割を占めます。社宅や寮、住宅手当などを持つ会社が多いためと考えられますが、資料には理由が書かれていません。30〜99人は、住居が21.8%で、食事が849円、私的保険制度への拠出金が1,027円(23.3%)です。同じ「平均4,000円台」でも、どこにお金をかけているかは規模で違います。
今の料率とのずれ 令和8年度の法定福利費
統計は令和2年の費用で、料率も当時のものです。2026年10月24日時点の、会社が負担する主な率は次のとおりです。
| 項目 |
令和8年度の率 |
会社の負担 |
出典 |
| 健康保険(協会けんぽ) |
都道府県ごと。東京都9.85%(令和7年度は9.91%) |
半分 |
協会けんぽ |
| 子ども・子育て支援金 |
0.23%(令和8年4月分から) |
半分 |
こども家庭庁 |
| 介護保険(40歳から64歳) |
1.62% |
半分 |
協会けんぽ |
| 厚生年金保険 |
18.3%(平成29年9月から固定) |
半分 |
日本年金機構 |
| 子ども・子育て拠出金 |
0.36% |
全額 |
日本年金機構 |
| 雇用保険(一般の事業) |
事業主8.5/1,000(労働者5/1,000) |
事業主分 |
厚生労働省 |
協会けんぽの料率は、令和8年度は3月分(4月納付分)から改定されました。新潟県の9.21%から佐賀県の10.55%まで、都道府県で差があります。健康保険組合に入っている会社は、組合ごとの率です。
2026年4月分(5月納付分)からは、子ども・子育て支援金が医療保険の保険料に加わりました。標準報酬月額に0.23%をかけた額の半分が、会社の負担です(こども家庭庁)。令和3年調査には、この費用は入っていません。したがって、今の法定福利費を令和3年調査と比べると、率の変化と支援金の分だけ、自社の額が高く出ます。
標準報酬月額が300,000円の東京都の従業員1人なら、会社が負担する月額は、健康保険料14,775円、支援金345円、厚生年金保険料27,450円、子ども・子育て拠出金1,080円で、この4つの合計は43,650円です(編集部計算。雇用保険・労災保険・介護保険料は含みません)。
今日からできること 自社の福利厚生費を統計と並べる
次の順に進めます。
- 法定外福利費の年間の額を集める。社宅・寮の会社負担、食事補助、健康診断以外の医療保健の費用、慶弔金、レクリエーションの費用、財形の奨励金などを、総勘定元帳の科目から拾います。科目は「福利厚生費」にまとまっていることが多いので、中身を項目に分けます。科目の考え方は、勘定科目とは よく使う科目の一覧と迷いやすい仕訳の考え方 経理の新人向けで紹介しています。
- 常用労働者の数で割る。年間の額を12で割り、常用労働者数で割ります。統計の常用労働者にはパートタイム労働者も含まれるので、人数も同じ範囲で数えます。
- 規模の近い行と並べる。上の表から、自社の規模の行を選びます。合計と、住居・食事・医療保健などの項目を見比べます。
- 法定福利費も同じ形にする。会社が負担した社会保険料(健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料・子ども・子育て拠出金・支援金・雇用保険・労災保険)の年間の額を、12と人数で割ります。令和3年調査の50,283円は、当時の率の数字です。
- 見直しの観点を決める。使われている度合い、公平さ、減らす・足す項目を整理します。
見直しは、額を減らすことが目的ではありません。使われていない制度に予算を出し続けるのも、必要な人に届かないのも、もったいない状態です。統計は、「うちは何にどのくらい使っているか」を言葉にするための、物差しとして使います。
福利厚生費と交際費の線引きは、交際費の平均 損金算入の限度額 業種別・資本金別の支出額 会社標本調査の「交際費・会議費・福利厚生費・広告宣伝費・寄附金の分け方」の節でまとめています。
統計を使うときの注意点
- 労働費用は、令和2年(または令和元会計年度)の数字です。物価や賃金、社会保険料率が変わった今の水準ではありません。
- 平均なので、法定外福利費を持たない会社も含まれます。1社ごとの差は大きくなります。
- 29人以下の会社は含まれていません。小さい会社は、30〜99人の行をそのまま当てはめず、参考にとどめます。
- 厚生労働省は、令和4年以降の調査で労働費用を聞いていません。次に調べるかどうかは、2026年10月24日時点で確かめられませんでした。
この記事の数字は、2026年10月24日に厚生労働省・協会けんぽ・日本年金機構・こども家庭庁の公表資料で確かめたものです。個別の判断は、社会保険労務士や税理士に確かめてください。