算定基礎届は、7月1日現在の被保険者の4月・5月・6月の報酬を日本年金機構に届け出て、9月からの1年間の標準報酬月額を決め直す手続きです。令和8年(2026年)の提出は終わりましたが、次の7月に向けて、対象者の選び方、報酬の範囲、支払基礎日数の数え方を今のうちに整理しておくと、6月の作業が楽になります。この記事は2026年10月22日時点で、日本年金機構の「算定基礎届の記入・提出ガイドブック(令和8年度)」を開いて確かめた内容です。令和9年度の版は、まだ公表されていません。
算定基礎届は、9月からの1年の標準報酬月額を決め直す届出です
健康保険・厚生年金保険の保険料は、毎月の給与の総額そのものではなく、標準報酬月額をもとに計算します。標準報酬月額とは、報酬の額をいくつかの幅に区切り、各幅に1つずつ決めた金額のことです。令和8年度の協会けんぽ(東京支部)の保険料額表では、健康保険は1級(58,000円)から50級(1,390,000円)まで、厚生年金保険は1級(88,000円)から32級(650,000円)までです。保険料率は都道府県で違うため、この記事では等級と標準報酬月額だけを使います。
給与が上がったり、残業が増えたりしても、標準報酬月額はそのたびには変わりません。実際の報酬との差が大きくならないよう、事業主が年に1回、7月1日現在の全被保険者の4月・5月・6月の報酬を届け出て、厚生労働大臣が標準報酬月額を決め直します。これが定時決定で、届出書が算定基礎届です。決まった額は、9月から翌年8月までの各月に使われます。
算定基礎届の年間の流れ 4〜6月の報酬から9月の適用まで作成: 編集部 / もとの資料: 日本年金機構 定時決定(算定基礎届)・算定基礎届の記入・提出ガイドブック(令和8年度)
令和8年のガイドブックには、提出期間は7月1日(水)から7月10日(金)と書かれています。令和9年は7月1日が木曜日で、10日が土曜日です。機構の「10日が土曜または日曜の場合は翌営業日」という決まりに当てると、7月12日(月)が期限になる計算ですが、令和9年度のガイドブックで日付を確かめてください。
対象者は、7月1日現在の被保険者から4つの場合を除きます
対象は、7月1日現在のすべての被保険者と、70歳以上被用者です。そのうえで、次のどれかに当たる人は、算定基礎届の報酬は書きません。
| 区分 |
取り扱い |
| 6月1日以降に資格を取得した人 |
今年は提出不要 |
| 6月30日以前に退職した人 |
7月1日に被保険者でないので提出不要 |
| 7月改定の月額変更届を出す人 |
報酬月額欄を空欄にし、備考欄の「3.月額変更予定」を○で囲む |
| 8月または9月に随時改定が予定されている旨を申し出た人 |
同じく報酬月額欄を空欄にし、備考欄の「3.月額変更予定」を○で囲む |
最後の2つは、紙の届出用紙の場合です。電子申請と電子媒体で出すときは、この2つの人を除いて届書を作ります。8月・9月の随時改定の予定を申し出たあとで、実際には随時改定の要件に当たらないと分かった人は、速やかに算定基礎届を出します。
算定基礎届を出す人と、報酬を書かない人の早見表作成: 編集部 / もとの資料: 日本年金機構 定時決定(算定基礎届)・ガイドブック(令和8年度)
迷いやすいのは、報酬がない人と、掛け持ちの人です。
- 休職中・育休中の人: 4月から6月のどの月も報酬の支払いがなくても、算定基礎届は出します。備考欄の「5.病休・育休・休職等」を○で囲み、「9.その他」に「○月○日から休職」と書きます。従前の標準報酬月額で決まります。
- 二以上の事業所に勤める人: 標準報酬月額は、各事業所から受ける報酬を合算して決まります。用紙は、本人が選んだ事業所を管轄する事務センターから各事業所に送られ、同じ事務センターに提出します。
4〜6月の報酬には、通勤手当も残業手当も含めます
標準報酬月額の対象になる報酬は、賃金・給料・俸給・手当・賞与など名称を問わず、労働者が労働の対償として受けるすべてのものです。お金に限らず、通勤定期券や食事、住宅などの現物も含まれます。一方、臨時に受けるものや、年3回以下の賞与は含みません。ガイドブックの区分を表にすると、次のとおりです。
| 区分 |
通貨で支給されるもの |
現物で支給されるもの |
| 報酬となるもの |
基本給(月給・週給・日給等)、能率給、奨励給、役付手当、職階手当、特別勤務手当、勤務地手当、物価手当、日直手当、宿直手当、家族手当、扶養手当、休職手当、通勤手当、住宅手当、別居手当、早出残業手当、継続支給する見舞金、年4回以上の賞与 |
