年5日の有給取得は、2019年4月から全ての会社の義務になっています。取得が進まない部署を抱える労務担当は、付与日数の表、5日の数え方、管理簿の項目、計画的付与の協定を、手元で確かめられる形にしておくと動きやすくなります。この記事は2026年10月22日時点の労働基準法と、厚生労働省の解説「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」で確かめた、手続きの記事です。
取得率の数字や業種別の傾向は有給休暇の取得率 業種別・規模別のデータと平均取得日数に書いたので、ここでは繰り返しません。
年5日の義務は誰に・いつまでかかるのか
年5日の義務は、労働基準法第39条第7項に定められています。使用者は、年次有給休暇が10日以上付与される労働者に、付与した日(基準日)から1年以内に5日を、時季を定めて与えなければなりません。
押さえる点は次の4つです。
- 対象は、その年に付与される日数が10日以上の人です。管理監督者や有期雇用の人も含まれます。
- 期間は、基準日から1年以内です。4月1日が基準日なら、翌年3月31日までです。
- 前年度からの繰越分は、10日以上かどうかの判定に含めません。厚生労働省のQ&Aでは、1年以内に付与される日数が10日未満のパートの人は、繰越を足して10日以上になっても対象にならないと答えています。
- 義務は人ごとにかかります。違反は、対象の労働者1人につき1罪として扱われます。
付与日数の表 通常の労働者と比例付与
そもそも10日以上になるのは誰かを、付与日数の表で確かめます。雇入れの日から6か月続けて勤め、その間の全労働日の8割以上出勤した人に、通常の労働者なら10日が付与されます。その後は1年ごとに増え、6年6か月以上で20日です。
週の所定労働時間が30時間未満で、週の所定労働日数が4日以下(年間なら216日以下)の人は、日数に応じた比例付与になります。
年次有給休暇の付与日数の表(通常・比例付与)と年5日の対象作成: 編集部 / もとの資料: 厚生労働省 年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説
| 勤続 |
6か月 |
1年6か月 |
2年6か月 |
3年6か月 |
4年6か月 |
5年6か月 |
6年6か月以上 |
| 通常の労働者 |
10日 |
11日 |
12日 |
14日 |
16日 |
18日 |
20日 |
| 週4日(年169〜216日) |
7日 |
8日 |
9日 |
10日 |
12日 |
13日 |
15日 |
| 週3日(年121〜168日) |
5日 |
6日 |
6日 |
8日 |
9日 |
10日 |
11日 |
| 週2日(年73〜120日) |
3日 |
4日 |
4日 |
5日 |
6日 |
6日 |
7日 |
| 週1日(年48〜72日) |
1日 |
2日 |
2日 |
2日 |
3日 |
3日 |
3日 |
10日以上になる枠が、年5日の対象です。パートの人は勤続が長くなってから対象になるため、入社時の名簿だけでは見落とします。毎年の付与のたびに、日数を確かめます。
年5日の数え方 数える日と数えない日
数え方は、厚生労働省の解説のQ&Aに沿って整理します。
| 場面 |
5日に数えるか |
根拠・補足 |
| 本人が請求して取った日 |
数える |
5日から差し引く |
| 会社が時季指定して取らせた日 |
数える |
本人の意見を聴いて指定する |
| 計画的付与の日 |
数える |
労使協定で定めた日 |
| 半日単位(本人が取った分) |
数える |
1回につき0.5日 |
| 前年度からの繰越分を取った日 |
数える |
繰越分か当年度分かは問わない |
| 時間単位年休 |
数えない |
本人が取った分も差し引けない |
| 会社独自の法定外の有給の特別休暇 |
数えない |
法定の日数に上乗せするものは除く |
3つの注意があります。
- 本人が自分で取った日と計画的付与の日が合わせて5日に達した人には、会社の時季指定は不要で、することもできません。
- 時季指定をしただけでは足りません。基準日から1年以内に実際に5日取れていなければ、法違反として扱われます。
- 会社が指定した日の前に本人が自分で5日取ったときは、当初の指定日に取らなくても法違反になりません。
休職・育休復帰・出向の人
休職中の人も対象ですが、基準日からの1年間に一度も復職せず、義務の履行が不可能な場合は法違反を問わないとされています。年度の途中に育児休業から復帰した人も対象です。ただし、残りの期間の労働日が、指定すべき残日数より少なく、5日取らせることが不可能な場合は除かれます。在籍出向は、出向元・出向先・本人の取り決めによります。
