全国健康保険協会(協会けんぽ)は2026年10月22日、電子申請サービス、情報提供サービスおよびけんぽアプリの一時停止をお知らせしました。緊急メンテナンス中のためで、再開の日時はお知らせに書かれていません。再開はこのお知らせで確かめることにして、この記事では、電子申請が使えても使えなくても会社の仕事が変わらない部分、つまり傷病手当金と出産手当金の事業主の証明の書き方と出し方を整理します。
会社が関わるのは、申請書の事業主記入用の欄です
傷病手当金と出産手当金は、どちらも健康保険の給付で、申請するのは被保険者本人です。会社の仕事は、本人が出す申請書のうち、事業主が証明する欄を書くことです。書くのは、休んだ期間にその人がいつ出勤し、いつ、いくら賃金を払ったかです。
なぜ会社の証明が要るのかは、2つの給付の性格を見ると分かります。どちらも、休んでいる間に給与が出ない人の生活を支える給付です。給与が出ているのに手当金も出ると、二重になってしまいます。そこで協会けんぽは、給与の支払いを一番よく知っている会社に、支払状況を証明してもらっています。
傷病手当金と出産手当金で、会社が関わるところの早見表作成: 編集部 / もとの資料: 協会けんぽ 傷病手当金・出産手当金のページ
次の表は、図の内容を文字にしたものです。数字と確認の日は、2026年10月22日のものです。
| 項目 |
傷病手当金 |
出産手当金 |
| 出るとき |
業務外の病気やケガで仕事に就けず、4日以上休んだ |
出産のため会社を休み、給与が出ない |
| 対象の期間 |
連続3日の待期のあと、4日目から。同じ傷病で支給開始から通算1年6か月 |
出産日以前42日(多胎は98日)から、出産の翌日以後56日まで |
| 1日の額 |
支給開始日以前の継続した12か月の標準報酬月額の平均÷30×2/3 |
同じ計算 |
| 会社が書く欄 |
事業主記入用(申請書の3ページ目) |
事業主記入用(申請書の3ページ目) |
| 本人以外の証明 |
療養担当者(医師など)の意見 |
医師・助産師の証明 |
| 申請書の記入の手引き |
傷病手当金支給申請書 記入の手引き(2026.9版) |
出産手当金支給申請書 記入の手引き(令和8年版) |
標準報酬月額は、毎年の算定基礎届などで決まる、保険料と給付の計算のもとになる金額です。決まり方は算定基礎届の書き方にまとめています。健康保険にはほかにどんな給付があるかは、社会保険とはで見られます。
傷病手当金の流れは、休む・医師・本人・会社・提出・支給の順です
最初に、傷病手当金が出る条件を、協会けんぽの案内どおりに押さえます。次の4つをすべて満たすときです。
- 業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること(仕事中や通勤中は労災保険の対象)
- 仕事に就くことができないこと(医師の意見と、その人の仕事の内容から判断される)
- 連続する3日間(待期)を含め、4日以上仕事に就けなかったこと
- 休んだ期間に給与の支払いがないこと(一部だけ出ているときは差額が出る)
待期の3日間には、有給休暇や土日・祝日などの公休日も含まれます。給与の支払いがあったかどうかは関係ありません。ただし、連続した3日がなければ待期は成り立ちません。2日休んで3日目に出勤したら、待期は成り立ちません。
申請の流れは、次の図のとおりです。
傷病手当金の流れ 休む・医師・本人・会社・提出・支給作成: 編集部 / もとの資料: 協会けんぽ 傷病手当金・記入の手引き(2026.9版)
会社の仕事は、図の4番目、本人の記入を受け取ったあとに入ります。ここで注意したいのは、申請書は申請期間が過ぎてからでないと出せないことです。協会けんぽの手引きには、申請期間が経過する前には提出できないと書かれています。申請期間は暦で3か月以内にします。
