80.5%。第1子の妊娠がわかったときに働いていた人のうち、子が1歳のときも働いていた人の割合です。国立社会保障・人口問題研究所が2026年9月に公表した第17回出生動向基本調査で、2020〜24年に第1子が生まれた人の数字です。2015〜19年の69.9%より、10.6ポイント上がりました。
でも、調べてみると「7割」も「9割」も出てきて、どれを信じればいいのか迷いますよね。どの数字も間違いではありません。違うのは、誰を分母にしたかです。
7割と8割は、同じ387人を数えている
数え始める場所が違えば、同じ道でも割合は変わるイラスト: 編集部が画像生成AIで作成したイメージ(YOBITSUGI AI・OpenAI gpt-image-2.5-sunburst)
同じ生まれ年について、この調査にはもう一つ数字があります。68.5%です。
どちらも、子が1歳のときも働いていた387人を数えた結果でした。第1子を産んだ妻565人を分母にすると68.5%、妊娠がわかったときに働いていた481人を分母にすると80.5%になります。報告書での呼び方も分かれていて、前者は「就業継続者割合」、後者は「就業継続率」です。1
今働いていて、これからの出産を考えている人に近いのは、80.5%のほうでしょう。
紛らわしいのは「約7割」という言い方です。前回の報告書が示した7割は2015〜19年の就業継続率で、分母は働いていた人でした。今回の68.5%も7割に近いのですが、こちらの分母は全員です。全員を分母にして比べると、2015〜19年は55.9%で、そこから12.6ポイント上がっています。資料に「7割」とあったら、いつの数字で誰が分母かを見ておくと迷いません。2
復職率が9割になるのは、入口が後ろにあるから
では、復職率の92.1%は何を数えたのでしょうか。
こちらは厚生労働省の令和7年度雇用均等基本調査の数字で、分母は2024年度に育休を終えて、戻る予定だった女性。そのうち実際に復職した人が92.1%、退職した人が7.9%でした。妊娠中に辞めた人も、育休を取らずに辞めた人も、はじめから分母にいません。
育児休業取得率の88.3%も同じ形です。分母は在職中に出産した女性なので、産む前に辞めた人は入っていません。途中で離れた人が抜けていくぶん、後ろの入口で数えるほど数字は高く見えます。
入口の位置で変わる4つの数字と、同じ387人を3つの分母で割った結果作成: 編集部 / 出典: 国立社会保障・人口問題研究所、厚生労働省
| 数字 |
分母 |
数えたこと |
調査 |
| 68.5% |
第1子を産んだ妻すべて |
子が1歳のときも就業 |
出生動向基本調査 |
| 80.5% |
妊娠時に働いていた妻 |
子が1歳のときも就業 |
出生動向基本調査 |
| 88.3% |
在職中に出産した女性 |
育休を開始(申出を含む) |
雇用均等基本調査 |
| 92.1% |
復職予定で育休を終えた女性 |
実際に復職 |
雇用均等基本調査 |
上の2行と下の2行は、対象の年も答える人も違います。だから92.1%から80.5%を引くような計算はできません。本人が答える調査では、仕事が変わっても両方の時点で働いていれば継続です。事業所が答える調査では、別の会社へ移った人は退職に数えられるはずです。
正規は88.0%、パート・派遣は56.0%
全体の80.5%は、妊娠がわかったときの働き方で大きく開きます。
第1子の就業継続率の推移と、2020〜24年に生まれた子が1歳のときの母の働き方作成: 編集部 / 出典: 国立社会保障・人口問題研究所
| 第1子の出生年 |
全体 |
正規の職員 |
パート・派遣 |
| 1985〜89年 |
39.0% |
40.4% |
23.7% |
| 1990〜94年 |
39.3% |
44.6% |
18.2% |
| 1995〜99年 |
38.1% |
45.5% |
15.2% |
| 2000〜04年 |
40.5% |
52.4% |
18.1% |
| 2005〜09年 |
43.4% |
60.3% |
