転職の面接で退職理由を聞かれたら、辞めた事実はそのまま話し、そこから考えたことと、次の職場でしたいことへつなげます。前の職場を悪く言わず、うそもつかない。この2つを守れば、前向きな答えは作れます。
とはいえ、理由が人間関係や給与だったとき、正直に話すと愚痴に聞こえそうで迷いますよね。そんな日のために、理由の種類ごとに、そのまま使える例文を用意しました。
うそをつかずに前向きに話す、ということ
転職面接の前に、退職理由を紙に書き出して整理するイラスト: 編集部が画像生成AIで作成したイメージ(YOBITSUGI AI・OpenAI gpt-image-2.5-sunburst)
青森労働局とハローワークの手引き「面接試験の受け方」は、面接で大切な点として退職理由を取り上げています。主な理由には、労働条件や待遇が悪い、人間関係、能力を評価してくれない、仕事が合わなかった、があります。前向きな理由と契約期間の満了を除けば、自分で理由を整理しておく必要がある、という案内です。1
人間関係で辞めた場合の注意も載っています。前の会社の人間関係が悪くなった状況や相手の悪口を話しても、どんな会社にも気の合わない人はいるもの。かえって、会社にうまくなじめない人という印象を持たれる、というのです。2
一方で、面接で事実と違うことを言うのはいけない、とも書かれています。自分の正当性を主張することと、自分で理由を整理し、反省する点は反省して「今後は協調性を発揮したい」と話すことは、同じではない、という整理です。3ハローワーク滝川の面接対策ガイドブックも、一身上の都合で辞めた場合は、うそやごまかしのない事実に基づきながら、前向きに説明する必要があるとしています。4
つまり、ここでいう前向きは、事実を明るく作り替えることではありません。事実はそのままにして、そこから何を考え、これからどうしたいかを足すことです。
ただし、これらは面接を受ける人への案内で、法令の決まりではありません。どう受け止めるかは、会社や面接官によって違います。この記事の例文も、考え方の例として読んでください。
組み立ては3段、1分以内で話せる長さに
答えは、次の3段に分けると組み立てやすくなります。順番は編集部の提案です。
- 事実。何があって辞めたかを、1文で言う。
- そこから考えたこと。自分の側で気づいたことや、変えたいと思ったことを、1〜2文で言う。
- 次の職場でしたいこと。応募先で活かせる経験と、取り組みたいことを、1〜2文で言う。
事実を先に置くと、あとから聞かれても話がずれません。最後が応募先の話になるので、過去の説明で終わらず、これからの話を聞いた印象が残りやすくなります。長さの目安は、声に出して30秒から1分、文字にして200字前後です。
退職理由の答えは、事実、考えたこと、これからの3段で組み立てる作成: 編集部 / 出典: 青森労働局・ハローワーク「面接試験の受け方」
ハローワーク滝川のガイドブックにも、退職理由の例が載っています。前の勤務先で力を入れた仕事を述べ、さらに携わりたい仕事を志望したが異動がかなわなかったため、これまでの経験を活かして他社でキャリアアップを図りたいと思った、という流れです。事実、考えたこと、これからの順になっています。
言葉の選び方にも手がかりがあります。同じガイドブックは、面接では「できません」「やむをえません」のような否定的な言葉より、「実現させるよう努力します」「課題を見つけました」のような積極的な言葉を使うよう勧めています。5
避けたい言い方は、相手のせいだけで終わる形
避けたい言い方には、共通点があります。誰かのせいだけで終わる、「無理だった」で終わる、事実とは別の理由に差し替えている、のどれかです。次の表は、理由の種類ごとに、避けたい言い方と、言い換えの方向を並べたものです。
| 理由 |
避けたい言い方 |
言い換えの方向 |
| 人間関係 |
上司と合わなかった |
起きたことを短く言い、工夫と学びを足す |
| 評価・給与 |
評価も給料も低かった |
担当した仕事の広がりと、見合う責任を言う |
| 残業 |
残業ばかりで限界だった |
実際の時間と工夫を言い、続けられる働き方を言う |
| 会社の方針 |
方針についていけなかった |
何が変わったかを言い、深めたい分野を言う |
| 体調 |
体調を崩して働けなかった |
現在は働ける状態であることを言う |
| 家庭の事情 |
家庭の事情でやむなく |
短く触れ、今は勤務に支障がないことを言う |
表の右の列は、どれも事実を足す方向で、消す方向ではありません。たとえば残業が理由なら、「残業が嫌だった」を「成長したかった」に差し替えません。実際の状況を言ったうえで、次に求める働き方を足します。
避けたい言い方と、事実を変えない言い換え。理由の種類ごとの例作成: 編集部 / 出典: 青森労働局・ハローワーク「面接試験の受け方」
人間関係と評価は、起きたことを短く
人間関係が理由のときは、誰が悪かったかではなく、何が起きたかを1文で言います。そのあとに、自分が試したことと、そこから考えたことを足します。ハローワークの手引きが示す「反省し、前向きに考える」の形です。
「確認の回数を増やすなど」の部分は、例文の中でいちばん大事なところです。実際に試したことだけを入れてください。試していないことを足すと、深く聞かれたときに答えられなくなります。
評価への不満も同じ型です。「評価されなかった」で終わらせず、何を成果として見てほしかったのかを言います。
給与と残業と会社の方針は、条件を仕事の話に
給与や残業は、不満をそのまま言うと、次の会社でも同じ不満が出るのでは、と受け取られるかもしれません。そこで、条件の話を仕事の話として言い直します。理由を別のものに替えるのではなく、実際にあった状況を、仕事の言葉で言うということです。
