異動が決まると、社内の人にも取引先にも挨拶のメールを送ります。迷いやすいのは、いつ・誰に・どの順で送るかと、後任をどう紹介するかです。この記事では、内示から着任までの送る順番と、社内・取引先・着任先でそのまま使える文例8つをまとめました。敬語の使い方は、文化庁「敬語の指針」で確かめています。
異動の挨拶メールはいつ送るか 日数でなく順番で決める
異動の挨拶メールは、ビジネスマナーの一つです。マナーは慣習で、「異動の何日前までに送る」という法律や公的な決まりはありません。
送る時期は、次の3つが決まったかどうかで考えます。
- 社内で異動が公表されたか(内示の段階ではないか)
- 会社が、社外に知らせてよいと決めたか
- 後任と、引き継ぎの日程が決まったか
内示は、正式な発表の前に本人に伝える知らせです。内示の間は、社外にも同僚にも話さず、文面の下書きだけを進めます。社内で公表されたら、上司と、取引先に知らせる範囲・時期・方法(訪問・電話・メール)を相談します。社外への公表日や伝え方を会社が決めていれば、それに従います。
異動の挨拶メールを送る順番。日数でなく、公表と後任の決定の順に送る作成: 編集部 / もとの資料: 一般的な慣習(編集部がまとめた例)
| 順番 |
時期 |
送る相手・すること |
| 1 |
内示の間 |
まだ送らない。社外にも同僚にも話さない |
| 2 |
社内で公表された後 |
上司と、取引先に知らせる範囲・時期・方法を相談する |
| 3 |
後任が決まったら |
後任と、連絡先と引き継ぎ・訪問の日程を合わせる |
| 4 |
社外に知らせてよくなったら |
取引先へ、後任の紹介つきで。関係の深い相手には訪問の打診 |
| 5 |
最終出社日の前 |
社内の部署・関係者の全体向けと、お世話になった上司へ |
| 6 |
着任してから |
着任先の部署と取引先へ。届いた挨拶にも返信する |
取引先へのメールを社内の全体向けより先にするのは、後任が引き継ぎを始められるようにするためです。引っ越しの前に新しい住所を知らせておくのと同じで、取引先が後任に連絡できる道を先に作っておくのが、このメールの役目です。
件名・宛名・敬語は普段のメールと同じ基本で
件名・宛名・TO・CC・BCCの使い分けは、普段のビジネスメールと同じです。基本はビジネスメールの書き方 件名・宛名・結びとCC・BCCの使い分けにまとめています。異動のメールで押さえたいのは、次の3点です。
- 件名は「異動のご挨拶(営業部 山田)」「担当者交代のご挨拶(株式会社〇〇 山田)」のように、用件と名前が一目で分かる形にする。文化庁「公用文作成の考え方」も、標題には主題と文書の性格を示し、1行に収めるのが適当としています。
- 異動日・最終出社日・着任日は「12月1日付」「11月30日(月)」のように日付で書く。
- 取引先あてでは、後任をCCに入れる(相手がそのまま後任のアドレスを使える)。
敬語は、文化庁「敬語の指針」(2007年2月2日 文化審議会答申)で迷いやすい所を確かめておきます。
| 迷いやすい言い方 |
敬語の指針の考え方 |
書き方の例 |
| 異動させていただくことになりました |
「させていただく」は、相手の許可を受けて行い、そのことで恩恵を受ける場面の言い方。許可の条件が無ければ「いたします」の方が簡潔 |
異動することになりました / 異動いたします |
| (社外へ)後任の山本さん、田中部長 |
社外の人に自社の人を話すときはウチ扱いにする。「田中」「部長の田中」と呼び、「田中部長」は不適切 |
後任の山本 / 部長の田中 |
| ご挨拶に行きたいです |
「伺う」は謙譲語Ⅰで、訪ねる先の人を立てる |
ご挨拶に伺いたく存じます |
| 山田と言います |
「申す」は謙譲語Ⅱ(丁重語)で、自分のことを相手に丁重に述べる |
山田と申します |
社外の人に上司を「田中」と呼ぶことについて、指針は、ウチ・ソトの関係でとらえた言い方であり、呼び捨てとは全く異なると説明しています。
誰に何を書くか 相手ごとの早見表
異動の挨拶メール 誰に・いつ・どの宛先の欄で・何を書くかの早見表作成: 編集部 / もとの資料: 文化庁「敬語の指針」・個人情報保護委員会「漏えい等の対応とお役立ち資料」
| 相手 |
いつ(順番) |
宛先の欄 |
書くこと |
書かないこと |
| 社内の部署・関係者 |
最終出社日の前 |
TO(部署のリストなど) |
お礼・異動日・最終出社日・業務の引き継ぎ先 |
