次の2つは、同じ請求書について送る2通のメールの件名です。
- 【ご確認】9月分ご請求書(No.2026-0912)のお支払い状況について
- 【最終のご連絡】9月分ご請求書(No.2026-0912)のお支払いについて(11月20日(金)期限)
用件も請求書も同じですが、件名を見ただけで、1通目は「確認のお願い」、2通目は「期限のある最後の連絡」だと分かります。催促メールは、1通で強く言うものではありません。段階を踏んで、語調・期日・次の対応の書き方を少しずつ変えていきます。ここでは入金・返信・提出物の催促を、段階ごとの文例で並べます。
催促の前に、自社の側で確かめる3つのこと
催促を送ったあとで「実は届いていませんでした」「もう払いました」と言われると、立場が逆になります。メールを書く前に、自社の側に原因がないかを確かめます。入金の催促なら、次の3つです。
| 確かめること |
見る場所 |
よくある原因 |
| 請求書が相手に届いているか |
送信メールの記録、郵送の控え、請求書の発行システムの送付履歴 |
宛先の担当者が異動した、迷惑メールに入った、郵送が宛先違いで戻った |
| 金額・期日・振込先が合っているか |
注文書・契約書・見積書と請求書の突き合わせ |
契約の支払条件と請求書の期日がずれている、振込先の口座が変わっている、金額に注文書にない項目が入っている |
| 入金の照合に漏れがないか |
通帳・入金明細と、請求書の台帳 |
振込名義が会社名と違う、手数料を引いて振り込まれた、複数の請求をまとめて払われた、別の口座に入った |
3つのうち1つでも当てはまれば、催促ではなく、確認や訂正のメールになります。自社の請求書の誤りが見つかったときの書き方は、お詫びメールの書き方 取引先へのミスの謝罪と再発防止の伝え方・例文に載せています。
ここまで確かめても、相手が「払ったつもり」や「請求書を見ていない」ままのことがあります。そのために、催促の文には「行き違い」の一文を入れます。
入金の催促は3段階 変わるのは語調・期日・次の対応
入金の催促は、1回目に「確認のお願い」、2回目に「期日を示した依頼」、最後に「今後の対応を予告した連絡」と、役割を分けます。メールの長さも、段階が進むほど短く、事務的になります。
入金の催促の3段階。件名・語調・期日・次の対応が段階ごとに変わる作成: 編集部 / 出典: ベンチャー・スピリット!編集部
3段階で変わる点を、表にまとめます。送る時期は一般的な目安で、取引先との契約や慣習があれば、そちらを優先します。
|
1回目 |
2回目 |
最後 |
| 送る時期の目安 |
期日の翌営業日から数日以内 |
1回目から1週間ほど後 |
2回目の期日から数日後 |
| 件名の頭 |
【ご確認】 |
【再度のご確認】 |
【最終のご連絡】 |
| 語調 |
柔らかく、状況を尋ねる |
丁寧だが、依頼の形ははっきり |
事務的で、感情を入れない |
| 期日 |
示さない(確認のお願いだけ) |
曜日まで書いて示す |
曜日まで書き、「最終」と明記 |
| 行き違いの一文 |
入れる |
入れる |
短い一文だけ |
| 次の対応 |
書かない |
入金予定日の連絡を求める |
期日後の対応を事実として予告する |
1回目 状況を尋ねる確認のお願い
期日を過ぎて入金が見当たらなくても、1回目は「払っていない」と決めつけません。請求書の番号と期日を並べて、状況を尋ねる形にします。請求書を添付し直すと、相手は探す手間が省けます。
「ご入金を確認できておりません」と書くと、事実だけを伝えられます。「ご入金がありません」「まだ払っていただいておりません」は、相手の落ち度を言い当てる響きになるので、避けます。
2回目 期日を示して、入金予定日を尋ねる
1回目に返事がなければ、1週間ほどあけて2回目を送ります。2回目から、期日を曜日まで書いて示します。あわせて、振込先を本文に書き直しておくと、メールを開いたその場で手続きに進めます。
「お支払いの予定日」を尋ねるのは、相手が払う意思を持っているかどうかを、責めずに確かめられるからです。「事情がありましたら」の一文を入れておくと、相手は言いにくい事情(社内の承認が止まっている、資金繰りなど)を返信しやすくなります。分割払いなど、支払い方法の相談に応じられるかどうかは、メールに書く前に、社内で決めておきます。
最後 期日と、期日後の対応を事実として伝える
2回目の期日を過ぎても返事がなければ、最後の連絡を送ります。この段階では、語調は変えず、情報を増やします。期日と、期日までに確認できなかったときに自社がどうするかを、事実として書きます。感情を表す言葉(遺憾、誠意、再三)は入れません。