18.7% |
| 2010〜14年 |
57.7% |
73.9% |
28.9% |
| 2015〜19年 |
69.9% |
83.9% |
40.8% |
| 2020〜24年 |
80.5% |
88.0% |
56.0% |
全体は2000〜04年の40.5%からほぼ2倍になり、とくに2010年代からの伸びが目立ちます。パート・派遣も2000年代の2割弱から大きく上がりました。それでも正規の職員との差は32.0ポイント。2020〜24年のパート・派遣の回答は116人と少ないので、幅のある数字として読むのが無難です。
続け方の中身も見えてきます。続けた人の82.4%は育休を使っていました。妊娠時に正規の職員だった人の81.7%は子が1歳のときも正規の職員で、パート・派遣に変わった人は3.9%、無職になった人は11.7%。パート・派遣だった人は46.8%が同じ働き方を続け、40.5%が無職になり、3.2%が正規の職員に変わっています。3
1歳で働いていても、復帰したとは限らない
80.5%は、仕事に戻った人の割合ではありません。
調査票には「産休・育児休業中の場合は就業とみなします」と書かれています。子が1歳の時点でまだ育休中の人も、就業に入るわけです。2024年度に復職した女性の育休の長さを見ると、12か月以上の人は区分を足して49.1%でした。1歳の誕生日を育休の中で迎えた人は、かなりいるはずです。
その先の姿は、別の調査で追えます。厚生労働省の21世紀出生児縦断調査は、2010年5月に生まれた子の親子を15年追い続けてきました。出産1年前に常勤だった母5,386人は、子が中学3年生になった2025年に、常勤57.2%、パート・アルバイト29.5%、無職8.2%でした。15年間ずっと常勤だった人は31.8%です。4
3人に1人と聞くと、少なく感じるかもしれません。ただ、同じ人たちの無職の割合は、出産半年後の31.7%から8.2%まで下がりました。一度離れた人も、働き方を変えた人も、子の成長に合わせて働く場へ戻ってきた姿が見えます。
もっとも、これは2010年生まれの世代の話で、今の世代はまた違う形になるでしょう。2025年の国民生活基礎調査では、18歳未満の児童がいる世帯の母の81.2%に仕事があり、正規の職員・従業員は34.7%、非正規は35.8%でした。
自分に近い数字を探す手順
全体の数字より、自分の条件に近い数字のほうが役に立ちます。次の順に絞ると、分母のずれに振り回されません。
- 今の働き方に近い数字を選びます。正規の職員なら88.0%、パート・派遣なら56.0%です。
- 契約に期間の定めがあるかを確認します。有期契約の女性の育休取得率は74.8%で、全体より13.5ポイント低い数字です。
- 働いている支店や店舗の人数を調べます。調査は事業所の単位で数えていて、5〜29人は取得率80.4%、復職率88.3%、30人以上は94.4%、94.5%でした。
- 勤め先の数字を探します。厚生労働省の女性の活躍推進企業データベースには、育休の取得率を公表している会社もあり、分母は出産した女性です。
- 見つからなければ、人事に同じ分母でたずねます。
採用ページに「復職率100%」とあったときも、同じ問いが使えます。数人の中の100%かもしれませんし、戻る予定の人だけを数えた100%かもしれません。
復帰が見えてきたら、育休明けの面談で確認することや、小1の壁で切れる制度の期限もあわせて確認できます。書類と期限は産休・育休の手続きでご覧いただけます。
80.5%は、続けられるかどうかを言い当てる数字ではありません。続ける人、形を変える人、いったん離れて戻る人。どの道の人も、この統計の中にいます。
この記事は、2026年11月2日に確認した国の4つの調査の公表資料をもとにしています。資料の名前は出典の欄にあり、合計と差の計算は編集部によるものです。自分が育休の対象になるかは就業規則で確認でき、迷うときは都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談できます。