有給休暇(正式には年次有給休暇)は、給料をもらいながら仕事を休める、労働基準法で決まった権利です。人事・労務の担当には「何日あるのか」「いつ変えられるのか」と聞かれ、社員には「自分は何日あるのか」と気になる、基本の決まりをまとめました。2026年10月22日時点の労働基準法と、厚生労働省の資料で確かめた内容です。
年5日の取得義務の数え方と管理簿の作り方は有給休暇の年5日取得義務 管理簿の作り方と計画的付与の進め方で、取得率の統計は有給休暇の取得率 業種別・規模別のデータと平均取得日数で扱っています。ここでは「有給休暇とは何か」を、聞かれる順に答えます。
有給休暇のあらまし 条件・付与日数・取り方・時効・賃金作成: 編集部 / もとの資料: 厚生労働省 リーフレットシリーズ労基法39条
有給休暇はどんな人が、いつからもらえるのか
労働基準法第39条は、次の2つを満たした人に有給休暇を与えると定めています。
- 雇い入れの日から6か月続けて勤めている(継続勤務)
- その6か月の全労働日の8割以上、出勤している
最初に与えられるのは10日です。厚生労働省は、正社員、パートタイム労働者、シフト制労働者などの区分に関係なく、この2つを満たす人全員に付与されると説明しています。つまり、パートや有期契約の人も対象です。「うちの会社に有休はない」という会社の主張があっても、要件を満たせば発生します。就業規則で認めないと定めても、その定めは無効です。
継続勤務と全労働日の考え方
「継続勤務」は、その事業場での在籍期間を、勤務の実態に即して判断します。定年退職した人を嘱託で再雇用した場合などは、続いた勤務として扱います。契約を更新しながら働いている人も、実態として続いていれば通算です。
出勤率は、次のように数えます。
| 場面 |
数え方 |
| 業務上のけがや病気で療養のために休んだ期間 |
出勤したものとみなす |
| 育児休業・介護休業をした期間 |
出勤したものとみなす |
| 産前産後の休業の期間 |
出勤したものとみなす |
| 有給休暇を取った日 |
出勤日として扱う |
| 遅刻・早退した日 |
出勤日として扱う |
| 会社の都合による休業の期間 |
全労働日から除く(原則) |
前の期間の出勤率が8割に届かなかった年があっても、その翌年の出勤率が8割以上なら、翌々年にはまた付与されます。1回届かなかったことで、権利が消えるわけではありません。
勤続年数ごとの付与日数と、パートの比例付与
付与日数は、通常の労働者なら勤続6か月で10日、その後1年ごとに増えて、6年6か月以上で20日です。週の所定労働時間が30時間未満で、週の所定労働日数が4日以下の人は、日数に応じた比例付与になります。
| 勤続 |
6か月 |
1年6か月 |
2年6か月 |
3年6か月 |
4年6か月 |
5年6か月 |
6年6か月以上 |
| 通常の労働者 |
10日 |
11日 |
12日 |
14日 |
16日 |
18日 |
20日 |
| 週4日(年169〜216日) |
7日 |
8日 |
9日 |
10日 |
12日 |
13日 |
15日 |
| 週3日(年121〜168日) |
5日 |
6日 |
6日 |
8日 |
9日 |
10日 |
11日 |
| 週2日(年73〜120日) |
3日 |
4日 |
4日 |
5日 |
6日 |
6日 |
7日 |
| 週1日(年48〜72日) |
1日 |
2日 |
2日 |
2日 |
3日 |
3日 |
3日 |
パートでも、週の所定労働時間が30時間以上、または所定労働日数が週5日以上(年間217日以上)なら、上の通常の労働者と同じ日数です。週以外の期間で労働日数が決まる人は、年間の所定労働日数で見ます。
この表で10日以上になる枠は、年5日の取得義務の対象でもあります。週4日勤務なら勤続3年6か月、週3日なら5年6か月です。詳しくは年5日の取得義務の記事にあります。
有給休暇の取り方 理由・半日・時間単位
日は社員が決め、理由は言わなくてよい
有給休暇を取る日は、社員が指定します。会社は、指定された日に与えなければなりません。法定の有給休暇をどう使うかは社員の自由で、愛知労働局のQ&Aは、具体的な取得理由の記載がないことを理由に休暇を認めないことはできないとしています。
届出の書式に理由欄があっても、「私用」で足ります。業務の運営を妨げることを目的に、職場の全員で一斉に休んで職場を放棄するのは、有給休暇に名を借りた争議行為で、正当な権利行使とされない、という通達上の扱いもあります。通常の休み方の話とは別です。
休んだ当日に急な仕事で呼び出されて出勤した場合は、その日は有給休暇を取ったことになりません。厚生労働省は、日単位が原則で、1日の労働から解放されて休養することが目的だと説明しています。
半日単位は会社の同意で
