社外に出す案内状やお礼状は、「拝啓」で始めて季節の一文を添えるのが一般的な形です。毎回迷いやすいのは、その月に合う時候の挨拶と、頭語に合わせる結語の選び方です。この記事では、月別の時候の挨拶と頭語・結語の組み合わせ、季節を問わない書き出しを一覧にしました。二十四節気の日付は国立天文台の暦要項で、手紙の形は日本郵便の説明で確かめています。
手紙と社外文書の組み立て 頭語から結語まで
時候の挨拶や頭語は慣習で、法令で決まった書き方ではありません。日本郵便は、手紙の一般的な構成を「頭語、前文、本文、末文、あとづけ」と説明しています。前文には、時候の挨拶や相手の安否を尋ねる言葉を入れます。
手紙・社外文書の組み立てと、頭語と結語の組み合わせ。時候の挨拶を省く場面も作成: 編集部 / もとの資料: 日本郵便「手紙の基本形式」「頭語と結語」「手紙を書くときのポイント(ビジネス編)」・文化庁「公用文作成の考え方」
| 部分 |
書くこと |
例 |
| 頭語 |
書き出しの挨拶の言葉 |
拝啓 |
| 前文(時候の挨拶) |
季節を表す一文 |
秋冷の候、 |
| 前文(繁栄・安否) |
相手の繁栄や健康を喜ぶ |
貴社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。 |
| 前文(感謝) |
日ごろの取引へのお礼 |
平素は格別のお引き立てを賜り、厚くお礼申し上げます。 |
| 主文 |
「さて、」から用件を書く |
さて、このたび弊社では… |
| 末文 |
用件のまとめと今後のお願い |
まずは略儀ながら書中にてご案内申し上げます。 |
| 結語 |
頭語と対になる結びの言葉 |
敬具 |
| 別記 |
日時や会場の箇条書き |
記 … 以上 |
社外文書では、一般的には右上に日付、左に宛名、右に差出人、中央に件名を置き、その下に頭語から書き始めます。
日本郵便は、ビジネスの手紙では前文を最小限にとどめ、すぐに用件を書き出すよう勧めています。日時などの重要な事項は箇条書きにするなどの配慮も必要だ、としています。
文化庁「公用文作成の考え方」(2022年1月7日 文化審議会建議)は、挨拶などの決まった言い回しにも触れています。言い回しが長くなると、文書の本質がぼやけることがあるという指摘です。
一方で同じ資料は、公用文では決まった型が読み手を安心させる場合もあり、型に従った方が的確に伝わるときは問題なく用いてよいとしています。前文は短くまとめ、用件を早く書き出すのが、型を生かす書き方です。
頭語と結語の組み合わせ一覧
日本郵便によると、頭語は手紙の冒頭の「こんにちは」、結語は結びの「さようなら」にあたる言葉です。結語は頭語と対応させ、「拝啓」なら「敬具」、「前略」なら「草々」と組み合わせます。
| 場面 |
頭語 |
結語 |
| 一般的な手紙 |
拝啓・拝呈 |
敬具・敬白 |
| 改まった手紙 |
謹啓・恭啓 |
謹白・謹言・敬具 |
| 返信 |
拝復・復啓 |
敬具・拝答 |
| 急ぎ・略式 |
前略・冠省 |
草々・不一 |
| 重ねて出す |
再啓・追啓 |
敬具・再拝 |
| 初めての相手 |
初めてお手紙を差し上げます |
敬具・敬白 |
| 緊急の手紙 |
急啓 |
草々・不一 |
表は、日本郵便「頭語と結語」の一覧から、ビジネスで使うことの多いものを選んでいます。迷いやすいのは次の3点です。
- 「拝啓」で始めて「草々」で結ぶように、組み合わせを混ぜない。
- 届いた手紙に返すときは、「拝啓」でなく「拝復」から書き始めるのが一般的。
- 「前略」は前文を省く略式の頭語。日本郵便も、「前略」「冠省」を使うときは前文を省いた方がよいとしている。
結語は、横書きなら末文の次の行の右寄せに、縦書きなら末文の最後の行の下に書くのが一般的です。
月別の時候の挨拶 漢語調と口語調の早見表
時候の挨拶は、顔を合わせたときの「寒くなりましたね」を、手紙の言葉にしたものです。漢語調は「〇〇の候」の形で、改まった社外文書に使われます。口語調は「〜となりましたが」のような話し言葉に近い形で、お礼状など柔らかい手紙に向きます。