「今後の対応」を書くときは、自社が実際にできることだけを書きます。取引を止める、書面で通知するといった内容は、メールを送る前に、上長に確認します。できないことを書くと、あとで撤回することになり、かえって信用を落とします。
返信の催促 見積もりや日程の返事を待っているとき
返事の催促は、入金と違って、相手に義務がないことも多い場面です。強く言う必要はなく、「こちらがなぜ返事を待っているのか」を理由として添えると、相手が優先順位をつけやすくなります。見積書への返事と、日程調整の返事の例です。
どちらも、「期日」と「その期日が必要な理由」を並べています。理由が書いてあると、相手は「催促されている」と受け取るより、「こちらの都合を教えてもらった」と受け取りやすくなります。理由が思いつかないときは、期日を設けた根拠が自社にないということなので、期日そのものを見直します。
催促のときに添える短い言い回し(「その後いかがでしょうか」など)は、クッション言葉の一覧 恐れ入りますが・お手数ですがなど場面別の言い回しにまとめています。
社外の提出物の催促 契約書の返送など
契約書の返送、確認書の記入、注文書の発行のように、相手に手続きを頼んだ書類の催促です。書類の催促では、相手が書類をなくしている、どこに出せばよいか分からない、といった理由で止まっていることがよくあります。そのため、返送先と返送の方法を、本文にもう一度書きます。
契約書のように、相手の社内で押印の回覧が必要な書類は、時間がかかることが分かっています。2回目を送る前に、相手の担当者に「社内で回覧中かどうか」を一言尋ねると、催促というより、進み具合の確認として受け取ってもらえます。電子契約で署名を依頼している場合は、署名依頼の有効期限を本文に書いておきます。
社内の提出物の催促 年末調整・経費精算・マイナンバー
社内の催促は、社外と違って、毎年・毎月くり返す連絡です。相手は同じ会社の仲間なので、責める書き方は避け、「何を・どこに・いつまでに」を最初に書きます。提出が遅れる理由の多くは、書き方が分からない、書類のどれを出せばよいか分からない、というものです。迷ったときの連絡先を添えると、催促に答えやすくなります。
社内の催促では、次の点に気をつけます。
- 全体向けの案内と、未提出の人への個別の連絡を分ける。個別の連絡は、本人だけに送る。
- 提出の理由を書く。「給与計算に間に合わなくなる」など、遅れたときに困ることを1文で伝えると、催促ではなく連絡として受け取られる。
- 期日を過ぎた人には、期日を新しく決め直し、いつまでなら間に合うかを伝える。
- マイナンバーなど個人情報の提出は、メールやチャットで受け取らない方法(専用フォーム、書面の持参など)を、催促の中で案内する。
件名と期日の書き方
催促メールは、件名を見ただけで、何の催促かと、どれほど急ぐかが分かるようにします。本文を開く前に判断される場面が多いからです。
件名の付け方
| 入れるもの |
例 |
理由 |
| 頭の【】で用件の種類 |
【ご確認】【再度のご確認】【お願い】【最終のご連絡】 |
一覧で見たときに、段階が分かる |
| 書類の特定 |
9月分ご請求書(No.2026-0912) |
相手が探す手間が省ける。請求書番号があれば、相手の社内でも検索できる |
| 期日 |
(11月13日(金)までのご連絡のお願い) |
件名に入れておくと、本文を読み飛ばされても期日が目に入る |
件名の注意点です。
- 金額は、件名に入れない。メールの件名は、画面の通知に表示されて、周りの人の目に触れることがあるため。
- 「Re:」のまま返信を重ねない。段階が変わったら、件名を新しく付ける。前回のメールは、本文に日付と件名を書いて示す。
- 【至急】【緊急】は、1回目には付けない。付けるのは、実際に急ぎの理由があるときだけ。
期日の示し方
期日は、「日付・曜日・時刻」の3つで書きます。「今週中」「なるべく早く」「近日中」は、人によって幅が大きく、相手に判断を預けてしまうからです。
- 曜日まで書く。「11月13日(金)」と書くと、相手が自分のカレンダーで確かめられる。日付と曜日が合っているかを、送る前に確認する。
- 時刻が大事なときは時刻まで書く。「11月13日(金)17時まで」のように。書かなければ、一般的にはその日の終わりまでと受け取られる。
- 休日をはさむ場合は、前後の営業日を確認する。期日が土日・祝日・年末年始に当たらないようにする。月末払いの期日が休日のときは、前の営業日か翌営業日かを、契約で確かめる。
