「事務の仕事は数字にならないから、職務経歴書に書くことがない」。そう思い込んでいませんか。
数字がないのではなく、置く場所が決まっていないだけかもしれません。厚生労働省の手引きは、職務経歴の「実績」の欄に、可能であれば成果指標の数値を書くとしています。1処理した件数、続けた期間、短くした時間。事務の仕事にも、拾える数字はたくさんあります。
書くことがないのは、置き場所が分からないから
職務経歴書の下書きを、業務の記録を見ながら書くイラスト: 編集部が画像生成AIで作成したイメージ(YOBITSUGI AI・OpenAI gpt-image-2.5-sunburst)
職務経歴書は、履歴書と違って決まった様式がありません。ハローワークの手引きによると、A4で1〜2枚ほどに、これまで経験した職務を自由な様式で詳しく書く書類です。目的は、自分にどんな実務能力と強みがあり、会社にどう貢献できるかを伝えること。履歴書の内容を写すだけでは意味がない、とも書かれています。2
ここで気持ちが重くなるのは、事務に売上のような分かりやすい数字がないからですよね。
ただ、事務の仕事を探す人は多く、2026年8月の有効求人倍率は、一般事務で0.29倍、会計事務で0.55倍、営業・販売事務で0.88倍でした。3同じ職種に応募する人が多いなかでは、何をどこまで任されていたかが具体的に伝わる書類は、それだけで読みやすくなるはずです。統計の見方は事務職の有効求人倍率と賃金にまとめています。
転職の予定がなくても、書き出しておく意味はあります。キャリアの棚卸しで1年分のやったことを紙に出した人なら、その材料がそのまま使えます。
項目は5つ、この順に並べる
手引きでは、冒頭の標題・氏名・日付と「職務経歴」は必須で、ほかの項目は自分で選びます。数は全部で3〜6項目ほどが一般的です。4名前も並べ方も自由なので、事務職なら次の5つを、この順に置くと整理しやすくなります。順番は編集部の提案で、手引きの項目名では、「職歴概要」「職務経歴」「実績」「活かせる能力」「自己PR」にあたります。
| 順 |
項目 |
書くこと |
事務職で入れたい中身 |
| 1 |
職務要約 |
職歴の全体を3〜5行で |
経験年数、担当した領域、扱う量、得意な仕事 |
| 2 |
職務経歴 |
会社ごとの期間、所属、事業内容、担当業務 |
毎月や毎年くり返す業務、扱う書類、使うシステム |
| 3 |
実績 |
数字と、変えたこと |
件数、期間、ミスの減少、短縮した時間、関わった人数 |
| 4 |
活かせる知識と技能 |
能力の名前と、使った場面 |
簿記や労務の知識、Excelの関数、資格 |
| 5 |
自己PR |
仕事への姿勢を、出来事で |
工夫を続けた仕事、周りを手伝った場面 |
いちばん字数を使うのは、2つ目の職務経歴と3つ目の実績です。要約、活かせる知識と技能、自己PRは、この2つに書いた事実から作れます。だから書く順番は、職務経歴と実績を先にして、最後に要約を直すと、話がぶれません。
実績は、会社ごとの職務内容のすぐ下に置く形が、手引きの記入例です。担当が多い事務職は、職務経歴を業務の一覧にとどめて、数字をまとめた実績の欄を別に作ると、探しやすくなります。
志望動機は、手引きでは職務経歴より前に書くことが多い項目で、応募先ごとに書き換えます。上の5つとは別に、応募するときに足してください。手引きは、同じ内容の使い回しをすすめていません。実績はすべて書き出した控えを1枚作り、応募先に合わせて選ぶ形が、あとで楽になります。
ジョブ・カードの職務経歴シートも、考え方は同じです。欄は「職務の内容」と「職務の中で学んだこと、得られた知識・技能等」の2つで、記入の注意には、職務の内容に「可能な限り、果たした役割、貢献したこと等」を書くとあります。5数字と役割の両方を、職務の内容に入れる、ということです。
事務職の職務経歴書は5項目。職務経歴と実績を先に書き、要約は最後に直す作成: 編集部 / 出典: 厚生労働省・ハローワーク「職務経歴書の作り方」
事務の実績は、5つの物差しで拾う
売上や契約数のような数字は、事務にはありません。代わりに使えるのが、件数、期間、正確さ、削減した時間、関わった人数の5つの物差しです。
数えるものの選び方は、目標設定の記事で4つの物差しとして説明しました。目標は「これから」の数字で、職務経歴書は「終わった仕事」の数字です。終わった仕事の数字は、記録から拾えます。ここで扱うのは、拾った数字を職務経歴書の文にするところだけです。
| 物差し |
拾う場所 |
書き方の型 |
| 件数 |
処理台帳、受信箱、システムの履歴 |
月約〇件、年間〇〇件 |
| 期間 |
カレンダー、勤務の記録 |
〇年〇か月、毎月〇営業日目までに |
| 正確さ |
差し戻しの記録、修正を頼むメール |
差し戻しを月〇件から〇件に、〇年間で〇件 |