有給休暇は1日単位が原則ですが、社員が半日単位での取得を希望して日を指定し、会社が同意すれば、半日単位で取れます。半日単位を認めるかどうかは、会社の制度としてあらかじめ決めておくと、現場で迷いません。
時間単位は労使協定が必要
時間単位で取る制度は、事業場で労使協定を結んだときに使えます。決まりは次のとおりです。
- 取れるのは、1年に5日分までです。前年度から繰り越した分があっても、繰越分を含めて5日以内です。
- 労使協定で、対象の社員の範囲、時間単位で取れる日数、1日分が何時間にあたるかなどを定めます。労働基準監督署への届出は要りません。
- 対象の社員の範囲を、取得の目的で決めることはできません(たとえば「育児をする人だけ」)。
- 1時間に満たない単位(30分など)では与えられません。
- 社員が日単位で請求したのに、会社が「時間単位にして」と強制することはできません。
時間単位年休は、年5日の取得義務の5日には数えません。
時季変更権 会社が日を変えられる場面と使えない場面
社員が日を指定しても、会社が別の日に変えられることがあります。これが時季変更権です。労働基準法第39条第5項は、請求された時季に有給休暇を与えることが「事業の正常な運営を妨げる場合」には、他の時季に与えることができる、と定めています。
変えられるのは事業の正常な運営を妨げるときだけ
厚生労働省のリーフレットは、時季変更権が認められるのは、たとえば同じ日に多くの社員が同時に休暇を指定した場合などが考えられるとしています。そのうえで、単に「業務が忙しいから」という理由では認められないと明記しています。
「妨げる場合」かどうかは、個別的、具体的、客観的に判断されます。厚生労働省の「確かめよう労働条件」には、裁判例では次の事情を考慮して判断するとされている、と書かれています。
- 事業場の規模、内容
- その社員が担当する作業の内容、性質
- 作業の繁閑
- 代わりの人を置く難しさ
- 同じ時季に休暇を請求する人数
- 労働慣行
鹿児島労働局のQ&Aは、判例の動向では、事業の正常な運営を妨げるかどうかは極めて限定的に解されていて、従業員の大半が同時に請求してきた場合は別として、そうでなければ与えなければならないと考えた方がよい、と述べています。
時季変更権を使える場面・使えない場面と社員からの質問作成: 編集部 / もとの資料: 厚生労働省 リーフレットシリーズ労基法39条・確かめよう労働条件
時季変更権でできること、できないこと
| 場面 |
時季変更権 |
| 同じ日に多くの社員が休暇を請求し、全員には与えられない |
使える場合がある |
| 単に忙しい、人手が足りないという理由 |
使えない |
| 理由が書かれていない、理由が気に入らない |
使えない(休暇を認めないことはできない) |
| 休暇そのものを認めない |
できない(変えられるのは「別の日」だけ) |
| 退職日より後の日に変える |
できない |
| 日単位の請求を時間単位に変える(逆も) |
できない(時季変更にあたらない) |
時間単位年休でも、時季変更権は使えます。ただ、あらかじめ労使協定で時間単位年休を取れない時間帯を決めておく、所定労働時間の途中での取得を制限する、1日に取れる時間数を制限する、といったことは認められません。
退職前の消化では変えられる日がない
退職が決まった社員が、残りの有給休暇を退職日までに使いたいと言う場面は、実務でよくあります。愛知労働局のQ&Aは、退職や解雇の効力が生じるまでは有給休暇を取れるので、退職予定の人や解雇予告期間中の人から請求があれば、与えなければならないとしています。時季変更権は使えますが、変えられるのは退職日や解雇日までの範囲内に限られます。退職日を超えて別の日に変えることはできません。
つまり、請求された日がすべて退職日までにあって、変えようにも変えられる日がなければ、会社は事実上、断れません。引き継ぎが心配なときは、請求を拒むのではなく、いつ、何を誰に引き継ぐかを、社員と早めに相談します。
時効は2年 繰越と賃金の時効の違い
有給休暇は、発生の日から2年で時効により消えます(労働基準法第115条)。このため、前年度に使い切れなかった分は翌年度に持ち越せますが、持ち越せるのは前年度の分までです。
賃金の請求権の時効は、2020年の改正で5年(当分の間は3年)になりました。ただし厚生労働省の「確かめよう労働条件」は、有給休暇の権利そのものの時効は2年のままだと説明しています。有給休暇を取った日の賃金の請求権と、会社が払わなかったときの付加金の請求は、当分の間3年です。
休んだ日の賃金は3つの払い方のどれか
有給休暇を取った日に払う賃金は、次の3つのどれかです(労働基準法第39条第9項)。
| 払い方 |
内容 |
条件 |
| 平均賃金 |
労働基準法で決まる平均賃金 |
就業規則などに定める |
| 通常の賃金 |
所定労働時間働いたときに払われる賃金 |
就業規則などに定める |
| 標準報酬日額 |
健康保険の標準報酬月額の30分の1に相当する金額 |