協会けんぽのFAQは、長く休むときは、1か月単位で、給与の締切日ごとに申請することを勧めています。事業主の証明が、給与の支払いの有無を見るためのものだからです。給与の締め日と申請期間をそろえておくと、賃金台帳から写しやすくなります。給与の流れは給与計算の流れで確かめられます。
支給額の計算は、会社が書く欄ではありません
1日あたりの額は、支給開始日以前の継続した12か月の標準報酬月額を平均して30で割り、3分の2をかけます。協会けんぽの例では、標準報酬月額が16万円の月が6か月、18万円の月が6か月のとき、平均は17万円です。17万円÷30は約5,670円(10円未満を四捨五入)で、3分の2をかけた3,780円が1日の額になります。
支給開始日以前の期間が12か月に満たないときは、本人の月数の平均と、全被保険者の平均額の、低いほうで計算します。この全被保険者の平均額は、支給開始日が2025年4月1日以降は32万円です。計算は協会けんぽがするので、会社が書く必要はありません。
支給は、審査の結果払える場合は受付日から10営業日以内とされています。この日数は、書類に不備がないときの目安です。
事業主の証明の欄には、勤務状況と賃金の支払状況を書きます
事業主記入用の欄に書く項目は、大きく3つです。
- 被保険者の氏名(カタカナ)と、事業所の所在地・名称・事業主氏名・電話番号
- 勤務状況(申請期間のうち出勤した日を○で囲む)
- 出勤していない日に払った賃金や手当の日付と金額
事業主の証明の欄に書くこと 勤務状況と賃金の書き方作成: 編集部 / もとの資料: 協会けんぽ 傷病手当金支給申請書 記入の手引き(2026.9版)
出勤した日は○で囲み、有給休暇や公休日は囲みません
手引きによると、勤務状況は、申請期間のうち出勤した日付を○で囲みます。所定労働時間の一部だけ働いた日も、出勤した日に含めます。年と月は、出勤の有無に関わらず書きます。申請期間に出勤した日がないときは、年月だけ書きます。
待期が成り立つ初日にあたる日に早退したときは、○ではなく「早」と書きます。有給休暇や公休日は、勤務状況の欄に書きません。有給休暇は、下段の賃金の欄に書きます。
出勤していない日に払ったものは、日付と金額を書きます
休んだ日に払った賃金や手当を書く下段の欄は、①から⑩まで10行あります。書くものと書かないものは、次のとおりです。
| 区分 |
書くか |
例 |
| 有給休暇の賃金 |
書く |
休んだ日に払った有給休暇の賃金 |
| 出勤の有無に関わらず払っている手当 |
書く |
通勤手当、扶養手当、住宅手当 |
| 食事・住居などの現物支給 |
書く |
社宅、食事の支給 |
| 出勤した日に払った報酬 |
書かない |
残業手当など |
| 一時的に払ったもの |
書かない |
見舞金など |
| 払っていないもの |
書かない |
0円の記入も要らない |
数字の入れ方には、手引きに例があります。6か月分の通勤手当90,000円を、10月1日から3月31日の分として出勤の有無に関わらず払っているなら、期間と金額を「10月1日3月31日 90,000円」と書きます。11月分の扶養手当10,000円も、「11月1日11月30日 10,000円」と書きます。有給手当は、金額が同じで日が続くなら、まとめて書けます。12月29日と30日に8,000円ずつ払ったなら、「12月29日~12月30日 16,000円」です。
賃金の写し元は、出勤簿と賃金台帳です
勤務状況は出勤簿(タイムカードや勤怠システム)から、賃金の支払いは賃金台帳から写します。作業の順番は、次の3つで足ります。
- 申請期間(本人が書いた期間)を確かめる。給与の締め日と合っていなければ、本人に確かめる
- 出勤簿で、その期間に出勤した日を拾い、半日だけ出た日もあわせて○を付ける
