退職金には所得税と住民税がかかりますが、勤続年数に応じた控除があるので、思うより軽く済みます。勤続8年で200万円なら、税金はかかりません。勤続15年で800万円でも、2つの税を合わせて約15万円です(編集部の例)。
ただし、会社に「退職所得の受給に関する申告書」を出さないと、受け取るときに一律20.42%の所得税が引かれます1。あとで確定申告をすれば戻るお金ですが、手元に入る額は大きく変わります。
退職金の税金は、3段階で計算する
退職金の税金の計算の例(勤続15年、800万円)作成: 編集部 / 出典: 国税庁
最初に、勤続年数から退職所得控除額を出します。勤続20年までは1年につき40万円で、最低でも80万円です。20年を超えると、800万円に、超えた年数×70万円を足します。1年に満たない端数は1年に切り上げるので、10年2か月なら11年で数えます1。
次は、退職金からこの控除額を引いた残りを半分にする計算です。給与にはない、退職金ならではの軽い扱いと言えます1。
最後が税率です。所得税は5%から45%の7段階で、195万円未満なら5%です2。さらに、所得税の2.1%の復興特別所得税が加わります。住民税は区市町村民税6%と都道府県民税4%を合わせた10%で、会社が引いて納めます3。
給与とは分けて計算するので、退職金が多いからといって、その年の給与の税率が上がることはありません1。
ただ、短い勤続には例外があります。役員ではない人で勤続5年以下の場合、控除を引いた残りが300万円を超えると、超えた部分は半分にできません4。
勤続年数ごとの、税金がかからない額
控除額が、税金のかからない額の目安になるイラスト: 編集部が画像生成AIで作成したイメージ(YOBITSUGI AI・OpenAI gpt-image-2.5-sunburst)
控除額は、そのまま「税金がかからない退職金の上限」と読めます。
| 勤続年数 |
退職所得控除額 |
| 3年 |
120万円 |
| 5年 |
200万円 |
| 10年 |
400万円 |
| 15年 |
600万円 |
| 20年 |
800万円 |
| 25年 |
1,150万円 |
| 30年 |
1,500万円 |
勤続10年で退職金が400万円以内なら、所得税も住民税もゼロです。20代や30代で転職するなら、まず自分の金額がこの枠に収まるかを見ると、大きな見当がつくでしょう。どのくらいの退職金が出るかの統計は、退職金の相場の記事で確認できます。
手取りの目安も、例で見ておきましょう(編集部の例)。
| 勤続年数と退職金 |
所得税 |
住民税 |
手取りの目安 |
| 5年、300万円 |
2万5,525円 |
5万円 |
292万4,475円 |
| 10年、300万円 |
0円 |
0円 |
300万円 |
| 15年、800万円 |
5万1,050円 |
10万円 |
784万8,950円 |
| 20年、1,000万円 |
5万1,050円 |
10万円 |
984万8,950円 |
申告書を出さないと、いったん20.42%引かれる
申告書の有無で変わる、受け取る額の例作成: 編集部 / 出典: 国税庁
申告書は、会社が正しい控除額で税を計算するための書類です。受け取る時までに、退職金を払う会社へ出します。税務署へ自分で持っていくものではありません5。
これを出さないと、会社は勤続年数を使った計算ができず、退職金の全額に20.42%をかけて引きます1。800万円なら163万3,600円にもなります。正しい税額は5万1,050円なので、158万2,550円を確定申告で取り戻す手間が残るわけです。
控除額の内に収まる人ほど、もったいない形になります。勤続8年で200万円なら本来は税金がないのに、40万8,400円が引かれるからです。一方で、住民税の計算は申告書の有無で変わらないと案内する自治体があります6。
出すのは難しくありません。用紙の欄は、氏名や住所、マイナンバー、勤続の期間、過去に受け取った退職金の有無です。会社によっては電子でも受け付けています7。
出し忘れて20.42%引かれたときも、取り戻す道はあります。会社から届く退職所得の源泉徴収票を手元に置き、確定申告で退職所得の欄に金額を入れると、引かれすぎた分が還付されます1。退職した年の申告の進め方は、退職した年の確定申告の記事で確認できます。
転職を重ねる人が見ておきたいこと
退職金の名前でなくても、税の上では同じ扱いになるお金があります。企業型の確定拠出年金やiDeCoから退職をきっかけに受け取る一時金、解雇予告手当は、いずれも退職所得です1。
前の会社の退職金を受け取ってから年数が短いと、計算が変わることも。前年以前4年内に受け取った退職金があって勤続の期間が重なるときや、前の会社の期間を通算して計算するときは、控除額を調整します。申告書の該当の欄に書き、前の退職金の源泉徴収票を添えてください5。
iDeCoの一時金は、受け取る順番でも控除額が変わります。2026年1月からは、一時金を先に受け取ったあとの退職金について、調整の対象が前年以前9年内に広がりました4。30代のうちは先の話ですが、いつか受け取り方を決めるときに思い出してください。
退職の前に確認すること
- 就業規則や退職金規程で、支給の有無と計算の方法を見た。
- 勤続年数を、1年未満を切り上げて数えた。
- 控除額を計算し、税金がかかるかを見た。
- 申告書の用紙と出す期限を、総務に聞いた。
- 過去に受け取った退職金があれば、源泉徴収票を探した。
- 受け取ったあと、退職所得の源泉徴収票が届くかを確認した。
退職所得の源泉徴収票は、退職の日から1か月以内に渡される書類です8。給与の票とは別の紙なので、2枚そろって届いたかも見ておきたいところです。計算は2026年11月4日に確認した令和8年分の案内によるものです。