通勤定期券、回数券、食事、食券、社宅、寮、被服(勤務服でないもの)、自社製品 |
| 報酬とならないもの |
大入袋、見舞金、解雇予告手当、退職手当、出張旅費、交際費、慶弔費、傷病手当金、労災保険の休業補償給付、年3回以下の賞与 |
制服、作業着(業務に要するもの)、見舞品、食事(本人の負担額が、厚生労働大臣が定める価額で算定した額の3分の2以上の場合) |
「残業手当を入れるのか」とよく聞かれますが、入れます。ただし、残業代がその月に実際に支払われた額で見ます。4月の勤務分の残業代を5月の給与で払う会社は、5月の報酬に入ります。算定の対象は、勤務した月ではなく、4月・5月・6月に支払われた報酬だからです。
賞与と現物給与は、回数と換算で決まります
賞与は、年3回以下なら報酬に含めず、賞与支払届で標準賞与額として扱います。年4回以上の賞与は報酬です。この場合は、7月1日前の1年間に受けた賞与の合計を12で割り、各月の報酬に加えて報酬月額を出します。たとえば、年4回で合計90万円なら、7万5千円を4月・5月・6月のそれぞれに足します。備考欄の「9.その他」に、賞与の支給月と、12で割った額を書きます。今年に限って4回目の賞与を払ったことが明らかなときは、年4回以上に数えず、賞与支払届で届け出ます。
現物給与は円に換算して入れます。通勤定期券・回数券は全額を報酬に入れ、3か月や6か月分をまとめて支給するときは1か月あたりの額にします。食事・住宅は、厚生労働大臣が都道府県ごとに定めた価額(日本年金機構の「全国現物給与価額一覧表」)に換算し、本人の負担分を引きます。ガイドブックには、令和8年10月から住宅の現物給与の価額と算定方法が変わると書かれています。
支払基礎日数は、給与の形で数え方が変わります
支払基礎日数とは、報酬の支払い対象になった日数のことです。算定基礎届の「日数」欄に書きます。給与の形ごとの数え方は、次のとおりです。
| 給与の形 |
支払基礎日数 |
| 月給・週給 |
出勤日数に関係なく、暦日数 |
| 月給・週給で、欠勤日数の分だけ給与が引かれる |
就業規則・給与規程で会社が定めた日数から、欠勤日数を引いた日数 |
| 日給・時給 |
実際の出勤日数(有給休暇も含む) |
1時間だけ勤務した日でも、報酬が支払われていれば1日と数えます。
月給制でも、締め日で4月支払の日数は変わります。ガイドブックの例では、末日締め・当月末払いは30日、25日締め・当月末払いは3月26日から4月25日で31日です。算定基礎届に書くのは4〜6月に支払われた給与なので、締め日の違う会社の資料は写せません。
17日・15日・11日の線で、算定に使う月が決まります
3か月の平均を取るのは、基準の日数に届いた月だけです。基準は、働き方で3通りあります。
| 4・5・6月の日数 |
一般の被保険者(基準17日) |
パート・アルバイトなど(基準17日、次に15日) |
短時間労働者(基準11日) |
| 3か月とも基準以上 |
3か月の平均 |
3か月の平均 |
3か月の平均 |
| 1〜2か月が基準以上 |
基準以上の月だけの平均 |
17日以上の月だけの平均 |
11日以上の月だけの平均 |
| 3か月とも基準未満 |
従前の標準報酬月額 |
15日以上17日未満の月があれば、その月の平均。3か月とも15日未満なら従前の額 |
従前の標準報酬月額 |
支払基礎日数の数え方と、17日・15日・11日で決まる算定に使う月作成: 編集部 / もとの資料: 日本年金機構 定時決定(算定基礎届)・ガイドブック(令和8年度)
パートと短時間労働者は、基準の日数が違います
機構のいう短時間就労者は、パート、アルバイト、契約社員、準社員、嘱託社員など、名称を問わず、正規社員より短時間の労働条件で勤務する人です。会社の一般の被保険者として加入している人は、基準が17日で、17日未満の月が続くときだけ、15日以上の月を使う道があります。
短時間労働者は、特定適用事業所(厚生年金保険の被保険者が51人以上の企業など)、任意特定適用事業所、国・地方公共団体の事業所で働き、1週間の所定労働時間か1か月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3未満で、週の所定労働時間が20時間以上、学生でない人です。この人は、4月・5月・6月のうち支払基礎日数が11日以上の月で算定します。