- 賃金台帳で、休んだ日に払ったものを拾い、上の表で書くものだけを①から並べる
手引きには、出勤簿や賃金台帳の写しは添付しないでください、と書かれています。申請時の事務を効率化するためです。証明の根拠は会社に残しておけばよく、協会けんぽから確認が来たときに出せるようにしておきます。証明の日付は、申請期間が終わったあとの日にします。
訂正が出たときは、訂正した箇所が読み取れないように塗りつぶし、欄外に正しい内容を書きます。傷病手当金の手引きの注意書きです。1枚の証明に賃金支給状況が書ききれないときは、申請書を分けます。
休業中に賃金を払ったときは、差額で調整されます
給与が出ている間は、傷病手当金は出ません。ただし、出勤していない日に払った給与が、傷病手当金の日額より少ないときは、その差額が支給されます。
たとえば、日額が3,780円の人に、ある休業日に2,000円を払ったなら、その日の差は1,780円です。これは架空の数字による考え方の例で、実際の額は協会けんぽの審査で決まります。会社が見るのは、払った日と金額を正しく書くところまでです。
本人が書く欄にも、報酬を受けたか、同一の傷病で障害年金などを受けていないか、労災の休業補償を受けていないかを聞く質問があります。事業主の証明に書いた内容と、本人の答えがずれていると、問い合わせが来ます。申請書は、本人の分と会社の分を見比べてから出します。
出産手当金の事業主の証明は、毎回必要です
出産手当金は、出産日(予定日より遅れたときは予定日)以前42日、双子以上のときは98日から、出産の翌日以後56日までの間に、会社を休んで給与が出なかった期間が対象です。出産日は産前の期間に入ります。出産が予定日より遅れたときは、遅れた日数も対象です。
事業主記入用の書き方は、傷病手当金とほぼ同じです。違うのは次の点です。
- 出勤した日の○と、休んだ日に払った賃金や手当の書き方は、傷病手当金と同じ
- 産前の分と産後の分を分けて、複数回に分けて申請できる。その場合、事業主の証明は毎回必要
- 医師・助産師の証明は、1回目の申請が出産後で、出産日などが確認できたなら、2回目以降は省略できる
- 傷病手当金と重なる期間は、出産手当金が優先され、傷病手当金は差額だけが出る
会社の仕事は、休みに入った日と、産前産後の期間に払った賃金を、賃金台帳に正しく残すことです。産前産後の休業中に給与を払うかどうかは、就業規則や賃金規程によります。規程の中身を確かめたいときは、就業規則とはも参考になります。
申請の出し方は、電子申請・郵送・窓口の3つです
協会けんぽの案内には、電子申請と郵送のほかに、窓口の受付時間も書かれています。傷病手当金と出産手当金は、どちらも電子申請の対象で、協会けんぽは電子申請をすすめています。
| 出し方 |
使える人 |
準備するもの |
注意 |
| 電子申請 |
被保険者本人、社会保険労務士 |
マイナンバーカード、事業主記入用などの画像、口座情報 |
2026年1月13日開始。事業主は電子申請できない。平日8時から21時。17時15分以降の送信は翌営業日の受付 |
| 郵送 |
本人 |
紙の申請書(手書き用)、添付書類 |
宛先は、加入している支部。資格情報のお知らせかマイナポータルで確かめる |
| 窓口 |
本人 |
紙の申請書、添付書類 |
平日8時30分から17時15分。祝日と12月29日から1月3日は除く |
電子申請の様子を、会社の目で見ておきましょう。本人がマイナンバーカードで資格情報を取り込み、申請内容を入力します。会社の証明を受けた事業主記入用は、JPEG、PNG、PDFのいずれかの画像にして、アップロードします。協会けんぽによると、原本を別に郵送する必要はありません。
つまり、電子申請になっても、会社の証明の書式は紙と同じです。事業主記入用には、パソコンで入力できるPDF(パソコン専用)と、印刷して手で書く用紙の両方があります。