就業規則などに定め、労使協定を結ぶ |
どれにするかは、あらかじめ就業規則などに定める必要があります。休みを取るたびに、会社が安くなる払い方を選ぶことはできません。
有給休暇を取ったことで不利益に扱ってはいけない
労働基準法の附則第136条は、使用者は有給休暇を取った労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない、と定めています。厚生労働省の資料が挙げる例は、精皆勤手当や賞与を計算するときに、有給休暇の日を欠勤扱いにすることです。有給休暇を取ったことを賞与の査定でマイナスにするのも、取得を事実上抑える不利益な取扱いだとされています。
この規定は訓示規定とされていますが、減額の程度によっては、公序良俗に反して民事上無効になる場合もあると、厚生労働省は説明しています。就業規則の手当の条件に「欠勤がないこと」と書いてあるときは、有給休暇の日を欠勤に数えない書き方になっているか、確かめましょう。
年5日の取得義務と管理簿のあらまし
2019年4月から、年10日以上の有給休暇が付与される社員には、付与日(基準日)から1年以内に、会社が5日を取らせる義務があります。社員が自分で請求して取った日、会社が時季を指定した日、計画的付与で取った日が合計5日に達すれば足ります。会社は、社員ごとの年次有給休暇管理簿を作って保存します。
数え方、基準日が2つある場合、時季指定の手順、管理簿の項目、罰則は、年5日取得義務の記事に書きました。この記事で押さえておきたいのは、次の2点です。
- 会社が時季を指定するのは、5日に足りない人だけです。5日取った人には指定できません。
- 「会社が日を決められる」のは、この5日の指定と、労使協定による計画的付与だけです。通常の時季変更権とは別の話です。
時季指定と時季変更権を混同しやすいので、並べておきます。
|
時季指定(年5日) |
時季変更権 |
| 誰が動くか |
会社が日を決める |
社員が決めた日を会社が変える |
| いつ使うか |
5日に足りない人に、意見を聴いたうえで |
請求の日が事業の正常な運営を妨げるとき |
| 前提 |
年10日以上付与される人 |
有給休暇を請求した人全員 |
パートや有期契約の人にも同じ決まりがある
パート、アルバイト、契約社員も、条件を満たせば有給休暇が発生します。日数は、働く日数に応じた比例付与です。理由を言わなくてよいこと、半日・時間単位の扱い、時効、賃金の払い方、不利益な取扱いの禁止は、正社員と同じです。
契約を更新しながら働いている人は、更新の都度、最初から数え直すのではなく、実態として続いていれば勤務を通算します。入社から何年たったのかが分からなくなる職場では、名簿に入社日を残しておきます。
社員から聞かれやすい質問
当日の朝に休みたいと言われたら
有給休暇は事前に請求するのが原則ですが、前日の欠勤を事後に有給休暇に変える扱いは、労使双方が有給休暇として処理することで合意した場合なら、差し支えないとされています(宮崎労働局のQ&A)。認めるかどうかは、会社の決まりと、本人との話し合いで決めます。当日の請求で事業の運営に支障が出るときは、時季変更権の問題になります。
買い取りは法律上どうか
労働基準法は有給休暇を「与えなければならない」としているため、金銭を支給しても与えたことにはなりません。買い取りを予約して請求できる日数を減らしたり、請求された日数を与えなかったりすることはできません。法定の日数を上回る日数については、この限りではない、と鹿児島労働局は説明しています。時効で消えた分や、退職で残った分の扱いは、会社ごとの決まりと個別の合意によるため、就業規則を確かめ、不明なときは労働基準監督署や社会保険労務士に相談してください。
繰越と時効のまとめ
使い切れなかった分は翌年度に繰り越せますが、時効は2年です。たとえば2025年4月1日に付与された日数は、2年後の2027年3月31日で時効になります。社員が自分の残日数と期限を見られるよう、給与明細や勤怠システムに表示しておくと役立ちます。
今日からできること
- 就業規則の年次有給休暇の条文を開き、付与日数の表が法律の表(10・11・12・14・16・18・20日と、比例付与)以上になっているか確かめる。
- 会社の休暇届の書式に、理由欄の書き方(「私用」でよい)を一言添える。
- 半日単位と時間単位年休を認めているか、認めているなら労使協定と就業規則に書いてあるかを確かめる。
- 賃金の払い方が、平均賃金・通常の賃金・標準報酬日額のどれか、就業規則に書いてあるかを確かめる。
- 皆勤手当や賞与の計算で、有給休暇の日を欠勤に数えていないか見直す。
- 時季変更権を使う場面が出たら、「忙しい」ではなく、同じ日に何人が請求しているかなど、事実を記録して判断する。
個別の判断は、所轄の労働基準監督署、都道府県労働局、社会保険労務士に確かめてください。