時候の挨拶の月別早見表。漢語調・口語調と2026年の二十四節気の日付作成: 編集部 / もとの資料: 国立天文台「令和8年(2026)暦要項」「令和9年(2027)暦要項」・日本郵便「時候の挨拶」
| 月 |
漢語調(〇〇の候) |
口語調の例 |
使い分けの目安 |
| 1月 |
初春・厳寒・大寒 |
寒さがいっそう厳しくなってまいりましたが |
「初春」は年始のころに |
| 2月 |
立春・余寒・向春 |
立春を過ぎても寒い日が続いておりますが |
立春からは「寒中」を「余寒」に |
| 3月 |
早春・浅春・春暖 |
日ごとに春らしくなってまいりましたが |
下旬は「春暖」も |
| 4月 |
陽春・桜花・晩春 |
桜の便りが聞かれるころとなりましたが |
桜の話題は相手の地域に合わせる |
| 5月 |
新緑・薫風・立夏 |
若葉の緑がまぶしい季節となりましたが |
「立夏の候」は立夏の後に |
| 6月 |
梅雨・入梅・初夏 |
雨に紫陽花が映える季節となりましたが |
梅雨入りは地域で違う(入梅は6月11日) |
| 7月 |
盛夏・猛暑・大暑 |
暑さが日ごとに増してまいりましたが |
梅雨明け前は雨の話題も |
| 8月 |
残暑・晩夏・立秋 |
立秋を過ぎても厳しい暑さが続いておりますが |
立秋からは「暑中」を「残暑」に |
| 9月 |
初秋・秋涼・爽秋 |
朝夕はずいぶんしのぎやすくなりましたが |
上旬は「初秋」、下旬は「秋涼」 |
| 10月 |
秋冷・錦秋・紅葉 |
木々の葉が色づき始めましたが |
紅葉の時期は地域で違う |
| 11月 |
晩秋・向寒・立冬 |
朝晩の冷え込みが厳しくなってまいりましたが |
立冬の後は「向寒」も |
| 12月 |
初冬・師走・歳末 |
今年も残りわずかとなりましたが |
中旬から「師走」「歳末」 |
漢語調は「晩秋の候、貴社ますます…」のように、口語調は「〜となりましたが、皆様お変わりなくお過ごしでしょうか。」のように、次の安否の一文につなげます。日本郵便の「時候の挨拶」のページにも、月ごとの口語調の例が3つずつ載っています。
季節の感じ方は地域で違います。国立天文台は、二十四節気は古代の中国北方で成立した考え方だと説明しています。今の日本の気候に合った表現になっているとは限らない、という説明です。
気象庁によると、梅雨入りの平年の時期は沖縄が5月10日ごろ、東北北部が6月15日ごろで、ひと月以上離れています。相手の地域の様子を思い浮かべ、実際の季節とずれる言葉は避けるのが一般的です。
二十四節気の日付 2026年と2027年
「立秋の候」のように節気の名前を使うときは、一般的にはその日を過ぎてから使います。二十四節気の日付は、国立天文台が前の年の2月に暦要項として発表します。2026年(令和8年)分は2025年2月3日、2027年(令和9年)分は2026年2月2日の発表です。
| 月 |
二十四節気 |
2026年 |
2027年 |
| 1月 |
小寒・大寒 |
1月5日・1月20日 |
1月5日・1月20日 |
| 2月 |
立春・雨水 |
2月4日・2月19日 |
2月4日・2月19日 |
| 3月 |
啓蟄・春分 |
3月5日・3月20日 |
3月6日・3月21日 |
| 4月 |
清明・穀雨 |
4月5日・4月20日 |
4月5日・4月20日 |
| 5月 |
立夏・小満 |
5月5日・5月21日 |
5月6日・5月21日 |
| 6月 |
芒種・夏至 |
6月6日・6月21日 |
6月6日・6月21日 |
| 7月 |
小暑・大暑 |
7月7日・7月23日 |
7月7日・7月23日 |
| 8月 |
立秋・処暑 |
8月7日・8月23日 |
8月8日・8月23日 |
| 9月 |
白露・秋分 |
9月7日・9月23日 |
9月8日・9月23日 |
| 10月 |
寒露・霜降 |
10月8日・10月23日 |
10月8日・10月24日 |
| 11月 |
立冬・小雪 |
11月7日・11月22日 |
11月8日・11月22日 |
| 12月 |
大雪・冬至 |
12月7日・12月22日 |
12月7日・12月22日 |
啓蟄・春分・立夏・立秋・白露・霜降・立冬は、2026年と2027年で日付が1日違います。毎年同じ日と思い込まず、その年の暦要項で確かめましょう。国立天文台は、立春を境に寒中見舞いから余寒見舞いへ、立秋を境に暑中見舞いから残暑見舞いへ変わると説明しています。