電子申請が使えないときは、紙の申請書を郵送します
電子申請サービスは、いつも使えるわけではありません。平日8時から21時までで、土日祝日と年末年始は使えません。冒頭の一時停止のように、緊急のメンテナンスで使えなくなることもあります。本人がマイナンバーカードの暗証番号を忘れていて、すぐに使えないこともあります。
そのときの代わりは、紙の申請書を、加入している支部に郵送することです。協会けんぽのFAQには、申請書の提出はすべて郵送で行うことができる、と書かれています。
電子申請が使えないときの進め方と電子申請・郵送の違い作成: 編集部 / もとの資料: 協会けんぽ 電子申請・窓口・申請先の案内
段取りは、次のようにします。
- 会社の事業主記入用は、いつもどおり先に書く。電子でも紙でも同じ書式を使う
- 本人の分と医師の証明がそろっているか、申請期間が過ぎているかを確かめる
- 本人に、電子申請の再開を待つか、紙で郵送するかを選んでもらう。再開の日時は、協会けんぽのお知らせで確かめる
- 支給を急ぐ事情があるときは、加入している支部に電話で相談する。受付は平日8時30分から17時15分
- 紙で出すなら、支部の宛先を支部一覧で確かめ、書留など送った記録が残る方法で送る(書留にするかは会社の判断)
期限の面では、あわてなくて大丈夫です。保険給付の時効は2年で、数日の遅れで時効になることはまずありません。ただし、古い期間の申請が残っているなら、2年に近くなっていないか、先に確かめます。
よくある間違いは、丸囲みの範囲と、賃金の書き忘れです
事業主記入用で多い間違いは、次のとおりです。
- 有給休暇の日を○で囲む: ○は出勤した日だけです。有給休暇は下段に、日付と金額を書く
- 通勤手当や扶養手当を書き忘れる: 出勤の有無に関わらず払う手当は、休んだ日があれば書く。一括払いの通勤手当は、対象の期間と金額で書く
- 残業手当や見舞金まで書く: 出勤した日の報酬や一時的なものは、書かなくてよい
- 申請期間が終わる前に出す: 期間が経過してからでないと提出できない。証明の日付も、期間のあとにする
- 3か月を超える期間を1枚に入れる: 暦で3か月以内にして、申請書を分ける
- 退職日に出勤した人に、退職後の給付を案内する: 退職日に出勤すると、退職後の傷病手当金・出産手当金は受けられない。退職の段取りは退職手続きのチェックリストで確かめる
- 退職後の期間にも事業主の証明を付ける: 被保険者の資格を失った日以降の期間は、事業主記入用を空欄で出す
最後の2つは、会社の担当者だけでなく、本人にも伝えておくと安心です。資格喪失後も傷病手当金を受けるには、退職日の前日までに被保険者期間が継続して1年以上あることなどが要ります。
今日からできること
次の7つを、順に進めてください。
- 協会けんぽのお知らせを開き、電子申請サービスの再開が書かれていないか確かめる。社内の担当者に共有する
- 休業中の社員がいれば、傷病手当金・出産手当金の申請書が、いつ、どこまで進んでいるかを一覧にする
- 協会けんぽのサイトから、事業主記入用のPDF(入力用と手書き用)を、いつでも出せる場所に保存しておく
- 賃金台帳に、休業中の有給休暇と、出勤の有無に関わらず払う手当が見分けられる列があるか確かめる
- 給与の締め日ごとに申請してもらえるよう、休業する社員に案内する。申請期間は暦で3か月以内
- 本人あての案内文(上の文例)を、人事の定型文として保存する
- 健康保険組合に加入している会社は、組合の案内と様式に差し替えて、同じ流れで一覧を作る
制度の数字や様式は、改まることがあります。この記事は、2026年10月22日時点の協会けんぽの案内と健康保険法にもとづいています。個別の判断や、申請の進み具合は、加入している協会けんぽの支部か、社会保険労務士に確かめてください。