入社日がばらばらのとき 基準日のそろえ方
入社日が人ごとに違うと、基準日も5日を取らせる期間も人ごとに違い、管理が大変です。厚生労働省の解説は、基準日を統一する2つの方法を挙げています。
- 年始や年度始めに統一する。新卒一括採用で人数の多い事業場に向きます。
- 月初に統一する。中途採用が多い事業場や小規模な事業場に向きます。同じ月に入った人の基準日を、月初にそろえます。
法定より早く付与する(前倒し)ときの扱いは、3つに分かれます。
| ケース |
義務が始まる日 |
| 入社時に10日以上を前倒しで付与 |
前倒しで付与した日から1年以内に5日 |
| 入社6か月後に10日付与し、翌年度から全社の起算日に統一 |
期間が重なる部分は、重なる期間を通した月数÷12×5日以上を取らせてもよい |
| 10日のうち一部を前倒しで付与 |
付与日数の合計が10日に達した日から1年以内に5日。それ以前に本人が取った日は5日から引く |
2つ目の例を編集部で計算します。4月1日入社で、10月1日に10日付与し、翌年度から4月1日に統一したとします。1年目の基準日の10月1日から、2年目の基準日の1年後の翌々年3月31日までは18か月です。18÷12×5=7.5日となり、半日単位の取得に応じるなら7.5日以上、それ以外は8日以上を取らせれば足ります(厚生労働省の解説の考え方を当てはめた計算例です)。
統一後の付与日が、前の付与日より遅くならないようにします。初年度に前倒しで付与した場合は、次年度以降の付与日も、初年度と同じかそれ以上の期間、法定の基準日より繰り上げる必要があります。
時季指定のやり方 本人の意見を聴いて決める
会社が日を指定するときは、次の手順です。
- 基準日から半年ほどたった時点で、請求・取得が5日未満の人を管理簿で探す。
- 指定することを本人に明らかにしたうえで、取りたい時季を聴く(施行規則第24条の6)。面談・取得計画表・メール・システムなど、方法は任意です。
- 聴いた意見を尊重するよう努め、日を指定する。半日単位を希望されたら、半日で指定して構いません。
- 本人から変更の申し出があれば、もう一度意見を聴き、できるだけ希望に沿う。変更したら管理簿を直す。
取得日数が前年も著しく少なかった人には、基準日に年間の取得計画表を作る、基準日に会社から指定する、という方法も紹介されています。
就業規則に書くこと
休暇は就業規則の絶対的必要記載事項です。会社が時季指定をするなら、対象になる労働者の範囲と、時季指定の方法を就業規則に書かなければなりません。書かずに指定すると、30万円以下の罰金の対象です(第89条・第120条)。厚生労働省の規定例は、次の趣旨です。
就業規則の作り方や届け出は就業規則とは 作る義務がある会社・届け出の手順にまとめています。
年次有給休暇管理簿の作り方
管理簿は、使用者が年次有給休暇を与えたときに、時季・日数・基準日を労働者ごとに明らかにして作る書類です(施行規則第24条の7)。与えた期間中と、期間の満了後5年間保存します。附則第71条で、当分の間は3年とされています。保存期間の考え方は会社の書類の保存期間 一覧表と整理のしかたにあります。
作り方の決まりは緩やかです。
- 労働者名簿や賃金台帳とあわせて作ってよい。
- 必要なときにいつでも出力できる仕組みにして、システム上で管理してもよい。
- 基準日が2つあるときは、2つとも書く。その場合の取得日数は、1つ目の基準日から2つ目の基準日の1年後までの期間で書く。
Excelの列の例
必須は時季・日数・基準日で、ほかは運用を楽にするための編集部の例です。
| 列 |
内容 |
必須か |
| 社員番号・氏名 |
人ごとに行を作る |
人ごとに明らかにする |
| 基準日 |
付与した日。2つあれば2つ |
必須 |
| 付与日数 |
当年度に付与した日数 |
運用上 |
| 繰越日数 |
前年度から繰り越した日数 |
運用上 |
| 時季 |
取った日付(半日は半日と分かる印) |
必須 |
| 日数 |
基準日から1年以内の取得日数の合計 |
必須 |
| 年5日に数える日数 |
時間単位を除いた合計 |
運用上 |
| 期限 |
基準日の1年後の前日 |
運用上 |
| 意見聴取日・指定日 |
時季指定をしたとき |
運用上 |
年5日の数え方・管理簿の項目・計画的付与の段取り作成: 編集部 / もとの資料: 厚生労働省 年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説