長い思い出話・異動の理由 |
| お世話になった上司・先輩 |
全体向けと同じころ |
TO(1人ずつ) |
具体的なお礼を1つ・挨拶に伺う日 |
全体向けの文の使い回し |
| 取引先(後任の紹介) |
社外への公表と後任の決定の後 |
TO(1社ずつ)・CCに後任 |
異動日・担当を離れる日・後任の名前と連絡先・お礼 |
社外に出していない人事の事情 |
| 取引先(訪問の打診) |
引き継ぎの日程が決まったら |
TO・CCに後任と上司 |
訪問の目的・日程の候補・所要時間 |
こちらの都合だけの日時の指定 |
| 取引先(一斉に) |
主な取引先に送った後 |
BCC・宛名は「お取引先各位」 |
担当交代の要点・後任の連絡先・BCCで送っていること |
ほかの取引先の名前・アドレス |
| 着任先の部署 |
着任日(発令日)以降 |
TO(部署のリストなど) |
前の部署と仕事・これから担当すること・お願い |
前の部署の内部の話 |
| 着任先の取引先 |
引き継ぎの後、早めに |
TO・CCに前任 |
引き継いだ担当と訪問の打診 |
前任の不備を責める書き方 |
| 届いた挨拶への返信 |
受け取ったら早めに |
送り主だけに返す |
お礼・相手の新しい仕事へのひと言 |
BCCで届いた一斉メールへの「全員に返信」 |
異動の理由や人事の事情を書かないのは、会社が公表していない話を含むことがあるためです。迷う所は上司に確かめます。
社内に送る挨拶メールの文例
部署・関係者の全体向け
社内の全体向けは、業務の引き継ぎ先が決まってから、最終出社日の前に送ります。誰に何を引き継いだかを書いておくと、異動の後に問い合わせが自分に来るのを減らせます。
お世話になった上司・先輩へ
全体向けとは別に、1人ずつ短く送ります。一緒にした仕事を1つ挙げてお礼を書くと、全体向けの文を使い回すより気持ちが伝わります。
取引先に送る挨拶メールの文例
後任を紹介するメール
取引先あてでいちばん大事なのは、後任の名前と連絡先です。字と読み・電話番号・アドレスは、送る前に後任本人に確かめます。異動先の部署名を書くか、個人の携帯電話やアドレスを書くかは、会社の決まりに従います。
社外あてなので、後任は「山本」、上司は「部長の田中」と書きます。
後任と一緒に訪問したいときの打診
関係の深い取引先には、上司と相談して後任と一緒に伺うこともあります。日時は候補をいくつか出して選んでもらいます。
BCCで一斉に送るとき
主な取引先に1社ずつ送った後、ほかの多くの取引先にまとめて知らせるときは、アドレスをBCC欄に入れます。宛名は「お取引先各位」とし、BCCで送っていることを本文に書いておくと、受け取った人が戸惑いません。
相手が多いときは、会社の配信の仕組みを使えないか総務や情報システムの担当に確かめます。宛先を本文の後に入れると、書きかけで送る事故も防げます。
着任先で送る挨拶メールの文例
着任先の部署へ
着任先の部署には、着任日(発令日)以降に送ります。前の部署で何をしていたか、これから何を担当するかを短く書くと、周りの人が仕事を頼みやすくなります。
着任先の取引先へ
前任から担当を引き継いだ取引先には、引き継ぎを受けた後、早めに名乗ります。前任がまだ社内にいるなら、CCに入れておくと、相手は経緯を確かめやすくなります。
前任あての電話を取り次ぐ言い方は電話応対の基本と例文 取り次ぎ・不在・折り返し・伝言メモの書き方にまとめています。
届いた異動の挨拶への返信の書き方
自分あてに個別に届いたら、短くお礼を返すのが一般的です。部署全体あてやBCCの一斉メールは返信を求めていないことが多く、返すときも送り主だけに返します。
社内の同僚なら、「お疲れ様です。異動のご連絡ありがとうございます。〇〇の件では本当に助かりました。大阪でもお元気で。」のように、さらに短くてかまいません。
送る前のチェックリスト
今日からできること
- 上司か人事に、社外へ知らせてよい日と、取引先ごとの伝え方(訪問・電話・メール)を確かめる。
- 知らせる相手の一覧を作る。社内・取引先・着任先に分け、取引先は1社ずつ送る相手と一斉に送る相手に分ける。
- 後任と、紹介メールの文面・後任の連絡先・訪問の候補日を合わせる。
- この記事の文例を下書きに入れ、日付と名前を差し替えておく。
- 名刺や名刺管理のデータは、会社の決まりに沿って後任に引き継ぐ。扱い方は名刺交換のマナー 順番・渡し方・受け取り方と交換した後の扱いにまとめています。