| 削減した時間 |
作業の前後に計った時間 |
1件あたり約〇分から約〇分に |
| 関わった人数 |
組織図、依頼者の一覧 |
営業担当〇人分、関係部署〇か所 |
ミスがなかった仕事も、数字になります。もとから少ないなら「〇年間で〇件」と、期間と一緒に書けば伝わります。ミスが起きなかった理由を手順で示す書き方は、評価面談の自己評価でも触れました。
数字は、書く前に必ず自分の記録で数え直すこと。記憶だけで書くと、実際とずれることがあるからです。面接では、職務経歴書に書いた内容をもとに質問されることが多いと、手引きにもあります。6聞かれたときに、記録を見ながら根拠を話せる数字だけを書いてください。
事務の仕事を数字にする5つの物差しと、総務・人事・経理・営業事務の書き換え例作成: 編集部 / 出典: 厚生労働省・ハローワーク「職務経歴書の作り方」
実績を拾い出す段取り
半年や1年分の記録から実績を拾う手順は自己評価の記事と重なります。職務経歴書では、会社ごとに次の順で進めます。
- 担当していた業務を、メモに1つずつ書き出す。
- 業務ごとに、5つの物差しから当てはまるものを1〜2個選ぶ。
- 処理台帳やカレンダー、送信済みメールから、数字を拾う。
- 記録が残っていない数字は、「約」を付けた概数にする。見積もれないものは書かない。
- 数字の横に、自分がした工夫を1つ添える。
- 面接で聞かれる場面を思い浮かべて、数字の根拠を声に出して言えるか試す。
職種別、書き換えの前と後
ここからは、職種ごとの書き換え例です。数字はすべて「〇」の置き換えで、実在の経歴ではありません。自分の記録の数字に置き換えて使ってください。
手引きは、職務内容の文を「〜を担当」「〜に従事」のような名詞止めで短く書くことを基本にしています。ただし自己PRと志望動機は、「〜しました」のていねいな文体にする、とあります。7例文の職務内容も、この形にそろえました。
総務
前の文は、業務の名前が並んでいるだけで、量も、自分がしたことも読み取れません。後の文は、量、期間、した工夫、減った時間の4つが入りました。
人事
「事務を担当していました」を、扱った人数と、書類の再提出という減らした手戻りに置き換えています。
経理
経理は、正確さの物差しが使いやすい職種です。件数のあとに続けるのは、ミスをどう抑えたかの手順です。
営業事務
営業事務は、関わった営業担当の人数を書くと、どれだけの範囲を支えていたかが伝わります。
どの例も、最後に「だから何が変わったか」が入っています。数字を1つだけ入れるなら、変化がいちばん分かるものです。
活かせる知識と技能は、仕事の名前を借りる
職務要約や自己PRの言葉に迷ったときは、厚生労働省の職業能力評価基準が手がかりになります。事務系職種を、経営戦略、人事・人材開発・労務管理、企業法務・総務・広報、経理・資金財務・経営管理分析、営業・マーケティング・広告など9職種19職務に分け、仕事ごとに「能力ユニット」という単位で整理した基準です。8
たとえば経理には「簿記」「財務諸表の作成」、総務には「社内管理」「社外対応」、人事には「雇用管理」「賃金管理」、労務には「就業管理」「福利厚生」、営業には「営業事務」があります。職種を問わない共通の項目には、「業務効率化の推進」や「関係者との連携による業務の遂行」もあります。自分の仕事に近いユニットの名前は、そのまま活かせる知識と技能の見出しに使えます。
能力細目にも、書き方のヒントがあります。「簿記」のユニットには、「過去の取引・仕訳・元帳・試算表を調べるなど、効率的に業務を行っている」といった行動の例が載っています。9職務経歴書の様式を定めたものではなく、職場での能力を見るための物差しなので、言葉を借りる手がかりとして使います。
活かせる知識と技能の欄は、能力の名前、使った場面、数字の順に書くと、短くまとまります。
自己PRは、実績の中から1つを選び、出来事、工夫、結果、応募先での活かし方の順に書きます。
数字が出ない仕事は、役割と工夫で書く
来客や電話の対応、備品の管理のように、数字になりにくい仕事もあります。そんなときは、数字を無理に作らず、果たした役割と、した工夫を書きます。ジョブ・カードの記入の注意にも、「果たした役割、貢献したこと」とありました。
もう一度、最初の思い込みに戻ります。事務の仕事に、書くことがないわけではありません。量、期間、正確さ、減らした時間、関わった人数のどれかを、自分の記録から拾い、した工夫を一言添える。それだけで、担当業務の一覧は、実績の書類に変わります。
まずは今月、いちばん回数の多い業務を1つ選び、先月の件数を数えてみてください。その1つの数字が、職務経歴書の最初の1行です。
ハローワークの手引き、マイジョブ・カードの様式、職業能力評価基準、一般職業紹介状況は、2026年10月28日に確認した内容です。