短時間労働者の加入条件は、変わってきています。賃金要件(月額8.8万円以上)は、令和7年の年金制度改正法に基づいて、2026年10月1日に撤廃されました。令和8年度のガイドブックには、この要件を「令和8年10月撤廃予定」と書いた箇所が残っているので、読むときは注意してください。企業規模の要件は、日本年金機構の案内では、令和9年(2027年)10月から厚生年金保険の被保険者が36人以上の企業等になり、令和11年(2029年)10月以降も段階的に広がります。くわしくはパート・アルバイトの社会保険 加入の条件と適用拡大の予定を見てください。
記入例で確かめます(数字はすべて架空です)
ここからは、報酬月額を出し、標準報酬月額の等級を引くまでを、3つの例で確かめます。届出用紙では、各月の「日数」「通貨」「現物」「合計」を書き、基準以上の月の「総計」と「平均額」を書きます。報酬月額の1円未満は切り捨てです。等級は、令和8年度の協会けんぽ(東京支部)の保険料額表で引きました。
例1 月給の正社員(3か月とも同じ給与)
基本給262,000円、職務手当18,000円、通勤手当12,000円、住宅手当8,000円の月給制です。給与は末日締め・当月末払いで、4月30日、5月31日、6月30日の3か月とも支払基礎日数は17日以上、報酬の合計は毎月300,000円です。
3か月とも17日以上なので、総計は900,000円、報酬月額は900,000円÷3で300,000円です。標準報酬月額は、健康保険が22級の300,000円、厚生年金保険が19級の300,000円です。
例2 残業の多い月がある人
固定の給与(基本給245,000円と通勤手当15,000円)が260,000円で、残業手当が月によって違います。月給制で、日数は例1と同じく3か月とも17日以上です。
| 月 |
固定の給与 |
残業手当 |
報酬の合計 |
| 4月 |
260,000円 |
28,000円 |
288,000円 |
| 5月 |
260,000円 |
52,000円 |
312,000円 |
| 6月 |
260,000円 |
41,000円 |
301,000円 |
総計は901,000円で、報酬月額は901,000円÷3の300,333円(1円未満切り捨て)です。標準報酬月額は、健康保険22級の300,000円、厚生年金保険19級の300,000円になります。5月だけを見ると312,000円ですが、3か月の平均で決まります。
4・5・6月の平均と前年7月から当年6月までの平均で2等級以上の差があり、それが業務の性質上例年生じるときは、備考欄の「8.年間平均」を○で囲み、申立書(様式1)と様式2を添えて年間平均での算定を申し立てられます。
例3 パートの3つのケース
時給制の人が、一般の被保険者として加入している場合と、特定適用事業所の短時間労働者の場合を比べます。
| ケース |
4月 |
5月 |
6月 |
算定に使う月 |
報酬月額 |
標準報酬月額(健康保険・厚生年金保険) |
| A 一般のパート(日額7,600円) |
15日 114,000円 |
17日 129,200円 |
16日 121,600円 |
17日以上の5月だけ |
129,200円 |
9級 126,000円・6級 126,000円 |
| B Aの人で全部17日未満 |
15日 114,000円 |
16日 121,600円 |
15日 114,000円 |
15日以上の3か月 |
116,533円 |
8級 118,000円・5級 118,000円 |
| C 短時間労働者(日額8,050円) |
12日 96,600円 |
11日 88,550円 |
13日 104,650円 |
11日以上の3か月 |
96,600円 |
5級 98,000円・2級 98,000円 |
Aは17日以上の月が5月だけなので、5月の129,200円が報酬月額です(備考欄の「7.パート」を○)。Bは3か月とも15日以上17日未満なので、合計349,600円を3で割って116,533円です。Cは備考欄の「6.短時間労働者」を○で囲み、合計289,800円を3で割って96,600円です。
遡及・遅配・途中入社は、算定から除く月と額があります
通常の方法で算定できない、または算定すると著しく不当になるときは、保険者算定(保険者決定)になります。定時決定で主に出会うのは、次の場面です。
| 場面 |
扱い |
| 4〜6月のどの月も報酬がまったくない(病気欠勤・休職など) |
従前の標準報酬月額で決定 |