- 「至急」は、期日の代わりにならない。「至急ご連絡ください」より、「本日17時までにご連絡ください」のほうが、相手は動きやすい。「至急」を使うのは、期日をすぐに決められないが、急ぎの事情があるときだけ。
電話に切り替える目安と、記録の残し方
メールだけで進めていると、相手がメールを見ていないだけ、ということがあります。次のどれかに当てはまったら、電話に切り替えます。
- 2回目の期日を過ぎても、返事がない
- メールが戻ってくる、または届いたかどうかが分からない
- 金額が大きい、または契約の開始日が迫っていて、期日が動かせない
- 相手が個人事業主や小さな会社で、メールを日常的に見ていない可能性がある
電話をかける前に、「電話します」とメールで伝えておくと、相手が書類を手元に出して待てます。かけるときの言い方は短く、用件を先に言います。
電話のあとは、話した内容をメールで残します。「言った・言わない」を防ぐためです。
記録は、催促の履歴を一覧で残します。日付・方法(メール、電話、郵送)・宛先の部署と名前・相手の返事・次の約束の5項目があれば、担当者が代わっても、続きを引き継げます。送ったメールは、そのまま保存します。
最後の段階で、メールの外に出る前に確かめること
最後の連絡にも応じてもらえないときは、督促状や内容証明郵便に進むことがあります。内容証明郵便は、いつ・だれが・どんな内容の文書を出したかを、郵便局が証明する郵便です。ただ、この2つに進む前に、上長と法務に相談します。書面は一度送ると取り消せず、取引全体に響くからです。取引先との関係、契約に書かれた支払条件、請求できる額の根拠を、会社として確かめてから決めます。
メールの文面にも、次の3つは書きません。
- 脅すような表現: 「法的措置を取らざるを得ません」を、検討もしないまま書くこと。社名の公表をほのめかす表現。
- 誠意を求める表現: 「誠意あるご対応を」のように、何をすればよいかが分からない言い方。期日と、してほしいことを書く。
- 根拠のない遅延損害金の利率: 契約にない高い利率を、請求書やメールに書くこと。
遅延損害金は、契約書や請求書に利率の定めがあれば、その定めが先に使われます。定めがないとき、民法第419条は、金銭の支払いが遅れた場合の損害賠償の額を、遅れた最初の時点の法定利率で決めると定めています。ただし、定めた利率が法定利率より高ければ、その利率になります。法定利率は、民法第404条で年3%とされ、3年を一期として見直されます。法務省によると、令和8年4月1日から令和11年3月31日までの法定利率は、年3%です(2026年10月時点)。
| 項目 |
内容 |
根拠 |
| 法定利率 |
年3%。3年ごとに見直し |
民法第404条 |
| 令和8年4月1日〜令和11年3月31日 |
年3%のまま |
法務省「令和8年4月1日以降の法定利率について」 |
| 遅延損害金の基準 |
約定がなければ、遅れた最初の時点の法定利率。約定の利率が高ければ約定による |
民法第419条第1項 |
この表にある以上のこと(請求できる額の計算、時効、利息を請求するかどうか)は、取引の事情によって答えが変わります。弁護士や法務に相談してください。
法的な手続きには、裁判所が扱う次のものがあります。名前と入口だけを挙げます。
- 支払督促: 金銭の支払いを求める手続きで、債権者の申立てを受けた裁判所が、書類の審査だけで支払督促を出します。債務者が受け取ってから2週間以内に異議を申し立てなければ、債権者の申立てで支払督促に仮執行宣言が付され、それにもとづいて強制執行を申し立てられます(裁判所「支払督促」)。
- 少額訴訟: 60万円以下の金銭の支払いを求める訴えについて、原則として1回の審理で解決を目指す手続きです(裁判所「少額訴訟」)。
どちらも、申立ての方法や費用は、裁判所の手続案内で確かめられます。使うかどうかは、会社として判断します。担当者が一人で決めることではありません。
自社が発注側のとき、催促される側にならない
ここまでは自社が受け取る側の話でしたが、立場が逆になることもあります。自社が発注側で、取引が取適法(旧下請法)の対象なら、支払期日は受領日から60日以内で決める必要があります。検査や社内の承認が遅れても、払えない理由にはなりません。くわしくは取適法の基本 下請法改正で変わった発注書の記載事項と支払期日60日にあります。
催促メールを送る前に確かめること
催促を送る前の確認の流れと、最後の段階で相談する先作成: 編集部 / 出典: 民法・法務省・裁判所
送信の前に、次の順に確かめます。
段階に迷ったら、1回目の書き方から始めます。催促は、強く言うほど早く片づくわけではなく、相手が動きやすい形に整えるほうが、結果的に早く終わります。