2026年は10月23日が霜降、11月7日が立冬です。11月上旬に届く案内状なら、立冬の前は「晩秋の候」、後は「向寒の候」のように選べます。
季節を問わない書き出しと、相手で変える言葉
「時下」は「このごろ」という意味で、季節を問わず使える書き出しです。印刷して何か月も使う案内状や、届く日が決まっていない文書に向いています。「時下」が時候の挨拶の役をするので、「〇〇の候」と重ねて書かないのが一般的です。
| 使う場面 |
書き出しの例 |
| 季節を問わない |
拝啓 時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。 |
| 会社の繁栄を喜ぶ |
貴社ますますご隆盛のこととお喜び申し上げます。 |
| 個人の健康を喜ぶ |
〇〇様にはますますご健勝のこととお喜び申し上げます。 |
| 日ごろの取引への感謝 |
平素は格別のお引き立てを賜り、厚くお礼申し上げます。 |
| 日ごろの配慮への感謝 |
平素は格別のご高配を賜り、厚くお礼申し上げます。 |
一般的には、「ご清栄」は会社と個人のどちらにも、「ご隆盛」「ご発展」は会社に、「ご健勝」は個人に使います。「お慶び」と「お喜び」の違いは、下のよくある質問にまとめました。
結びの挨拶 末文の言い方
末文は、用件をまとめる一文と、今後をお願いする一文で作ります。日本郵便のビジネスの文例集でも、「まずは略儀ながら書中にて御案内申し上げます。」「まずはとり急ぎお知らせいたします。」のような結びが使われています。
| 目的 |
末文の例 |
| 案内 |
まずは略儀ながら書中にてご案内申し上げます。 |
| お礼 |
まずは書中にてお礼申し上げます。 |
| 依頼 |
ご検討くださいますよう、よろしくお願い申し上げます。 |
| 今後の関係 |
今後とも変わらぬお引き立てのほど、よろしくお願い申し上げます。 |
| 季節を問わない気づかい |
時節柄、どうぞご自愛ください。 |
| 寒い時期の気づかい |
寒さ厳しき折、くれぐれもご自愛ください。 |
書き出しで季節に触れたら、結びでも季節に合わせた気づかいを添えると、前後がそろいます。
案内状・お礼状・依頼状・お詫び状の文例
どの文例も、日付・宛名・差出人・件名は省いています。会社のひな形に合わせて足してください。
時候の挨拶を省く場面 メール・お詫び・お悔やみ
メールでは省くことが多い
メールは、一般的には頭語も時候の挨拶も書かず、「いつもお世話になっております」から始めます。文化庁の平成29年度「国語に関する世論調査」(2018年3月調査)に、改まったメールの型を尋ねた質問があります。型があると答えた人が挙げた中身は、挨拶の言葉が74.6%、頭語と結語が33.8%、季節に関する挨拶が16.7%でした。
メールの組み立てはビジネスメールの書き方 件名・宛名・結びとCC・BCCの使い分けに、社内向けの文書は社内のお知らせ文の書き方 読まれる件名と構成・すぐ使える文例にまとめています。社内の文書も、頭語や時候の挨拶を入れないのが一般的です。
お詫びとお悔やみでは前文を省く
お詫びの手紙は、時候の挨拶を省き、頭語のすぐ後にお詫びを書くのが一般的です。季節の話題より先にお詫びを伝える方が、受け取る側に用件が早く届きます。
お悔やみの手紙は、頭語も時候の挨拶も置かずに書き出すのが一般的です。日本郵便の文例集の弔慰状も、知らせを受けた驚きとお悔やみの言葉から書き出しています。災害や病気のお見舞いも、前文を省いて相手を気づかう言葉から書くのが一般的です。
会社として弔電を打つときの言葉は、弔電の文例 会社名義で送るときの宛名・敬称・差出人と申し込み方を見てください。
今日からできること
- この記事の月別の早見表を、文書のひな形と同じフォルダに保存しておく。
- よく出す案内状とお礼状の書き出しを、「時下」の版と季節の版の2つ用意しておく。
- 2027年の二十四節気の日付を、総務の年間予定表に書き込んでおく。立春と立秋は、寒中見舞いと暑中見舞いを切り替える目安になる。
- 社内に社外文書のひな形があるか総務に確かめ、あればそれに合わせる。