残業時間は、わかる範囲の実際の数字を言います。数字があると、事実として伝わるからです。大げさにも控えめにもしないでください。
会社の方針が理由のときは、会社を批判せず、変わったことを事実として言います。
体調と家庭の事情は、話す範囲を自分で決める
体調や家庭の事情は、どこまで話すか迷いやすい理由です。まず、採用する側のルールを見ておきます。
厚生労働省の「公正な採用選考の基本」は、応募者の適性や能力と関係のない事項を、応募用紙や面接で把握しないようにと、事業主に求めています。6把握しないほうがよい事項の例は、家族に関すること(職業、続柄、健康、病歴、地位、学歴、収入、資産など)や、生活環境・家庭環境に関することです。7面接で尋ねられやすい不適切な質問の例には、家族の仕事を聞くものも挙がっています。8採用する側がこうした質問を控えることについては、面接で聞いてはいけない質問でくわしく説明しています。
これは採用する側への決まりで、応募者が自分から話すことを禁じるものではありません。話すか、どこまで話すかは、自分で決められると考えてよいでしょう。このあたりは編集部の考えです。詳しい病名や、家族の事情の細かい内容まで話すかどうかも、自分で決めてかまいません。
ただし、話さないことと、別の理由に差し替えることは違います。体調で辞めたのに「キャリアアップのため」と話すと、のちの質問で話がずれ、事実を変えた形になります。話さないなら、聞かれたことに触れずにいるか、「家庭の事情で」と短く言うのが安全です。
話すなら、事実は短く、そして「いまは働ける状態か」を伝えます。面接官が気にするのは、そこかもしれないからです。
「通常の勤務に問題のない状態」「制約なく働ける」は、実際にそうなっているときだけ言います。治療中で配慮が必要なら、必要な配慮を具体的に一言添えるほうが、入社後のずれが少なくなります。
もし面接で家族のことを深く聞かれて答えにくいときは、短く答えて話を仕事に戻す方法があります。たとえば「仕事に影響しない形で整えています。担当する業務の条件を、もう少し教えていただけますか」と返します。不適切だと感じる質問があったときの相談先として、厚生労働省は、最寄りのハローワークと都道府県労働局を案内しています。9
会社都合と契約満了は、経過をそのまま
倒産や事業の縮小のような会社の都合で辞めた場合は、理由を整理して前向きに変える必要はあまりありません。滝川のガイドブックは、会社都合での退職では、事実や経過を補足しながら説明するよう案内しています。10
契約期間の満了で終わった場合も、事実をそのまま言います。更新を希望したかどうかは、聞かれたら答えられるようにしておきます。
離職票の理由と、話の筋を合わせる
退職の理由は、面接だけでなく、雇用保険の書類にも残ります。ハローワークは、会社がハローワークに出す離職証明書について、離職前に本人が氏名を記載することになっているので、離職理由などの記載内容も確認するよう案内しています。11離職後に届く離職票の理由に異議があるとき、たとえば実際は退職を勧められたのに自己都合とされているときは、ハローワークに相談します。
雇用保険では、離職理由を大きく分けて判定します。倒産や解雇のほか、労働条件が契約と著しく違った、賃金が大きく下がった、長時間の時間外労働が続いた、上司や同僚からの嫌がらせを受けた、退職を勧められた、などが特定受給資格者の範囲に入ります。体力の不足、心身の障害や疾病、家庭の事情の急変などによる離職は、特定理由離職者の範囲です。12
面接で理由の区分を言う必要はありません。ただし、面接で話す内容と、書類に残る理由が、同じ事実を指しているのは大切です。会社が退職を勧めたのに「自分から辞めた」と話すと、事実が揺れて聞こえます。自分の離職票の理由を一度読んでから、面接の答えを書くと、話の筋が合います。
深く聞かれたときの返し方
面接では、退職理由に続けて、「それは社内で相談できなかったのですか」「うちでも同じことになりませんか」と聞かれることがあります。このときも、型は同じです。事実を言い、そこから考えたことを言い、次の話をします。
相談していなかったときは、していないと言ってかまいません。
どの返し方でも、試していないことを試したと言わないでください。実際の経験の範囲で話すほうが、そのあとの質問にも答えやすくなります。職務経歴書に書いた内容をもとに質問されることが多いので、事務職の職務経歴書の書き方の実績の数字と、退職理由の話が食い違わないかも見直しておくと安心です。
準備の手順は、書き出して声に出して計るまで
準備は、紙に書き出すところから始まります。最初から文章にしなくて大丈夫です。
- 退職した事実を、1文で書く。
- 離職票や退職の書類にある理由と、同じ事実を指しているか見比べる。
- その事実から、自分で気づいたことや、変えたいと思ったことを1〜2文で書く。
- 応募先で活かせる経験と、したいことを1〜2文で書く。
- 前の職場や人の悪口になっている言葉がないか、読み返す。
- 声に出して読み、30秒から1分で言えるか計る。
1つ目の事実の書き出しは、キャリアの棚卸しで出した、やったことの一覧から拾えます。そこから「なぜ辞めたか」を足すと、3段の1つ目から順に埋まっていきます。
最初の1文は、今夜のうちに書いておく
退職理由の答えは、うまく言い換える作業というより、事実を整理する作業です。辞めた事実は変えられません。変えられるのは、そこから何を考え、次に何をしたいかを、自分の言葉で話せるようにしておくことです。
今夜は、辞めた事実を1文だけ書いてみてください。その1文があれば、3段の残りは、少しずつ足していけます。
ハローワークと厚生労働省の資料、雇用保険のページは、2026年10月28日に確認した内容です。