「年5日に数える日数」の列を分けておくと、時間単位年休を5日に入れてしまう間違いを防げます。期限の列に条件付き書式で色をつけ、期限の3か月前に5日未満の人を目立たせる方法もあります。
計画的付与の進め方 労使協定に書くこと
計画的付与は、付与日数のうち5日を超える部分について、会社が労使協定で日を決めて与える制度です(第39条第6項)。付与日数が20日の人なら、15日まで割り振れます。5日は、本人が自由に取れるよう残さなければなりません。計画的付与で取った日は、年5日に数えます。
3つの方式
| 方式 |
内容 |
向く職場(厚生労働省の例) |
| 一斉付与 |
全員が同じ日に休む |
操業を止められる製造業など |
| 班・グループ別の交替制 |
班ごとに交替で休む |
定休日を増やしにくい流通・サービス業など |
| 個人別 |
計画表で一人ずつ決める。誕生日や記念日を充てる例も |
部署や人によって繁閑が違う職場 |
休む日の置き方には、夏季や年末年始に足して大型連休にする、祝日の間をつなぐ(ブリッジホリデー)、閑散期に毎週月曜に置く、という例が紹介されています。
手続きの順番
- 就業規則に「労働者代表との書面による協定により、5日を超える部分について、あらかじめ時季を指定して取得させることがある」旨を定める。
- 過半数組合、なければ過半数代表者と、書面で労使協定を結ぶ。過半数代表者は、管理監督者でないこと、協定を結ぶ者を選ぶと明らかにした投票や挙手などで選ばれ、会社の意向で選ばれた人でないことが条件です(施行規則第6条の2)。選び方は36協定の書き方と届け出でも説明しています。
- 協定の内容を従業員に知らせ、決まった日を管理簿に入れる。
この労使協定は、労働基準監督署に届け出る必要はありません。
労使協定に書く5つのこと
- 計画的付与の対象者。計画の時期に育児休業や産前産後の休業に入る人、定年などで退職が決まっている人は外します。
- 対象になる日数。5日を超える部分です。
- 具体的な方法。一斉なら付与日、班別なら班ごとの日、個人別なら計画表を作る時期と手続きです。
- 付与日数が少ない人の扱い。一斉付与では、新入社員などで5日を超える年休がない人に、有給の特別休暇を与えるか、休業手当として平均賃金の60%以上を支払います(第26条)。
- 計画した日を変える場合の手続き。
取得が進まない部署への働きかけ
数字を示すだけでは、部署は動きません。厚生労働省の解説にある取り組みから、労務担当が始めやすいものを選びます。
- 年度初めに、個人ごとの取得計画表(年間・四半期・月)を作り、休む予定を部署内に見えるようにする。
- 基準日から半年で、5日未満の人を管理簿で拾い、上司を通して時季指定の面談をする。
- 仕事をチームで進め、週ごとの打ち合わせで進み具合を同僚も把握する。休んでも仕事が回るようにします。
- 閑散期や連休の前後に計画的付与を置き、部署が休みやすい日を先に決める。
- 経営者が取得を呼びかけ、労使で取得率を上げる方法を話し合う。
計画的付与は、休んでよい日を先に作れるため、気兼ねを減らす手段として厚生労働省も挙げています。一つの部署で試してから広げると、失敗が少なくなります。
よくある質問
数え方や対象の質問は、冒頭の「よくある質問」にまとめました。罰則と相談先をここで補足します。
罰則は次のとおりです(2026年10月時点)。
| 違反 |
罰則 |
| 年5日を取らせなかった(第39条第7項) |
30万円以下の罰金(第120条) |
| 会社が時季指定をするのに就業規則に書いていない(第89条) |
30万円以下の罰金(第120条) |
| 労働者が請求した時季に与えなかった(第39条、第7項を除く) |
6か月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金(第119条) |
厚生労働省の解説は、監督指導では原則として是正に向けて丁寧に指導するとしています。個別の事案は、所轄の労働基準監督署や都道府県労働局、社会保険労務士に確かめてください。年間休日の水準は年間休日の平均 業種別・規模別のデータと合わせて見ると、有給の取りやすさを考える材料になります。
今日からできること
- 管理簿の「基準日」と「付与日数」を一覧にし、今年度に10日以上付与される人(パート含む)が漏れていないか確かめる。
- 基準日から1年の期限が来年度の前半までにある人のうち、5日未満の人を抽出する。
- 該当の人に、取りたい時季を聴く依頼を出し、聴いた結果と指定日を管理簿に書く。
- 就業規則に、時季指定の対象と方法、計画的付与の定めがあるかを確かめる。
- 計画的付与を考えるなら、来年度の閑散期や連休の前後に置ける日を、部署ごとに洗い出して労使協定の案を作る。