| 3か月とも支払基礎日数が17日未満(短時間労働者は11日未満) |
従前の標準報酬月額で決定 |
| 3月以前の給与の遅配や、さかのぼった昇給差額を4〜6月に受けた |
その分を引いて報酬月額を算定 |
| 給与計算期間の途中で入社し、1か月分の給与が出ない月がある |
その月を除いて算定 |
| 一時帰休の休業手当が出ている |
7月1日時点で解消していなければ、休業手当の月も含めて算定。解消していれば、含まない月で算定 |
遡及や遅配は、引いたあとの額で平均します。ガイドブックの例では、3月分の昇給差額20,000円を4月に受けた人は、4月の合計287,000円から20,000円を引いた267,000円を4月分とします。用紙の「遡及支払額」欄に月と差額を、「修正平均額」欄に引いたあとの平均額を書き、遅配は備考欄の「9.その他」に月と日数を書きます。
4月1日入社で給与が20日締め・翌月10日払いの会社は、4月分が日割りで1か月分に満たないため、日数が17日以上でも算定の対象月から除きます。備考欄の「4.途中入社」を○で囲み、資格取得年月日と締め日・支払日を書きます。
よくある間違いは、随時改定との関係、遡及、端数です
| よくある間違い |
正しい扱い |
| 7月改定の月額変更届を出す人にも、算定基礎届の報酬を書いた |
紙は空欄にして備考の「3.月額変更予定」に○。電子申請・電子媒体は除いて作る |
| 算定基礎届を出したから、月額変更届は不要と考えた |
7月・8月・9月の随時改定に当たるなら、随時改定の額が優先される。届出後でも月額変更届を出す |
| 17日未満の月まで平均に入れた |
基準未満の月は除き、使う月の数で割る |
| 月給で欠勤控除があるのに、暦日数を書いた |
就業規則などで定めた日数から、欠勤日数を引く |
| 1円未満を四捨五入した |
1円未満は切り捨て |
随時改定は、固定的賃金が変わり、変動月以後の3か月の平均で2等級以上の差が出たときに、4か月目から改定する仕組みです。残業手当のような非固定的賃金が増えただけでは対象になりません。例2のように残業で増減する人は、算定基礎届で額が決まります。
提出は電子申請が基本で、特定の法人は義務です
提出の方法は、電子申請、電子媒体(CDまたはDVD)、郵送、窓口持参です。提出先は、事務センターか管轄の年金事務所です。日本年金機構は、電子申請を推奨しています。紙や電子媒体の届出より処理が早く、決定通知書を早く受け取れるためです。
電子媒体は、機構の「届書作成プログラム」で作り、「電子媒体届書総括票」を紙で添えます。CD・DVDの表面には、事業所名・提出元ID・媒体通番を油性ペンで書きます。
資本金、出資金または銀行等保有株式取得機構に納付する拠出金の額が1億円を超える法人、相互会社、投資法人、特定目的会社の事業所は、2020年4月以降に始まる事業年度から、算定基礎届・月額変更届・賞与支払届を必ず電子申請で出します。社会保険労務士が代わりに手続きする場合も含まれます。期限を過ぎても提出はできます。電子申請を予定していて、システム障害で期限内に出せないときは、紙や電子媒体に切り替えず、システムの復旧後に電子申請をします。
決まった標準報酬月額は、機構の通知のあと速やかに本人へ知らせます。年金事務所は定期的に事業所の関係書類を調査するので、賃金台帳と出勤簿は残しておきます。
今日からできること
10月は、次の7月に向けた準備を始めるのにちょうどよい時期です。
- 賃金台帳に、月ごとの支払基礎日数の欄を足す(月給は暦日数、日給・時給は出勤日数)。
- 給与の締め日と支払日を整理し、4月・5月・6月に支払われる給与が、どの期間の分かを一覧にする。
- 手当を、「報酬に含める」「含めない」に分けた一覧を作る。通勤定期券や6か月定期の月割りの扱いも書く。
- パート・短時間労働者の区分を確かめる。2027年10月に企業規模の要件が36人以上へ広がる会社は、対象になりそうな人を洗い出す。
- 電子申請の準備を確かめる。特定の法人は義務なので、アカウントと担当者の権限を、6月より前に点検する。
- 来年の5月に、令和9年度のガイドブックと提出期間を日本年金機構のページで確かめ、社内の年間予定に書く。年間の予定の全体は総務・労務の年間スケジュールで見られます。
個別の判断に迷うときは、管轄の年金事務所か社会保険労務士に確かめてください。この記事は、2026年10月22日時点の日本年金機構の案内にもとづく一般的な説明です。