内定通知書を送ると、多くの場合、その時点で会社と候補者のあいだに労働契約が成り立ちます。だから通知書は「お祝いの手紙」ではなく、契約の書類として作るのが安全です。入社予定日、取り消すことがある理由、承諾の期限を書き、労働条件通知書を同じ封筒に入れる。この3点を押さえると、あとの行き違いが減ります。
内定通知で、労働契約が成り立つ
厚生労働省のQ&Aによると、採用内定は、入社日を始期とし、通知書や誓約書に書いた取消事由が起きたら解約できる、という条件付きの労働契約が成り立った状態を指すことが多いとされます。1
元になっているのは、最高裁の大日本印刷事件です。会社が内定通知のほかに契約のための手続きを予定していなかったことから、応募が契約の申込み、内定通知がその承諾にあたり、誓約書の提出とあわせて労働契約が成り立つと判断しました。2
一方の内々定は、多くの場合まだ契約に至っていません。ただ、拘束の度合いが強ければ内定と同じに扱われることもあり、合理的な理由なく取り消すと、期待を裏切ったとして損害賠償を求められることもあり得ます。1呼び方より、実際にどこまで約束したかで決まるわけです。
書類は4つの場面で送る
封筒に入れる書類を、送る前に1枚ずつ確かめるイラスト: 編集部が画像生成AIで作成したイメージ(YOBITSUGI AI・OpenAI gpt-image-2.5-sunburst)
内定から入社までに送る書類を、4つの場面に分けた流れ作成: 編集部 / 出典: 厚生労働省の資料ほか
最初の封筒に入れるのは、内定通知書、労働条件通知書、返送用の内定承諾書の3つ。労働条件は、募集のときから会社が示すことになっていて、2024年4月からは仕事と勤務地の「変更の範囲」も示す項目に加わりました。3通知書と同じ封筒で送れば、承諾する前に条件を読んでもらえます。労働条件通知書は書面で渡すのが原則ですが、本人が希望すれば、印刷できるメールなどで送ることもできます。メールで内定を伝える会社でも、条件の部分は書面と同じ内容をそろえておくと安心して読んでもらえます。書き方は労働条件通知書の書き方で確認できます。
承諾書が届いたら、受け取ったことをメールで返しておくと、候補者も安心して前の会社に退職を伝えられます。入社前の書類と期限は、入社手続きのチェックリストで追えます。
通知書と承諾書に書く項目
内定通知書にも内定承諾書にも、法律で決まった書式はありません。そのぶん、何を約束したのかが読み取れる書き方にしておきたいところ。
取消事由は、思いつく限り並べればよいわけではありません。書いてあっても、次の節のように取り消しが認められるかは別に判断されるからです。
内定承諾書には、承諾の意思、入社予定日、通知書の内容を確認したこと、署名と日付を書いてもらいます。返送の期限は、ほかの会社の結果を待つ人もいるので、1〜2週間ほどを目安に、相談に応じて延ばす形が現実的でしょう。
取り消しが認められにくい理由
内定取り消しの考え方と、理由になりうる例・認められなかった例作成: 編集部 / 出典: 厚生労働省の資料ほか
内定で契約が成り立っていれば、取り消しには解雇と同じ物差しが当てはまります。客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当と認められない取り消しは、権利の濫用として無効です。4大日本印刷事件で最高裁は、内定の前から分かっていた印象を理由にした取り消しを、解約権の濫用と判断しました。
経営の悪化で取り消すときも、整理解雇と同じように、人員を減らす必要性、避ける努力、人選の合理性、説明の手続きが問われます。1インフォミックス事件でも東京地裁は、前の会社に退職届を出させたあとで辞退を勧めた取り消しを、著しく過酷として無効としました。5
新卒の内定を取り消すときは、あらかじめハローワークと学校に、決まった様式で通知する決まりです。62年度以上続けた場合や、同じ年度に10人以上に行った場合などは、厚生労働省が会社名を公表できる決まりもあります。1
辞退の連絡を受けたら
候補者からの辞退は止められません。期間の定めのない雇用なら、労働者はいつでも解約を申し入れられ、申し入れから2週間で契約は終わります。7内定後の辞退で損害賠償を求められる場合も考えられるとはいえ、働くことまでは強制できないとQ&Aは説明しています。1
だから、辞退の連絡には、受け取ったことと手続きの終わりを短く返すのがいちばんです。
封筒を閉じる前の手順
- 内定通知書の入社予定日、職種、承諾の期限を確認する。
- 取消事由が、内定のあとに分かる事実に限られているか見直す。
- 労働条件通知書の賃金と、仕事と勤務地の変更の範囲を確認する。
- 内定承諾書の書式と、返信用の封筒を同封する。
- 新卒の採用なら、取り消しのときの通知先(ハローワークと学校)を控えておく。
通知書をていねいに作る会社は、候補者から見ても安心して入れる会社です。最初の1通が、入社の日まで続く信頼の土台になります。
この記事は、2026年11月2日に確認した厚生労働省と中央労働委員会の資料、e-Gov法令検索の法令、全国労働基準関係団体連合会の判例検索にもとづいています。個別の判断は、社会保険労務士や弁護士、労働局の窓口に確認してください。